5回
2018/06 訪問
通常利用外口コミ
この口コミは試食会・プレオープン・レセプション利用など、通常とは異なるサービス利用による口コミです。
大人の棲む街。
「MSSBくんな、年取ってきてキツいのは、酒でもヲンナでもなく、食べすぎと寝不足だから、気いつけや」
…敬愛するお取引先の大旦那が、こちらが50を超えた頃にご教示くだすったお言葉。
伺ってから更に歳月を経つにつれ、イエス・インディード(しかり、しかり)と首肯するばかりの日々である。
さてこの大旦那、過食は戒めるものの「うまいもの」には目がなく、こちらがゴアイサツという名目で大阪に遊びに伺うと、あちらこちらと「得難いもの」を食わせる店に連れていってくれ、こちらは傍でうまいうまいとニコニコしていればいい、という間柄。
こちらの店も数年前、ご紹介賜ってから、一人でも出入りするようになり久しい。
今回は大旦那以下、ワタクシ含め四名で訪問。
大旦那の選択の下、クラレット(シャトー・カロンセギュールのセカンドだかサードでした)をすすりつつ、こちら自家製の分厚い生ハム*1 や断面の赤身が見目麗しいビフカツ*2 など銘々好きなものを取っては分け合ってつまみ、相変わらずの佳味に舌鼓を打つ。
と、
「食べすぎはイカんけど、肉ばっかりでバランス悪いのもよくないで」
という新たな大旦那の「ご指導」に基づき、糖質、炭水化物、でんぷんもチョイととろうという事になり、
・オムライス(ハーフサイズ)
・チャーハン(和洋中なんでも出てくるのが新地のレストラン・バーってモンである! )
を1つずつとり、これも分け合って食らう。
オムライスは昨今の、洟汁のような(失礼! )頼りないものではない、端正に焼き上げた薄皮づくりのたまごでくるりと巻かれており、中の米飯は橙色に染まっているものの、安直にケチャップに頼らず、(洋食的に)本格のサルサ・ポモドーロで軽く調味されており、外側にはビフカツにも用いられる、濃厚にしてキレ良いデミグラス・ソースが掛けられ、全体が引き締められてい、日の丸弁当に通じる、お遊戯しましょうチイパッパ的外観を裏切る「オトナの喫食にたえる」味わいに仕上がっている。
チャーハンの方も全体に調味料を抑え、具のいび*3 の食感と歯ざわり、甲殻類特有の風味をそれとわかるように前面に出しながら、アクセントにごま油の香りを取り入れているところに軽さと良いリズム・テンポが具現されていて、なんとも北新地的。空いてしまったワインの後にとった、甘味を加えぬジン・リッキーと調和し、腹への収まり具合も過剰でなく、食べ終わり、一同解散、余計なところに引っかかる事なく宿に戻り、服を脱ぎ、寝床に潜り込むと、あっというまに眠りにつき、旨いものの記憶が熟睡を促し、翌朝は渋滞なく目覚め、一番のエチゴ行きフライトに遅れる事なく空港にたどり着き、なるほど万事程よくというのは大事だネ、と、大旦那の叡智に再び感心しながらも、新地行ってハシゴもしないなんて、やっぱオレもイイトシこいてきちゃったな、はは。と、ほんの少しだけ悔しさを覚えない、事もない。
*1 *2 過去訪問時の別添シャシンを参照プリーズ
*3 エチゴ弁「蝦」の事。
2018/06/22 更新
2017/09 訪問
奥行きは有限だが、確かに地下にはある。
2100時。
都内で用向きを済ませ、新幹線を使い、堂島の定宿に着くと、腹がぐうと鳴り、夕食をとり損ねた事を思い出す。
半年ぶりの北新地。
フツーに食事を食わせる店は、そろそろオーダーストップの時間。
と、なれば、「食事も出す深夜営業のレストランバー」に足を向けるのが、道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©︎副島隆彦)である事、いうを待たぬ。
ビルの階段を降り、よっ! と小さい声が漏れる程度に重みのあるドアを開き、中にはいる。
こんぬつわ、ご機嫌いかが、と、愛想を振りまきながら、カウンタ席の隅に腰をおろし、渡されたオシボリを使うと、なんだか自分が、旅の果て、スウィング・ドアのついた酒場に足を踏み入れた西部劇の主人公にでもなったような気になる。
オモエバトークニ・キタモンダ
旅の酒場では、フレンチヴェルモットの炭酸割り、ノイリー・ソーダに決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば、こちらでロング・カクテルを頼むとMGKYSYNDCT(仮 ブランドのステンレス鋼タンブラーで供されるから、とは、ステマが過ぎるから黙っている。
そう思いながら品書きを開き、中を覗くと、
「腹は減っているが、あまり食う気はしない」
心持ちに気がつき、とは言え空酒は身体に良くなかろうと「本日のおつまみ」の中からクエの薄造りを選び、運ばれてきた皿から白身のおさかなを箸でつまみ、ポン酢に浸けて口に運ぶと、ハタ科特有のクニュリとくる歯ごたえ、上顎への当たりが妙に艶かしく、奥歯を使い、咀嚼すると、ジンワリと旨味が浮かび上がり、ここで甘味果実酒と分類されながらも、結構ドライなところに、炭酸でキックが補強された酒をグイと含むと、いよいよ旅情は高まり、「ここではないどこか」でたゆたうというのも、なかなか風流なモンだね、と、のんきなトーサンみたいなうわ言を呟かない、事もない。
尚、シャシンには、偶然二日後に、お取引先さんに「お呼ばれ」で再訪した時の御菜も含まれてます。牡蠣なんて気が早いっつーの! と思いましたが、もうSeptember 、Rのつく月でしたね。
荒淫イャーんのごとしもとい光陰矢の如し!
