ミニミニ大作戦さんのマイ★ベストレストラン 2012

ミニミニ大作戦の庶民的食文化に関する調査報告書

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ミニミニ大作戦 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

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順位付けルールは以下の通りです。

第一優先:総合評点
第二優先:総合、料理・味、サービス、雰囲気、CPの5項目評点の平均
第三優先:料理・味の評点

上記基準でも優劣が決しない場合は、訪問日が最近のお店を上位としました。
舌が肥えて来ているにも関わらず同じ評点であるから上位、と言う考え方です。

マイ★ベストレストラン

1位

お好み焼き 大樹 (海田市 / お好み焼き、鉄板焼き、焼きそば)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ~¥999 ~¥999

2012/06訪問 2017/02/17

オコノミストへの道 第十二回 -頂上広島お好み焼き、これを超える一枚を探す事の難しさよ- 【再々訪】

何度目かしら??の再訪に伴う追記&画像追加です。

大樹・・・未だに、マイ・トップ・オブ・オコノミに君臨し続ける神の手技。ゴ~ッドハ~ンズ。如何に食べログ評点基準が変わろうがどうしようが、私には関係ない。頂点と言ったら頂点。ピナクル・オブ・オコノミ。ゴ~ッドハ~ンズ。←ひつこい(- -;)

さて、これでも今回は真面目に、広島お好み焼きの味わい、その季節変動に関する考察をしてみたいのだ。その、被験者に選ばれた大樹はいい迷惑だが、私にしてみれば、最も好きなオコノミで調査ができる幸せを感じちゃうのだ。

まんず、画像をご覧頂きたい。一枚目から五枚目が先週末に食べた【肉玉そば(玉子半熟)】\650である。対して六枚目~八枚目が昨年三月に食べた時の【肉玉そば(ソース少な目)】\650である。玉子の硬軟、ソースの多少こそ違うものの、これらは同一メニューなのだ。さて皆さん、これが同じレシピで、同じ焼き師が焼いたお好みに見えるだろうか!?私に言わせれば相当に違う。見た目がこれだけ違うので、当然ながらその食感もかなり違ってくるのだ。こりゃ何故か!?

理由はキャベツ。オコヲタ殿なら、そんなの釈迦に説法だぜっ!!ってお叱りの声も聞こえてきそうだが、実にキャベツの差に依るものなのである。過去画像はギリギリ冬キャベツの終わり頃。一方の今回画像は春キャベツの終わり頃なのである。

冬キャベツ:巻が硬くて締まった玉。葉の水分も少な目で繊維がしっかりしているので炒め物など火を通す料理向き。
春キャベツ:巻は緩くてフンワリ気味。葉の水分が多く瑞々しいので、サラダ等の生食、乃至お浸し向き。

大樹大将
「春キャベツは火入れが難しいんよ。生地の上に積む時から注意が要るけえね。ファサッとフンワリ置かんといけん。その後も押さえちゃいけん。直ぐにベチョベチョになるけえ。焼きも短めにせんと、ちょっと気を抜いたら直ぐにベチョベチョ。じゃけど、火が早よう通るけえ、焼く方は楽よ。回転早いもん」

ミニミニ
「なるほど~。確かに今日は焼きが少し早いなぁ。勉強になりました。確かに、回転早くて行列待ち時間減るのは歓迎だけど、でも食べる方としては、やっぱり冬キャベツの方がイイなぁ。お好みもビシッっと締まるし、何よりキャベツが旨いもん」

大樹大将
「そりゃあ、そうじゃろ~、アハハハ~」

とまあ、このゴ~ッドハ~ンズなオコノミ師匠とオコヲタミニミニの会話にあるような理由で、六月の大樹焼きは、かくの如き画像となった次第である。その外観は、もはやモッコリ、フンワリ系。冬のペナペナ薄べった焼きのファンとしては、まるで他のお店に迷い込んだよう。切ってもフワフワ、食んでもフンワリな食感は、もはや冬焼きとは別物と言って良い。しかし、その味、絶妙のカリもち仕上げの磯野麺に、スパイスと調味油を多用し、旨みと香りで勝負すると言う、マジカル極上の大樹テイストは微動だにしていないのだ。

まとめ:
素材季節間差の焼きへの影響、これは、大樹程の高次元焼きだからモロに分かるのだろう。高度な故に、素材のばらつきが味わいに大きく影を落とす。ある意味皮肉な事ではあるが、これを是として積極的に味わえば、広島お好み焼きの季節感すら感じる事ができるのだ。これはこれで素晴らしい。あぁ、やっぱり大樹は偉大なり。ピナクル・オブ・オコノミである。無茶苦茶冬が待ち遠しいよ~(叫)

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以下、既報分

前報、前々報にて、私にとっての山口県下1位、2位の広島お好み焼きをご紹介した。しかし、残念ながら、ココの一枚を超えるに至らなかった。広島は海田「大樹」。ご主人一人で焼き上げるその味わいは言うに及ばず、ご主人のキャラクター、私好みの店舗、隠れ家的なロケーション、とにもかくにも全ての要素がカチッと決まっており、つけ入る隙がない。こう言うモノは狙ってできるものではない。ある意味偶然の産物。

確かに、下関「鉄板月輪」も、岩国「KINBA」も、そのオリジナリティは相当のレベルだと思う。「鉄板月輪」ご主人の求道的なこと。この人の焼いた一枚を、広島お好み焼き談義を伺いながら口に運ぶ至福。あるいは、「KINBA」ご主人のソウルフルなこと。人気店の焼きなど目もくれず、飄々と自分の焼きを組み上げた。その独自性のカタマリの如き一枚に出会えた至福。

だがである。これ程素晴らしい二枚なのに、やはり「大樹」の一枚を口に運ぶ時、「これは何処も追いつけんわ・・・」と諦めにも似たため息が口を突いて出てしまうのである。それは何故か。未だに良く解らないのが本当のところだ。ココの一枚、見てくれは豪華ではない。ペナペナと言って良い程に薄い。キャベツの量は驚くほど少ない。キャベツだくさんが美味しい広島お好み焼き、との一般則に真っ向から反逆している。それに対してモヤシの量は多い。普通なら、コストカットじゃないの!?と揶揄されてしかるべき比率だ。更に、野菜に対して麺量も多め。普通なら、私にとってイマイチ焼きのレシピである。

だが、ココの肉玉そばをソース少な目でオーダーして口に運ぶとき、頭で予測する味とは全く違う、強烈にバランスされた、私が考える広島お好み焼き最良の味わいとなって舌に襲いかかる。全ての素材の味わいが、決して混ざらずバランスして味わえる感覚、それをオブラートするガーリックを始めとする、繊細なスパイスの芳香。この一枚にソース後塗りなどしてしまえば、それこそ台無しだ。ソースはその香りだけ協奏すれば良い。その他の味が幾重にも重なっているのだ。ましてやマヨネーズなど・・・

まとめ:
「鉄板月輪」、「KINBA」、「大樹」。広島お好み焼きを食べ歩き、この三枚を見出せた事は幸せだ。だが、聖地広島には、それこそ星の数ほどお店がある。時間を見つけては、それらをじっくり廻ってみたい。「大樹」を超える一枚を、何時の日か見つけたいものだ。広島お好み焼きは、その気になれば調理工程の全てを見れる数少ない料理だ。しかもシンプルで安価な素材だからこそ、焼き技、焼き手のフィロソフィーがダイレクトに味わいに反映される。何と奥が深い食べ物であることか。やっぱり大好きだなあ。

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以下、既報分

山口県の広島お好み焼きをバッサリ斬るのが、当面の私の課題なのだが、ここらで一寸浮気を。何故なら、この「大樹」こそ、現時点で私にとっての、最高峰の広島お好み焼きであるからだ。私は「大樹」の広島お好み焼きを、全てにおいて5点満点としており、最高点としての基準にしている。今の所、あらゆる点で、ここを超える店を知らない。「大樹」を超える店に辿り着くのが、私の広島お好み焼き探索の最終目標である。

かつて広島に在住した私にとっても、この店の在り処は、「何でここなん!?」と言わずにはいれない、奇妙な場所にある。隠れ家のようなロケーション、狭い店内、カウンターだけの席、シチュエーションからしてバッチリ。その上に、主人が、「チェ・ゲバラ」プリントのレゲエなT-shirtを纏い、微妙なブルーの色メガネの奥から、虚空に視線を漂わせちゃったりすると、「きゃ~シブイ、素敵、早く焼いて~」である。

まずは、一度、この焼きを見て欲しい。店の外に行列があろうが、なかろうが、微塵も変わらぬスローさで、動じることなく、ゆっくり、ゆっく~り、焼き上げる。動作がのろまなのでは断じてない。一つ一つの工程に、彼として必要と思われる時間を、妥協せずに費やす、という意味だ。神経質なほど、繊細な手さばき、「シャキーーン、シャキーン」とソプラノを響かせるテコの触れ合い、またまた言いたくなる。「きゃ~カッコイイ」・・・何かの調味料をふっている。そのように見えるが、余程注意していないと、粉が降りかかる痕跡は見えない。恐らく何mgの量だ。ちなみに1mgは1000分の1gなのだが。多量のソースやマヨネーズを塗ったくって食べるのが広島お好み焼きだと信じている鈍感ピーポーには、わかり得ないほどの微妙さだ。

さて、焼きあがった姿は、これまた普通じゃない。言葉にするのは難しいのだが、何と言うか・・・汚れていないのだ。手間暇かけた作品と言うのか、要はスカットしていて綺麗なのだ。スリムでブヨッていない、イケメンだ。スリムが故に、腹減り男子は「そばダブルで」とか言いがちになるだろうが、ダメ。それは禁止。そばが多すぎてバランスが崩れ、台無しになってしまうから。足らなきゃ、もう1枚焼いてもらえば良い。

さあ、いよいよ食するのだが、味については既に多くの口コミがあるので、詳しくはそちらも参考にされたい。とにかく全体の調和、バランスが本当に素晴らしい。キャベツの旨み、魚粉、天カス、ニンニク、青海苔、スパイスの味と香り、そばのカリモチ感、生地のしなやか感、仕上げに卵にへばりつく程度しかない薄層のソースの香り、全てが一体渾然となってバランスしている。なんという研究の賜物。こういうものを「真の高級」というのだ。食べながら「じ~ん」としてしまう。食べる度に「ありがとう」と思う。

