24時間営業。 : 伯爵邸

2018.11某日15:40
私は「何か」を食べたいと思った。
その「何か」は炭水化物ということは分かるが、
それ以外は何も分からなかった。
ここは、鬱蒼と草に覆われていて、まるで魔女の家...
何を出しているか分からない。
そんな場所こそ、「何か」が分かるんじゃないかと思って、飛び込んだんだ。

殆どの店が閉まっている中、
ここだけは満員だ。
それも、主婦ばかりと思ったら、
背広を着た男性ばかり...

皆、何しているの？

私は「何か」を探すためにメニューを開いた。

ステーキ、パスタ、オムライス、
沖縄料理、和風定食、丼もの、
うどん、そば、サンドウィッチ、
南インド料理？、スリランカ料理？、タイ料理？

ここは、一体、何屋さんなのか。

とりあえず、ここの名物にしておこう。
そうして私の「何か」は定まった。

―――――――――

16:00
あれ。
ナポリタンの前にパフェがやって来たよ。

○沖縄紫芋パフェ　850円(税別)
紫芋アイス×2/紫芋ダイス/紫芋クリーム/ホイップクリーム/トースト/チェリー

このビジュアル、
やはり、ここは魔女の家だったか。
いや、魔女というよりは...

こいつをポ○モ○のル○ジュラと例えよう。
※気になる方はググっていただいきたい。

アイスでできた、でかい頭にでかい胸部。
グラス部分は胴体にみえるが、芋クリームとホイップしか入っていない、
ドレスといった方が正しいだろう。
つまり一等身だ。

ホイップの白髪を垂らし、
鮮やかなチェリーの簪をつけている。
顔や胴体から滴るマジカル・ヴァイオレットは、
涎にもなり、ドレスにもなり。
少し左首を傾けたさまは、微笑を浮かべながらハミングしているようで、いかにも不気味。
今にも私に攻撃しようと、倒れてきそうだ。

攻撃を喰らう前に倒してしまえ。
ええい
banetteの必殺技「つじぎり」...

すると、ル○ジュラは真っ二つに分断された。

二人で分けても圧倒的なボリューム、
まだこの有り様でもやる気かい？
小さな匙でトドメを刺してやる...

すると、見た目からは想像もつかぬことに、
優しい心を持っていたことが、分かったんだ。

口にするとまず、ひんやりと舌を伝わり、
ねっとりとした感覚、しかしあっさりとした甘味...
芋は濃厚な甘さを持つゆえに、一瞬疑ってしまう。
そして、後からふんわりと吹き上げる香り...
ああやっぱり芋だ、と感じる。
焼き芋を食べるときのホクホク感。
食感は滑らかなのに、この風味が豊かなあまり、
ホクホクしていると錯覚してしまう。

奴の髪は意外とサラサラだ。
甘さ控えめで、さらっとした口当たり、
アイスに溶け込むと、姿を消してしまう。

トッピングは乏しい。
トーストは、かりっ、くにゅっとした食感。
美味しくて、あとの楽しみにとっておこうにも、
気づかないうちに口のなかに入ってしまうからできない。
さつまいもダイスは2切れしかなかった。

奴はデブに見えて、肉=アイスしかない、
脳味噌は空っぽなんだ。

○伯爵邸　大宮ナポリタン　800円 (税抜)　
スープ、サラダつき。

何故大宮ナポリタン？

東北本線、埼京線、京浜東北線の中継地として、発展を遂げた「鉄道のまち大宮」。
その周辺には多くの喫茶店があり、駅員や工場マンがナポリタンをよく食べていた。
そこで店は「大宮アルディージャのチームカラー」「氷川神社の色」に因んだ大宮名物として、
「大宮ナポリタン」を売り出したそうな。
つまり、起源は神田のカレーとよく似ている。

その条件とは、
・地元産の野菜を1種類以上使っていること
・大宮市区内で作られるもの

出された瞬間、そのボリュームに圧倒された。
テーブルに置かれた時の効果音としては、
「ジャーン」ではなく、
「ドオオオオオオオン」
といった方が相応しいだろう。

そのイカ。
具材という粋を超えている。
フォークで刺すにもパスタと絡む余地を与えず...
もはやイカソテーだ。

豚バラは薄く、大きく。
こちらは、パスタと絡みそうだ。
一緒にパクリ。

...?!

いやああああああ
私の苦手な
ア　ブ　ラ　ミ
だっ

豚バラは質が良いとはいえず、
ぶよぶよとした脂身が殆ど占めていた。

ホルモンの脂は好きだけど、
ぶよぶよだけは、ダメ。
最近はどんなものも0カロリーということにしているが、
これだけは1000カロリーなんだ。

マッシュルームは缶詰めか。
にら、玉ねぎ、かいわれ..
これが、地元産野菜なのだろうけど。
うーん、「野菜が入っている」といえるだろうか、
まあ、一つでも入っていればいいんだよね。
イカがでかいから許すとしよう。

見た目とは裏側に、
麺は、実に家庭的といえよう。
パッツンと歯切れよいパスタは、
給食の柔らかいものでも、
イタリアンのアルデンテや生でもなく、
家で7分ぐらい茹でるようなやつ。
ソースは甘酸っぱくて、
いかにもケチャップといった感じ。

イタリアンの上品さなんてものはない、
それがいい。
ただ腹を満たすために、
何も考えず、食べていられる。
家庭的であるからこそ、安心できる味。

―――――――

ナポリタンを食べていく間に、
ル○ジュラは液状化し、
哀れな姿に...

ああ、あのとき貴方が傾いたのは、
攻撃するわけではなく、
寄りすがりたいためだったのね。
そうと知らず私は貴方を傷つけてしまった。
ごめんね...

――――――――――

盆栽カクテル　650円 (税抜)
スタッフを呼び、これなんですか？と問うと、
？ちょっと待ってください、
と言って厨房へ引き返した。

...メニューが多すぎるから、スタッフも覚られないんだ。

抹茶のビアカクテル。
大宮の名物盆栽に因んだものだが、
味は狭山か?
しかし、ここで狭山カクテルというと
大宮区民のブーイングに巻き込まれるだろうが...

一口啜ると抹茶よりビールがいち早く飛び込み、
爽やかな風味に喉が潤される。
抹茶の苦味はなく、
仄かにふんわり香る程度。

――――――――――

ここはなんと24時間営業。
朝来ても、昼来ても、夜来ても、
ここは私が食べたい「何か」を用意して
待ってくれてる。

ご馳走さまでした。