タケマシュランさんのマイ★ベストレストラン 2017

タケマシュラン

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

マイ★ベストレストラン

1位

ete (渋谷 / フレンチ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥40,000~¥49,999

2017/12訪問 2019/08/30

私のHDDの中には見当たらない

庄司夏子シェフは代官山ル・ジュー・ドゥ・ラシエット、青山フロレリージュのスーシェフを経たのち24歳で独立を果たした気鋭の料理人。シグネチャーの「Fleursd’été(フルール・ド・エテ)」はあまりにも有名。

さて本題、彼女のプライベートダイニングについてです。住所、電話番号ともに非公開。1日1組4名限定、一見さんNG。

極上のミカンジュースをシャンパーニュで割る。いやはやこんなに旨いミモザは中々ないぞ。

アミューズは塩味のタルト。呆れるほど山盛りのウニにオリエンタルなスパイス。もちろん高級食材を出して終わりというわけではなく、土台となるタルト生地も極上の一品。我々の来店時間を見計らった最適な状態での提供です。

ブリオッシュは外皮と中身の食感のコントラストが素晴らしく、生地の落ち着き度合いもピッタシカンカン。もちろんこちらも我々のためにタイミングを合わせた一品です。

トロトロとセクシーな舌触りの白子。丁寧に仕込まれたカリフラワーのソースで満たし、白トリュフでスマッシュする。ぐおお、旨い。白子はタラのものであり、白トリュフを除けば然したる高級食材ではないのにここまで美味しく仕上げる技巧には舌を巻く。

他方、白トリュフは諸刃の剣ですね。あまりにも精神的に乳を出す香りでトランス状態に入ってしまい、料理そのものの出来栄えが霞んでしまう。

甘鯛の鱗焼き。ミリ単位で計算されているのではないかと疑うほどの美しいウロコ。スープはカブに松葉ガニ。魚の下に松葉ガニがウジャウジャと潜んでおり、先日のきた福でカニに対する興味が芽生えた私としてはあげぽよな瞬間です。食感は甘鯛で、味わいはスープでとトータルコーディネートされた味覚に拍手喝采。

ここから先は料理に合わせてペアリングで。

一度茹でて硬度を減じた後に改めて焼きを入れたイノシシ。ここまで旨い肉料理は記憶を辿っても私のHDDの中には見当たらない。肉の柔らかさも脂の量も緻密に計算されているのか、本来は野生的であるはずのイノシシが極めてエレガントなものに仕上がっています。付け合せのクリのペーストも組み合わせとして完璧。

合わせるワインはコチラをこんな感じに。そう、液面に浮かぶはスライスされた黒トリュフ。発想が道楽者である。個人的にはワインはワインのみで楽しみたかったのですが、そこはまあ好みでしょう。

メインはホロホロ鳥。左のムネ肉は皮目がパリっとした食感で見た目以上に軽やかなしながり。肉質には水分をたっぷり含んでおり実にジューシー。右のモモ肉は炭火で。グラマラスな香りにやられ、思わず恋に落ちそうになります。ソースも出色の出来映え。卵の黄身のソースに黒トリュフのソースなのですが、とりわけ黒トリュフのソースが心に残りました。やはりフランス料理とはソースである。

おや、合わせるワインはアメリカもの。新世界を感じさせない上品な仕上がりではありますが、ここはひとつフランスワインを飲みたかった。全体を通してワインは課題かもしれません。素人の私が大それたことは言えないのですが、もう少し組み合わせの妙が、ここではないどこかにあるような気がします。

デザートはマンゴーのバラ。あまりの美しさにため息しか出ない。食べ進めていく際の食感の変化も計算済。1枚1枚の厚みも緻密に調整しているのです。マンゴーの美味しさは勿論のこと、脇を固めるクリーム陣も手抜き無し。人生で最も旨いマンゴーであった。

ちなみにマンゴーは北海道産の「白銀の太陽」。マンゴーって南国特有の果物だと思ってました。知らないことがまだまだいっぱいあるなあ。ちなみに先ほどウェブサイトで価格を確認すると、大きなサイズで1個19,440円でした。

そのマンゴーをソーテルヌに漬け込む!ぎゃああ!美味しい!なんて見事な香りなの!これはデザートに合わせるワインというか、これ単体で極上のデセールとして成立し得る感動的な液体です。この度胸の良さ、かどわきの「トリュフのハチミツ漬け」を彷彿とさせます。

お茶菓子はガトーショコラなのですが、凡百のショコラティエをしのぐ腕前であり、兎にも角にもカカオの風味が素晴らしい。これが本物のチョコレート菓子だよ、と、巷間に流布する砂糖の塊に説いて周りたいほどのレベルです。

お茶は阿里山茶という、台湾の大変高級なお茶とのこと。なるほど沸き立つ雅びやかな香りに清澄で繊細な味わい。渋みやエグみなど1ミリも見当たりません。

私にとって2017年で最も美味しい食事でした。全ての皿が完璧に美味しい。これってすごいことで、普通はおなかが膨らんでいくのと反比例して料理への感動は薄れていくものだけど、当店は常に一定のレベルを超えてきます。

やはり美食の行き着く先はお抱えの料理人なのかもしれません。大箱での食事は料理人が複数入り混じり、凡庸なレベルへと収斂されていく。当店のようにひとりの達人がひと組のお客にのみに集中することこそが料理の究極形ではないか、そんなことを考えさせられた食事でした。「料理の鉄人」などテレビで観る料理はどれも美味しそうなのに、実際にお店を訪れると大したことがないように感じることが多いのは、そのせいなのかもしれません。

12月にはクリスマスが控えておりケーキ作りに集中する必要があるため、レストランの営業は殆ど行わないとのこと。次回お邪魔できるのはいつになるのかなあ。お会計はひとり4万円弱と決して安くはありませんが、その価値は充分にあり、むしろ感動と思い出をその値段に買えると思えばリーズナブル。

ちなみにシェフは未だ20代半ば。天才か。将来は一体どうなっちゃうんだろう。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/11/ete.html

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2位

ガストロノミー ジョエル・ロブション (恵比寿、目黒 / フレンチ)

2回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥100,000~ ¥15,000~¥19,999

2017/03訪問 2023/01/24

出会って4秒でロブション

「久しぶり。ロブション行こうよ。ごちそうさせて。好きなワイン何でも飲んでいいから」コンビニに行くような手軽さである。候補日をいくつか返すと数分後には「予約完了」の連絡。出会って4秒でロブションである。

『ジョエル・ロブション』ブランドの中でも最高峰に位置づけられる『ガストロノミー“ジョエル・ロブション”』。泣く子も黙るミシュラン10年連続三ツ星店。

無事発刊に漕ぎついたゴー・エ・ミヨにおいても、カンテサンス、神楽坂石かわ、龍吟と並び20点満点中19点と最高位を獲得。世界に誇るフランス料理の頂点です。

シャンパンゴールドと黒で統一された空間が緊張感と昂揚感を掻き立てる。「やっぱりココって特別よね。あたし、この店に初めて来たの21歳だったんだけど、震え上がった感覚、今でも忘れない。あれからもう7年も経つのか…」。そう、彼女は28歳とヤングレディー。決してばびろんまつことかそういう類ではないので誤解なきよう。

グラスシャンパーニュで乾杯。ソムリエールがマグナムボトルを片手注ぎしてて驚きました。ものすごカチカチな二の腕や。

恭しくメニューが手渡される。しょ、食事だけでよんまんにせんえん…。「ああん、なんであなたに値段入っているほう渡すかなあ、今夜はあたしがホストだってきちんと電話で伝えたのに」ラール・エ・ラ・マニエールほど破滅的ではないにせよ、こういう最低限の事務処理ができないお店は意外に多いです。

アミューズ。極厚のトリュフを栗のペーストと溶かしたグリュイエールチーズで包み込み、ジャガイモで挟んだもの。先頭打者ホームラン。バカみたいに旨いです。「アミューズってさ、作り置きの冷えた一口が多いけど、ここはやっぱり凄いよね。調理したばかりで温かい」