2017/09/16 更新
2017/02 訪問
新地スタイル
サンボアで引っ掛けた、ストラスアイラの食前酒で気持ちと胃が開き、「食う気満々」になり、北新地をひとりクルージング。
昼は京都で和食の弁当を使い、燗酒を飲んだので、「夜の部」は洋食っぽいものが欲しくなる。
と、言って、ステイクハウスは過剰だし、本格の西欧料理屋はおぢさんひとりで入るようには出来ていないし、なによりワインの気分ではない。
と、なれば、レストラン・バーが選択されるのは道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©︎副島隆彦)である事、いうを待たぬ。
普段は時分どきともなると、ドーハン客と個人客でほぼいっぱいになる店内も、土曜日のディナータイム、それもとば口だけにこちらの他はひと組の客のみ。しずかなものである。
ほぼ半年ぶりの訪問。
店主氏にこんぬつわ、やあやあ久しぶり、と愛想を振りまき、カウンタの端の席に腰を下ろし、歩いて少しだけ喉が渇いたので生ビール。
突き出しの妙に? 旨いレバーペーストを肴にひとごこち。
ひとごこちついたらノイリープラット・ソーダに決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすればドライマティニ程には強くないからヘベレケにはならず、ワインベースのスプリッツァーほど軽くはないから、ほどほど飲みごたえがあり、シャンペーほど高くはないので経済だし、とは、結局、吝嗇がアタマをもたげているだけだから、黙っている。
そう思いながら名物にして唯一、シンプルながら個性的であり、極めて「新地的」なオニオン・パフェをパクついては、その由来や作り方など聞いていると、ノンビリした気持ちになり、更にメニューにカキフライを見出し、注文すると、
「ひと皿に大振りのが五個つけなんですが、これは同伴のお客さんが分けっこしやすいようにそうしてますが、お一人ですから三つに調整しましょうか? 」
と、先方から提案があり、あな有難やと、それに従い、運ばれてきたものを口に入れると、ごく薄い衣は油ぎれがよく、ぽってりとした身にかじりついてみると、ひとつに小ぶりの牡蠣が二つ用いられており、噛み切りやすく、口の中で食べ物がいっぱいにならないところが程よく、更に咀嚼すると、牡蠣自体のものなのか、下味なのか、かなり塩気がしっかりしていて余りソースの必要がない=唇周りが汚れにくいよう作ってあり、あゝこれ、ホステスさんが食べやすいように工夫してあるんだなと想像しては、マニュアル式、或いは/及びISO9001的標準化された「おもてなし」ではない、長い飲食業サーヴィスの経験と知恵が下支えになっている店のあれこれの「気働き」に感服しない、事もない。
2017/03/04 更新
2016/09 訪問
再訪】これこそ円熟
久しぶりに。
新地で遊ぶ時の「ご馳走」とは、まさにこういうもの、というお手本みたいな御菜の数々を分け合ってちょびちょび。
ビーフシチューの黒褐色なソースのよろしさ、コクの乗りとキレは、やはり関西のものだよなあと感服。
あゝ満足満足と、思わず腹鼓を叩かない、事もない。
登録時201506月】
5年ほど前紹介され、御菜の出来栄えの非凡さに非常に強い印象を持ったが、以来なかなか再訪の機会を設けることが出来なかった。
が、今回縁あってようやく扉を開き、なかに入る。
新地にあって落ち着いた、外からは目立たぬ地下の店。
しかしなんというか全体に艶があり、しっかりとした食事を出す如何にも北新地的レントランバー。
当方のように酒と肴「だけ」目当ての酔狂なものは少なく、店の見込み通りなビフォーアフターな客が大半で、これがまた店内空気の匂いに華を添える。
どこにも書いてはいないが、いわゆるシロートヲンナとコドモ(失礼! )は出入不許というのを店内温度だけで示している、と、申すべきか。
一方、おぢさんには極めて居心地がよろしい。
カウンタのバーテンダー氏と相談し、初手は最近好みのフレンチベルモットの炭酸割り。
そして開店以来の名物だと思うドイツのフラムクーヘンに関西洋食的解釈を加えたようなオニオン・パフェを傍らにとり、品書きを眺めると、肉料理のそして魚料理の充実、酒精の揃い具合の妙が目を驚かせ、そして時間差でニヤリとくる。
大阪のレストランバーではビフカツに決めている。