最後に、あえて苦言なのだが、「大樹」のHPを見ると、某有名政治家の来店を自慢する記事が写真入りでアップされていた。マスターが並んで移っている・・・あのね、それは無いでしょ。チェ・ゲバラが体制側に媚売っちゃダメだよ。・・・味一本で勝負できるんだから。お願いだから板降ろして下さいなm(- -)m

まとめ:
ここの広島お好み焼きは、常食してはいけない。他のが食べれなくなるから。自分へのご褒美として、特別な日に食すだけで我慢すべし。あなたを超える焼き師に出会うまで、私は未知の広島お好み焼きの探索を続けます。

  • 一枚目:春キャベツ肉玉そば
  • 二枚目:この厚みは大樹に非ず!?
  • 三枚目:カリモチそばは普遍の旨さ

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2位

イデミスギノ (京橋、宝町、銀座一丁目 / ケーキ、カフェ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2014/01訪問 2014/06/04

モンブラン大作戦 第八回 -比類なき独創性で突っ走る、ケーキ界孤高の存在- 【再々々訪】

前訪では少なからずショックを受けた。初めてだったのである、イデミケーにあるべきものが無い様に感じたのは。ソレは、極上レベルに仕上げられた全てのパーツが、相容れず相反し、せめぎ合う結果生まれる強い個性。イデミならではの、見えぬようでもソコにある、ぶっとい背骨。そんな豪腕的な主張が感じられなかった。それが、ちょっと引っ掛かり続けての、リベンジ再訪。

2014年1月26日

【タルトレットオランジュ】\630
Appearance:
正にイデミ。シンプルにしてセンスの良いアクがある。薄っぺらなコフィン型タルトレットの表面に、デーハーな果実がバラバラと。何やらすっ呆けてて隙だらけの様な構成。そんな危うい塊の表面で乱舞する原色系色彩、そのアクを更にブーストアップしてるとしか思えぬ表面のテカリ具合。いやはや、誠に向こう気が強い。こうでなくちゃイデミは。

Structure:
トップには唐突に木苺、ブルーベリー、オレンジの三点盛り。オレンジはゼリーコートされててグロッシー。艶かしいのが極めてミスマッチで楽しいじゃないか。本体はオレンジクリームを充填して、かるく表層をキャラメリゼしただけの、シンプル極み無きタルトレット。よくもまあ、コレだけで手を引けるな、と関心しちゃう程のシンプルな構成。

Taste:
これこそイデミの独断場。強烈ネットリなオレンジクリームの、相当にコントラストの強い酸味と苦味と甘味。これらを、表層キャラメリゼの繊細なカラメル苦味がそっとラップする。二種類の苦味を感じさせる辺り、もはや言葉も出ぬ。一方、タルト台は、イデミにしてはホロホロとした食感が意外なサブレー的仕上げ。何時ものカンカン堅焼き極薄台とは対照的である。ちょっと下品にしてデカダンス的なトッピングフルーツも、食べてみれば、シャープな酸味で活きがよろしい。

Summary:
安心した。コイツはイデミにしか出来ない芸当。簡単に作ってるようで、その実ガッツリ自己主張してる外観と味わい。相変わらず意表を突くパーツ同士のせめぎ合い。それでこそ生まれ得る骨のある味わい。ソコにはイデミの背骨がズバッと通ってる。これがイデミってもんだ。

2013年11月3日

甘モノツアーin東京 第一回戦・・・ナンダそりゃ!?

ハイ。これでも一応甘モノ好きを自称する私、食べログ三年目の今年どうしてもやっておきたい事があった。甘モノ遠足。甘モノ好きのマイレビュさんと徒党を組んで、マイレビュさんオススメのお菓子屋さんを、一日掛けて食べ歩く。そんな企画を実行する時がやって来た。

旅程はコチラ→食べログレビュアーズ甘モノ遠足「第一回甘モノツアーin東京」
概要はコチラ→食べログレビュアーズ甘モノ遠足はやはり楽しかった。

今回から七回連続して、そんな甘モノツアーin東京で一体我々は何を見聞したか!?その全てをレビューしたい。

銀座に始まり銀座で終わる今回の甘モノ遠足。記念すべき第一回戦は、泣く子も黙るイデミ・スギノ。開店前の10:40、イデミ・スギノに集結した甘モノ食べ歩き隊は総勢六名。この後、合流、離脱をしながら、20:00終了予定の最終戦まで、甘モノ縛りの耐久戦が繰り広げられる。最終ゴールに到達できるのは、真の甘モノ好きのみなのだぁ~(^w^)・・・もうワクワクが止まりませんなぁ。

【アヤ】\650
Appearance:
今回は六名でイートイン。ご存知の通り、ここは店内撮影一切厳禁。お店の決まりだから従わざるを得ないけれど、それでおめおめ引き下がるなんて願い下げ。外に持ち出せた唯一の遺品、イデミ・スギノのネームカードを撮影し、コイツを使ってアヤの再現を試みた。GIMP2なる作画ソフトと悪戦苦闘した結果、一見して分かるCGっぽい怪しげな画像ではあるが、取り敢えず記憶に残るアヤを再現してみた。これ作画するのに一体、何時間費やしただろうか・・・我ながら、その粘着質な執念深さに呆れてしまった。

Structure:
トップには二個の木苺、黒スグリ?、その上にピスタチオのトッピング。本体は多層型モノリスで、上から順に、①苺の生クリムース、②フレッシュミントのスポンジ、③チェリーのバタクリ、④ブラッドオレンジのジュレ、③のバタクリ、②のスポンジ、①のムース、⑤最下層のピスキュイ風ベースとなる。バタクリをキッチリ使いつつ、ミントのスポンジやブラッドオレンジジュレを組み合わせるところが、非凡の証か。

Taste:
う~ん・・・心の準備不足か、甘モノ遠足で浮き足立ってるが故か、はたまたこの一個が不出来なのか、今日の一個は舌経由で脳髄に訴えて来ない。確かにどの層も良くできてはいる。だから、全パーツに徹底的に拘るという、イデミ・イズムはきっと変らないのだ。だけど、ビビーンと来ないこの味。好みの問題、多分そうなんだろうけどなぁ。とにかく、イデミのケーキに必須の、一本筋の通った魂が感じられないのが残念。

Summary:
イデミ・スギノ、ケーキ界の立川談志。だから、好き嫌いはハッキリ分かれる。確かにここは、四方にガッチリ壁を作って、その中に納得して入ってくる客には、珠玉の味わいを提供してくれる。杉野氏が自我自流を貫きたいというその壁に、居心地悪さや威圧感を感じてしまう人は、「なんや偉そーに、ただの高ビーケーキじゃん」となってしまう。どちらも間違いじゃない。各々の捉え方であり、好みの問題。だがしかし、それが許される前提は、イデミのケーキから、食べ手を圧倒させる杉野氏の主張が発せられていなけりゃならん。イデミのケーキは、個々のパーツの追い込み方がハンパじゃない。でもそれだけじゃダメだ。更にその上に、これが主題か!!と食べ手を震えさせる背骨がキッチリなけりゃダメだと思う。今回の一個にそれを感じられなかったのは、私の舌が鈍っているのか、杉野氏の引退が近いのか。ちょっと暗澹とした気持ちになった第一回戦。取りあえず評点は変えずにおく。次回の再訪で感動できなかったら・・・由々しき事態である。南無三。

2012年1月17日

今回はレビュー追記&画像追加ですm(- -)m

モンブラン大作戦も残すところ最終回のみ。最終回はなんだろう?と、少しでも思って下さっていたならば、この期に及んでの再報など、肩すかしの如き裏切り行為か。しかし、「イデミ・スギノ」である。杉野氏は知りうる限りのパティシエ殿の中で、私が最も尊敬する巨匠である。そんな氏の作品を、ココで再度レビューしておかなければ、私、絶対後悔する。結論から先に言うと、モンブラン大作戦第八回で初食したのち、極上モンを食べ歩いてきた今現在でさえも、杉野氏のケーキを食べると、唸らずにはいられない。目が点になる。開いた口が塞がらない。そのインパクトは、初食時と殆ど変らないのだ。

杉野作品の全てがそうだとは言わないが、氏は調和した味わいなぞ端から相手にしないって風情でケーキを練り上げられる。一つ一つの部品に徹底的に拘る。「俺はこういう部品が作りたいのだ!!」という意思がビンビン伝わる。それをくみ上げたケーキは、調和とは正反対の、個々の個性がせめぎ合って、ギリギリでバランスしている緊張感を漂わす。だから、それを積極的に楽しもうとしない限り、「イデミって評判は良いけれど、これってどうなのよ?大したことないんじゃない!?」って事になりかねない。そもそも調和を是とする舌には相容れないものだろう。その大胆さ、人と同じことは絶対にしたくない。後人が追ってくれば、追い付けないような別の境地に飛び移って行くストイックさ。孤高のパチシエ。理屈抜きにカッコいい。

【シャタン】\630
マロンクリームを使っているという点で、最も世の中のモンブランに近い位置にいるだろう一個。とにもかくにも、トップに鎮座する白い楕円球体を見よ。これは、杉野流ホイップクリームである。驚くべきことに、この物体は、底部の微々たる部分でケーキ本体に載っかったまま、微動だにしない。変形したり崩れたりしないのだ。もはやこれは固体である。だがら、スプーンを入れて初めて、それがホイップクリームであることを指先が認知する。私は、こんな強靭かつ美しいホイップクリームを、この他に知らない。

驚きはこれで済む筈もなく。次の驚愕は、コーヒーソースとココアパウダーが振り掛かったマロンクリームである。それは、あたかもバラの花弁の如き造形であり、ウネウネはおろか、どのモンブランとも異なる盛り。だが、本当に驚くべきは、ひとさじ口に運んだ時である。こんな食感は他では味わいようがない。マロンクリームとしては予想不可能なテクスチャ。極限までソフトに仕上げたエアインチョコの如き食感と、相当なバターが香る、まるでバタークリームのような味わい。この独創性。そこいらのマロンクリームどもを一瞬にして爆殺してしまうか如きインパクト。

ベースは杉野氏が得意とする、極薄、超硬焼きタルトレット。この無慈悲なほどの硬さは、相変わらず付け入る隙を与えない程ストレートに、私の脳幹を直撃する。フィリングは、何と胡桃クリームを混ぜ込んで、さらにラム酒を効かせたフランジパーヌ。ここに胡桃かよ~。唸りにも似た溜息。絶対にタダでは転ばない、いや、食べ手を飽きさせない意外性。この一個を食べて、私は、「参りました」と杉野氏にひれ伏す。