折り目高に供されるパン。手前は蕎麦と山椒(?)風味、お米風味、ミニバゲット。パン職人としても名が高いロブション、天を仰ぎ見るクオリティです。蕎麦や米は企画モノではあるものの、繊維の1ミリ1ミリがいちいち旨い。バゲットも真正直な味。「おかわりはまたお持ちしますので!」とサービスにもパン対する矜持を感じます。こちらはフランス産の発酵バター。香り、味、風味の違いが明確。

ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー、なんだこのキャビアの量。支えるのはギッチギチに詰まったカニの群れ。ジュレは海老の出汁を凝縮したジュレに、様式美とも言えるカリフラワーのムース。この一皿に何人の料理人の手間と技術が結集されているのでしょう。さすがはロブションと思わず唸る。もうこの時点で今夜のポツダム宣言を受け入れます。

うーんうーんと頭を抱えながら、何万本のうちの1本を彼女がチョイス。ワインリストが厚過ぎて収拾がつかず、iPadでの検索です。選び抜かれた白ワインはPuligny-Montrachet1erCruLesPucelles2008と極上品。シトラスやリンゴの濃密なアロマに、花束を手渡されたかのような香り。樽香はエレガントでローストしたナッツの香りが優しい。滑らかな口当たりに清純な酸。濃い果実味と完璧なバランス。しばらくの間、黙り込んでしまいました。

1皿目が到着。定食のように大きなお皿に3品乗ってくるのは面白いプレゼンテーション。鰻とアンキモのミルフィーユ。名古屋の鰻を食べ尽くしたのでしばらくはいいや、と思っていた食材ですが、全くの別物。鰻の濃密な味覚を冷やし固めることにより軽やかな口当たりを表現。アンキモの濃密な脂と相俟って絶頂に達してしまいます。

つけあわせのリンゴと大根のサラダも究極的。こんなに旨い大根サラダがあるか?私は伝統的なフランス料理が好きだと繰り返し述べていますが、決して懐古主義であるわけではなく、実はモダンも大切にしているのです。ただし条件がひとつだけあって、原理的に美味しいこと。当店はその条件を朝飯前に悠然とやってのける。

インカのめざめカルパッチョ仕立て。へ?ジャガイモでカルパッチョとかやるんだと恐る恐る口に運ぶと実に爽やか。惜しみないトリュフの香りにエスコートされ、何でもないジャガイモが芸術品の域にまで昇華されます。

ビーツとリンゴを苦味のあるサラダに見立て、グリーンマスタードのソルベを合わせる。こんなサラダがあるか?味こそは純粋にビーツとリンゴですが、見た目に訴えかける手技に納得感がありました。

2emeService。わはは、まだ2皿目という扱いか。ロブションは味は確かながら量もとんでもないのです。カリフラワー。見目麗しく随所に光る美的センス。小さな小さな料理に何種類の素材が使われているのでしょう。

蝦夷あわびのソテー。肝のソースが絶品。瑞々しいカブにとろりとしたソースをまとわせ、あわびの食感と共に反芻する。旨い!

追加のパンがやってきました。百貨店などで普通に1個500円で売られている最高級品の山。

ロブションのパンと言えばやはりドライトマト。数年ぶりに食べましたが間違いの無い美味しさ。アンチョビのクロワッサンも絶妙な塩加減。これ単体で他のややこしい料理に比肩する味わいです。

3emeService。料理は2~3皿づつセットで届くので、トータルではものすごい種類の料理を食べることになります。ケール、ブロッコリー、ロマネスコ。素材のひとつひとつに個別具体的な調理が施されており、それぞれの長所が活きています。特にケールのホロ苦さが絶妙。なめらかなジャガイモのピュレもまとまりがあって凄くいい。

手長海老のラヴィオリ。中国の気前の良いエビシューマイ屋のように、手長海老がギュウギュウに詰まっています。ひたすらに旨い。節度のあるトリュフの香りやちりめんキャベツの甘さが心地よいアクセントに。

アーティチョークが最高の素材。それほど好きな食材ではないのですが、これは心から美味しかった。ヒヨコ豆のカプチーノソースもターメリックの香りが鳴り渡り痛快な味わい。

4emeService。前菜セット最後のサービスです。ロワールのホワイトアスパラガスにモリーユ茸。ちょっとアレに見えますが味は確か。素材から滲み出る旨味が入念に凝縮されています。セルフィーユ(チャービル)の爽やかな香りも心地よい。

ボタン海老のスープ。海老料理が続いて幸せ全開。しかしながらオリエンタルな味付けでありこれまでの料理とベクトルがガラりと変わる。食べ手を飽きさせない工夫。ターメリックとパクチーの香りも小気味良い。

ブラック・コッド(タラ)を香りよくキャラメリゼ。タラは貧弱な食材扱いされているのに、ロブションで出されるものは極上品。ワサビの風味が漂うホウレンソウも美味。圧巻の魚料理でした。

「よし決めた!飲もう!」と景気の良い掛け声と共にソムリエに注文を済ませる彼女。漆黒のボトルにシミひとつない真っ白なエチケット。そこに屹立する風格のある塔、ラ・トゥール。気絶しそうになりました。俺もう今夜抱かれてもいい。

細心の注意が払われたデキャンタージュに思わず見入ってしまいます。遠くからでもハッキリそれと解かる最上の香りが力強く芳醇で壮絶。口に含むと官能の極み。とろけるようなタンニンに心に沁みるミネラル感。駄目だ、これは語るほどにチープになってしまう。

申し合わせたように現れる肉塊。これで2人前と胃袋が試される瞬間。ツーマンセルでテキパキと取り分けられていきます。牛フィレ肉とフォアグラを抱き合わせてじっくりとロースト。こんなにも美しく洗練されたロッシーニがあるか?ポーションこそ迫力があるものの、肉質は極めてエレガントでありスイスイと食べ進めることができます。

先のラ・トゥールも状態が移り変わり、内向的で濃密な香りから飛び切りのカシスへと花開く。若干のトースト香も複雑の極み。タンニンはより一層の円みを帯びる。「こういうワインはボトルで飲まないとわかんないよね」

付け合わせのポテトまでいちいち美味しい。当店の厨房はどうなってんだ。料理人を何人抱えればここまでパーフェクトな調理を実現できるのでしょう。
チーズやデザートを見越してもギリギリ余裕があったので、追加のパンをふたつ。満腹状態でもきちんと旨い。近所にロブションのパン屋できないかなあ。

緻密に熟成されたチーズたちが届きました。ああ、フランス料理って楽しい。付け合わせのドライフルーツやナッツからも優美さが伝わってきます。シャウルスにマンステール、セル・シュール・シェールを選択。最高の味覚を噛み締めながらワインと共に胃袋へ。飲むたびに見事な精巧さと純粋さが伝わってくる。私のエルドラドは恵比寿にあった。

お待ちかねのデザート。ちなみに我々を除く全てのテーブルはお誕生日祝い。みんな笑顔。幸福な人間を生み出し続ける装置、ガストロノミージョエル・ロブション。

グァバのムースにカシスのソルベ。流れ着くソースはパパイヤ。ぶっ倒れそうなほど満腹でしたが、果物主体の現実的な甘味で一安心。マンダリンのソルベ。品の良い柑橘に香ばしい甘さを湛えるキャラメル。マンゴーの情熱とパチパチキャンディの遊び心が雅びやか。ライム風味のチーズケーキ。ダリアをあしらった色彩に目が引かれる。ショコラのソースがサラリと舌に吸い付く。

さらなるデザートワゴン。片足けんけんで胃腸のスペースを空ける必要があります。ショコラのアイスにフランボワーズのアイス、ベリーのタルト。腹が膨れて堪らないのですが、それを凌駕する味覚であるためついつい手が伸びてしまいます。完璧なコーヒーで胃袋を落ち着ける。

カーテンコールにミニャルディーズ。しかしまあ、呆れるほどの種類と量。ロオジエはパティシエが6人居ると伺い腰を抜かしましたが、当店も同程度に抱えていることでしょう。内臓が許せば全部食べてしまいたかったのですが、身を切られる思いで5つに留める。右上のギモーブが格別。ギモーブって、マシュマロみたいでそれほど美味しくなる余地のないお菓子だと思っていたのですが今夜から考えを改めます。

悠然と小菓子とコーヒーを楽しんでいると、タイミングを見計らって2杯目のコーヒーが供される。こういう細やかな気配りができる実質的なサービス能力はさすがのロブションクオリティ。ミントのキャンディでお口を整えてごちそうさまでした!

