【★3.8】那須で東京レベルの中華を楽しめます【1790】 : 中国料理　鈴

2,767文字★
12,000円（＋税）コース滞在時間：約1時間50分★★

那須（I.C.から車で数分）の結婚式場（まるすず会館）併設の中華料理店「鈴（3.35）」。
厨師の鈴木高城シェフは都内の四川料理店や上海料理店で修業を積んだそうで、
四川を中心に、北京、上海、広東など幅広いジャンルの中華料理を提供。

食べログの先行レビューではアラカルト注文が多いですがコースこそ真価を発揮すると聞き、
12,000円（＋税）という予算お高めなコースを組んで貰うことにしました。
テイクアウト注文も入って盛況なようで、広い厨房を3人ぐらいの料理人で回しています。
食べログの店舗ページによれば座席数は30（テーブル席や円卓など）。
softbankは大丈夫なのですがdocomoとauは電波が弱く、無料Wi-Fiが用意されていました。

本日の12,000円（＋税）コースの内容は以下の通り

1.前菜六種
1-1.本鮪のレタス包み
1-2.鮎の冷製
1-3.苦瓜の四川漬物和え
1-4.山椒香るピータン豆腐
1-5.蒸し鶏のマーラーソース掛け
1-6.クラゲの和え物
2.鶏レバーの宮廷スープ
3.ロブスターの北京チリソース炒め
4.三種乾貨の醤油煮込み
5.アワビのトリュフ風味炒め
6.和牛スネ肉の中国黒酢酢豚仕立て
7.四川麻婆豆腐、白飯
8.宮崎マンゴープリン

食べた料理の寸評は以下の通り、【】内は個別の採点

【3.7】前菜六種

本鮪のレタス包み、鮎の冷製、苦瓜の四川漬物和え、山椒香るピータン豆腐、
蒸し鶏のマーラーソース掛け、クラゲの和え物、6種類の前菜盛り合わせ。

表面をタタキにしたと思しきレアーな火入れの本鮪がネギダレと合って美味。
五香粉など強い香りで燻製にした鮎は素材本来の香りこそ分かりませんが味は良いです。
頭ごと骨ごと全て食べられるやわらかさ。

苦瓜は干煽（ガンペン）に、皮蛋豆腐は皮蛋が白和えのようになっているのが特徴的。
（味わいは白和えとはまるで異なり山椒が効いて辛いです。）
蒸し鶏のマーラーソース掛け（口水鶏）は鶏肉がプリプリ食感でハイレベル。
シェフが日本人という特性が良い方向に働いていました。

クラゲは中太麺のように成型しているのか食感が面白かったです。
しっかりと酸味を効かせた味付けが好みでは無かったとはいえ。
（例えればクラゲの「冷やし中華」といったイメージでしょうか。）

【3.5】鶏レバーの宮廷スープ

鶏レバーと那須御養卵を茶碗蒸しに。
そこに金華ハム、鶏挽き肉、豚挽き肉の清湯スープを合わせた宮廷料理。
中華料理というよりもフレンチを思わせるような調理法です。

金華ハムの旨味が強烈に効いたスープ（塩強めですが）美味しいのですが、
ダブルで挽き肉を使って臭みが出やすいのか少しクセのようなものを感じます。
そして「茶碗蒸し」のレバーも臭みとクセがあって、
滑らかさの中に障るレバーのボソボソ食感も気になってしまいました。

個人的にはレバーをフォアグラにしたほうが食感がもっと滑らかになるような気がしましたが、
鶏のレバーを使ってこその宮廷料理のレシピなのでしょう。

【3.5】ロブスターの北京チリソース炒め

ロブスター（シェフ曰くオマール海老）の「海老チリ」。
北京風ゆえかケチャップや豆板醤の効いた一般的な海老チリより酸味を効かせてあります。
美味しいのですが少し水っぽさを感じてしまったのはマイナスポイント。
かつて横浜中華街で食べた伊勢海老のチリソースも水っぽさが気になったのですが、
大型海老の宿命として水っぽくなりやすいという性質があるのでしょうか。

【3.7】三種乾貨の醤油煮込み

油で戻した（油発）豚のアキレス腱、水で戻した（水発）海鼠、そして蝦子（川海老の卵）。
3種類の乾貨（ガンファ）を濃厚コッテリした味わいの醤油煮込みに仕上げています。
付け合わせは、干し椎茸（これも乾貨ですがカウントせず）、青梗菜、筍。

海鼠の食感は期待したほどでは無かったのですが豚のアキレス腱が良かったです。
油発で戻していることもあるのか中国人が好むようなトロトロ食感とは異なり歯応えあるのですが、
コッテリした味付けと親和性は高く美味しいと思いました。

【3.8】アワビのトリュフ風味炒め

トリュフ醤（ジャン）と塩でアワビを炒めて、フランス産のサマートリュフを散らして、
那須（地物）のゴールドラッシュ（玉蜀黍）、赤ピーマン、スッキーニ、シメジ。

サマートリュフ自体は香りが弱いように思いましたがトリュフ醤で香りを補完。
アワビの火入れ良くて官能的な食感を楽しめます。
しかしゴールドラッシュの甘みが強烈なのは良し悪しといったところで、
個人的にはゴールドラッシュは別で食べたかったです。

【3.9】和牛スネ肉の中国黒酢酢豚仕立て

3時間煮込んだという和牛のスネ肉を黒酢で酢豚仕立てにしています。
黒酢の酢豚仕立てにするなら豚肉を使えば良いのではないかと思ったのは短絡的なようで、
しっかり存在感のある和牛のスネ肉だからこそ黒酢の濃い味付けにも負けておらずバランス良し。
一般的な酢豚より黒酢の主張が強くなるこの調理法には豚より牛なのかも知れません。

【3.8】四川麻婆豆腐

辣（唐辛子）は控えめで麻（花椒）とトウチの旨味が際立つ麻婆豆腐。
白飯と合わせて「麻婆丼」のように食べていましたが美味しかったです。
こういう定番料理の美味しさが同店の人気を支えているのでしょう。

【3.8】辣子鴨舌（サービス）

たっぷりのホールスパイス（花椒や唐辛子）と炒めた鴨舌をサービスと出してくれました。
辣子鶏（ラーズーチー）の鶏肉を鴨の舌に代えたような料理ですが、
鴨舌は揚げてあってプリプリ食感も味付けも良かったです。

【4.0】宮崎マンゴープリン

シェフ曰くマンゴーそのままのようなマンゴープリン。
砂糖は入れておらず生クリームを加えただけで、宮崎のマンゴーをプリン化しておりました。
マンゴーの繊維質が少し障りましたが濃厚で美味しい。
過去に食べたマンゴープリンで最高クラスかも知れません。

例えばキャリア30年を超える某お気に入りフレンチの料理は完成度が高く口を挟む余地が無いのですが、
それに比べると同店の料理は、茶碗蒸しのレバーをフォアグラに代えたくなったり、
アワビのゴールドラッシュは別々に食べたくなったりと少し疑問に思う部分もありました。

とはいえ東京で勝負できるレベルのハイレベル中華を栃木県の那須で楽しめる稀有な存在。
那須の地物は御養卵とゴールドラッシュぐらいだったと思いますが、
東京仕込みの技術は間違いないので、もっと地の利を活かす料理となれば更に評価は上がりそうです。