古い本である。初版は昭和46年というから自分と同じくらいの年齢だ(笑)。
昨年、ダ・ヴィンチの「受胎告知」やペルジーノ展をみたり、フランクフルトでボッティチェルリの名品をみたりと、ルネサンス期の絵画に触れる機会が多かったので、再読してみようと思った。
友人にも語ったが、去年読んだ本のベスト1だ。再読にもかかわらず。
最初、学生時代に読んだときもとても面白かったが、読み直してみて、更にその深さがわかり面白さが倍増した。
人間性の解放という明るい光ばかりに注目が集まっていたルネッサンスだが、実はその裏側に、世界滅亡に対するおそれ、死への妄執、破壊への衝動等々、暗くて非合理な闇が隠されていることを暴き出した・・・・一言でいえば、そんな本だ。
一言でいえば簡単だが、そんな短いまとめでは当然尽くせない。ボッティチェルリの絵画を丁寧に読み解く腕さばきといい、そこから明らかになっていく当時の社会状況や世界観といい、見事というしかない。
そして、何よりも絵画というものにこんなにまで深いメッセージや意味が込められているのか・・・ということを、まるで極上の推理小説でも読んでいるように、スリリングに読めるというのが、何よりもの魅力である。
学問、かくあるべし。将来、こんな本が書けたら最高である。