お土産のパンはふたりでひとつ。「旦那に見つかると面倒だから、持って帰って。送ってく。車向かわせるね」と神対応。このとき私は幸せの絶頂に達しました。

19時に入店し、24時過ぎに退店。人生で最も記憶に残ったディナーでした。私の人生が伝記としてまとめられるのであれば、『ロブションの2017』は必ず一章設けて欲しいところです。なんて素敵な世界に生まれたのだろう。全てが光に満ち溢れている。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/03/robuchon.html
ミシュラン三ツ星。ガーデンプレイスの奥にある建物で、なんだか安っぽいおもちゃの屋敷みたい。内装は黒×金だらけでセンスが悪。バカラのデカいシャンデリアもなんだか下品。直感的に香港の飲茶レストランを想像してしまいました。

昔はタイユヴァン・ロブションというレストランで、タイユヴァン(パリの三ツ星レストラン)がサーヴィスを、ロブション(パリの三ツ星レストラン)が料理を、というコンセプトがうまくいっていたと思うのですが、いつの間にか経営がフォーシーズ(ピザーラの会社)に変わって、店名も"ガストロノミージョエルロブション"になってました。料理業界は難しい。

やたらホールスタッフが多くて、さらに全員黒づくめ。マトリックスの悪い奴らに囲まれた気分で非常に落ち着かない。ワインの色を見るにも、テーブルクロスが黒くてちょっとね。

と、食事が始まるまでは印象最悪でしたが、肝心の料理はうめーうめー、超うめー!

カレーに見立てたアミューズ。こういうの結構好き。

こういうお店で忘れてはいけないのがパン。高級店では、こういう地味な料理(?)の質が際立つ。クロワッサンなんてもう絶品。今まで世界一ウマいクロワッサンは、ハレクラニのそれだと思っていたのですが、今回をもってロブションが王座につきました。ドライトマトやらケシの実やら、色んな味を用意してあるのもすごく良い。

単においしいだけじゃなくて、春キャベツ、ふきのとう、などなど、季節の食材が嬉しいですね。
サワラのコンフィに、サーヴィスの方がブイヨンをかける。「最近の料理の最先端はスペインなので、スペイン料理っぽくしてみました」だと。なんて柔軟。

メインはラム。色使いが素晴らしすぎる。こういうセンス欲しい。

デザートはマンゴーのコンフィにルバーブ(アロエみたいなやつ)を甘く煮たもの。どれも美味しい。

ミニャルディーズ(小菓子)もレベルが高く、エスプレッソを2杯も飲んでもうた。最高に幸せな気分でごちそうさま。お土産にパンまで持たせてくれて、翌日の朝食に頂いたのですが、これもまた美味。完璧だ。季節ごとにお邪魔したいレストランです。超オススメ!

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2009/05/blog-post.html

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3位

麻布 かどわき (麻布十番、六本木、赤羽橋 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2017/09訪問 2017/10/29

お客さまの中にお医者様はおられますか!

かどわき。ミシュラン2ツ星。飲料を除いた食事代だけでひとり4万円を超える都内トップクラスの高級店。きよぶたの思いでの突入です。

鄙願の冷で乾杯。酒がうまいのは勿論ですが、酒器や和らぎの器まで凝っており胸が弾みます。ちなみに一番安いお酒で1合2千数百円です。

赤万願寺唐辛子に九条葱、黄色と紫色の菊、セリ、甘鯛の昆布締めです。甘鯛の昆布締めが実に旨い。芯のある魚の旨味に絶妙な味付けが心に響きます。その他、全体として様々な食感がひとつの器に込められており食べていて楽しい皿でもありました。

白子豆腐に海老味噌を塗り、炙ったもの。鼻血ブー!こんなうまいものがあるか?裏ごしされた白子がぽってりと厚く、海老の旨味の凝縮感に拍手喝采。

松茸のコロッケ。手前はミズという山菜です。

ゴロゴロと転がり出る松茸の塊に思わず笑みがこぼれる。和の食材を洋食風に狙ってくるところに法善寺横町の喜川や北新地の弧柳を思い出しました。

カレイの薄造りトリュフを塗す。ここを通りたいなら俺を倒してから行け、と言わんばかりのトリュフの量です。塩をパラりと振りかけ、たっぷりのトリュフをカレイでクルクルと巻きつけ一口で頬張ります。こんな組み合わせを試みる罰当たりは世界で当店だけでしょうが、合うんだよなあ、このマリアージュ。

2合目は磯自慢。特に狙ったつもりはなかったのですが、カレイとトリュフにピッタシカンカンの取り合わせでした。

子持ち鮎にうるか。うるかとは鮎の塩辛です。程よく苦味を湛えた鮎をまずはプレーンに。この時点で旨い。長時間かけて丁寧に炙られた火入れがトヨタも真っ青のジャストインタイム。そこにたっぷりのうるかを塗りたくり、頭から尻尾まで丸呑みする美味しさといったらない。15年前ほどに「あゆ(浜崎あゆみ)が全裸で横たわっている画像が流出しました」とか言って、鮎の画像を送るのが流行ったのを思い出しました。

とうもころしとカニの蒸し物に肝のソース。トッピングはフォアグラにトリュフと凡そ思いつく限りの豪華食材を詰め込んだビックリ箱のような一品。しかしながら何でもバカみたいに高級なものを詰め込んでいるというわけではなく、全体としてまとまりがあり、それぞれの存在意義がきちんと見出せる見事な一皿でした。妻は「美味しすぎて死にそう」お客さまの中にお医者様はおられますか!お客さまの中にお医者様はおられますか!

お次は鍋。カセットコンロは信楽焼の特注品とのこと。

うず高くもられた松茸と目が合う。全くこの店はAWで何キロの松茸とトリュフを仕入れているのでしょう。

前座はハモ。私はハモがそれほど好きでは無いので、この味わいは中くらいです。それよりも蕎麦つゆ風味のツユが旨かった。タマネギがいっぱいで。

真打登場、松茸先輩。松茸って、その値段とか希少性をありがたがるものであって、値段ほど美味しいものではないことが多いですが、この松茸はほんまにうまかったで、と関西弁になるぐらい美味しかったです。人生で初めて松茸を美味しいと思った瞬間かもしれない。

スープも素晴らしい。松茸本体の分身とも言えるほど香りと旨味が移り込み、うっかり静脈注射してしまいそうな恍惚感がここにはあります。

ぎゃあああああ!とトリュフの断末魔の叫びが聞こえてきそうなほど大量のトリュフをスライスする主人。見掛け倒しにトリュフをかけているわけではなく、レコンキスタのような決意を感じるほどに躊躇無く黒いダイヤをぶっ放す。

米の味、炊き加減、バター醤油風味の味付け、どれをとっても完璧なバランスです。単純にトリュフをのせているだけでなく、この量が正解だ、と言わんばかりの調合でした。正解だと言い切る人に人はついていく。ついていきます大将!

