私の愛した男たち　（kuido子の遍歴） : 銀座ライオン 大宮東口店

はじめての男は真面目な男だった。
フードアナリストの資格を持ち、食べログを盛り立てていこうと毎日毎日「新店」のレビューを上げていたわね。古風で少し意固地で、そしてリッチな男。まるで当店の看板ドリンク、ヱビス生ビール（570円）のよう。麦芽100％の誇り高き伝統的なビールね。
初めて貰ったあなたからのコメントはとても嬉しかったわ。感動は今でも覚えている。


二番目の男は広告代理店ってところで上手くやってるみたい。当初は地元と職場との往復で、焼鳥と枝豆とホッピーしか出て来ない地味なレビューばかりを上げていたのだけれど、あるオフ会で誘いを受けて、その世界へといち早く入っていった。先日もフレンチ・イタリアンの店であなたの記事を見たわ。昔は大衆酒場が似合う男だったのに、仕事に合わせて得意ジャンルも変えたのね。
この店でいえばムール貝のワイン蒸し（1580円）に似ている。貝の旨みとワインの香りが食事を豊かにしてくれるし、追加料金（転職）でスープパスタにもできるから、二度美味しい料理（男）だったわ。


三番目の男は派手好き。食べログでは誰にでもフォロー。毎日やたらとフォローする癖がおさまらず、何千人とフォローをしまくった。半分くらいの人からはフォローバックしてもらったみたいだから、1か月後にはフォロワー3000人に達して、まるで歴戦レビュワーのように見えたわね。
でも所詮はピッチャーに入れたビールみたいなもので、泡がはじけて消えた後に残るビールは、香りものど越しも悪くなる。やはり当店では1杯ごとに注文して美味しく飲まなくっちゃね。ビールメーカー直営の店は注ぎ方からして違うのだから。
ちなみに彼をしばらく放っておいたら、いつの間にかリムーブ（フォロー解除）されていた。そんな節操のない男はこちらからブロックよ。


四番目の男は紳士だった。そして人への優しさに溢れているから、レビュワーの中でも人気があって人に好かれる男だった。
そして毎週のようにオフ会を企画して仲間を集めていたから、その周りにはいつも女性がたくさんいた。
オフ会の様子を伝えるレビューはとても輝いて見えたわ。初めてあなたからお誘いのメールが来た時はとても嬉しかった。
貴方はこの店の料理に例えると、アンガス牛のローストビーフ～和風おろしソース（1580円）にそっくりね。柔らかで香りのすくない赤身肉にさっぱりしたおろしを付ける素敵な品よ。
でも兄の平次が絶対に行くなって言うの・・・そして彼に事情を話したら突然音信不通になってしまった。ねぇ、未だに理由が分からない。捨間オフって何？


五番目の子は男なのに女っぽい。アイコンは女性なのに実は中身は男なの。
それはネットではよくある事で、ネットオカマを演じると男がたくさん釣れるからなの。
当店ではチキン唐揚げ（790円）みたいな感じね。鶏肉の唐揚げは味付けも濃いし見た目は男性的だけど、食べと見ると揚げたての衣はサクッとしているし何よりジューシーな味は女性的。貴方はビールと交互に口に含むのが止まらなくなる。
ちなみに釣って何をするって？　ゴメンね。この先は大人だけの秘密よ。


六番目の男はパワフル。
まるで当店一番人気のソーセージ盛り合わせ6本（2,580円）のようね。
彼は美食を極めたインフルエンサー（影響力の大きい人）で、毎日毎日何万円もするような料理店に行ってレビューを上げている。その豪勢な美食家ぶりは素敵といえば素敵だけど、毎日それが続くのは不自然過ぎる。私だってソーセージの間に、北あかりのジャーマンポテト（880円）を挟んだわ。ガツガツする男は好きだけどムードも大事なの。


七番目の男はこまめな男。
毎日家まで来て全部のレビューにいいね！をくれるから、訪問者数も多くて「全国アクセス数（先週）ランキング」の上位にも顔を出す有名人。当店でいえばお得なコース料理かな。料理8品に2時間飲み放題付きで5000円の税込みはコスパ良しだわ。
でも、中身を剥いてみたら一文字も読まずに連続でポチポチしてる。それに訪問者数も100倍の水増しで、いろいろ工作を頑張ってたみたいだから呆れて別れることにした。


八番目の男は・・・多分、最後の男。
サッポロ生ビール黒ラベル（510円）

まったり飲みたいときに一番料理に合うビールね。1977年より変わらないサッポロの看板ブランドで、決して宣伝も上手ではないけれど、ぐるっと回って玄人好みのビールに落ち着いた。
どうやらパートナーは決まったみたいね。
もう一杯だけ付き合ってくれるかしら。