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昼の点数:4.1
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¥6,000~¥7,999 / 1人
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料理・味 4.1
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|サービス 4.2
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|雰囲気 4.0
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|CP 4.0
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|酒・ドリンク 4.0
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[ 料理・味4.1
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| サービス4.2
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| 雰囲気4.0
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| CP4.0
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| 酒・ドリンク4.0 ]
いにしえのならのみやこの八重桜のような匂いたつお店
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2017/03/03 更新
自分が老いたのか、このところ力ある人は須らく若いと感じることが多い。
ここ白の大将も女将さんも本当にお若い。
私の感覚ではまだ板の前に立たせてはもらえないような料理人であり、仲居頭に指示を仰がなければならないような年季の方々に見える。
ところがどっこい、数多の素晴らしい料理を生み出し、それをお客に更に心地よくサーブしてくれる稀代の若夫婦である。
このお店を初めて知ったのはやがて1年にもなろうか、マイレビYRちゃんのレビューが発端、その後地元民であるころちゃんが足繫く通われていて、いつか必ず訪問したいお店になった。
そうこうするうち開業1年を経ずして2017年奈良ミシュランの二つ星を獲得されてしまった。
「しまった!(ダジャレではありません・・・汗)」
早く伺わねば予約が取れなくなる、と焦るうち、ころちゃんからご一緒してあげるという嬉しいオファーが。
伺ったのは如月某日のお昼、私はここはと思うお店がお昼営業もされているならまずランチから、というのが案外好きだ。
夜は誰しもが渾身の腕を振るう、でもそれがお昼にも感じられたなら本物の名店と思えるから。
静かな街並みにすっと溶け込んだ引き戸を開けるとそこはモダンな和の空間、美しい女将さんに居心地の良いカウンターの隅席に案内されるやいなや出会ったのは天才と言われる西原料理長の柔和な目、寛いでください感満載の眼差し。
ありがとう、寛がせていただきますとまずはお酒を。
本日いただいたのは篠峯超辛口と同じく篠峯アズール、いずれも初めての篠峯だ。
超辛口は予想よりすっきりと軽かった。
特筆はアズールで瑞々しくキレが良い。
最近多いアズールだのアルファだのHだのカタカナやアルファベットのバージョンにやや偏見を持つ(失礼)私だがこれは純粋に美味しいと思った。
何というか浮ついていない味がした。
ここからお料理、まずは八寸、春を待ちわびているかのような一皿。
鮃の前にはゼンマイが、そして茶碗蒸にはノレソレ、そして玉蜀黍の甘い若葉が添えられている。
この茶碗蒸しの卵は黄身が白いホワイト卵、鶏のエサの主原料の玉蜀黍を米粉に変えるとこうなるそうだ。
因みに赤パプリカを加えると赤みの強い黄身になるそうな。
それではもはや黄身は「黄」身ではないなどと野暮なことを思いながら頂いた。
しかし大将にはまだひねりがあって、黄身が本来の色でない分その原料の玉蜀黍を若葉という別の形で提供、気付いた人には面白い遊び心、ここで既にこのセンスの虜になった。
虜になったという割には初対面のころちゃんとの会話が弾み過ぎ、味わう集中力が少々希薄になったことを白状する。
美しい椀物の後は選べる主菜、天丼や大和牛のご飯などがあったがお蕎麦を頂いた。
ころちゃんは天丼。
こちらのお蕎麦はつけつゆ共々割烹のお蕎麦だと感じた。
これまでの料理の流れを汲み、蕎麦自体が単独で主張しない。
つけつゆもあくまで上品でこちらの蕎麦のコンセプトに非常によく合う。
世の中には数多の蕎麦店があり、蕎麦屋だから当たり前だが名店と言われるお店はそれぞれが個性的で主張してくる蕎麦だと思う。
でもそうではなくてあくまでも和の賑わいの後にすっと〆る蕎麦というものが確かに存在するし、このようなお店ではそうであるべきだとも思っている。
軽井沢の名店の修行で蕎麦を知り尽くした大将だからこその技であろう。
最後は彩り鮮やかな果物とアイスでごちそう様、大変に美味しゅうございました。
この清冽かつ端然とした「旨いもん」を提供してくださる西原料理長は嵐山吉兆を皮切りに軽井沢で蕎麦の修行をし、麩嘉の主の目に留まりニューヨークの精進料理店を任され、在任3年のうちにアメリカでの名誉あるシェフの賞、そして2年連続のミシュランNYを獲得、その後ロンドンでも支持を得たという輝かしい経歴の持ち主、欧米のWashoku-Fanを虜にしたという世界的なシェフである。
しかしその風貌はあくまで穏やかで人懐こい笑顔が魅力的、ともに苦労を重ねられたであろう女将である奥様は立てば芍薬を絵に描いたような美しい方で大将の手から紡ぎ出される料理の数々を、またお伴のアルコールを、お客同士の会話を遮ぎることなく絶妙のタイミングで出して下さる。
給仕の技量単体にミシュランがあるとすれば星獲得に違いない。
年季の入った熟練の手技も文化継承の上では貴重なものには違いないが、ともすれば自分が築いた世界が逆に殻になって打ち破れないというパラドクスにも陥る
若いということは冒険ができるということ、失敗も多かろうが瑞々しい感性を以てまずやってみるということは時にこのような素晴らしい結果を生み出し、他でも気鋭の若手が活躍するお店の増大につながっているのだ。
料理をはじめヒエラルキーの掟厳しい職人の世界では一流の仕事師になるのは気の遠くなるような長い時間が必要と言われるが、個々人の持って生まれた才能に差異があるのに物理的時間を一律に適用させるのはおかしな話、基本の礼儀・しきたりを含む技を会得すればそこからの花の開きようは大小・早晩、大きく違って当然である。
これからますます西原料理長の背中を標的にする夢追い料理人が排出されて行くであろう。
店名の「白」を「つくも」と読ませるのは「百」から「一」を取った「九十九」、すなわちつくもである。
伊勢物語の一首にあることをころちゃんに思い出させてもらったがなんとも粋ではないか。
我が道、いつまでも百はない、いつもいつまでも百を目指し続けるというご夫婦の謙虚な、そして不屈の闘志が漲る命名ではある。
大将、女将さんの丁寧なお見送りを受け、近々ぜひ夜に伺い真骨頂を味わいたいものだと強く思った。