お漬物も抜かりなく美味しい。この品質のものが脇役扱いだなんて。オーシャンズ11のマット・デイモンを思い出しました。

もちろんおかわりもあります。おにぎりにして海苔を巻いて持ち帰ることもできるのでしょうが、目の前でこの香りを嗅がされて自制できる人はいないでしょう。デザートには苺、葡萄、梨にリコッタチーズをとろりとかけ、ザクロを散らし、トリュフのハチミツ漬けでトドメを刺す。このハチミツ漬けが旨いのなんのって。並みの料理人であればビビってしまって、試作すらできないことでしょう。

お土産にシラスを持たせて下さいました。立派な箱に入り、デパートで買えばこれだけで数千円はしそうな気品に溢れています。

訪問前は「トリュフを多用するだなんて下品だなあ」と疑っていましたが、実際に訪れてみると、高級食材をまとめ上げる確かな腕に舌を巻く。トリュフや松茸などが多く悪目立ちしますが、きちんと美味しいと信じて使うその哲学には感動すら覚えます。時おりバランバランに感じてしまう龍吟とは数段階上のレベルに位置し、すべてが調和しています。

店主はコワモテで一見無愛想。カウンター席だと弟子に厳しい一面を間近で見てビビってしまいますが、実際のところオラにゃん系でとても気がが利く方であり、途中から親しみをもって接してくれるようになりました。常連となりたい魅力がこの店にはあります。

2017年でトップクラスに素晴らしいレストランでした。非常に個性的ではあるがとんでもなくうまい。人生で一番の和食かもしれません。ごちそうさまでした。

■写真付きのブログはコチラ→ http://www.takemachelin.com/2017/09/kadowaki.html

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4位

銀座 きた福 (銀座、内幸町、日比谷 / かに、日本料理、すっぽん)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥30,000~¥39,999

2017/11訪問 2019/08/30

ぬわーーーーっっ!!

当店は全て個室の完全予約制。しかもその個室が3つしか無いため、1日に対応できる客が極めて限られているのです。

大きな火鉢が部屋に持ち込まれ、おもむろに餅を焼き始める店員。はて?前菜におもち?と訝しんでいると、「ぬわーーーーっっ!!(パパス)」マッチ箱サイズのカラスミがドカンと挟み込まれていました。これは餅ではなくカラスミそのものである。海苔の香りも良い。先頭打者満塁ホームラン。

ねぎま鍋。「ねぎ」はネギ、「ま」はマグロ。江戸時代に江戸の町人たちの間で、脂の乗ったトロをいかにさっぱり食べるか、という工夫から生まれた料理。そのまま鮨にしてしまえば1貫1,000円は下らないトロットロのトロ。適度に脂が抜け、口の中でホロホロと崩れ行くマグロ。ぐわー美味しい何て贅沢な鍋なんだ。出汁もネギも旨い。今後一生ねぎま鍋しか食べれないと神に宣告を受けたとしても、そんな人生も悪く無いかなと納得してしまいそうな味覚です。

金目鯛はカブのソース。なるほどカブをソースのように扱うのもアリですね。欧米系のシェフが見れば喜びそうなアイディアです。

「さっき航空便で北海道から届いたばかりです!いやあ!間にあって良かった!」と嬉しそうにタラバガニをプレゼンテーションするタラバガニ職人。4キロはあろう特大サイズ。これを3人で食べきるだなんて幸福の極み。

厚さ5ミリはあろう恐ろしく太い包丁でバッキバキに解体。これは圧倒的なエンタテインメント。手際が良いを通り越して恐怖すら感じるスピード感です。劇場型のレストランなど比較にならないほどの迫力。2017年で最も記憶に残ったシェフズテーブルです。

刺身は流水で少し華を開かせしっかりと水を切ってから頂きます。なんなんだこれは。とにかくフレッシュで甘い。醤油をちょこんとつけると、よりカニの甘さが引き立ち蜜のような多幸感に包まれます。

少し茹でてレアの状態です。甘味と香りが増しました。同一素材だというのに魔術的な味覚の変化です。

もういっちょレアで。繰り返すが旨い。私は決してこのカニの旨さを過大に鼓吹しているのではなく、心から本当に美味しいのです。

もう少し火を入れてミディアムで。香りや甘味はもちろんのこと、旨味も増したような気がします。蟹って不思議な素材だなあ。

タラバガニ職人は腕まくりをし、「余すところなく食べていただきます!」と鼻息が荒い。こういった作業は全てつきっきりの彼がこなしてくれるので、『カニは旨いが会話が無くなる』という状況が生じないのもいいですね。

最も太い部分は焼き蟹にて。とにかく香りが豊かであり、「他のフロアから苦情がよく入るんですよねえ」といたずらっ子のような表情をみせるタラバガニ職人。

「ぬわーーーーっっ!!(パパス)」。鼻血が出そうなほど官能的な味わいです。豊かな香りからある程度の美味しさは覚悟していましたが、ここまで圧倒的な味覚とは。

胴体部が茹で上がりました。真っ赤な外観が食欲をそそります。

心臓。ひとつしかないのですが「今日は○○さん(私の名)のための会なんだから」とお譲り頂きました。牛や豚のハツとは似ても似つかない味わいであり、カニの身を凝縮させたような風味で面白い。

ふんどし。カニにおける隠れた珍味です。新鮮な個体でないと中々喉を通らない風味だそうな。なるほどカニとは思えないほどモチモチしてある種、貝柱のような食感です。

ボイルした身をカニ酢につけて一気にかっ喰らう。カニ酢に滲み出るエキスも旨い。オーラスは残ったカニ酢と共にカニのエキスを余すところなく飲みきりました。

ゴハンが炊きあがる。意表を突いて、カニ飯ではなくイクラごはんです。ピカピカと輝く炊き立ての白米に、塩漬けのイクラをジャブジャブと注ぎ込む。何この解かり易さ最高かよ。

お椀もイクラに負けず濃厚。なんと迫力のあるサイドメニューなのでしょう。

イクラが尽き果てた後は牛肉の牛肉のしぐれ煮で追い討ちをかける。カニやイクラに影を潜めてはいますが、この小鉢も相当に旨い。芳醇で簡潔。恐らくは和牛の極めて良質な部分を用いた料理でしょう。

アイスモナカに挟まるのは蜜のようにトロけるリンゴ。レンコン餅も新しい食感と風味を演出します。

いやはや、圧倒的な迫力とスピード感に満ちたランチでした。とにかく楽しく、旨い。問答無用に旨い。脊髄反射で旨い。いずれもシンプルな皿であり、これらは素材に属し、料理には属さないかもしれません。しかしながら限界効用を突破してしまうほどの勢いがこのお店にはある。

恒例行事として、その年のベストレストランを選出する試みがあるのですが、その中に含めようか本気で悩んでいます。ううむ、この店をベスト3に載せてしまうのは反則のような気がしますが、その欲望に抗えない自分もいる。困ったな。東京は味覚の遊園地だ。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/11/kita.html

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5位

SUGALABO (神谷町、六本木一丁目、赤羽橋 / イノベーティブ、創作料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
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  • 使った金額(1人)
    - -

2017/02訪問 2017/03/03

業態が違う

スガラボ。アイアンシェフ(新料理の鉄人)フレンチの貴公子須賀洋介。ジョエル・ロブションの愛弟子であり東京・ラスベガス・ニューヨーク・台湾・パリで陣頭指揮を執った後に日本で独立と、全盛期の徳川のような煌びやかな経歴です。

当店はあくまで「ラボ」であり、サン・セバスティアンの実験室付きレストランのような位置づけなのでしょう。スタッフ総出で日本各地の生産者を駆け巡り、実験室で試行錯誤する毎日であるため、営業日数が限られています。当然に予約は紹介制かつ争奪戦。友人が運よく滑り込んでくれたので、彼を起点にグルメいつメンが集結しました。

入口はわかりづらいどころかお手上げです。店内での待ち合わせは難しいので、紹介者に連れて行ってもらったほうが良いでしょう。入店時には、まるで忍者にでもなったかのような錯覚を楽しむことができます。

テーブルセッティングは非常にシンプル。客単価40,000円を超える店としてはそっけないかもしれません。

料理は時価、ワインペアリングは12,000円と聞いていたので、お、そんなに酒は高くないのかと油断していると、シャンパーニュはペアリングに含まれておらず、そのシャンパーニュがものすごく高かったです。そもそも良い泡を揃えており、それぞれが強気の3倍超設定だったのでワインリストを手にした瞬間に冷や汗をかきました。

