大岩優輝さんが投稿したあま木(愛知/久屋大通)の口コミ詳細

似非通人食日記

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あま木久屋大通、栄町、丸の内/寿司

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  • 夜の点数:4.7

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2021/02 訪問

  • 夜の点数:4.7

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

中区丸の内三丁目の『あま木』さん

この日は現時点で愛知県のお鮨部門で食べログ1位、ミシュランプレートも獲得された、中区丸の内三丁目の『あま木』さんに、初めてお伺いしました。
こちらはかの有名な四ツ谷の『すし匠』さんや、ご同門である西麻布の『すし匠まさ』さん、更には誰もが知る銀座八丁目の『久兵衛』さんなどで修行された、若き雄・天木雅章さんが親方を務める、言わずもがなの予約困難店です。

彼方此方でこちらのお噂を仄聞するに、「予約半年待ち」「現在一見さんは受けていらっしゃらない」「ネット上に掲載されている電話番号は繋がらない」との由でしたが、伺う1か月程前にお電話差し上げたところ、コロナ禍の影響によるキャンセルか、お一人様でみえる方が存外少ないのか判りませんが、快く受けて下さいました。

天木親方はお若いながらも、大変謙虚且つ研究熱心な方。『立ち食い寿司 極』さんの藤森親方も、「天木さんは本当に人柄がいい」と評していらっしゃいました。また、地元桑名の名店『平和寿司』さんの杉本親方ともよく識る間柄のようで、しばしば市場でご一緒するとか。初めて伺ったお店で昔から通っているお鮨屋さんのお話しができるのは嬉しいですね。

さて、いただいたものをご紹介する前に、この日、『あま木』さんに伺って深く感じたことがあり、もう暫し詰まらぬ講釈にお付き合いくださいませ。

先ず以て、僕の座右の銘の一つに、千利休『利休七則』の「相客に心せよ」というものがあります。茶道に心得のある方には孔子に悟道ながら、即ち「正客も末客も互いに尊重し合い、皆が気持ちよく同席できるようするべき」という意です。これは本来、その席の主人に向けた言葉ですが、客分としても常に心得ておきたいですし、お鮨屋さんでもそういう親方には本当に頭が下がる思いです。
僕もお鮨屋さんで写真を撮りますが、貸切会などでない限り、極力無音を心掛けています。本来は無音でさえ心苦しいのですが…それは、場の雰囲気を壊さないため。とりわけ経験値の高い方などは、お鮨やお料理の味のみならず、親方とのお話しやお店の雰囲気も重視されている方が少なくありません。観光地さながらにパシャパシャと写真を撮るのは、時と場合によっては好ましくなく、撮影を禁止されているお鮨屋さんもなかには御座います。
また、更に留意するべきなのは、同行者とのお喋りです。味の感想なり、或いはお鮨屋さんの話なり、余程低俗でない限り、内容の如何は問われるべきでないでしょうが、問題はその声量です。こうした高級鮨店は、言うまでもなく酒場では御座いません。飲めや騒げやのドンチャン騒ぎは、幾ら繁華街に構えるお店であれ、断じて許されるべきではありません。
他県は寡聞にして存じ上げませんが、殊に錦や丸の内のお鮨屋さんには、こうした無分別にして不謹慎な相客さんが度々いらっしゃいます。蓋し昔ながらの親方はピシャリと退店を命じたり、或いはさりげなく嗜めたりされることがありますが、如何せんお若い親方は何も仰らず、卒なく熟されることが多いように感じます。客分を巧く遇らうのも職人の技量であると、不肖の身ながらつらつら思う次第です。「相客に心せよ」、僕も深く深く自戒しつつ、冀わくは皆様にも是非ご留意給わらんことを。

閑話休題、予約した18時の10分前程に訪問。まだ相客さんはどなたもいらっしゃらず。
親方にご挨拶して着座。飲み物はどうするか訊かれたので、折角なのでお酒をいただきました。

□澤屋まつもと 守破離 山田錦
米の産地に拘ったお酒。発祥の地である東條地区を含む、兵庫県加東市の山田錦50%精米だとか。フレッシュな酸味と仄かな苦味あり。加東市というと個人的には嫌な思い出があるのだが、そんな苦虫を噛んだような記憶とは一線を画す、心地良い苦さだ。摘みによく合っており、お任せして正解だ。

◇平目の刺身 えんがわ炙り
素材本来の味を活かした優しい味わい。仄かな旨みと甘み、食感が絶妙で、敢えてこの量なのも粋。

◇煮鮑と筍のお吸い物
この時季の鮑となると、蝦夷鮑だろうか、良質な養殖物の黒鮑だろうか。悲しい哉、不肖にはそんな審美眼はないので見分けらず、且つ訊き逸れて了ったが、何れにせよ柔らかさが丁度良く素晴らしい。
筍は四国の新物。硬さと風味が何とも絶妙である。椀種には他にこごみ、あしらいに木の芽を供されていたが、旬の名残りと走りを見事に一つの椀に組み込んでおり、これまた粋で圧巻。
もちろん旨みの溶け出したお出汁は絶品である。