【ラルム】\630
コイツはムースである。だが、そのトップに頂く極上のマロングラッセは、並み居る強豪モンブランをぶっちぎるインパクト。だけども、一筋縄では行かぬ杉野氏は、絶対に「モンブラン」なんて言う、陳腐な「記号」をコイツに冠したりはしないのだ。このマロングラッセ、まるで有名どころの神戸「ゴンチャロフ」のような美しさ。陽にかざすともはや透明感まで感じられる、深い飴色の一個。その抑えた甘さ、ラム酒の香り、水分が綺麗に抜けた最高に粘る食感は、流石と言わざるを得ない。モン大作戦で出会った、最高のマロングラッセの一つである。

本体は、食感の異なる二種類のマロンムースを、ラム酒風味のパウンド生地を挟んで積層したもの。とにかく、その息をのむ表面質感を画像でご覧頂きたい。これは何なのだ!?まるでムササビの表皮を思わせるような、美しいとかを通り越してしまった生物的な異質感。ビロードのような陰影が冬の陽を受けて黄金色に輝く。また、その勾玉のような複雑な形状ながら、シャープに立ったエッジは石細工のような鉄壁さで、有機的な表面質感との隔絶された距離感が堪らない。

コーヒーソースをその上面に蓄えたかのような、上層のマロンムースは滑らかで軽い食感。マロンの風味を感じさせつつ、舌の上で溶け行く印象だ。ラム酒を浸した薄いパウンド生地を挟んだ下層のマロンムースは、一転、クラッシュマロングラッセが混ぜ込まれ、ザラリとした、ちょっとハードな舌触り。上層よりは、グッと栗を感じるレシピである。この一個、杉野作品の中では、テイクアウトを許された稀有なムースの一つ。確かに実食した限りでは、単なるムースのひ弱さはない。ソフトな食感ながら、その異質で個性的なヴィジュアルで視覚も十二分に愉しませてくれる。

【エベレスト】\740
既報分にもある通り、これをモンブランと言うのはいささか抵抗もある。何故なら、栗に纏わる材料を一切使っていないからだ。だが、その画像をご覧頂きたい。見るからに白山、モンブランである。それでも、パチシエ杉野氏は、モンブランを遥かに超える高みとして、この一個を「エベレスト」と名付けるのだ。この意地。向こうっ気の強さ。

トップに載ったフランボワーズとアーモンドスライスが、杉野作品にしては珍しくメルヘンチック。取っつき易い導入だ。トップの峰を形作るのは、例のカッチリした固体とも言うべきホイップクリーム。まるで押し固められた雪のような微妙なニュアンスである。薄い極上スポンジを挟んで、中間部はフランス産の生チーズムース。その中央部分に相当緩めのフランボワーズのコンフィチュールが仕込まれる。食べ進むと、まさに雪の中に血の如き鮮烈な赤味がトロンと溢れ出してくる様は、艶めかしく、エロティック。う~ん、流石だ。最下段には、再度の極上スポンジが敷かれる。

その、酸味と甘みとチーズのコクがなえ混ぜになった味わいは、この三個の中では最も分かりやすい。シッカリとしたコクを感じながらも、鮮烈さを漂わす爽快感は、チーズさえ苦手でなければ、手放しで、旨い!!と感じるに違いない。馴染み易さという面では、杉野作品の中でも最右翼の一個かも知れない。

【まとめ】
シャタンに見られる超絶レシピ。各素材が自己を徹底的に主張して張り合う。断固として馴れ合いを拒み、危ういバランスの上で均衡を保っているその味わいと食感は、調和を是とする世の中のケーキには、逆立ちしても追い付けない独創的領域。この一個を以って、杉野氏が孤高のパチシエである事に疑いはなかろう。氏はケーキ界における、故立川談志師匠なのである。

2011年3月31日

食べ終えて・・・暫くは、開いた口が塞がらなかった。ため息がでるほど、とは、この事だ。

ちょうど24時間前・・・

水曜日の17:00、恐る恐る店に入ると、ショーケースは空っぽ。何にも無い。欲しいケーキが買えないのではない。何でも良いから食べたい、と言ってみたところで、売るものが一個もないのだ。仕方なく退却する。と同時に、「食べたい!!」。闘志がメラメラ湧いてきた。

翌、木曜日の14:00。「絶対買ってやる!!」少し前のめり気味にズカズカ歩いて店へ。あった!まだ沢山あった!!あまりに生々しいアピアランス。生き物みたいだ。全種類買って帰りたい。だが、あいにく出張中の身、買ったケーキを飛行機に乗せて、遥か山口県までは持って帰れない。そんな、鈍感ケーキじゃないことは、田舎者の私でも、一別してわかる。それほど、瑞々しい佇まい。

仕方ないので、帰りの羽田空港ラウンジで頂こう。ケーキ箱のサイズに合わせてあつらえた、まるでアクセサリーショップのもののような、春色の紙袋にきちっと収まったイデミ・スギノちゃん。私は年甲斐もなく、ワクワク、ワクワク、もう一回ぐらいワクワクした。京急のへたくそ運転手が、ブレーキガクガクさせる電車の中、ちょっとの恥ずかしさと戦いながら、紙袋をそっと両手で支えつつ、私は耐えた。16:00羽田空港第二ターミナルANAラウンジへ無事搬入完了。ふ~。

【エベレスト】\630
モンブランでも、フジヤマ(既報)でもなく、エベレストだ。まあ、「白いお山」="mont blanc"に見えるから、モンブランということでご容赦頂きたい。ここのケーキの何が素晴らしいかって、使っている部材一つ一つに、一切の妥協が無いところだ。お飾り目的の物など一切無い。全てが活きている。存在意義がある。まず、トップのフランボワーズ。この顔をしかめたくなるような、鮮烈な酸味と、ベリーの香り。反発力充分の新鮮なテクスチャー。表層のホイップの繊細なクリームの香りと甘み。このホイップと、その表面に貼り付けられた、極薄スライスのアーモンドの新鮮な香りがなえ混ぜになって、「う~ん」とうなってしまう程にビビッドだ。内側は、これまた繊細かつ輪郭の際立った香りが素晴らしいチーズムース。更に中心部からは、鮮烈な酸味と芳香の真紅のベリーソースが流れ出す。この、真紅のマグマを秘めた雪山が、極薄なるも、ニッチリしたテクスチャーの特上スポンジに載る。酸味と甘みとクリームチーズの旨み。この三つが渾然一体となった時、上質のヨーグルトを想起させる、ラクティックな風味が、怒涛のように口中を満たす。異種味の融合の先にある芳醇感。溶け合う味わい。繊細にして濃厚。極上のクリーミーな舌触り。参りましたm(- -)m

【タルト・オ・キャラメル】\630
これは、モンブラン大作戦としては反則だが、だって美味しいんだもの。特別付録とご理解下さい。こちらは、上の「エベレスト」とは、全く異なるアプローチだ。上部の白子みたいのは、シナモンパウダーが僅かにふられたホイップクリーム。その下が、本体のタルトレットだ。まずタルト台は極薄、板でこさえたドラキュラ伯爵の棺桶のように、パカッと口を開ける。タルト台の淵には、ステンシル技法で撒かれたパウダーシュガー。美し過ぎる。手間のかけ過ぎ。ここに、ナッツやドライフルーツが散らされたカラメルクリームが流し込まれる。このカラメルクリーム、全くと言って良いほど甘くない。タルト台も殆ど甘みはなく、ひたすらペキペキとしていて香ばしい。カラメルの苦味、ドライフルーツの酸味、この両者が、お互い相容れないほど突っ張って、自己主張している。ギンギンに尖ぎった、危ういバランス。一歩間違うと、崩れ去りそうな緊張感。優しいホイップクリームの甘さが、シナモンの芳香を後ろ盾にして、この両者をやさしくオブラートするのだ。敢えて調和を拒むこの味わい、全ての素材が、本来あるべき通りに味わえつつ、一個のケーキとして成り立っている奇跡。余程の研究と、自分のケーキがどうあるべきか、葛藤に葛藤を重ねた人じゃなければ、こんなものは創造できない。先の「エベレスト」と対比する時、ここまで違うベクトルで自分のメニューを組上げる、パティシエ杉野氏の自由奔放さに、再び参りましたm(- -)m

【まとめ】
日本を代表するパティシエの一人、杉野英実氏が創造するケーキは、私の舌には、「異次元の存在」のように感じた。このケーキを、下世話なモンブラン大作戦の場でレビューするなど、おこがましいのは重々承知だが、この、美味しい、とかいうのを通り越して、衝撃すら伴う深い感動を、少しでもお伝えしたかった。巷では、値付けが高い、という声も耳にするが、私に言わせれば、とんでもない。至極妥当な値付けだ。イデミ・スギノ作品と、そこいらのモンブランを比較するのは、まるで、憧れのフェラーリと我がオンボロミニとを並べて、どっちが良い車なの?と訊くようなもの。その事自体に意味がないな・・・と、帰りの機中、街の灯りを見下ろしながら思うのだった。

  • タルトレットオランジュ
  • こう言う大胆レイアウトでやりっ放すセンスに脱帽
  • ちっちゃいクセに思いっきり濃い存在感

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3位

Toshi Yoroizuka Mid Town (六本木、乃木坂、六本木一丁目 / ケーキ、洋菓子)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2012/01訪問 2017/02/10

モンブラン大作戦 第九十八回 -嗚呼!!美しき哉、白鳥モン、一度でイイから来てみたかったのょ(ToT)-

鎧塚俊彦氏。言わずと知れた、女優、川島なお美氏の・・・いや、そんな事はこの際どうでも良くて、2004年に独立されてから先、今や都内に三軒、神奈川に一軒(これは自産自消用の果樹園に併設)、更には南米のカカオ豆園と、とどまる事を知らずにインフレし続けてる、トシ・ヨロイヅカ帝国のオーナーシェフ殿である。上記の小田原果樹園は、てっきり奥様用のワイン葡萄畑と思ってたのだが(失礼!!)、実はちゃんとカフェを併設されており、そのうちレストランも開かれる計画とか。

さて、私は何故ココに来たかったのか?それは、皆様良くご存じの通り、ココがケーキバーだからである。何たって、カウンターに陣取って、かぶり付きでパティシエ殿がケーキを組み立てられる様を眺められるのだ。ケーキオタにとって、これほどエキサイティングな事があろうか!!これに比べれば、十三ミュージックのまな板ショーなど、取るに足らないお子ちゃま遊びである!!