それでもやはり高い泡は旨い。ビオディナミのピノ・ムニエ。きめ細かい泡立ちが心地良く、複雑なフルーツな香りとボリューム感。酸のキレが良く抜群の辛口であり、見事な食前酒です。

アミューズ。生地は京都の有名な最中屋さんのものとのこと。

初っ端から伝家の宝刀、生のカラスミです。ううむ、これは酒飲みにはたまらん一口。出だしから男性陣の心を鷲づかみです。これを箱詰めしてバレンタインに貰いたい。

アツアツのうずまき状のパイ生地には新タマネギのペーストがみっちり。大地の甘味。この時点で満足ですこのお店は本物です。

ふきのとうは苦味が強く大人の味。素材のパワーが丸見えであり、先のクリストフ・ミニョンにぴったり。ワインで流し込むと、皆、思った通りだという顔をする。

イタリアで修行した職人が手がける国産の生ハム。1~2枚はそのままでシャンパーニュと共に、お楽しみはゴハンと一緒に食します。いいなあこういう自由な発想。やはり日本人と米は切っても切れないですね。

鳥取の松葉蟹に噴火湾のウニ。カニとウニの味はまあ想像がつくのですが、ジュレが感動的に美味しかったです。刺すような思い切りの良い酸味が海の豊かさを引きたてる。食材と調理が完璧なバランスをみせる見事な一皿でした。

あわせるワインもピッタシカンカン。鋭い酸味と若干の苦味に二重丸。

噴火湾の蝦夷鮑。肝のソースに悶絶。このソースに突き落とされて溺死しても諦めがつくほどの味わい。味覚の切り込み隊長は広島産の皮ごとレモン。苦味が肝の旨味を際立たせ、これまたパーフェクトな取り合わせでした。

サヴニエールで最も注目を集めている造り手。独特のミネラル感に溢れ、完熟した果実を想起させるふくよかさ。酸も綺麗であり、先の肝ソースと抜群の調和をみせてくれました。

さりげなく置かたパンも限りなく美味しい。噛み締めるたびに小麦の旨味滲み出る。

秋田の比内地鶏にフォアグラのつくね、雪国舞茸やセリを含んだきりたんぽ鍋。具材ひとつひとつはハイレベルなのですが、スープはもう少しアタックが強くてもよかったかもしれません。バカリズム似のフォアグラ通もやや首を傾げていました。

私は洋食時に日本酒を飲むことを好まないのですが、それでもやはり先の鍋には日本酒。納得感のあるワインポイントリリーフです。

北海道のアンコウに原木しいたけ、菊芋チップスにちりめんキャベツ。いちいち素材の味が濃く存在感が立っています。そしてそれらを指揮者のように取りまとめるソースソースソース!変わった料理や食材に稀少感を組み込むのはよくある手口なのですが、当店は何よりもフレンチの本分であるソースを重視しているように感じました。

コクのある料理には樽の強いムルソー。バターを中心とした乳製品の香りが響き、マリアージュの極みです。

バシバシとトリュフを削りまくる。たきやにおける「え、そんなにトリュフ削って大丈夫?」的な空気感に満たされます。

秋田の黒毛和牛のサガリ。あまりの美味しさに一同押し黙ってしまいます。メインでここまで美味しいのは珍しい。京筍の繊細な味わいとコッテリとしたグラタンの深み。トリュフの香り。卵の優しさ。濃密なソース。

メインが美味しいお店って意外と少ないんですよね。徐々に満腹になっていくため客側はテンションを保てなくなり、結局出てくるのはどの店も代わり映えしない肉。そうであるのが普通なのに、当店はこの期に及んでまで客を唸らせてくれるのです。

ワインは奇をてらわずに藤川球児のような直球勝負。要するにこういうことがボルドーだ、と言わんばかりの味わいです。

料理はさることながら、ワイン選びもすごいなあ。ソムリエがきちんと料理を理解してる。チームで取り組んでいるからこその完成度。

ここでカレーを出すのはリアルチートでしかありません。ズル過ぎる美味しさ。ソースの味は想定の範囲内だったのですが、ライスがとんでもなく旨かったです。和の料理人は一度当店に勉強に来るように。

最初のデザートは愛媛の様々な柑橘にバジルのアイス。柑橘は紅まどんな・デコポン・ブラッドオレンジ・エトセトラエトセトラ。四国の酸味が百花繚乱。

ここまでイチゴを前面に出したデザートは珍しい。切って出すだけで成立するほどの品質のイチゴに、さらに手間隙をかけています。ルバーブの食感も楽しく作りたてのバニラのアイスの味も濃い。

フランチャコルタで〆。味の調和もさることながら、見た目のハーモニーにも納得する。記憶に残った1杯でした。

トイレが面白い。取調室のようなマジックミラー仕立てであり、トイレから店内を覗き込むことができるのです。

焼きたてのマドレーヌはひとり一列(5個)と大盤振る舞い。品の良い甘さをパクパクと楽しんで一気食いしてしまったのですが、「アンタよくそんな食べれんな」と皆に引かれました。そう、当店は一皿一皿のポーションがしっかりしており、全体を通してかなり量の多いコースなのです。

面白いプレゼンテーションで出てきたのはプリンちゃん。

やはりこれもプリンそのものが旨いのは当たり前であり、引きたて役のカラメルの完成度が見事です。香りが良く胃袋を押し広げ、なんだかんだで全員完食。

ハーブティで内臓を休ませる。そうだよなあ、ここまでたっぷりに濃いコースの〆はコーヒーじゃないよなあ。圧倒的にコーヒー派の私でさえも合点がいく締めくくりでした。腹が減らない幸せを噛み締めながらごちそうさまでした。

ロゴと共に皆で記念撮影。シェフも気さくに挨拶にきて下さりました。なんでもご実家は名古屋でフランス料理店を営んでいるようです。最近名古屋に行く機会が多い私にとっては僥倖。一度お邪魔してみたいと思います。

お土産のフィナンシェ。ベースとなる生地の美味しさが完璧。弾力のある小豆の使い方が見事でした。

噂に違わず素晴らしいお店でした。皿の上だけで評価すると一番好きな料理かもしれません。素材が強くベースとなる調理技術が確かであり、遊びがあって、バランスも取れている。挿し色というか、アクセントの妙技も印象的。それが全体を引き立たせ料理を記憶に留めさせるのです。火遊びはするけれども全てをまとめ上げる能力。どの皿も本当に美味しかった。

一方で、一緒に行く人を選ぶお店だと思います。非常にカジュアルなお店であり荘厳さに欠け、人によっては全くアガらない空間かもしれません。ジーンズでもOK。サービスも属人的でアドリブが強く、日体大の集団行動のような一糸乱れぬおもてなしを窺うことはできませんでした。

したがって、異性を口説く類のお店では決してありません。記念日使いも違う。今回のように、食道楽の仲間と訪れるのがベストでしょう。これは決して当店を否定しているわけではなく、業態が違うと述べているだけです。ネット上のあげあし取りたちはいちいち炎上させないように。

最近は奇をてらっただけで全然美味しくないお店が赤字国債のように乱発され続けているので外食業界の将来を憂いていたのですが、当店のように現実を直視した理想主義であるお店もきちんと評価されていることに溜飲が下がる思いです。

こういう店が料理界を挑発すると、世界のレストランのクオリティが上がる。意外性のみを追求するのはもうやめて、当店のようにまずは「美味しい」という料理の核心に肉薄する料理人が増えることを期待します。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/01/sugalabo.html

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6位

Ysm (外苑前、表参道、明治神宮前 / フレンチ、イノベーティブ)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2017/11訪問 2017/12/22

アンティムッファ!

