前菜盛合せ、フォアグラのポワレ、スズキのソテー : メゾン ドゥ アッシュ

初回訪問は2016年。久しぶりにフレンチも取り上げてみます。横浜からチョビ遠征して北上尾のメゾンドゥアッシュです。

入店してメニューを見て、追加料金のフォアグラ料理にアンテナぴぴぴ。
「フォアグラ料理のソースは何ですか？」と問うと、接客担当の奥様曰く「今日は、プルーンの赤ワイン煮ソースです」との回答。おおぅ。ベリー系ですな。強く焼いたフォアグラと合うんだよなぁ。

焼き方はソテーとの事でしたので「私は表面がカリッと焼かれたフォアグラが好きなのでポワレっぽく焼いて貰えますか」とリクエストすると快諾。有難うございます。調理法の柔軟対応という意味で加点です。

それでは以下にご紹介。

【料理・味】
1皿目は冷製スープでガスパチョ。えぇ～。スペイン料理じゃん。いやいや。美味しんだけどね。水を全く使っていない。という説明でトマト/セロリを中心とした夏野菜の水分とオリーブオイルだけの濃厚なスープ。粗めに摩り下ろされた野菜の繊維感とビネガーの酸味を楽しみつつも、初回訪問なので王道フレンチ期待でグリーンピースの冷製スープに未練たらたらな私。

2皿目は前菜。色取り取りの野菜達が目を引きつつも、かな～り肉肉しい皿なので構成を訊くと「肉3種+サーモン」との事。別テーブルの前菜には"海老のグリル"が居たので、私向けに海老を削って肉を増やしてくれたようです。4皿目の肉料理でスズキを選ぶと、前菜の構成も変わるのですね。嬉しい配慮です。

前菜の中でもローストポークは蜂蜜タレと、白レバーパテは干しブドウとそれぞれ相性が良く凝縮された旨み。あとサーモンマリネのアボカド包みも美味。熟成の進んだアボカドの甘みを素麺南瓜とサーモンマリネの酸味で閉じ込める発想が新鮮です。

そして野菜達も負けていません。"お米とアサリのサラダ"は、セロリの苦味がアクセントで美味しいし、季節の生野菜は全部で15種類もの野菜達を味わえて超満足。因みに15種類ってのは、紅芯大根/コリンキー/茄子/オクラ/赤トマト/青トマト/胡瓜/苦瓜/ブドウ/ピオーネ/空豆/枝豆/ひよこ豆/レンズ豆/キヌア です。

この2皿目だけでランチプレートとして成立する十分な品数です。少量多品種サイコ～♪

3皿目は魚料理の番だけど、魚→"フォアグラのポワレ"に変更。提供された分厚いフォアグラの美しい焼き目に陶酔。表面はカリカリですがナイフを入れると中はミディアムレアに近い状態で肝油がジワッと滲み出て、プルーンの赤ワインソースと絡まって最強の味付けです。う・ま・い・・・
トウモロコシのプリンも甘み十分でフォアグラと交互にいただきました。

4皿目は肉料理の番だけど、肉→"スズキのソテー"に変更。フォアグラが赤ワインソースだったので、ソースの重複回避の目的でアンチョビソースのスズキを選びました。ソースはこれが正解。唯一誤算だったのは、スズキが巨大過ぎた事。マグロのサクみたいなボリュームに茫然です。

フォアグラの皿を下げる時に、シェフが「お腹に余裕ありますか？」と尋ね、私が「はい。全然大丈夫です」と交わした会話が発動トリガーになったと思います。

一般的にはフレンチで魚料理と肉料理を両方食べる場合、1品のポーションを小さめにするのがセオリーだと思ってましたが、どうやらこの店は客の胃袋を見定めて提供する量を調整しているようです。

採算度外視というか、CPが良いというか、ホスピタリティが高いというか、都内の有名フレンチとは一線を画した事業モデルに驚きを隠せません。きっと、美味しい料理でお腹一杯になって欲しい。って考えてるだけなんだろうなぁ。。。