15:30入口前に仁王立ち。肩で息するミニミニ。お店には事前にモンブランの材料が残ってることを電話で確認はしたものの、取り置き不可の残酷システム。気が気じゃなくて、六本木駅の長い階段をダッシュして駆け上がった結果である。すかさず出てくるお姉さん。「一時間待ちですので16:30にお越しください」。コラ~冗談はヨセ~(ToT)

16:30入口前に仁王立ち。今度は緊張で強ばるミニミニ。三度目のアタックで、ようやくカウンターの、しかもパティシエ殿の真正面に陣取る事ができた。もうニヤニヤが止まらない私、メニューが来る前から、「モ、モ、モンブランくらはい~」先走りまくり。ちょっとは大人の落ち着きを見せたらどうなのだ(- -#)

【Mont-Blanc Cygne (モンブラン シーニュ)】\1200
シーニュとは白鳥のこと。つまり白鳥モンってことらしい。\1200という値段については、高いと思われる御仁もおいでとは思うが、私にとっては十分に納得できるレベル。だって目の前で観たり聞いたりできるんだもの。どこぞのホテルのスーパー\1500モンに比べたら、もう、バーゲンプライスに思えてくる。いくらでも払うから、はよ見せてくれ~・・・

何と!!先ずはアミューズが出される。本日は白菜のスープ、淡い白菜風味で上品な塩味の冷静スープ。先ずははんなり塩気のアミューズで、口中を「甘いの甘いのおいで~」状態にしておいてから、本番のケーキって訳である。いやはや心憎い演出に、既に目がトロンとしかけちゃってる私。

モンブラン シーニュの作り方:
さて、肝心の組立工程である。アップした画像は、言わばリバースエンジニアリング。従って、以下の記述をお読み下さりながら、画像を尻尾からご覧下さると、少しはイメージして頂き易かろうと思う。

第一ステップ。パティシエ殿が台に最初に敷いたのは、クラッシュマロンを練り込んだマロン風味の円形パウンド生地。厚さは7mm、直径は50mmくらいだろうか。その上に、搾り出しからマロンクリームを少々、さらに少量のパフを散らす。次に、いたわるが如く注意深く取り出したのは、極めて精巧に焼きあげられたお椀型のショコラスポンジ。直径は70mm、厚みはなんと5mm程度しかない。このお椀に、甘さを極端に抑えたホイップクリームを、丁寧にみっちりと、摺り切り一杯まで詰める。

第二ステップ。今やホイップがパンパンに詰まったショコラスポンジ椀を、エイヤ!!とばかりにひっくり返し、先ほどのパウンドベースにそっと載せる。つまり、お椀の底の部分が上を向いた状態。こうして出来上がった芯部分は、これはまるで「きのこの山」!!どっかのレビューで「タケノコの里」って仰ったマイレビュアー殿がおられたのを思い出し、俺ってこんなんばっかり出くわすな~、と笑いがこみ上げる。

第三ステップ。いよいよモンブランの姿が現れる。先の「キノコの山」に、再度搾り出しで、今度は大量にウネウネする。マロンクリームストリングが完全に「きのこの山」を覆い隠してしまった。もう、その一部始終を観てるだけで鳥肌もののミニミニ。いつの間にウネウネフェチになっちゃったのだろう(^ ^;)そこに、またまた大さじ一杯のパフをそっと載せ、パウダーシュガーをサラリと降らす。実は、モンブランとしてはココで完成なのだ。だが、これじゃあまだ白鳥じゃあないのである。

第四ステップ。さあ、最後に仕上げだ。何とパティシエ殿、濡らしたスプーンを器用に駆使して、バニラアイスクリームをすくって滑らかに丸めた。コイツを載せ、モンブランにそっと載せる。白鳥の胴体である。コイツに、でかいトシ・ヨロイヅカ印の羽根チョコと、更にでっかい首クッキーをブッスリ刺して、お見事~、白鳥モンの完成!!

しかし、思わず溜息が出てしまうこのヴィジュアル。モンブランの上で優雅に羽ばたく白鳥がそこにいるではないか!!食べるのも惜しいのだが、白鳥の胴体がヤバそうである。見る見る自己融解が始まりつつある。意を決してフォークを入れる私。

モンブラン シーニュを食べる:
このマロンクリームストリング、何とも言えないクリーミーさ。品良く抑えられた栗の香りも明らかに狙い澄ましたような繊細さ。トップに撒かれたパフの食感も、シャリシャリと大変好ましい。内側のショコラスポンジの仄かな甘さと、極薄のチョコレート風味は流石の仕上げで、栗の風味を全く邪魔しない。ホイップは極微糖でかなり軽めの仕上がり。一方のマロンパウンドベースは相当に芳醇な栗の風味が持ち味である。薄いながらもキッチリとした存在感があるパウンドベースである。更に僅かに仕込まれたパフが効いていて、単調になりがちな食感の切り返しもお見事。やはり、一流パティシエはチョコとマロンの合体を、何の破綻もなく見事にやってのけるのだなあ。流石の上モンであった。

まとめ:
ジャズが静かに流れて、まさにケーキバーである。一流ケーキの組立てを眺めた後で、落ち着いて味わう旨モンとコーヒーは、思わず溜息が出る至福のひととき。時間が許せば、おかわり連発で二時間くらい居座りたい気分なのだった。モンブランとしての味わいは、頂上に、もう一歩至らずの☆4.0、しかし何より、このバースタイルでしか味わい得ないライブな感動に、総合では迷わず☆5.0を謹呈したい。企画の勝利である。

  • 「モンブラン シーニュ」・・・モンの上で羽ばたく白鳥である
  • 白鳥モン本体近影
  • 思い切り良い白鳥の飾り

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4位

昭ちゃんコロッケ 本店 (上山口、山口 / コロッケ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2012/06訪問 2014/06/07

マイ・コロッケ大王 -独断と偏見の!?☆五つ-

先ず、最初にお断り。ミニミニ大作戦の採点ルール。基本的には、そのジャンルでミニミニが知るベストワンを暫定☆5.0にするようにしている。一方、コロッケを一ジャンルにすべきかどうかちょっと悩みはしたが、ジャンクフード・イーターミニミニには、やはり立派な一ジャンルである、と決めた。

昭ちゃんコロッケ株式会社・・・そもそもは生肉店なのだが、こんな屋号に何時しかなっちゃった。それ程に山口県でこのコロッケは有名なのだ。TV各局での放映は勿論の事、極めつけは全国食肉手作りコロッケコンクール金賞の賞罰。自分で国内最高峰のコロッケと断言する押しの強さである。

【コロッケ】\100/個
このコロッケ、私に言わせれば、食肉手作り云々、なんて知った事ではない。呆れないで欲しいのだが、このコロッケはジャガイモを味わえ!!もう、コレに尽きる。これがコイツの旨さの根源である。と、初食より十五年を経た今でもそう思う。揚げたてならば、ガッチリと揚げの効いた衣は舌に痛い。だから時間が経ってもヘタらないし、破れない。その厚め衣に内包される中身は、混ぜ込まれた挽肉の影さえ霞むような、まさに練り練りポッテリのジャガイモが主役。噛みしめる程に口中に溢れてくるジャガイモ臭さ。バリッとした衣と、モッタリとしたジャガイモの食感。嘘じゃないのよ、マジで旨い。

確かに、揚げたてを食すのも旨くてしょーがないのだが、更に私のオススメの逸品はコロッケ丼。玄米三分飯に、冷蔵庫で程よく冷やしたコイツを乗っける。この冷やすのがキモ。それで、鍵印下関ソース(甘酸いい絶品地場ウスターソース)を一回ししてガツガツ食べる。もう、この時の爆裂ジャガイモ風味と、舌に纏わり付くような、粘るジャガイモ感は感涙せずにはいられない。ええ、確かにジャンキーでしょうよ。でも、私には、そこいらのフレンチ皿なんかより、よっぽどご馳走に映るんだモノ。仕方ないでしょ(^w^)

まとめ:
久しぶりに買った。自らの暴食傾向を戒めるべく、いつもの「十個ちょーだい」をグッと堪えて五個にした。帰り道、「写真だけでも明るい戸外で撮っとけば?」と内なる喰い意地悪魔が、一瞬囁いた気がした。もうダメ。気が付けばパックはカラッポ。「あ~、またやってシマッタ、晩飯のコロッケ丼ができないじゃんか~」・・・たかがおやつにコロッケ五個ものカロリーをくれてやった、自分が心底情けない。食べだしたら止められない、それほどのコロッケ大王。異論はあろうと私には☆五つ、て事でm(- -)m

  • 五個入り一人用
  • パン粉刺さります
  • こんな感じの大きさ

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5位

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2012/06訪問 2014/06/07

300レビュー特別企画 −帰ってきたケンタ研究会−

「帰ってきた・・・」としたのにはちょっと訳がある。コアな読者殿ならばご記憶かも知れないが、丁度通算100レビューの時に、「一回きりのケンタ研究会」って企画モノレビューを打ったのだ。ケンタッキーフライドチキンは奇跡の味だと未だに頑なに信じる私は、この「一回きりのケンタ研究会」で、それはもう極めて真面目に、ケンタトリちゃん五部位の中で一体どれが一番なのかについて、論理的、実践的手法により分析を行った。その結果は決して私の望むものではなかったのだが・・・

ところが、このケンタトリちゃんを大真面目に弄くり回しているうちに、更なる大疑問に行き着いた。バカバカしい事この上ない疑惑。「コレって、ホンマにトリか!?」いや、鶏肉だって事は私にだって解る。かじってるうちに、肋骨みたいな細いのや、大腿骨らしきぶっといのがゴロゴロ掘り出されてくるので、そりゃあ多分、いや絶対トリちゃんなんだろう。だけど、「サイ下さいなっ」て注文して渡してくれる一個、ホントにお尻なんかなぁ・・・

と言う訳で今回の私の企みは単純明快。ケンタッキーフライドチキンを正しく組み立てれば、ケンタトリちゃんになるかどうか!?の実証実験である。もう、殆ど合体ロボットアニメ、ゲッターロボのノリであるが、当の本人は実は大真面目なのだ。