◇日間賀島の煮鮹
他店がやや柔らかめのものを供されるなか、こちらは蛸の弾力を強めに残しており、吸盤の弾けるような食感も絶妙。しっかりとした旨みと香りに惹かれる、日間賀の地蛸ならではの味わい。実に佳い肴だ。

□飛露喜 純米吟醸生詰 黒ラベル
誰もが知る飛露喜。その昔は廃業一歩手前にまで追い込まれていたという蔵元だが、この飛露喜が爆発的なヒットとなり、今や酒に疎い僕でさえ知っている(笑)
淡く上品な甘みと柔らかな香り。何とも軽い口当たりなので、ついつい一気に飲み干さぬよう、大切にいただく。お酒には余り強くなく、お財布も心配なので、控えめに…(笑)

◇虎河豚の鉄刺と鉄皮とひろっこ
三河湾の6㎏の虎河豚と聞いて驚嘆。先日の『龍文支店』さんにも負けず劣らずのサイズで、勿論、後述する白子も巨大だ。尚且つ鉄皮は遠江まで供されている。
薬味は酢橘とひろっこ。この投稿の少し前に、本郷の『おけい鮨』さんでもいただいた〝ひろっこ〟とは、浅葱の若い芽の通称。秋田や山形で一定の温度に保たれた深雪の下で萌えたひろっこは、何とも形容し難い甘味と香りが堪らない。まさに春一番である。これを鉄刺に合わせるあたり、あま木さんは本当に憎い趣向だ。
極めつけはアタリである。あん肝のポン酢ソースと岩塩の2種類だ。前者はあん肝の濃厚な味わいとポン酢の酸味が、弾力のある淡白な鉄刺に見事にマッチしており、後者は虎河豚本来の上品な旨味が引き立つアタリで、これが両方味わえるのは素晴らしい。出来ることなら鉄刺を追加したかった(笑)

◇目近鮪の漬けの山かけ
中とろと赤身の二種類だったか。船上で血抜き、神経〆したものだとか。これがまた最高の肴。香りと食感が何とも堪らない。とろろも出汁の塩梅が最高。これを丼にして毎日食べたい(笑)

◆墨烏賊
塩と酢橘で。ややねっとりとしていながらバツンとした食感を残しており、仄かに香る甘味がよい。

◆針魚 昆布〆
やや昆布の風味が強いが、針魚らしい旨味と香りは感じられる。独特な食感がしっかり残っている。

◇甘鯛の蕪蒸し
程良い柔らかさと仄かな旨味と甘味をおろした蕪が上手く引き立てている。上品な出汁の餡掛けもよい。

◆春子
黄身酢おぼろをかけて。好みの酢加減。もっちりとしていながらパサつきは皆無。出色の美味さ。

◆鰆
肉厚で香りがよい。脂は若干控えめ。

◆赤貝
コリコリとした食感、ジューシーな旨味と独特の香りが秀逸。

◆車海老
半生の状態で。味噌の味わいと海老の甘味。炙ったような?風味もあり。食感も温度良い。美味い。

◇海老芋饅頭 毛蟹餡掛け
メモがなかったため不正確だが、海老芋の饅頭には烏賊のような食感のものが練ってあったように記憶。毛蟹の風味がよい。内子入り。海老芋ねっとり。

◆鰺
浅葱と生姜を叩いたものを乗せて。肉厚で食感、香り申し分なし。脂が乗りすぎておらず好印象。

◆小鰭
ややしっかりめの〆具合ながらパサつきや塩辛さは皆無。旨味が上手く立っている。

◆ばふん雲丹 軍艦巻き
根室のもの。海苔とのバランスがよく、旨味がある。

◇真名鰹の西京焼き 蕪の千枚漬け 菜花のお浸し 薩摩芋の檸檬煮
季節を感じる一皿。菜の花を黄身酢おぼろで表現するという割烹のような仕事をされており、遊び心がある。

◆本鮪赤身
『やま幸』さんの塩釜(延縄)、114.0k。
香り高い酸味。酢飯の温度も悪くない。もう少し身厚でもっちりした食感が望ましい。

◆本鮪中とろ 血合いぎし
『やま幸』さんの下田(延縄)、159.2.k。
鮪らしい香りと脂のバランスが秀逸。

◆本鮪大とろ
『やま幸』さんの塩釜(延縄)、114.0k。
嫌みのない脂の旨味と甘味が際立つ。隣の相客さんが砂ずりを召し上がっているのを見てしまい、しかもこっそりではなく説明までされていたので興醒め。
まあ常連贔屓は誰しも経験するだろうが、初見の前で露骨に見せるのは良くない。こちらが寿司屋に行き慣れていなければ、良い気のするものではない。
他の団体客に苛立っていたので余計かも知れないが。

