2回
2017/04 訪問
RAKERU/他愛ないけど侮れぬ午後
新宿駅のホームから地下に潜り、そのまま武蔵野会館に突っ込む方法をようやく身につけた。
いつも要領の悪い私としては、これは上出来だと思う。しかしいっつも思うんだけどこの三機並んだエレヴェータ、いったいどんな制御なんだか全く以てエコノミーでない動きを繰り返していて、全然下りてきやがらない。
―― こんな時、どんな顔していいのか分からない ……
<H29.4.23>
「RAKERU」
こちらの屋号は余所の街でも見かけていたが、私を跳ねっ返し続けていたのはやはり“オムライス”というワード。
ケチャップライスの主役であるチキンが苦手な私にとって警戒すべき、というよりも通常はもはや敬遠すべき相手となっているのだ。しかし本日、時間も時間だったのでそこはもう観念し、ままよと階段を下りていった次第。
エントランスに脚を踏み込むなり、非常にレスポンス良くいらっしゃいませときた。
けっこうに広い地階のフロア。BGMは何か鳴っているんだけどなんだか分からず。フレッシュでチャーミングなウェイトレスたちは、揃ってピンクと白の細かくクロスしたチェック柄の割烹着(に擬態した何らかのもの)をスパークさせていた
“KUKUオムライスとハンバーグ” @1,274也。
摩訶不思議なネーミングを持つそれは、それは立ち食い蕎麦屋で「今おそば茹でてますのでちょっとお待ちください」となった程度の、要は洋食レストランとしては異常に迅速なスピードで舞い降りた。同時にそのことは、私の中で首の皮一枚で繋がっていた淡い期待の糸を無情にもぶつりと断ち切ったのだが、しかし !!
「パンはぜひ温かいうちにお召し上がり下さい」
との指令に従って早速パクついたパンの美味いこと ! 決してパンとして図抜けたものじゃないのだろうけど、そう言えば温かいパンなんかここ暫く食べてなかったもんで。そしてまた織り込まれたバターの塩っけとも大変上手く相乗している。
またハンバーグもマスプロダクツを予感させなくもないが熱々、加えてジャガイモまるごとも熱々でちゃんと柔らかくなるまで適切に火が通されており、且つテーブルにはそれをやるときの生命線となるであろうNaClもちゃんと備わっているではないか !
また本日の勝因の理由として、メニュウに中身がドライカレーのオムライスファミリを見つけられたことも大きいと思う。子供みたいな話だが、口の中で“捜し物”をしながら食べ進むということをしなくて済むということは、私にとっては非常に嬉しいことだ。
前後してしまうがとりわけ感心したことは、私の注文を聞いてテーブルにセットされたカトラリーセットから、的確に不要なものを下げた女の子の聡明さ。こちらのウェイトレスさんたちは皆お客さんの方向を向いているな、と思えるところを随所に感じとることができ、またそういった意識付けに成功しているお店の力量に感心させられた次第。
同時に私の隣の卓に着いた若い女の子同士の他愛ない会話、「私右利きなんだけど右の方が握力なくて、こないだ測ったら16kgくらいだった ……」 なんて漏れ聞こえてきちゃったらもう ……
2017/05/13 更新
ここのところ春のような陽気が続いていたが、昨日は午後から空気が入れ替わって、夜はまた随分と冷え込んだ。
午後、夕方も深まるにつれあの人からのLINEを待ってるんだけど、今のところ音沙汰無く。軽い落胆を覚えつつ、また半分やっぱりなとも思いつつ、でも会社のロッカーに一週間待機させていたその人へのヴァレンタインのお返しを、賞味期限もある事だしいずれにしてもどっかで消化しなければならぬこと、嵩張るの嫌だなと思いながらも持って出て、いつもの居酒屋で飲んでいたところで、やっと着信が入り ♪
で、その人行きつけの、いつも私が飲んでる Bar へ食べ物を運んできてくれるお店に向かう。
ちょっと重いドアをすべらせたら、その人はもう、一足先にカウンターの一番奥の席に着いていて、私はその隣へ。その人はノーメイキャップにアラレちゃんメガネをかけていたのだが、何か物足りない。私は訝って、何故木の枝にウンチを刺して振り回していないのかと問い詰めたんだけど、私の求めるものをその人から引き出すことなんて、悲しいかな、永久に無理な話だった ……
<H30.3.17 その翌日、新宿>
「オムライスレストラン RAKERU」
もう午後三時を過ぎていたので、細かな紅白のチェックの割烹着を纏ったチャーミングな女の子に誘われ、スムースに着席。
BGMは若者、とくに女子の囁きコーラス。それをウッドベースのメロディックなラインが底から支えるかたちとなっているが、果たしてこの音楽をどんなジャンルにカテゴライズすべきかを、私は知らない。
早速ペラのおすすめに一通り目は通したものの、さらなる希望を求めて、グランドメニュウをひろげる。そして考えに考え抜いて注文したそれは、なんだかんだ前回やって来たときの注文そのまんまか ……
“KUKU オムライスとデミグラスハンバーグ” @1,180
“コラーゲンたっぷりのコーンスープ” @280
外税で〆て 1,576円也。
コラーゲンというと、私の苦手とするグロい部分の動物性タンパクのような気がして、最初はちょっと抵抗あったんだけど、前回注文したときに既に、別段私にとってエネミーではないなとは感じていて、でもそれでも幾ばくか警戒しつつ。結果、しっかりとした塩っ気も手伝って、今回も美味しくやることができた。
ほどなくしてメインの、混沌の皿が到着。
ジャガイモまるまるにすべからく必須となるべきNaClは、当然のようにテーブルに備わっている。
パンに (無塩じゃない)バター、ハンバーグに下味&ドミソース、オムライスも、ちゃんと味の付いたドライカレー & 何らかのソース (なんだよその“何らかの”って)。
こういった一つ一つのものに、ちゃんと独立して食べられる調理としてのクゥオリティを与えるということが、とりわけこういったコンプレックス料理にとっては重要な気がする
この皿から私は、高倉健さん率いる「八甲田山」の弘前隊、一人一人がその過酷な冬山行軍を自己完結出来る力量を持った集合体 (チーム)であって、且つ民間の力の活用など、考え得るすべての策を講じた上ではじめて、悪魔と化した真冬の八甲田の攻略を成せるのだということを想起してしまった。
逆に力量のある者とそれほどでもない者の混成チームはというと、力のある者が弱者を庇っているうちに全体が消耗し、やがて全滅、ということに。
料理で言えば、味の無いものを混在させると、その皿の魅力がTOTALとして落ちてしまう、ということが言いたかったんだけど……