北落師門さんが投稿した未在(京都/東山)の口コミ詳細

北落師門の食いしん坊万歳(笑)

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北落師門 (60代前半・男性・神奈川県) 認証済

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未在東山、蹴上、祇園四条/日本料理

1

  • 夜の点数:4.6

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.6
      • |サービス 4.2
      • |雰囲気 4.2
      • |CP 3.8
      • |酒・ドリンク 3.8
1回目

2011/07 訪問

  • 夜の点数:4.6

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス4.2
    • | 雰囲気4.2
    • | CP3.8
    • | 酒・ドリンク3.8
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

「素晴らしい」という以外に表現が見つからない店

国内最高峰の割烹です。機会があり、お伺いすることができました。
七月とは言え、そろそろ夕闇が忍び寄る京都東山、円山公園。
行灯の灯りを頼りに、草庵のような佇まいのお店に辿り着きます。
案内されて店内へ。草喰なかひがしと同じ塗りのカウンターには10席。
静粛な空気が流れる店内。ご主人が登場すると、凛とした空気が流れます。

[この日の料理]
ご飯、赤出汁、焼き茄子とずんだ豆の冷製とジュレ、モロッコ豆の炊いたん、鱧の霜降り、お造り、
甘鯛豆腐の椀、和牛の炙り、トマトととうもろこしの冷製、八寸、倍貝、加茂茄子の冷製、酢の物、
焦がし湯、香の物、呉豆腐と蓴菜、晩柑のゼリーと19種類のフルーツ、シャーベット

席に付くと、まずはキンと冷えた梅のリキュールで。すっと暑さが引いていきます。
最初はお酒抜きで、茶懐石風の膳が供されます。
ひんやりとした焼き茄子の食感とずんだ豆のソースが涼しげです。
昆布出汁のジュレと焼き茄子の織り成す複雑な味の饗宴に、初っ端からやられました。
モロッコ豆の炊いたんもしみじみと美味。
赤出汁はキリッとした味わいが印象的。具の牛蒡餅は野菜の旨みが存分に出ています。

ご主人から一人一人に杯で一献ずついただいた後は、
お店の名前を冠した冷酒「未在」と共に料理を楽しみます。
鱧の霜降りは、鱧の肝、梅肉と新生姜、チリ酢の三種のソースと、
手前に添えられた青海苔のソースでいただきます。
独特のふんわりした食感の中に、みっちりと詰まった鱧の旨みを感じます。
それぞれのソースでを楽しめますが、特に青海苔ソースの深い味わいが印象的でした。

続いてはお造り。氷を張った大きな皿でどーんと供されます。
彩りは比類なき見た目の鮮やかさ。夏らしい清涼感溢れる皿です。
鮪は、300kgの境港産を辛味大根で。脂の乗りも最高。ただ、少しだけ温度が低いか。
昆布と醤油の煮凝りは鮪とうまくぷるるんと絡んで独特の食感。
愛媛の鯛は、噛み締めるとじんわりと滲み出てくる旨みが素晴らしいです。
柑橘系の酢と岩塩を合わせた塩酢でいただくと、鯛の旨みをより鮮烈に感じます。
五島列島の槍烏賊はねっとりした味わい。
その他、鮪の皮を炙ったものや針葱、長芋など、様々な付け合わせがあるのも楽しいです。

ここでお椀。甘鯛豆腐とよもぎ麺が入っています。
このお椀には圧倒されました。最初は淡々と静かに、やがて波のように旨さが広がっていきます。
次第に引き込まれていくような重層的な味わいは、ちょっと経験したことがありません。
湯葉で甘鯛を巻いた甘鯛豆腐も絶品。ふんわりと蕩けるような食感は格別です。
宮古島の蓬を使ったというよもぎ麺も、つるんとした喉越しと仄かな香りが夏を感じさせます。