学生が挑戦する大盛りの店とかスタ丼の店とかではなく、一軒家フレンチで胃袋が満足するまでゆっくりと料理を愉しめる店って希有だと思います。脱帽。

そうそう、スズキは膨大だったけどペロッと完食しちゃいました。皿に添えられた焼き野菜が13種類もあり、量も多く甘みも強いので、スズキのボリュームは全く気ならず、野菜と交互にパクパク進んだ次第。

よくよく考えると、これもアンチョビソースのお陰なんだろうなぁ。このソース、殆ど塩を使ってなかったもんなぁ。バターに含まれる塩分とアンチョビの塩分。それとバターを少しだけ焦がした香り。薄味でシンプルなソースゆえ、スズキと野菜の旨みを引き立ててるんだと思います。

5皿目はデザート。これはフツーかも。パティシエを専任で擁する店のようには行かんわなぁ。。。まぁ料理が優秀なので、デザートは目をつぶりましょう。

6皿目はカフェと小菓子。ギモーブという小菓子は初体験です。「ギモーブってのはマシュマロのフランス語訳ですか？」と問うと、奥様曰く「いいえ。似ているけど材料が異なります。マシュマロはメレンゲを使いますが、ギモーブはメレンゲを使用しないです」との説明。未知のフルーティな菓子との出会いと奥様の見識とオマケのメロンに感謝です。

パンは1皿目のガスパチョと同時に登場。自家製田舎パンとフォカッチャの2種で、田舎パンは冷めてて堅かったの対して、フォカッチャは温かく柔らかくて美味。バターもリエットも潤沢に提供されるのでフォカッチャばかりお替りしてました。

【雰囲気】お店は、庭ありテラス席あり駐車場ありの一軒家フレンチ。テーブルも十分に広く、くつろいで食事が出来ます。私の採点基準では、駐車場が有るフランス料理屋は加点対象です。また、テーブル幅が65cm以上のフランス料理屋も加点対象です。これは「フレンチはゆったりと嗜むべし」という意見で、都内や繁華街のフランス料理屋だと上記基準を満たせず、私の採点では点数が伸び悩む傾向にあります。

【サービス】大変良かったです。ご夫婦で営むフレンチの為、お二人で全て担当してます。この為、"ロブション"級の細分化された役割分担<メートル･ド･テルやパティシエやソムリエ…>に及ばない点もありますが、なにせ、このご夫婦は食材&調理法に大変詳しく、興味や疑問にも即答してくださり、リクエストにも応じてくれます。

きっと上尾の地の利を生かして、埼玉近郊の顔の見える農家から食材を手に入れているからこそ出来る芸当なのでしょうね。

【総評】キーメッセージは"力まない普段づかい"です。個人経営のフレンチのお手本を見ているようで料理を通じてエネルギーを貰いました。横浜から北上尾へは半日がかりなので頻繁には通えませんが、大変良い勉強になりました。

都内のモダンフレンチも悪くないけど、メゾンドゥアッシュみたいなクラシックフレンチが増える事を切に望みます。調理技術/知識/食材調達/経営方針などなど。若いオーナーシェフが数年で辿り着ける領域では無さそうです。

ご年配にも見えますが末永く営業して欲しいです。ご馳走様でした。
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ランチCコース(\3,400)+α(\540)＋β(\400)
　スープ：ガスパチョ
　前菜盛合せ：<左上から時計廻りで>季節の生野菜,お米とアサリのサラダ,千曲川サーモンマリネのアボカド包みサラダ,ローストポークと赤キャベツの酢漬け,白レバーのパテ,鴨肉の燻製,ふだん草のキッシュ
　肉料理：フォアグラのポワレ-プルーンの赤ワイン煮ソースとトウモロコシのプリン添え(+\540：α)
　魚料理：スズキのソテー-アンチョビソース
　デザート：キャラメルアイス,スフレロールケーキ-マンゴーソース(+\400：β)
　カフェと小菓子：コーヒー,ギモーブ,メロン,アーモンドのフィナンシェ

パン2種<自家製田舎パン/フォカッチャ>,バター,豚肉のリエット