オッサン4人での食事会なので、泡は当然にボトルで参ります。

アミューズは南フランスの郷土料理の再構築?豆を潰した何かでしたが、それほど印象には残りませんでした。

前菜はスープドポワソン。へ?どこが?スープドポワソンってヌキテパのアレみたいにドロドロのやつなんじゃないの?その疑念はあまりの美味しさに打ち砕かれました。薄緑がかったクリアなジェルがまさに魚のスープの味覚であり、悶絶するほど旨いのです。どうしてこんなにも透明なのに魚介の風味が響くのか。ニンニクマヨネーズ(ブイヤベースのソースとして定番)もキッチリと添えられており、それはそれは見事なスープドポワソンの再構築でした。ベルギーのキャビアもオマケとして贅沢で嬉しい。

白はちょっと捻ってニュイサンジョルジュ。パンは低糖質のブリオッシュ。なるほど確かに抵糖質かもしれませんが味わいはスカスカ。私は糖尿病患者ではなく人間ドックオールAであるため、私にとっては物足りないものでした。

オマール・ブルー。週に2度もフランス屈指の高級食材を楽しめる私は幸せものである。先のスープからは一転してクラシカルな調理であり、正統的なビスクのソースがことさらに旨い。

アーティチョーク。上に乗っかってるフニョフニョはフレッシュなフェンネルとのこと。フェンネルって鰯とのパスタで食べる印象なので、このような形を見るのは初めてかもしれません。料理としての味はソースはクラシックで好きなのですが、アーティチョークについてはそれほど記憶に残りませんでした。

南仏推しのシェフに敬意を表し、パレットのシモーヌをリクエスト。ピーチやアプリコットの香りが主体。白ワインとしてはかなり複雑な風味であり余韻も長い。

ヒラメです。魚そのものの味わいは中くらいだったのですが、ソースにコクがあり実にクラシック。ソース原理主義者の私にとっては実にタイプな一皿でした。先のワインにもピッタリです。

メインはアンティムッファ牛のフィレ肉。アンティムッファ牛って何やねん、なのですが、内藤善夫さんという乳酸菌マスターがいて、彼の乳酸菌「アンティムッファ株」で育った大変ありがたい牛だそうな。味わいはティエリー・マルクスで食べた和牛フィレ肉に酷似。柔らかく、攻撃的でなく、円みがある、極めてアンティムッファな肉質でした。

アンティムッファ牛そのものも旨いですが、個人的にはボルドレーズソースに拍手を送りたい。このシェフの、ソース文化を大切にしたいという姿勢、大好きです。

ボルドーの中で何が良いかとソムリエに相談するとコチラをご提案頂きました。前菜の時点で注文しデキャンタージュして頂き、アンティムッファ牛の到着の頃にはじんわりと風味が花開き、アンティムッファ牛にピッタシカンカン。参加者全員が恍惚の表情を浮かべアンティムッファ状態へと移行。

デザートは割に普通。これまでの派手な料理から一転して飾り気の無い一皿です。

食後の飲み物はハーブティーを選択。胃袋が洗浄されるというか、五臓六腑に休息を促す慎ましやかな1杯です。

小菓子はお誕生日プレート仕様。嬉しいですねえ。バースデーのスペルがグチャついているのは私がマカロンを転がしてしまったためであり、全て私に責任があります。

クリーン・ヒットなお店でした。お邪魔する前の下調べの際、ホームページが妙に哲学的で胡散臭く感じていたのですが、出される料理は全て完璧に基本を押さえており目をつぶって食べても美味しいレベル。その上で創意工夫に富んでいるという、コンテンポラリー・フレンチの本懐を楽しむことができるお店です。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/11/ysm.html

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7位

プリンチピオ (麻布十番、赤羽橋、六本木 / イタリアン、ステーキ、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2017/08訪問 2017/08/30

何かの間違いだろう

食べログ4.05(2017年8月)と十番のイタリアンとしては最高得点です。テーブルのみ6卓12席と小さな店内。21時以降はバータイムであり予約なしアラカルト注文もOKとのこと。

ボトルの泡で乾杯。グラスワインも取り揃えられているのですが、当店はボトルワインの値付けがそう高くなく、よく飲むふたりであればボトルのほうがお得でしょう。

アミューズまでオリーブでつなぐ。このオリーブが中々に美味しくオイルも清らかであり、清潔で美しく健やかな毎日をめざす味わいでした。

グリッシーニは普通です。

先頭打者はトマトの冷製スープにブッラータ(モッツァレラに似たチーズにクリームが練りこまれたような食感のフレッシュチーズ)。新鮮で濃密なトマトの酸味が爽やかで、夏の暑さを吹き飛ばしてくれます。

石鰈のカルパッチョ。イタリア料理屋でカレイを生で食べるのは初めてかもしれません。コリコリと歯ごたえがあり逞しい味わい。白桃や青トマト、マスタードとの取り合わせもセンスが感じられ、全体として深みのある清潔感を覚えた一皿でした。

パンも美味しい。ああ、パンって小麦からできてたんだよな、と再認識できる小麦の厚み。あまりに旨く、都合3個もおかわりしてしまいました。

鱧のフリットに大麦のリゾット的なもの。私は鱧という食材についてそれほど興味はないのですが、当店のシェフの手にかかれば魅力抜群に見えてきました。

スープにはジロール茸の滋味が溶け込み、それが浸み込む大麦も名脇役。サマートリュフの香りが心を漂白し、素晴らしいお皿でした。

カルボナーラの冷製タリオリーニ(卵を使った平打ちパスタ)。ただのカルボナーラとは異なり、ペースト状のトウモロコシと粒状のトウモロコシが波状攻撃。コンソメのジュレも味わいに変化をもたらし、サンダニエーレ産の生ハムがクリアな塩味を補完する。それほど高い食材を用いているというわけではないのに、この美味しさはやんごとない。

ピチのアラビアータ。ピチとは小麦粉と水だけから作られる、丸くこねた太麺パスタです。讃岐うどんのようにコシがあり食べ応え抜群。様々な肉のラグーと白茄子が渾然一体となって迫り来る。

赤ワインのグラスも色々あったのですが、やはりボトルがお得だという結論に達しました。「色々説明して頂いたのに申し訳ありません」とサービスの女性に詫びると「いえいえ、ワインあるあるです!それにしても見事なチョイスです!」と胸が温まる一言。彼女は微笑むだけで周りのものがぱっと輝くような雰囲気の持ち主であり、サービスの鏡です。

メインは鹿児島県産の豚ロースを炭火焼きで。中勢以が手がけた熟成であり、巷の下品ななんちゃってエイジングとは一線を画します。旨味が増した豚肉は赤身はもちろん脂身まで旨い。イェニチェリのように勇敢なアタックがあり、じっとりと口に残る甘い。メインの肉でここまで美味しく食べさせるお店はなかなかありません。

私が選んだデザートはティラミス。カクテルグラスに敷き詰められており、たっぷりの酒とたっぷりのナッツが加わったビターな逸品はまさにカクテルのようです。完全にオトナ仕様。

連れは長野県産ブルーベリー。

お茶菓子とエスプレッソで〆てごちそうさまでした。

お会計で驚き。私は37,500円、連れは33,000円と予想したのですが、正解は30,000円と少しでした。何かの間違いだろうと伝票を見ると、食事はたったの6,800円!こんなに有意義な6,800円があるか?十番で費用対効果が一番良いイタリアンはカーザヴィニタリアと信じていたのですが、その頂点を軽々と飛び越えていきました。

料理も全てがきちんと美味しい。素材の味が良く、味付けも申し分ありません。ただし男性的な印象の調味が多く、キュルンキュルンしたOLちゃんには重く感じるかもしれません。

酒もそう高くなくサービスも申し分なし。完全無欠なお店でした。もっと早くに訪れておけば良かったなあ。何度でもお邪魔したいお店です。オススメ!

