間違いの無い大将の技術と仕事 : 鮨と地魚料理 さかな倶楽部 たっぱん

年末の墓参で伊東に泊まる・・・というか、
かつては伊東で墓参して伊豆の適当な場所に泊まって・・・で良かった物が、
こちらにお店を出されてることを知ってからは、上手くスケジュールをやりくりして、
伊東に泊まって＝夜はこちらにお邪魔する・・・ということが前提になりました。

勿論、伊豆への泊まりの旅行という意味ではソコソコの伊東縛りになるのでアレですが、こちらの料理を愉しむということには、それに見合うだけの価値があるのです。


今年も5000円のコースを連れと2人で、2人とも下戸なので・・・というか、本当にきちんとした仕事が出来る人と判って、（思い思いに好きな料理を頼むのも当然アリですが）ならば、玄人に任せた方がいいだろうと。

きちんとした仕事というのは、魚の目利きであるとか、捌くのが上手いとか、料理に熱心というか、実際に美味いだとか、そういうことも含まれるのですけれど、きちんと修行されてた（のだなぁと感じられる）方と言うこと。

それにはそれなりの判断理由が存在しているのですが、それは、こちらのお店で戴ける「美味しい魚料理」とは少し別の次元（事象？）のものなのかもしれません。


言ってしまえば

「みんな、俺に騙されたと思って、この店のコース料理を食べてみてくれ！」

2度目の来店で、強くこう言いたい次第。


でまぁ、一度その（判断）理由をつらつらと書いてみたのだけれど、なんか野暮な気がして、とりあえず今回戴いた料理について箇条書きでまとめると、

・お通しで出る物と「舌」のストレッチ
・刺身と握りとでの室鯵の熟成度の違い
・煮物に添えた柚と隠し生姜の関係
・鯖の塩麹焼きと塩で戴く揚げ物との「舌」の関係
・野菜の揚げ物の火の通し方と太刀魚の揚げ物の口の中でのほどけ具合の関係
・炙った赤ムツの握りからの穴子へのストーリー性

他にも色々あるのですけれど、これは只の魚好きの変態料理人には（失敬！）無理な仕事ですよ。韜晦しちゃぁイケナイ。

ちゃんと左から右へ、手前から奥へと箸を進めていけば判るようになっている。順番に料理を戴いていけば、料理人の意図を、そのまま受け入れていけば判るようになっている、という。


今回「もしよければコースにバッテラも入れてください」とお願いして、快く応じて戴きました。
ホームページを見れば判るように、こちらといえば「バッテラ」。単品なら頼みようもあるけれども、コースだと・・・ということで無理を聞いて戴いた訳ですけれども・・・。

先に言わせて貰うと、バッテラは「バカ美味かった」。

細かい部分はよく判らないけれど、魚とご飯の分量比が絶妙で、シャリを感じる間もなく魚がほどけて口に広がるという。
もちろん魚の方にも充分な仕事がしてあるのだろうけれども、バッテラ（押し寿司）系の酢飯のヘビーさがなくなって、相対的に多めになった魚の美味さが強く感じられて、それでも酢飯と合わさることで、刺身とは違う旨み（そうとしか表現しようがない！）が出ているという。

正直、美味かった！


ただ。ただ、「バッテラ」のような、魚料理の絶妙さが、こちらの大将の本当の実力を覆い隠してるのかも知れないなと。

それだけコース料理での押し引き留め、全体の構成の見事さが「圧巻」なわけです。

残念ながらこういう凄さは、コース料理という「組」で、料理人にタクトを委ねてないと判らない。・・・ということは、バカ美味しい魚料理を気ままに頼んでいては判りようがないわけで、ここにとても大きなこのお店の矛盾が（笑）

いや、自分でももう何言ってんのか判らないんですけどね（笑）


食べログの方では少し寂しい口コミ数ですが、フェイスブックでは多大なる「いいね」が押されているところをみると、観光客相手というよりも、地元で愛されるお店になられてるようで、1年に1度しか来ない客がいうのも何だけれども、一安心、一安心。

愛嬌があって話が面白い大将相手に、美味い酒と美味い魚料理で幸せになってる、とても幸せなお客さんが、この幸せなお店を支えているのですね。


ただ、騙されたと思ってコース料理頼んでみて下さい、陽気にふざけて冗談言ってる大将の化けの皮がゴニョゴニョゴニョゴニョ・・・（笑）


ちなみに夕方5時から開店してるので、2時間でカタをつければ充分東京・沼津方面への帰りの電車に間に合います。駅前やら商店街の「見た目だけ」の魚料理屋に（味に見合わない）金を落とすくらいなら、伊東観光の締めに、是非ここの料理を食って帰って欲しいと思うわけです。


僕が金持ちなら、用事は無くとも、ここのコース料理を食うために伊東に通うね・・・本心からそう思えるお店です。

朝から刺身が食いたくて、朝に開いてるお店を探して見つけたのが、伊東漁港前の「浜善」さん。
一度行ったらその刺身の美味さや仕事の丁寧さに病みつきになって、年に1〜2回伊東に行くときは、朝もしくは夜にお世話になっていたのですが、その「浜善」さんが急にお店を閉めてしまい、1〜2年の間、伊東で「刺身難民」に。
その間、他のそこそこの評価のお店にも行ったのですが、漁港のある「伊東ならでは」というレベルの味に辿り着けず、難儀していました。

廃業でもしない限りあのまま埋もれる板前さんでも無いだろうと、定期的にネットで検索をして、今年になってやっとヒットしたのが「鮨と地魚料理 さかな倶楽部　たっぱん」。
年末の墓参のタイミングで予約を入れて伺ってきました。


お店は仰々しくなく、夜に立ち寄りやすい雰囲気で、外には「鮨と地魚料理 さかな倶楽部」の看板が。夜なので細かく確認はしませんでしたが「たっぱん」とは書いていないので、「さかな倶楽部」と尋ねた方が通りが良いのかもです。

ホームページの方にはコース料理中心のように書かれていますが、中に入ると単品メニューも豊富で別に敷居が高めのお店では無い様子。まぁ何はともあれ料簡を知りたいこともあり、連れと5000円のコースを頼みました。

コースの内容は季節で変わると思うので書きませんが、どれも仕事の行き届いた物。

例を挙げると、鮨が5貫出てきますが、全部手の入った江戸前仕事で、生魚が出ません。
思わず「これ出して伊東で嫌われませんか？」と訊いちゃいましたよ（笑）

一番普通だった金目鯛のカマの煮付けも、醤油の濃すぎない、甘すぎない、煮すぎていない程よい物で、やはり技量の違いが出ていました。

今回はコースで頼みましたが、どの料理もきちんとした仕事がしてあったので、単品で選んでも間違いないでしょう。


基本的にはお酒中心というか飲むこと前提のお店で、僕も連れも下戸なので、そういう意味での正確な評価は出来ませんが、料理の確かな腕が楽しめる店です。

朝・・・とは言わず、昼の営業があると（日帰りでも）気軽に楽しめるのになぁとは思いますが、いろんなやりくりで夜だけなのでしょう。

夕方5時から開店なので、喰ってから電車に乗っても東京には帰れますから、これはこれでよしとして、墓参での伊東行きの楽しみが増えた次第です＾＾