【フライドチキン(9ピース)】\2080
さて、バラバラにされたケンタトリちゃんを組み立てて、なるべく元の姿に復元するには、ケンタトリちゃんがどう解体されているかを知る必要がある。首チョンパされたら先ず、ささみ(キール)を切り取られる。その上で脊椎の所で左右真っ二つに両断され、更に各々の半身は、手羽(ウイング)、胸(リブ)、尻(サイ)、腿(ドラム)に四分割される。従って、ケンタトリちゃんの完全合体に要する全パーツは、ドラム二個、サイ二個、リブ二個、ウイング二個、キール一個の計九個となる。

【ドラム】
腿。鶏なのでほぼレッグ全体になるのだが、惜しい事に足の先っちょは付いてない。でもまあ、もし付いてたらさぞかしキモかろう。肉質は脂もそれなりなのだがちょっと水っぽい。何と言っても食べ易いのが美点である。

【サイ】
尻。猥雑な響き。肉質は柔らか目、脂も多く味わい深い。肉厚が厚すぎないので、ケンタ自慢のスパイスが浸透し易いところも宜しい。私の最も好きな部位である。やはり尻肉がイイ。

【リブ】
胸。普通なら脂も無くバサバサで味気ないって印象なのだが、ケンタの場合は骨付きの胸全体なのでちょっと趣が異なる。確かに脂は少ないのだが意外に味わいは良い。小さな骨が多く食べ難いのが欠点。

【ウイング】
手羽。飛べない鶏でもバサバサはする。バサバサ良く動くからか肉質はちょっと硬め。だけど脂が程々に乗っているので味は良い。ドラムに次いで食べ易いところも美点である。残念なのは可食部が少ない所。

【キール】
ささみ。喉下の部分。肉質は硬く脂も殆どないのでパサパサとしている。スパイスも浸透足らずでハッキリ言って味わい薄い。特徴は骨が殆ど無いこと。圧倒的に食べ易い。可食部も多くてお得ではある。

【ヘッド】
これは非売品。「首チョンパした頭が店の奥にあるんでしょう?お願いだから売って~」と店の姉ちゃんに懇願してみても、そんなモノある訳が無い。折角ボデーが合体しても、ドタマがなけりゃあ完全合体にゃならんのだ。仕方ないから作った。素材は紙粘土。この歳にして初めて、フライドヘッドを塑像する事になろうとは・・・

ちょっと衝撃を伴う完全合体画像かも知れない。いや、私自身、ここまで鶏そのものの容姿になるとは、正直、予想してなかった。このリアルな立体感は何なのだ。いや三次元の鶏をさばいてる訳だから、組み立てれば立体に戻るのは自明の理ではあるのだが、それでも、しかし、頭では解っていても、そこに横たわる身長30cmを超える鶏の丸揚げ体は余りに生々しい。普段、ピースとして何気に食べているケンタッキーフライドチキンは、間違いなく鶏の身体の一部であることが否応なく直感できる。更に驚くべきは、頭を除けば、鶏のほぼ全身を利用している事実。食後の骨格標本はそれを如実に物語る。やはりケンタの弁は嘘じゃなかった。

まとめ:
私は、このレビューでケンタトリちゃんを茶化す積もりは毛頭無い。それどころか、ケンタトリちゃんは、頭以外、その身の全てを我々に献体してくれているのだ。こんないじらしいケンタトリちゃんを、決して疎かにしてはいけない。残す無かれ。骨までしゃぶり尽くせよ。そんな事を改めて痛感した、私にとって本当に意義のある実験であった。ケンタトリちゃん、全部食べたよ。ありがとう。

  • キール(ささみ)
  • リブ(胸)
  • ウイング(手羽)

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6位

ティーゲベック (小野田 / ケーキ)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2012/09訪問 2014/09/22

いけめんスイーツ大作戦 第十八回 -遂に出た味☆5.0!!しかも山口で!!信じられん(@。@;)-

遂に味☆5.0出現。但しあくまでイートイン&デコレーションが前提なので、そこはご承知置きの程をm(- -)m

孤軍奮闘、山口でオーストリア菓子に拘るお店。正直変わりモノである。しかしそのご出自を聞いて納得、モーツアルトなる、東京自由が丘の老舗オーストリア菓子店で働いておられたのだ。山口で独立された経緯は割愛しても、特筆すべきは著名なオーストリア菓子職人、カール・シューマッハ氏に師事されたと言う事実。氏はウィーンで一大チェーン展開する、コンディトライ・オバーラの総帥にしてウィーン名誉市民。つまり、オーストリア菓子のエッセンスを叩き込まれておられる訳だ。

【アップェルシュトゥルーデル(ホイップクリーム&バニラアイス添え)】\500

Appearance:
アップフェル・シュトゥルーデルはオーストリア銘菓。リンゴの薄皮パイ包み焼きとは聞こえがイイが、要はアップルパイなので決してイケメンじゃない。だがこの一皿、そんなアップルパイをものの見事に変身させている。ホイップクリームとバニラアイスのツートーン白色で挟み撃ちされたアップルパイ。デコレートされて始めて感じるゴージャス感。器のセンスも抜群で、ハプスブルグ家食卓の一皿とさえ錯覚しそうな高貴な姿である。

Structure:
薄焼きパイでリンゴとレーズンコンフィを挟んだウエットパイ。これが焼き立てならば、薄焼きパイがパリパリで最高なのだが。アプフェル・シュトゥルーデルのキモは生のリンゴから焼き上げる事。勿論、ココのもそうである。リンゴのコンポートを挟み込んでチャッチャと焼き上げる、なんちゃってアップルパイとは毛並みが違うのだ。

Taste:
残念ながら焼き立てではないものの、オーブンで軽く温め直されたソレはホカホカ。えも言われぬパイの香ばしさとリンゴの香気が香り立つ。余熱でジワリと溶け始めるバニラアイスをソースとし、ホイップクリームと共に口に含むその味わいは、酸味と甘味、グズグズしたウェット感、いや、そんな言葉では足りない、筆舌し難いリッチな味わい。もう参りました、と呟くしかないのである。間違いなく旨い。こみ上げる笑い・・・

Summary:
まさか山口でこれほどのイケスイに出会おうとは。未だにちょっと信じられないが、食べた瞬間の押寄せる快感は、思い出そうとしても忘れられない。オーストリア菓子は旨いけれど所詮は田舎菓子、と決め付けていた自分を猛省しきり。文句無しにオススメだ。と言う訳で、今回のオーストリア出張では、コンディトライ・オバーラで師匠シューマッハ氏の菓子を試して来た。師弟対決の後半は日記にて!!

  • アップフェル・シュトゥルーデル・ホイップクリーム・バニラアイス添え
  • 三位一体の最強プレート
  • ホンワカ温めパイからリンゴの香り立ち上る

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7位

フランス菓子 パティシエ ショコラティエ イナムラショウゾウ (日暮里、西日暮里、千駄木 / ケーキ、チョコレート)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2012/04訪問 2017/02/10

いけめんスイーツ大作戦 第四回 -省三様、コイツ旨過ぎです(@。@)-

パティシエ稲村省三・・・モンブラン大作戦で食べた、「上野の山のモンブラン」に私は感動した。その饅頭の如き地味な外観からは想像できない優しくも力強い味わい。並大抵のパティシエでは断じてありえない。私が最も共鳴する美点、それは氏が創るケーキが持つ庶民目線の優しさ。日本ケーキ界のフロントラインにしゃしゃり出る様なパフォーマンスもプロモーションも無い。だけども食べれば分かるのだ。その食べ手に向けられた優しさに富んだ眼差し。正直、イデミ・スギノの対極にあるような地味さだが、私は同じように敬愛できる。今回このイケスイを実食して、その確信を得るに至った。

【ドームショコラ】\530

Appearance:
ココはチョコレートケーキ専門店。鶯谷の本拠「イナムラショウゾウ」に比べると、流石に品数は限られるが、居並ぶケーキ達とイートインスペースの雰囲気は、とても地味だなんて言ってられないハイエンドなセンス。そんなお店の一番人気がコイツなのである。全体のシェイプは半球形の正にドーム。結構に大振りなこのドームをじっくり眺めて見れば、輪郭は微妙に揺らいでいて、全体的にポワンとした印象の優しい造形。決して食べ手に違和感を抱かせないこの自然さが好ましい。表面にはグロッシーなゼリーコート。夕暮れ時の日暮里住宅街が、まるで魚眼レンズの様な表面に映り込む。何と美しい事か。トップには、このプワンとしたドームをキリリと引き締める、省三ロゴ入りの割りチョコレートの薄板。シンプルでいて、非常に効果的なアクセサリーである。

Structure:
グロスコートの下はかなり薄付けの濃厚なチョコレートソース。その内側には、表層に比してぐっとマイルドな雰囲気のョコレートムースがミッチリと詰まる。中心部にはチェリーコンポートとヘーゼルナッツクリームが鎮座。外から内に向けて、濃から淡に変化する茶系グラデーションと、紅一点のチェリーが織り成すコントラストは、派手さこそ無いが落ち着いたセンスが光る。ベースは薄作りのアーモンドスポンジ。この小技を使いつつもシンプルかつ大胆に見える構成は流石である。

Taste:
フォークを入れればヤッパリな~。ソフトで優しい感触が指先に訴えかけてくる。決して、フワフワ、ブワブワな安っぽい柔らかさではない。ミッチリと身が詰まっていて、重みを感じる絶妙の質感。もう、この感じが省三イズムである。その味わいは流石の一言。上質カカオの優雅な風味、決して嫌味なほど強くなく、コレしかないと思えるバランス感。そこにチェリーの酸味と、ヘーゼルナッツのナッティな芳香が絡んでくるのだ。バランスの妙。チョコレートケーキでありながら、それ一本槍と思わせない優しい味わいには、ちょっと唸ってしまった。これまで食べたチョコレートケーキの中では、文句無しの最高峰。

Summary:
チョコレートケーキが苦手な私も流石に舌を巻いた。凄く旨い、と言う他に言葉は無い。悪いけれども、コイツに比べたらオーストリア・ウィーンのホテル・ザッハーや、同じくカフェ・デーメルの「ザッハートルテ」も、もはや勝負にはならない。構成コンセプトがまるっきり違うのは百も承知だが、その上で敢えて言うならば、コイツの優しさに満ち、かつビシッと芯の通ったキャラは本当に素晴らしい。食べれる幸せを感じてしまった。