焼物は、奥出雲の黒毛和牛の炙り。軽く乗せられたマッシュルームのソースでいただきます。
カリッとした焼き目と柔らかい肉、そして湧き上がってくる肉汁の上品な甘みが最高です。
別に添えられた実山椒のソースを掛けると味が締まりますが、無くても充分美味しいです。
また、下に敷かれた京野菜の付け合せも、野菜本来の味わいが良く出ています。
特に肉厚な鷹が峰唐辛子は、それ自体が美味な上に、ちょっと肉汁が絡むと素晴らしい味わいになります。

ここで箸休めとして、トマトととうもろこしの冷製がグラスで供されます。
とうもろこしのムースと山葵のシャーベット、トマトのシャーベットを和えたものです。
添えられたマイクロトマトがプチッと口の中で弾け、さらに底の方からは帆立の焼き霜が現れ、
それぞれの素材の織り成す重層的な味わいには、もう降参です。
「冷たいお吸物」とのことでしたが、一瞬、デザート風にも感じられる、
ご主人の遊び心が溢れた夏らしい涼しげな一品です。

さて、いよいよある意味こちらのメイン、八寸です。団扇を象ったお盆で供されます。
稚鮎の焼き物、鯛のちまき鮨、鱧の子の炊いたん、枝豆、生海胆と汲み上げ湯葉など。
琵琶湖の天然物の稚鮎は香ばしく焼き上がった中から仄かに香る鮎の香りがたまりません。
また、蓼酢ならぬ、ちょっととろみのある蓼ソースですが、これが鮎と絡んで絶妙の美味しさ。
生海胆と湯葉も絶妙の相性。鱧の子などなど、どれも酒肴に最高です。あー酒が旨い(笑)。

倍貝の煮物を挟んで、次は賀茂茄子の冷製。
冷たい炊き合わせですが、ひんやりとした食感と共に実に良い旨みが伝わってきます。
夏の茄子はやはり美味しいですね。

酢の物は、淡路の釣り鯵、琵琶湖の鱒、鮑、明石の蛸。
この鯵がとにかく絶品。もっちりとした食感とコクのある味わいは鯵としては過去最高レベル。
鱒も身が締まって美味。鮑は香り高くふっくらと柔らか。
関西ではこの季節(半夏生)にいただくという蛸は、半生で柔らかく茹でてあります。
水っぽさなど微塵もなく、噛み締める度に旨みが溢れます。

これでようやくご飯です。ご飯のお焦げを湯に浸していただく焦がし湯。
味付けはわずかに塩のみ。お焦げは極上の香りとパリッとした食感。
湯が染みてしんなりとしたところも最高です。そして研ぎ澄まされた味わいの湯。
まさに純粋に昇華された日本料理の極みを感じます。

続いてデザート。まずは呉豆腐に蓴菜を和えて黒蜜を掛けたもの。
呉豆腐のプルルンとした食感と蓴菜のぬめり、そこに黒蜜の甘さが加わり、
何とも官能的な取り合わせです。こちら、デザートも一筋縄では行きません。
続いては晩柑のゼリーと19種類の果物のコンポート。豪華でかつ洗練されています。
冷たい柑橘系のシャーベットでデザートの締め。
デザートだけでちょっとしたコースになり得るような内容です。

最後にご主人に入れていただいた抹茶を静かにいただき、
余韻を残しながらの食事の締めとなりました。

日本料理の伝統を踏まえつつ、ありとあらゆる材料を使いこなし、
枠にとらわれない、素晴らしい料理の数々を堪能させていただきました。
また、僕には茶道の心得はまったくと言っていいほどないのですが、
それでも、茶懐石を軸としたご主人の「客をもてなす心」は、充分に感じ取ることができました。
客と料理に真剣に向き合うご主人、焦がし湯の味付けをしている後姿には、凄みさえ感じます。

より高みを味わおうとするなら、こちらもそれ相応の高みに達していないといけないのでしょう。
果たして自分にこちらの料理を受け止められるだけの度量があるのか、
この高みを味わうだけの階梯に達しているのだろうか、
自分自身を改めて省みて、いろいろなことを考えさせられる料理は初めてです。

ともかく、素晴らしい時間を過ごす機会をいただいたことに心から感謝。

2011/12/22 更新

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