『Alan Ducas au Hotel Plaza Athene』やすんごさんの日記

来た、見た、食べた =思考する胃袋=

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日記詳細

十数年前になろうか、パリの「オテル・プラザ・アテネ」に泊まったことがある。パリらしい瀟洒なホテルであるが、最高の5つ☆ホテルでもある。ツタの絡まる中庭での小鳥たちと一緒の朝食は心に残る素晴らしい思い出であった。

このホテルのウリの一つはメイン・ダイニングとしてアラン・デュカスレストランを擁することである。しかし、前に泊まった時に食事をした覚えはなかったので、調べてみると、アラン・デュカスがプラザ・アテネに移ってきたのは2000年のことであった。ということで、僕が過去に泊まった時に食事をした記憶がないのも当然であった。

さて、今回も仕事でパリ出張であるが、仕事を抜きにすれば、最大のイベントはプラザ・アテネのアラン・デュカスでの食事である。アラン・デュカス氏は、現在は厨房に立つことはなく、レストランプロデューサーとして辣腕をふるっており、現在は、このアラン・デュカスルイ・キャーンズという三星レストラン2軒を経営するほか、ビストロのブノアスプーン各店を展開している。そして、皆さんもよくご存知のとおり、日本でもシャネルとコラボしてベージュをオープンし、また、ブノアも展開している。

日本でもかなり名は知られてきていると思うのであるが、なかなかその本拠地で食べる機会は少ない。ということで、本日はちょっと興奮しながらの食事である。

ホテルの回転ドアをくぐり抜けると、クラッシックなレセプションホールが広がっている。そのホールを通り抜けた正面がメインダイニングのアラン・デュカスである。先日に訪問したブリストルもそうであったが、レストランはホテルの最も中心の場所におかれている場合が多く、フランス人の食に対する態度がかいま見えて興味深い。

本日は、せっかくなのでスペシャルメニューをいただくことにした。

①最初のアントレは、ラングスティーン(ザリガニ)の肉にキャビアを載せ、コンソメスープと一緒にいただく。キャビアは最高級のオシュトラの大きな粒だ。コンソメは、甲殻類の出汁が非常に利いたものである。最初から度肝を抜かれる演出である。

②次に、アスパラとカニの料理だ。白い泡もカニから作っているが、その下にカニ肉が隠れている。アスパラは上の緑のほか、丸ごとの茹でてモノが顔を出し、その下にムース状のアスパラがある。同じ素材を全く違った料理法で何重にも重ねて出して来る。変奏曲を聞いているかのようだ。

③シンプルなサラダに見えるが、アボカドとエビをからめてそこにコリアンダーのスパイシーさが加わり、極めて複雑な味になっている。オリエンタル風味もとりいれ、フランス料理が世界性を持っていることを象徴するかのようだ。

④オマールが丸ごとでてくる。豪快である。これは技法というよりも純粋に素材の美味さで勝負の料理だ。

⑤カクテル仕立てのものは、フォアグラの上にホウレン草のグリーンソースを重ねたもの。ここでもエスプーマの泡を効果的に使っている。

⑥地鶏のローストがメイン料理だ。これはかなりの量がある。実のところ、あまり感心はしなかった。

⑦メインのサイドディッシュのグリーンサラダには生のマッシュルームが美しく添えられている。

⑧フランス料理の楽しみの一つは、チーズである。日本のレストランでもチーズを出すところが増えているが、熟成の管理が完璧にできているところは少ない。パリのレストランはチーズの熟成感が素晴らしく、チーズはこんなに美味い食べ物なのかと感動することが多いが、当然、この店のチーズも素晴らしい。

⑨デザートも何皿も出てるが、苺のデザートやキャラメル仕立てのムースなどだ。コースの締めにふさわしいが、本当に満腹だ。

飲み物の方は、まず、グランシャンパンで口をしめらせた後、ソムリエと相談しつつ、コルトン・シャルマーニュの白をボトルでとってみたが、クリーミーでリッチなテイストは料理に極めてマッチしていた。パリのグランドメゾンでの晩飯なので4時間近くかかるのは仕方ないが、それだけの価値は十分にある。

アラン・デュカスは素晴らしいの一言である。最高のフレンチとは何か、どこまで到達して、何を目指しているのか、ある種の世界性、普遍性を勝ち得るために常に新しいものを追い求めていることがよくわかる料理であった。それは、例えば、アスパラやカニの料理、最初のサラダに現れている。そして、同時に、キャビアやオマールに代表されるように、純粋な美食も追求し、お客に純粋な喜びをもたらす工夫もされていることである。

人生の至福のひとときを過ごすことができた。ありがとう、アラン・デュカス!

■2008/6某日
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