  • ドームショコラ
  • 景色も写り込む透ける肌
  • 省三ロゴが逸品の証

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8位

丸山吉平 (浅草橋、新御徒町、仲御徒町 / とんかつ)

3回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥3,000~¥3,999 ¥1,000~¥1,999

2018/03訪問 2018/04/01

最廉価メニューを初めて試すの巻

私的には・・・国内最高峰トンカツ。豚が活きている。
閉店15分前に店着したら待ち2人目で接続。今や頂上トンカツ店の一軒として認知されたお店だけれど、これなら拍子抜けするほど普通。流石に開業して数年も経てば落ち着くのだなと。で、券売機の前に立ってボタンを眺めてて笑った。「最高の接客おかわり無制限」なるメニューは0円、まあ、大将流のアイロニーである。更に笑ったのが「店長に呼ばれる前に座る権利」が1億円だって。こりゃ更に極め付きの大将の皮肉なんである。どっかの大金持ちがマジで1億円払わないかなぁ。でも1万円札を1万枚券売機に挿入しなきゃならん訳で、ウィ~ンと3秒で引き込まれるとしても、そんで休みなしに挿入したとしても、実に8時間30分を要する訳で、とうに営業時間は過ぎてるのである。じゃあってんで、100万円の札束を100個ドンッとカウンターに置いたとしても、「ちゃんと食券を買って下さいよ」と大将に言われるのがオチなんであって・・・そんなこんな考えてるうちに(←バカ)丸山吉平の最廉価メニューがカウンターに置かれた。

【ロース+単品ご飯】1400+200=1600円
券売機の表示から察するに、ローストンカツのグレードはロース→ロース200(たぶん200g)→ロース250(恐らく250g)、ロース300(察するに300g)となっている。この等差数列に従うならば、最廉価のロースは150gって事になるんだが、目の前のソレの量感は150gにしては妙に割腹が良い。何でこんな所に拘ってるかと言うと、豚も生きもの、当然ながら肉にも個性がある。実際、掃除を済ませたロース塊一本と言っても、当然旨い部分と味落ちする部分が連続的に繋がってる訳で、ソイツは包丁を入れて行かないと分からない。オーダー順に依って悪い部分が巡ってきたらそりゃご不幸。なので、次のカットは少し味落ちするだろうな、と大勝が判断したならば、気持ち厚めにカットしたりもする。それがせめてもの良心ってもんだ。と言う訳で、肉の重量は良い意味でブレてる事もある。だから肉重量は必ずしも精緻に揃えられてる訳でもない。と言う裏話。

閑話休題。

ともかく1400円の最廉価メニューってのも、丸山吉平トンカツに馴染みがない方には「高いじゃないの!?」となるんだろうが、まあ喰って見て下さいな。それでもコスパは十分に旨いから。ベースの肉キャラは紛う事無く林SPF豚だし、適切な熟成とブレない揚げもハイエンドメニューと変わらず手抜き無し。要は脂の載りや刺し様などで決まって来る、付加的な味のリッチさが違うだけで、そりゃ値段が違うんだから当然なんである。逆に程々の脂身でサクリと喰える身軽さがあって、もしかしたらデフォルトはこれで良いんじゃないかしら、そんな気もしたり。要は気軽なんである。

【まとめ】
このメニューなら、別注の白飯を頼んで、岩塩やチョビットソースを垂らして白飯のオカズとして丸山トンカツをかじっても罪悪感が少ない。ホント気軽である。トンカツ定食って気分でガツガツ喰えるのも、たまには良いもんだ。最廉価メニューであっても、やはり丸山吉平旨し。
店主殿の撮り食べ嫌いを慮って本日は撮影一切無し。喰いに集中する。添付の画像は過去撮影分なのでご了承を。

【吉平リブ】3400円
実に久しぶり。すでに我が国を代表するトンカツ屋の1軒に認知されて久しいが、相変わらずそのクォーリティは超絶。ソースはおろか、調味用の岩塩さえもレフューズせざるを得ぬ私。豚肉&ラードの風味だけで喰いたくなるトンカツは、世にトンカツ屋だらけとあっても、そうそうあるもんじゃない。左端の一切れから、右端の一切れに向かって、休みなくただトンカツだけを喰らうのだが、それでも進む火の入り。ミディアムレアの林SPF豚の、センター部分の僅かに透明感を伴う桜色が、余熱で火入れが進むにつれジワジワと白地へ変身して行く。それに伴い大胆に変貌して行くテクスチャと風味。肉からトンカツへ。注意深く味わえば、それこそ二切れ毎に、そんな変化を感じられる。こんな喰い方を強いる、いや強いられたくなるトンカツって、悪いが他に無い。だからしてこのお代は、適正であるどころか、実は安いと言うべきなのだ。

【まとめ】
丸山トンカツは生モノだ。刺身なんかより遥かにずっと生きモノだ。もう豚が活きている。屠畜され、熟成され、掃除され、パン粉と玉子まみれにされ、挙句にラードでジャアと揚げられたとしても、それでも相変わらず活きている。こんな豚肉、喰ってみたいと思いませんか?
昨夜はトンカツオフ。大門の名店でトンカツ三昧したはずなのに、何故か満たされぬ豚欲。肉欲開放状態のまま〆られてない感覚。こりゃ豚欲駆け込み寺にダッシュするしかあるまい。仕事なんてサボってやらぁ!!

2014年3月11日

開業から一年半を経て、落ち着きを見せるかと思いきや、益々地味に爆走する丸山吉平。とうとう念願のバラカツ(正確にはリブロースカツ)がラインナップ!!

【熟成リブロース定食】2800円
これを高いと思うなかれ。380gもあるのだから。今回の豚は熟成リブロース。ロースブロックのサイド、バラへと続く部分。なのでその脂の刺し具合は、一見バラと見紛うほど。こいつをいつものレア揚げで喰らう。グムッと箸で拡げれば、ミチチッと刺し脂の部分で破断して行く豚。僅かな筋感を伴う豚を、つまり熟成されてるとは言え、無用には柔らかくは無いこいつを噛みしめる。これだけ脂が刺してるって言うのに、380gの量を殆ど感じない、素直で嫌みの全くない豚脂。これが林SPFの真骨頂か。

やはり、何を喰っても、何度喰っても感じざるを得ない、唯一無二のビビッドさ。やはりここのトンカツは活きてい。冷えたなまくらトンカツ、つまり活きていトンカツになるまでの、限られた僅か数分間で一気に喰い切る刹那さが素敵だ。一切何も付けずとも無心喰いできてしまうトンカツは、トンカツ好きの皆さんにはお叱りを受けるだろうが、私にはやはりここのトンカツだけだ。他のトンカツと明らかに離れた所に、独りポツネンと立つぴょんカツは何時も飛び切り恰好良い。

2013年12月13日

独り営業体制になって数ヶ月。結局大将、弟子を採る事無く、バイトを雇う事も無く、昼営業メインで奮闘中。子育て優先で、奥さんが再びお店に立たれることも、当分ないだろうし、どうやら大将、細々昼営業メインで、行けるトコまでやってみようって腹を括られたご様子。まんず、収入と言うよりも、ご本人の体力がネックになるんだろうけど。そりゃ独りはシンドイでしょうよ・・・

【ぼーヒレかつ定食】2000円
今日は揚げに入る前に「大将がベストと思う揚げで」と一言注文。それで出てきたのがコレ。もはや豚のたたき揚げと言ってはばかり無しの、ウルトラレア。正直、一見したらギョッとするほどだが、コレが大将の理想揚げって事なのだろう。とにかく、ヒレカツの見方を変えてくれたメニュー。焼きたての鶏ささ身が無用に旨いのと同じ。ヘンな匂い皆無の林SPF豚を、二、三週間ジックリ湿式熟成させて、ザクッと揚げる。活きのイイ豚肉って形容したくなる、唯一無二にして屈指の個性的ヒレカツ。

【大特ロースかつ定食】2000円
こちらもヒレカツほどでは無いが、かなりのレア度。レア豚をリスキーと感じる方や、肉はキッチリ火入れしなきゃって方には、絶対に受け入れられないレベル。じゃあ、お前はどうなの?と訊かれれば、もう少し火が通った方が、正直好み。とにかく今回は、お店で提供される平均的揚げじゃなくって、大将の良しとする揚げを食べる事が目的だったわけで、なるほど、賄いではこの揚げで食べられてるのねってのが良く分かった次第。全く色んな経験をさせてくれる、得がたいお店である。

2013年8月8日

さて今回は、揚げ師は同じでも、いつもと違う豚を揚げると味わいはどう変わるか!?と言うお話。ぴょんカツは、デフォで林SPF豚なる銘柄豚を用いるのは周知の事実だが、たまに異種銘柄豚のストックに出会うことがある。それが今回の素材、柔豚。「今日は柔豚が残ってるけど食べてみる?」との大将お誘いに、さっさと乗っかる事にして。今回は当たり外れは置いといて、ココは授業料の積もりで、「ハイ、柔豚でお願いね♡」

【柔豚上肩ロースカツ定食】1900円
柔豚なる銘柄豚の肩ロースを四週間熟成させたスペシャル豚。今回は、ドンと大判一枚じゃなくて、中サイズカットの二枚乗りである。コレで概ね200gと言うところか。衣は何時ものぴょんカツ流儀で、絶妙にピキピキ尖がったセミ・ドライな極上モノ。だけども一口食べれば、ソコにある味わいは、林SPF豚とは相当に異なると言う、オドロキの展開である。

四週間熟成の効果だろう、肉質は非常に柔らかい。もしかしたら、若干バンバンしてるかしら。その繊維感に乏しい噛み切れ具合は、トンカツに柔らかさを求める向きには、かなり優れた肩ロースなのだろうが、私にはちょっとお節介が過ぎるかも。しかし更に印象的なのは、食感よりも味である。脂がトロ~ン、コッテリ。量じゃなくて脂の質がである。まるでトンカツから染み出して舌に絡み付くようなネットリ感は、林SPF豚のサラリとしたクリアな脂質と大きく異なる。だからして勿論、肉の味も、どちらかと言えば濃くてマッタリ。