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/07/prin.html

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8位

鳥かど (目黒、不動前 / 焼き鳥、鳥料理、日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2017/05訪問 2017/06/28

マグマのような暴力性

ハワイから帰国し、最初に迎えるきちんとした食事。和食でも食べに行こうかなあと思っていた矢先に「今夜、鳥かどの予約があるんだけど、行けなくなったから、代わりにどう?」との連絡。渡りに船とはこのことです。

権之助坂を下り、目黒川を渡ってすぐ右の路地。前の店舗のものでしょうか、ビストロのような入り口に戸惑います。

6年連続ミシュラン1ツ星、食べログ焼鳥部門日本一の声価を保持し続ける「鳥しき」。その分店が2017年1月に満を持してオープン。

警抜なインテリア。私の知る限り世界で最もカッチョエエ焼鳥屋です。コの字型のスタイリッシュな内装は81を想起させる。

ビールで乾杯。小さなグラスで680円と割高ではありますが、お店の格から考えればこんなものでしょう。

「○○(予約してくれた女の子の名前)のやつ、今夜の予約取るために150回ぐらい電話したらしいですよ。かわいそうに」彼女のためにも心行くまで楽しみます。

お通し。一葉落ちて天下の秋を知る。素晴らしい野菜の群れである。玉ねぎの甘さよ。肉味噌まで完璧に美味しかったです。

ササミとモモ。ササミは半生を通り越して95%生ですね。表面数デニールに軽く火をとおしたのみ。生焼け原理主義者の私には堪らない調理です。

一方、モモはしっかりとした焼き加減。香ばしく、それでいて瑞々しい。火入れには頂点があるということを知らしめる1本でした。

脇に大根おろしがおかれ、グラニテのように口の中をサッパリさせてくれます。

私は日本酒、連れはグラスワイン。いずれも800~1,000円程度です。

かわ。あまり好きな素材ではないのですが、初めて美味しいと思えました。焼き目にグラデーションがあり、カリカリからグニュグニュまで様々な食感を楽しむことができます。

すなずり。サックリとした歯の入りにザラザラと印象的な舌触り。美味しい。思い切りの良い味付けに酒が進む。

ポテトサラダ。一般的な冷やしたタイプではなく、温製です。敷かれているのは確かな味のそぼろ肉。鶏への拘り。信念が感じられます。

ししとう。最高品質。素材そのものが良く、奇をてらわずシンプルな調理は好感が持てます。

軽い串には軽い酒。美味しいですね。個人的に獺祭はとても好きなのですが、メジャーになりすぎて注文するのは逆にダサいみたいな風潮になっているのが残念。

つくね。サイコロキャラメルの角を円くしたような面白い形状。なんこつが少し加わりコリコリとした食感。個人的には粘度のあるタレと卵黄で食べるほうが好きなのですが、まあそれは人それぞれ。

レバーペーストのパテ。最中の生地というかミルクせんべいというか、羽根のようにかるい外皮にこれまた軽い味わいのパテ。レバーが苦手な人はこれを食べるといい。

うずらの卵。万亀の火入れとは対極をなし、卵黄はトロトロに液状化現象。半熟を至上とする私には最高の1本。どうやって調理するんだろ、これ。

連れはワインをグラスで適当に注文し、ブラインドで飲んで何かを当てる遊びを続けているのですが、ソーヴィニョン・ブランを用いたピノノワールの赤という珍しいワインに巡りあうことができました。

澤屋まつもとの守破離。色があり、微発泡。ガツンと爽やかで芳醇な香りです。

ハツ。猛々しい味わいにノックアウト。これは本当に美味しかった。野性味がありつつも、繊細。鶏さんありがとな。

ギンナン。ホクホクとした食感で箸休めにちょうど良い。当店は鶏肉に限らず、脇を固める食材まできちんと美味しいのが凄い。

よだれ鶏でしょうか。恐ろしく新鮮でピュアな鶏肉。まるで刺身のように繊細。そこへマグマのような暴力性を持つタレをちょこんとして味を開花させる。本日一番のお皿です。

日本酒が止まらない。全種類制覇してしまいそうな勢いです。連日満員御礼で量は出るのだから、もう少しラインナップの拡充を願います。まあ、先のワインを見る限り、それほど酒に興味がない店なのかもしれません。

食道。密度高くギュウギュウに串が打たれており、独特の弾力性と共に食べて楽しい1本です。野趣溢れる脂の1滴1滴まで美味しい。クセになりそうな味。

手羽先。これは普通。食べ辛い。当店に限らずですが、手羽先って串に刺して食べる必要はあるのか、という疑問が常に脳裏につきまとう。

ちぎも。オールデンのようにボッテリとした外観。光沢の良さに思わず見惚れてしまいます。ただし味は期待したほどではなく、そこそこ美味しいレバーといったところでした。

これにて日本酒コンプリート。

〆のゴハンに親子丼かウドンかを選ぶことができるのですが、ひとつづつお願いして取り皿で分け合います。今、「鶏皿」と誤変換されてわろてる。

親子丼。絶句するほど旨かった。こういう普通の家庭料理をプロ中のプロに作ってもらうの大好き。卵の質と火の通り、鶏肉の弾力と肉そのものの味の濃さ。全てが完全に調和し、小泉純一郎と小泉進次郎のような芯の強さを感じました。

うどんは稲庭タイプ?決してオマケのサイドメニューといったことはなく、鶏ベースのスープが実に美味しい。麺も中々凝っていて、麺そのものが美味しい。いやはや大したお店である。

ちなみに先の鶏スープ、親子丼を注文した場合は別皿で頂けます。

しっかりとした基礎に裏打ちされた素晴らしい焼鳥屋でした。なるほど現代の焼鳥業界のヘゲモニーを得たのは当然の成り行き。おまけに安い。ひとりあたり11,000円で済みました。結構飲んでこの値段ですから、料理の値段は6,000円程度ではないでしょうか。その値段でここまで美味しい料理を提供できるのは見事です。

従業員の立ち振る舞いは改善の余地あり。飲み物を注文しても忘れられたり、所作が優雅でなく常に切羽詰った雰囲気であったりと、優雅さに欠ける部分が多々ありました。

客層は独特。本気のうまいもん好きが集まっていると印象。ここで働くと鍛えられるだろうなあ。

いずれにせよ、デビュー半年でこのレベルにまで仕上がっているのですから、今後が楽しみで仕方がない。また来ます。

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9位

QUAND L'APPETIT VA TOUT VA! The kitchen&Wine (麻布十番、赤羽橋、六本木 / ビストロ、ピザ、インドカレー)

2回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2019/05訪問 2019/05/11

筋が通っている

麻布十番で、いや日本で最も好きなフランス料理店のひとつ「カラペティ・バトゥバ(QUANDL'APPETITVATOUTVA!)」。1年半ぶりの訪問です。

ワインは全てお店にお任せ。「乾杯用に、泡を半量ご用意しますねっ」と軽快なソムリエ。当店は食事の量やワインの量、サービスの濃度(?)まで自由自在。ゲストの趣味嗜好に完璧にチューニングしてくる自由度の高さが見事です。

アミューズはシラスと卵をクルっと巻いたものにキャビアをトッピング。程よい塩気と仄かな苦味。最初の一口目として完璧な一品でした。

今夜はアラカルトで注文。人数に合わせてうまく量を調整してくれるのが当店の美点。初ガツオの藁焼きにデコポンや深谷ネギなどを彩り良く組み合わせ、健康的な味覚へと仕立て上げます。カツオ表面の旨味や苦味が大人の味わい。

新玉ねぎのスープにイワシのフリットをトッピング。これが玉ねぎか、と驚くほど糖度が高くコクも強い。まさに大地の恵みであり、本日一番のお皿です。イワシのフリットも旨味が強くワインのお供にバッチグー。

メインはラム。結構な脂を湛えた肥満児であり、見た目以上に食べ応えがあります。ジューシーな肉質はもちろんのこと、付け合わせのキノコなども外さない美味しさ。

デザートはチョコレートのスフレに焼きバナナのアイスクリーム。丼いっぱいのスフレを独り占めできる幸せさといったらない。焼きたてのスフレはマグマにドロっとしており、上質でふくよかな甘味が心地よい。焼きバナナのアイスクリームはスフレとはまた違ったベクトルの甘味であり、迫力のある1皿でした。