◇虎河豚の白子
6kオーバーの天然物の焼き白子に花山葵の茎を合わせて、下には酢飯。リゾット風に掻き混ぜていただく。白子のクリーミーさと焼き目の香ばしさ、山葵の茎の辛さがいいアクセントになっており美味い。

◆〆鯖
酸味を抑えた〆具合で、やや塩味が立っているが、いい塩梅。旨味と香りが凝縮しており、油の乗りも丁度いい。美味い。

◆金目鯛
これは炙りだったかな?団体客の影響で余り思い出せず。

◆喉黒
脂のしっかり乗った種が続くのは如何なものだろう、もう少し緩急をつけてほしいところ。

◆皮剥 肝乗せ
肝のクリーミーさと皮剥の食感がマッチ。ただ、如何せん脂のものが続いているので、若干肝にくどさを感じてしまう。

◆鰯
何とも妖艶で蠱惑的なフォルムが視覚に迫る。その名から連想する〝手弱女〟からは似ても似つかぬ〝傾城〟ぶりである。徳川の権勢逞しき時代の花魁とは、遊女の最高位にして、品位と艶やかさを兼ね備えながらも、その境遇から繊細で気鬱な面もあったやに聞くから、手前味噌ながら言い得て妙な例えではないだろうか。
戯言は扨て措き、飾り包丁が美しく、抜かりない骨切りで小骨も全く気にならず。脂の乗りこそ入梅ものには敵わないがなかなかで、嫌みがない。それでいて鰯らしい香りが立っており、叩いた青い薬味も飽くまで引き立て役に徹する塩梅だ。酸味やや強めでシャープな赤酢の酢飯とは、言うまでもなく相性抜群。歳時記にも掲載されている高級な春鰯がいただけて嬉しい。この日の出色だ。非常に美味い。

◆煮穴子 炙り
背中の皮目が上になっているのは、腹〜頭に近い部分ということか。ふんわりとして硬すぎず柔らかすぎず、ツメは甘めながらも濃すぎず。焼き目の香ばしさと穴子らしい甘味と香りも良い。

◇赤だし
湯葉の入った珍しい赤だし。これは普通だった。

◆煮蛤(追加)
ツメはトモヅメかと思われたが、相も変わらず団体客がパーティーをしていたため訊けず。ツメや漬け込みはよかったが、如何せん茹で時間が長すぎるのか、或いはよもや汀線蛤だったのか、硬い。ジューシーさも今ひとつで、残念だった。

◇べったら漬け
いい口直し。

◆鳥貝(追加)
大阪湾のものだったか。若干水っぽさを感じたが、許容範囲。香りはまずまず。甘味と旨味は良い。

◆烏賊の印籠詰め
印籠鮨が食べられるとは何とも嬉しい。こちらもトモヅメのようだったが、伺えなかったため不正確。
酢飯には白胡麻と生姜、刻んだ干瓢が入っており、何とも粋だ。ツメはサラッとしているが淡くなく丁度良い。山葵は要らないかな。下足もいただけてよかった。非常に美味い。

◆とろたく巻き
こちらも白胡麻が入っていたかな。とろの香りと旨み、沢庵の甘塩っぱさ、海苔の風味が相まってなかなか。

◆干瓢巻き
山葵入り。干瓢は濃いめで食感もしっかりな印象。こちらも美味しかった。

◇玉子焼き
スフレ系のしっとりした厚焼き玉子。芝海老の風味を感じつつ、これぞ鮨屋のデザートといった甘味がある。

以上、怒涛の品数のコースになります。
全体的な印象としては、やはり十指のさすように未だ成長過程と感じる部分もありますが、天木親方はしっかりとした仕事をされています。また、真面目なお人柄ゆえ、これだけの席数をお一人で熟されるのは、なかなかに厳しいところがあるやに拝察します。況やこの日のように、無作法極まれる団体客の襲来に於いてをや。種や料理のご説明もままならないことがございました。
さりとて冒頭でも申し上げました通り、客捌きもまた親方の腕と言って良いでしょうから、より一層精進されますことを切に願って已みません。また、敬愛する大谷さんのブログで事前に拝読しました通り、親方は握りを盛り台に供される際、形を整えたり、上から押さえたりするなど見受けられましたが、どうかお控えになった方が宜しいかと。握りに過剰な装飾は不要、一発勝負でお願いしたい。十二分に腕も技術もおありで、尚且つ研究熱心な方なのですから。

扨て、やや辛口になってしまいましたが、これは当然期待の裏返しから来るもの。青い四半可通の僕が生意気申せる義理はありませんが、名古屋で稀有なご存在として、今後とも宜しくお願いしたく存じます。

美味しかったです。是非また。
ご馳走さまでした。

2021/10/11 更新

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