恐らく、この柔豚トンカツにハマる人は、林SPF豚では物足りないだろう。例えるなら、水生インクのボールポイントペンを使った、カチリとシャープな描画が林SPF豚だとすれば、まるでマジックペンで描いたラフ画の様な柔豚。ちょっと粗暴気味なキャラである。コレは全く好みの問題であって、優劣を決めるモノでも無いのだが、私的には、ぴょんカツの素材としては、やはり林SPF豚を断然推したい。結局、この豚ありきのぴょんカツなのだろう。

豚が違うだけで、ココまで味わい変わるか!?それが今回のワクワク&オドロキ。丸山はきっと、林SPF豚のキャラを活かし切る揚げなのだ。素材に惚れ込んで初めて、素材を活かす調理ができるのだろうなと再認識した次第。林SPF豚のキャラにピタリと合った、シャープにして力強い揚げを旨とするぴょんカツ。豚と揚げが完全に協奏している。やはりコレ以上のトンカツは無いんじゃないのかなぁ・・・

2013年7月1日

今夜は丸山でトンカツオフ。マイレビュさんとの三人パーティー。とにかく今夜もムチャってしまった。これだけトンカツを一度に喰ったのは初めてじゃなかろうか。何せ三人でシェアしたものの、一滴も飲まない私、トンカツだけで推定700gは喰った。カロコン目的で算出した、本オフでの総摂取カロリーは、実に3666kcal!!死ぬぞお前(- -;)

【三種トンカツ食べ比べ】
三週間熟成肩ロース
一番のオキニメニュー。熟成に伴いインフレした豚味、ドバッと軟化したホロホロ肉質。それでも、刺し入り脂の間でグネグネとのたうつ繊維感は、噛むたびに、柔らかくもキレの良い歯応えを返して来る。肉を噛み喰うシアワセ。更に激しい旨みに舌も狂喜する。

ロース
熟成肩ロースがホロホロ濃厚味わいだっただけに、ミチッと詰まった赤身のシルキーさと、林SPF豚のスッキリ脂が、実にフレッシュささえ感じさせる、かなり別世界の旨さ。相変わらずビシッと肉に喰い付いた、香ばしさ極まるビンビン衣も唯一無二。

ヒレ
正直、コレほどヒレが旨いと思った事が無かった。何!?この瑞々しさは。ミディアムレアの赤みが消え逝く僅かな間にこそ味わえる、林SPF豚ヒレの本領。ぴょん吉さんが、このヒレの味わいをして、トンカツ屋になろうとしたって言うのも、少し分かった気がする。

【ロースカツカレー】
まだ喰うか、お前!?いや、〆のつもりでカツカレーを食べようと。「ご飯が足らないから、賄いのナポ盛っとくし」とぴょん吉さん。その結果、〆のはずの一皿は、もはや凄まじい姿に。こりゃまるでトルコライスカレーじゃないの。それでも、これだけ喰ってても、口に運べば、「う~ん、旨い!!」と口走ってしまう私は、完全に蛙教祖様に洗脳されてしまった様である。

コレで結局3666kcal。666は悪魔の数字。ココのトンカツは、メタボへと誘う悪魔のお味。以上、ご馳走様!!

2013年4月18日

【ロースカツ定食】900円
ぴょん吉さん、最近は豚熟成に凝っておられる。ちょっとナイショっぽいのだが、どうやら二週間程、カット前のブロックのまま冷蔵庫で放置プレーの様子。当然ながら豚肉の自己消化が進むので、筋繊維が分解されて柔らかさアップ。筋繊維蛋白アクチンとミオシンが分解されれば、当然アミノ酸が生成されるので、上手くすれば肉の旨みもアップ。そもそも昔から言うではないか。「肉は色が変わってくる頃が旨いのだ!!」

さて、今回のロースカツ定食は、提供価格\900と、このお店で最も廉価なトンカツメニュー。早速揚げたてを何も付けずにザクリと噛めば、なるほどコレまでのロースカツより、明確に柔らかい。こりゃあ肉が化けたな・・・正に熟成効果である。一方、旨みの方は余り変わった気はしない。ここら辺り、味が変わる程には熟成が進行していない。ともかく、一段と噛み心地が向上したロースカツは、手放しで喜べるカスタマイズ・トンカツ。

こう言う具合だから、ぴょんカツってのは何時も食べてて楽しい。精々一月か二月に一度しか行けないけれど、その度にトンカツの味わいが変化している。あるいは進化と言うべきか。何時も変らぬ味ってのにも、安心感と職人気質を感じるが、その対極にある、ぴょんカツみたいに常に変動している実験的皿も、これまた捨て難い。「コッチの方がもっとイイかな?」って言う、職人殿のその時々の指向に、自分の波長がピッタンコ合えば、そりゃあやっぱり虜になっちゃうのだ。

2013年2月27日

【肩ロースカツカレー豚角煮マシ】1900円
そもそも、カロリーコントロール中の私は、今日はヒレカツを喰いに来たのだ。ご飯小盛りで。なのにぴょん吉さんたら、「ミニミニさん、今日は肩ロースカツカレー食べてみて。豚角煮マシで」と来た。ちょっと待て~、何処のお店が客の喰うもの決めるんかぁ!?でも、仕方ない。ぴょん吉さんのオススメを反故にするなんぞ、男ミニミニの名折れである。幾らでも喰いまっせ~(^ ^;)

画像でその迫力が伝わるかどうか。とにかく、カレー皿から天井に向かって大きく盛り上がってしまったその山は、これを二郎インスパイアと呼ばずに何と呼ぶか!?である。先ずはメインの肩ロースカツ。1月からのレギュラーメニューだが、コイツはめちゃくちゃ旨い。もうぴょんカツ軍団の中では、最高位のお気に入りになってしまった。特にこの一枚は、肩ロース部位の中でも、最もロースよりの最上質な一枚。何時ものピキピキに尖って立ちまくりの衣に包まれる豚は、赤身に食い込む脂身と、のたうつ肉繊維が最高の歯応え&甘い味わい。ちょっと記述し難いぐらい溜まらん旨さである。

カレールウも、昨年秋の開店以降、徐々に進化中。今回のは、ベースに豚骨スープを加えられたとの事である。そのお陰で、ルウはかなり分厚くて、相当に円やかな味わいに変貌した。ちょっと驚くほどの変わり様。その代わりと言っては何だが、開業当初の、フレッシュ&シャープ&スパイシーな味わいは薄まった。恐らく殆どの方は、現状ルウの方が旨いと感じられるに違いない。しかし天邪鬼な私は、率直に言うと、開業当初のルウが好みではある。

トドメはオプショントッピングされた豚の角煮。1/3はベッタリと脂身の張り付いたバカデカイ肉塊、暴力級の煮豚である。ソイツが三個もルウに埋まる。そのお陰で、もう皿の淵からルウがこぼれんばかりの、凄まじい状態になってしまっている(^ ^;)余りにもウレシ過ぎるお姿。口に含めば五秒でとろけて無くなってしまいそうな、トロントロンな煮豚。肩ロースと合わせて、軽く350gはあるだろう、豚まみれな皿。食べ応えなんて生易しいもんじゃあ済まされない、骨の髄まで豚を堪能できる、これはやはり極上の豚皿であった。

とにかく、理屈でなくて旨いのだ。何度来ても新しい発見がある。胸の奥にジンと来る、得体の知れないこのモノは、料理の味わいが、単なる味だけでなくて、創り手の想いや食べ手との機微の上に成り立っていると言う事を、否応無く教唆してくれる。私にとってココは、喰う喜びを感じさせてくれる桃源郷なのだ。

2012年12月27日

【上ロースかつ定食】1200円
今日は仕入れたばかりの林SPF豚ホールロースを見せて頂いた。「この辺りが特上ロースで、ここらが上ロース、そんでココがロースとカツカレー用で・・・」大将の丁寧なご説明。豚一匹から二本取れるロース。その片身で重さ4.9kg。表示ラベルの加工日を見れば12月27日。バリバリの新鮮ロースである。あばらの跡も生々しいロースは、生で見てても旨そうだし(@。@)

今日は機会に恵まれて、大将と二時間くらいお話できた。色んな事を聞いたのだ。あんな事♡から、こんな事☠まで。でも、すんませんが、ココでは書けない事。だって、他の有名トンカツ屋さんが困るでしょ(^ ^;)そのお陰で、吉平とんかつの旨さの謎がまた少しわかちゃった。大将と話するのはホントに楽しくて飽きない。

そんな大将からのご依頼
ファサードに「アルバイト募集」と張り紙がしてあるのに気付かれた方がおられるだろうか。アルバイトってなってるけれど、大将、結構マジで弟子を探しておられる。そのうちに行列必至のお店だから、当然手を打っておかにゃあならん訳で、大将の計画は着々と進行するのだ。勿論、ホール係も皿洗もしなきゃならんし、閉店後の片付けもミッチリ。だけどそソレだけじゃない無い。「吉平とんかつ」のイロハを学べるチャンス。職人を目指しておられる志ある方、是非とも師匠にコンタクトされたし。私が申し上げるのは甚だ僭越なのだが、実に魅力あるお方だから。

2012年11月20日

【特ヒレかつ定食】1800円
これは大将が最も推す一皿。蒲田にある某トンカツ屋で食べたこの林SPF豚ヒレ肉の虜になった大将は、結局、その某トンカツ屋を師匠と仰ぎ、とうとうご自分でトンカツを揚げ始められる事になった訳だ。この特ヒレかつについては、画像をご覧下さればレベルの高さがお分かり頂けるだろう。完璧なミディアムレア。やはりロースにも増して、上品でアッサリした嫌味のない旨みには、もはや爽やかさを感じてしまう。溢れんほどの肉汁。何なのだ、この瑞々しいトンカツは。セットのキャベツも、豚汁も、白飯さえも口にするのがもどかしく、ひたすらヒレカツを岩塩で味わうミニミニ。これまで喰ってたヒレカツは一体何だったのだろう・・・。この定食、その価格は何と1800円。アンビリーバブルである。有名店なら夏目さん三枚コースでもおかしくない。心配して大将に伺えば、これでも一応儲けは取れるそうであるが、こりゃあちょっと安過ぎやしませんか!?この品質を維持できるなら、早々に行列店の仲間入りだろう。安くて旨い、じゃない。旨いのに安い、と言うべき。

