地物の魚を最高の肴にしてくれる店。 : 沼津海いち

連休の中日に仕事が入ったと決まったのは金曜の午後だった。


連休初日の仕事が雨と共に流れ、翌日に持ち越すと
連休中日の仕事は始まったのも終わったのも午前午後６時前後。
車で伊豆の南端を出たのが午後６時で待ち合わせの沼津へ向かっては着いたのが午後８時だった。

仕事中はお昼を食べたのかどうかもわからず、やっとありついた夕食時がこの時間とは情けなくて
泣きそうになる気持ちを抱えて可愛いのは２０代まで。
４０代半ばになったらもっと図々しくあるべきだがそうもいかずなかなか気分が上がらなかった。


待っていた人が提案してくれたのは以前も行った海鮮居酒屋、沼津海いち。
時間的にはラッキーなことに１回転目の客がはけたところ、奥の席に案内してもらうことができた。
宿のクーポンのお陰で一杯目のビールはサービス。
今話題のお通しもこちらが主体で選べるスタイルが良い。

１０時間余り紫外線に晒された後のビールはそりゃあ美味しかった。
きっと待たせてしまった一緒の人も同じだろうと思った。

先ずはお造りの３種盛りから。
かんぱちと鮪はもとより、旨味の凝縮された鯛の味が・・・濃い！！

ビールじゃないなと思いなおし、久しぶりに日本酒をいただくことに。
静岡の地酒の辛口のをいただこうと白隠正宗を注文すると半合で売り切れ。
それでも飲んで見るときりりとした飲み口が鮮度の良い旨味の濃い魚介や地物の野菜に合うのだった。
それからも追加の辛口のをお願いするも売り切れが多く、２つ目は・・・なんだったっけな？忘れてしまってはいるけどこれも良かったと思う、だって悪酔いしてないもの。

合わせた料理はまるまる一匹のカサゴの唐揚げ・・・揚げ方が上手で残すところが全く無い。
これだけ大きなカサゴだと網に掛かれば網が痛むので一本釣りでないと海からあがらないと伊豆の南端の漁師さんから聞いたことがある・・・食べ切ったところで写真を撮っていないことに気づいた、それほど揚げ上がりが魅力的だったのだ。

丸茄子の揚げ出汁は柚子風味のをポン酢でじゅるっといただく。
伊豆の山中の育んだ原木椎茸は焼きで・・・細面の鰹節の掻いたのをふよふよと絡めて。伊豆の肉厚の椎茸は幼い頃よりの私の大好物である。

お酒を切り上げてレモンサワーへ。
合わせたのは甘めの厚焼き玉子をデザート感覚で、と、
穴子の天婦羅を塩と天つゆで・・・ふっくらとした揚げ上がり、ほこほこさっくり、幸せな〆となった。

かくしておなかは満たされ
気持ちは満たされ
ごちそうさまをして宿へ帰った・・・早朝からフル回転だったので私はバーまで持たなかったのだ。

それでも・・・幸せな時間だった。
久しぶりに日本酒が美味しいと感じた、魚を肴に仕立てるのがここのお店は本当に上手い（旨い）。

ふだん、身近で食材を手に入れて美味しい魚介は食べられるけれど、
外でというと、どうもその、価格が高かったり盛りが多すぎたりサービスが残念だったり・・・観光地ずれしているのが気になる店が多く、なかなか普段使いができない。
食材王国静岡と言ってはいるが、
星が4つを超えた店は僅かに5つ…これでは美味しい「料理」不毛地帯と言われても仕方ない。
「都会から来る人にはとりあえず魚を食べさせとけば喜んで帰る」
という考えがちらつく店も多いのが現状。

伊豆半島の玄関口、沼津。
ここに、評価が4つ星に迫る、驚異的な海鮮料理の店があると、東京から迎えた人が教えてくれた。
しかしやはりこちらでの週末の予約は容易では無く、その店から紹介された同系列の新店に行く事になった。

駅前にあるシネコンも有るような複合型のショッピングビル、その１階。
出来て１ヶ月程、ぴかぴかの店内
店員さん方も対応が初々しくて
だけど
お酒や料理のメモがびっしり書かれたのを見ながら気持ちのこもったサービスをしようとする様子が伝わる。

先ずは静岡ビール。
細かな泡が、冷えたグラスがうれしい。

五種類のお造りは少しずつ色んなのが綺麗に。

切り替えたお酒は御殿場の金明をお願い。
可愛らしい女の子の店内さん、
大きな一升瓶を健気に持って、丁寧に注ぐ。
慣れない様子ながらニコッと笑顔で「サービス、しました。」・・・気持ちと一緒に頂戴します。

かれいの煮付けで日々減り行くコラーゲン補填。
鰤の塩焼にに舌づつみ。

オリジナルのサラダは新鮮とわかる桜エビがフライドオニオンの役を上手にしていて。

カサゴの唐揚げが出てきた時は、正直、下田の「なかがわ」のが勝ったように見えた・・・しかし、ふっくら揚がった身や、ほろほろとした骨のあたり、
食べやすさ、味わいが段違いだということが直ぐにわかった。

〆に山葵のおにぎり。
大きなしじみのお味噌汁。


どれも、
どことなく見た料理。
量も普通。
価格だって至って普通。

しかし、どれも正直に、丁寧に料理されており、
私自身は少々遠い地元だけどまた来たいし、
観光客の方やよそ様にも是非紹介したい。

「魚民」や「花の舞」ではなく
内にも外にも開かれたこんな素敵な店が現れた沼津駅前。
なかなか美味しくて、
面白い場所が出来たな、と。