奇をてらわずオーソドックスに美味しい料理、察し良く付かず離れずなサービス、洒脱な客層、驚くほどリーズナブルな価格設定、長所を挙げればキリがありません。姉妹店の「ALTRO!(アルトロ)」も似たような空気感なので、やはりオーナーの哲学に筋が通っていることの証明でしょう。オススメです。

■写真付きのブログはコチラ→ https://www.takemachelin.com/2019/05/quand-lappetit-va-tout-va.html

入店して思わずため息。内装がカッコ良いのです。最近流行のコの字型のカウンター。厨房はカウンターの奥にあるのですが客席からも見えるようになっており、料理の鉄人さながらにライブ感を楽しむことができます。

テーブル席が増え、グループでの食事もし易くなりました。半個室らしき空間も見えたので、会食などにも良いかもしれません。男女のつがいがカウンターにズラりと並び、互いに品定めをされているようでやや気恥ずかしい。

泡をボトルで注文し喉越しを楽しみながらじっくりと料理を選ぶ。このあたりフランス本国におけるレストランと流れが同じであり、フレンチ・ラヴァーが萌える瞬間です。

コース料理もあるのですが、やはりグルメは自分の好きなものを好きなだけ食べたいもの。このメニューに記載されているものは全て2人前の料金およびポーションであり、ひとつ選べば2人で食べ易いように取り分けてくれます。

最初の一口はパイ的なもの。一口サイズのグラタンのようであり、ミスドのホットパイのような安定した味わいです。

秋刀魚のスープ。内臓などは取り除いておらず、そのまますりつぶしたハードボイルドな逸品。もったり。ザラり。液体というよりも半固形の離乳食のような食感です。そして期待していた通りの濃厚な風味。脂と旨味、苦味など複数の構成要素がハリケーンのように押し寄せます。

パンは黒味がかったストロング系のパンであり、小麦の風味がしっかりと伝わる私好みのタイプです。

何倍もの時間をかけてストレス無く育てたマス。なるほど健康的なマスであり、シャケのようなクドさがなく清澄な味わい。備え付けの柿と共に食べることを推奨されたのですが、これはあまり意図がよくわからなかった。単体でポンと並べるのではなく、ピュレなどにして自然に口に届くスタイルのほうが良かったかもしれません。

ズワイガニとアボカドにコンソメジュレを載せ、ウニをトッピング。伝わってきます。食べる前から美味しさが伝わってきます。海を感じさせるカニの旨味にトロりとしたアボカドの食感。濃い目のコンソメが全体をまとめあげ、濃厚なウニがスマッシュを決めてくれます。

メインは鶏肉のパイ包み焼き。ドカンとしたパイ包み焼きを想像していたのですが、コロンと愛らしく上品な外見。トリュフのソースの香りが脳天を刺激し食欲を掻き立てます。

味覚は粗めに挽いたつくねという印象。皮目近くの脂の乗った肉の醍醐味まで余すところなく用いられており、トリュフのソース、パイのバターと共に渾然一体となって味蕾を刺激します。「あたしのパイ包み焼きの印象を覆した」と、肉料理をそれほど好まない連れもご満悦の様子。

2本目のワインはモルゴン。酸味が強い一方でややヘヴィ。ちょっとメインには合わなかったかもしれません。しかしこれはソムリエと相談せずワインリストで独断専行に決め打ちした私の責任である。

お会計でぶったまげる。ふたりの合計金額が驚きの21,000円。フランスのワインを2本飲んで(フランスワインは基本的に割高)この金額で済むのは奇跡。近所のフレンチで言うと、麻布れとろやラ・リューンのような満足感があります。

席は全て予約で埋め、1回転目が完了した後もひっきりなしにフリーの客が訪れます。開店から閉店まで常時満席状態。名実共に復活です。火災については不幸以外何物でもありませんでしたが、そこは当店の歴史を振り返った際のアクセント程度と前向きに捉えたい。

「十番っぽい、美味しくてオシャレなお店はどこ?できればそんなに高くなくて」と問われれば、いの一番に勧めたいお店がここ、カラペティ・バトゥバ!です。

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  • (説明なし)
  • (説明なし)
  • (説明なし)

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10位

レストラン アラジン (広尾、恵比寿 / フレンチ)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥10,000~¥14,999

2017/03訪問 2023/01/24

鼻息が荒い

「料理の鉄人」において勝率8割高を誇る坂井宏行を鶉料理で打ち破ったジビエの達人は「日本のジビエはフランスの真似事に過ぎない」と鼻息が荒い。

泡のボトルは8,500円と、このクラスのレストランとしてはリーズナブル。

最初にクッキー(?)が出されました。フォアグラの香りとバターのコクが通じ合いコレ単体では美味しいのですが、初っ端からマッタリとし過ぎてお腹が膨れてしまう向きもあります。

北海道産の肉厚なホタテをセップ茸と共にキャベツで包んだもの。ホタテはやや火が通り過ぎる嫌いがあるものの、素材の味が引き立ちます。ソースの酸味が良い。ポーションも確立されており、今何を食べているのかはっきりと理解できる料理でした。

連れはカリフラワーのムースにキャビア。これは凄い。絶対的なキャビア量としては先日のロブションを凌駕するのではないか。

パンは普通なのですが、バター代わりのリエットが秀逸。量もケチケチしておらずたっぷりと塗りたくり放題。ひしひしと伝わる北島亭感。やはりこの世代、すなわちコートドールやヌキテパあたりのシェフの料理は直線的で大好きだ。

限定食材のオマール。そう、当店は食材の仕入れが限られており、「オマールは5食、カリフラワーは2食…」のように煽ってくるので、どうしても自由に食べたい場合は開店と同時の時刻を予約しましょう。

料理は味噌が素晴らしく一日中舐めていたいほどの濃厚さ。パスタはグズグズとして好きじゃなく、身の調理もやや強引に感じたのが残念。

メンバーが追加した毛ガニのロワイヤル。これもまた濃密で濃厚。人の皿ながら思わず舌なめずりしてしまいます。

皆、ボリューム感のある魚料理をチョイスしていたのでワインにも負けず劣らずの力強さを求めます。Domaine Bouchard Pereet Fils Meursault Les Clous。コッテリとした樽の味わいが舌に迫る。海老料理にピッタリ。値付けも良心的で、すっかり恋に落ちてしまいました。

スペシャリテの鶉のオーブン焼き、ワイルドライス詰め。おお、「料理の鉄人」で観た料理が目前に。立ち込める脂の香りとカレーの風味。表面こそパリパリと印象的なナイフの入りですが、コンドームのように薄く弾力のある皮の旨さと言ったらない。モモ肉からライスに至るまでの食感のグラデーションにも大昂奮。鶉の繊細な味わいとキノコの野性味、ダイレクトな味付け。これは間違いなく本物のフランス料理です。旨い!

連れは鴨を選択。野性味溢れる香りがプンプン。鶉に比べると量こそ少ないものの、その凝縮感は想像に難くありません。

鴨の付け合わせであるグラタンも嫉妬するビジュアル。ううむ、この店には何度でも通い詰め、あらゆる料理を食べてみたい。

デザートにはリンゴの薄焼きタルトを選択。ふくよかなリンゴの甘味と爽快感。リッチなバニラアイスクリームも極上品。

礼儀正しいコーヒーも外しません。

ドライフルーツや小さい焼き菓子もご用意下さいました。いずれも派手さはありませんが、本質的に美味しい。最後の最後まで大満足。

奇をてらった最先端の科学技術や絵画のような現代料理とは一線を画し、質実剛健であの日あの時あの場所で何を食べたかの記憶がハッキリと残る料理です。季節とテロワールに寄り添うひたむきさ。シェフのフランス料理に対する精神性に敬服。また必ずお邪魔したいと思います。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/03/aladdin.html

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