【カツカレー】900円
特ヒレかつ定食を完食した直後の連食。なので、お腹は結構満腹なのだが、にも関わらず三口喰って笑った。コレも相当旨い。ちょいと酸味の効いたルーは、唐辛子でキンキン辛いと言うよりも、胡椒系のジンワリくるスパイシーさ。ある意味、ごく普通のお家カレー的な素朴さだ。このルー、ココの特徴だろう、硬めに炊き上げられた白飯と妙に相性が良い。更にロースカツの旨さは、そこいらのカツカレーのソレを遥かに凌駕している。特上ロースかつとは一変、薄め故にシッカリ火入れされたロースカツは、それ自体が定食のメインになるクオリティ。これが900円ってのはイカンでしょ大将。CoCo壱カツカレーなんて蹴散らしてしまう戦闘力である。

2012年11月19日

【特上ロースかつ定食】1500円
何と言っても拘りは豚肉の出自である。千葉県、株式会社林商店のSPF(Specific Pathogen Free、特定病原菌フリー)豚。分かりやすく言えば、帝王切開で無菌分娩させた後に、衛生飼育手順に則って育てられた健康豚。極論すれば、レアな火入れでも豚特有の感染症リスクが無い。大将曰く、この林SPF豚の味に出逢う事無くして、トンカツ屋丸山吉平の実現は無かった。大将がそれ程に入れ込んだ分厚くスライスされた豚ロースは、選び抜かれた中屋のパン粉をビッチリと身に纏った後、ミヨシラードの海で、9分間ユックリと揚げられる。金網に引き上げられた豚を、更に余熱でキッチリ2分間火入れしてから丁寧にカット。その断面は、中心部分が淡いピンク色をしつつ、断面に肉汁が薄っすらと染み出す完璧なミディアムレア状態。

こう言うハイエンドトンカツは塩食べに限る。大将手製の甘口シャボシャボソースも悪くは無いが、やはり岩塩で豚肉の風味を殺さずに食べたい。岩塩は白と黒が支度されるのだが、黒岩塩の風味、そのまるで茹で玉子のような硫黄な風味が、トンカツに何とも絶妙に良く似合う。歯を入れれば、ガッチリと肉に喰い付く衣のシャリサクとした食感、ビッチリと張り付く端麗な脂身から口中に溢れ出す甘味。何とも旨い。赤身部分はアッサリとした嫌味のない味わい。中心部は若干粘着質な歯応えだが、これはミディアムレアのジューシーさと引き換えなので致し方あるまい。これは流石の揚げだ。シッカリ揚げ嗜好の方には抵抗があるかも知れないが、そんな時はウェルダンで、と大将に伝えるのが宜しかろう。大将はホンマに豚マニアだ。

付属の豚汁も大したもの。一見すると地味なのでオマケチックに映るのだが、とんでもない。大将が如何に豚好が好きで、添え物の豚汁にまで手を抜かれていない事が良く解る。硬めに炊き上げられた白飯も男っぽくて好みである。こんなハイレベルの特上ロースかつ定食を1500円で出されると、そこいらのトンカツ屋はちょっと勝負にならなかろう。相当にコスパ高しと断言したい。

【まとめ】
私がトンカツを撮影していると、視野の外から大将の杞憂が私に伝播する。とうとう大将が口を開かれた。「写真撮るより、早く食べてよ。ほら、撮影してる間にも、真ん中のピンク色が褪せて行くでしょ!?」・・・こう言うのを「モノに拘る」と言うのだ。この一言で私は、トンカツ屋としての大将の成功を確信した。トンカツ屋丸山吉平が、自他共に認める一流に伸し上がるまで、私は全面的に応援する。大将の理想とするトンカツを、これからも突き詰めて欲しい。

  • ロース+単品ごはん
  • 刺々しいエッジ立ちまくり衣
  • 丸山最廉価トンカツの断面

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9位

ソル レヴァンテ (表参道、明治神宮前、外苑前 / イタリアン、カフェ、洋菓子)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2012/09訪問 2014/09/01

いけめんスイーツ大作戦 第二十二回 -青山パヘ対決、後手-

青山パヘ対決。恐らく、日本一お高くとまった街青山で、パヘをお題に今時イケスイを斬る。そんな趣向の第二回目。後手となるウルトライケスイの登場である。お店の知名度は、もはや説明を要しないだろう。日本屈指のイタリアンカフェ。

【Coppa di Gelato alla Crema Formaggio con Torino al Ciocolato】\1365

Appearance:
「クリームチーズジェラートカップ、トリノチョコ添え」って所だろうか。こうして素材を連ねてメニュー名にしてくれるのは分かり易くて有難い。この一杯は明確にデザインがある。毒々しいパッションフルーツと、ピスタチオが散らされたチョコビスケが容赦なく突き刺さるグラスは、その色彩と相まって殆ど前衛生け花の様相である。赤、白、緑のイタリアントリコロールに、駄目押しの黒と黄。その原色乱舞の色彩デザインは、さしものピエールエルメパヘ(前報参照)も裸足で逃げ出す押し出しの強さ。ドッカーンと炸裂するラテンの息吹。

Structure:
パッションフルーツとチョコビスケをアクセにする本体は、クリームチーズジェラート。パッションフルーツとラズベリーのソースが相がけされてテラテラ、ハデハデ。グラス中央部にはゴッツリした、ひたすら密度の高いブラウニーが充填される。グラス底には後味をキリッと〆る為のブラッドオレンジ。前報でも思ったが、コイツも構成がシンプルでスカスカ。この内部のスカスカ度合いは、ある意味自信の表れ。だとすれば、意外と一流パヘを見分ける目安になるやも知れぬ。

Taste:
このイケスイ、何と言ってもその味わいが最大の魅力。ウルトラ濃厚なクリームチーズジェラートの味わい深さよ。かけられるソースは殆ど甘さナシ、苦味オンリーと言える渋さ。中段のブラウニーもコレまで食べたことが無い様な濃厚で緊密な重い味わい。あのキー○マンハッタンは、ブラウニーが自慢の様だが、コレに比べれば高校生レベルである。このクリチージェラートをブラウニーに付けて食べた味わいは、もう想像を遥かに超えた。またまた笑うしかない状況である。駄目押しの如く、全体にハーブのコロンがきつめに香るイタリアの伊達男は、パッショネートラテン系イケスイである。

Summary:
ビビッドの極み。鮮烈な味わい。日本人がイメージする最高のラテン感覚。その想像点の先を行く味わい深さには舌を巻くしかない。この、アクセル全開のポジティブ感は明らかにイタリアンだが、彼の地イタリアには、こんな極上スイーツは、実際にはない。それほどまでに、日本製スイーツのレベルは高いのだ。

  • Coppa di Gelato alla Crema Formaggio con Torino al Ciocolato
  • クリームに頼らぬスケルトンパヘ
  • このアクの強さよ・・・

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10位

ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ 新宿伊勢丹店 (新宿三丁目、新宿、新宿西口 / バームクーヘン)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2012/05訪問 2017/02/10

バウム戦国物語 第四回 -本場ドイツの底力、最高峰バウムに参った-

ホレンディッシェ・カカオ・シュトゥーベ・・・ドイツ・ニーダーザクセン州の州都ハノーファーで1921年に創業したカフェ&コンディトライ。創業者は菓子職人マイスターのフリードリヒ・バルテルス氏である。氏の名前は、いまでもカフェの看板であり続けると同時に、このバウムクーヘンの箱にも刻まれている。現在店を守るのは三代目。この三代目の経営戦略で1994年以降積極展開を始める事になる。そして今、この日本でも氏のバウムクーヘンを味わえるようになったと言う訳だ。

現在、店舗は今回の伊勢丹新宿店の他にもう一店、JR大阪三越伊勢丹のみである。メインはネット通販。これが今流のやり方なのかも知れないし、地方居住者にとっては喜ぶべき事なのだが、それにしても慎重に過ぎる店舗展開ではある。ココ伊勢丹新宿店の店舗は、並み居る競合バウム店とは一味違うブティックライクな造り。イメージカラーであるブルーを基調とする清楚にして上品なアートディレクションは、ドイツと言うより北欧あたりの趣。

【バウムクーヘンS】\2100
重量は約400g、直径18cm強の定番サイズ。価格も、定番ユーハイムと同一である。しかしながら、その出来映えは、本家ユーハイムを寄せ付けない高品位な本物バウムクーヘン。そのレシピは、国立ドイツ菓子協会制定のバウムクーヘン規格準拠。折り紙付きの硬派なヤツなのである。

先ずは、その素朴極まりない外観を見て頂きたい。添加物一切無し。正に小麦粉、バター、砂糖に卵のみの混合物が焼成されてなる、素の素材色。一層、一層の焼きを緩めにしていると見えて、その年輪はユーハイム程には明確ではなく、ちょっと頼りないくらいに淡いモノトーン。しかし、目を近づけてジックリ焦点を合わせるならば、その微細にして繊細な気泡の様子、あるいは明らかに膨張剤を用いていない、軽く締まった生地のニュアンスに、本物バウムの気品を感じる。

この外観の好ましさは、食んでみても同じ。わざとらしさが全く無く、ナチュラルながらもキッチリと香る上質なバターの芳香。控えめの中にもしっかりと主張する芯の強さ。その食感は、膨張剤を用いない事により、程よいボソボソ感があり、その締まり気味の生地の喉越しも、和製バウムのしんなりソフト感とは、やはり立ち位置が明確に違う。これこそ、本来のバウムクーヘンと言って良い。

本家ユーハイムのバウムも、これと同じ方向性であることに疑いを挟む余地はないのだが、異なるのはその完成度。ザックリとしたキャンバス地のようなニュアンスは同じなれど、コイツはそれでいて更にグッと繊細。手に取った時の微妙な弾力、口に含んだ時の優しい口当たり、その味わいはクリアにしてメリハリが十分効いている。ユーハイム信奉者としては、その差にちょっと悲しくなってしまう程だ。

まとめ:
バウムクーヘン規格に準拠した、正々堂々、王道のバウムクーヘン。そのアートディレクションもハイセンスで、ソフトとハードがガッチリと噛み合った隙の無さは、ちょっと恐ろしいくらい。この意匠、やり手プロデューサーの商魂が見え隠れして少し鼻に付くけれども、その極めて完成度の高いオーソドックスな味わいが、そんな些細な事は忘れさせてしまう。バウムクーヘンの最高峰の一つと認めざるを得ない。

お知らせ:
またまたオーストリア出張となりました。一週間ほど留守に致しますm(- -)m

  • バウムクーヘンS
  • 外周は砂糖衣(フォンダン)
  • 繊細で優しさの漂う木口

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