決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。
もしあるとすれば歯が要らないほど柔らかいのに香りと味わいがリッチでウットリくるほどのフィレ肉の表面を、メイラード反応で苛めるのは気がひけ、キメの細かい衣と超絶濃厚深遠なデミグラスソースの仕事を見落とすのは余りにも惜しいから、とは、食通気取りの軽薄な、しかし切実な感覚だから黙っている。
そう思いながら酒をデュワーズのチルドハイボールに替え、肉にパフェに食らいつき、うまいうまいと目を白黒させながら、ドーハン関係の老紳士と年若い夜の蝶なお嬢さん方の軽妙な、しかし算盤ずくな会話に聴き耳をたて横目で伺っていると、あゝこれぞ風俗の爛熟、余裕というものであるなとイナカモンキー木登りさんもといお上りさん的に感銘を受けない、こともない。
2016/09/16 更新
気分にムラがある、否、有り体に言うと「かん症持ち」
だからその日、その時で食べたいものがコロコロと変わる。
加えてはしご酒の悪癖を持ち、「夜の部」に外に出たら、一軒で済ませると言うことがまず、ない。
と、なると、数か月前に予約が必須で、同時刻に全員同時スタート。
店主のオマカセ、コース、定食、ムニュ・デギュスタシオン、二時間がかりの腹いっぱいご馳走攻めには与しない
いやむしろ物理的に対応出来ないというのが合理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー(世界基準©️副島隆彦)である事、いうを待たぬ。
よって出入りする店が、その日の気分で一品一品好きに注文する事が出来、時間も大して掛からぬ蕎麦屋、おすし屋、洋食、割烹、小料理屋、そしてレストラント・バーと称する「軽食も楽しめる酒場」など、所謂「お好み」対応のそれらに偏るようになる。
これをオコノミークラス症候群という #いわねーよ
現代の食通諸兄に人気な
「ピタリと座れば黙っていても、豪華な食材がジャンスカ出てくるコスパいい店」
とは極北にあるところばかり。
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1845時北新地。
この飲み屋街のなかの「食べ物屋」は、界隈の需要(というかオトナの事情)から、基本「お好み」形式で、注文から提供までの時間が短く、皿の上は総じて
「艶があるがだいたいひと口サイズで箸で食べられる」
という店が多い。
こちらもそう。
好みの酒をとり、その日の「品書き」の中から、気分と身体の調子、腹の空き具合に合わせ、二つ、三つと気に入った皿をとり、或いは飲み、或いは食べながら、テキパキと、しかし心地よく寛ぐことが出来る、というのが骨頂。
初手のマティニを片手にメニュを熟読玩味
・真鯛のカルパッチョ
・牛ヘレのステーキ・レモン・岩塩・マスタード添え
・蝦とレタスの炒飯
鯛と炒飯はハーフサイズで、フィレは120㌘ほどを焼いてもらうことにする。
魚料理にはフレンチ・ヴェルモット「ノイリープラット」を炭酸割り。
肉以降はどうしましょう?
スカッチ、アベラワーは?
すみません用意がありません
じゃ、スべイサイドでなにか。
…というやり取りののち、限定版ザ・グレンリヴェット・コードを、最初の味見だけはニートで、その後はソーダで割って。
店には無論、銘醸含めたワインも多数ある。
しかし、ひと壜開けてしまうとそれなりに時間がかかり「ひとりテキパキの寛ぎ」とは、やや趣を異にしてしまう。
かくして敬してこれを近づけず、バーらしい飲み物に徹する。
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りんごに似たウヰスキーの風味と甘味を、発泡の心地よいキックを口腔で転がし、愉しむ。
ここで「肉をいじめない」火力で程よく焼き上げ、歯に筋の当たらぬ、しかし噛み締めると旨味が「じんわり」と広がる、ひと口大に切られたヘレ・ステイクを味わうや
ああ、この「じんわり」を共に味わってくれる、おちょぼ口が隣にいてくれればより一層
と、一瞬思うものの、昨今の「夜の街注意報」を慮ると、そりゃ、まー、そーゆーわけにも、いやいや、でもチョトだけ
我ながら情けなく、歯切れが悪くならない、事もない。
(20200616日初稿。20210917日一部改稿)