HHastingsさんが投稿した月山(東京/三軒茶屋)の口コミ詳細

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月山三軒茶屋、西太子堂、若林/焼き鳥、日本酒バー、おでん

1

  • 夜の点数:3.9

    • ¥4,000~¥4,999 / 1人
      • 料理・味 3.9
      • |サービス 4.0
      • |雰囲気 3.8
      • |CP 3.8
      • |酒・ドリンク 3.9
1回目

2017/02 訪問

  • 夜の点数:3.9

    • [ 料理・味3.9
    • | サービス4.0
    • | 雰囲気3.8
    • | CP3.8
    • | 酒・ドリンク3.9
    ¥4,000~¥4,999
    / 1人

一生、は一度しかない

霧雨に降られながら、暗い裏道を歩いていると、一軒だけ暖かい光がもれている店を見つけて、入った。
予約なしでもカウンターなら、ということで、焼き鳥の焼き台の前の席に座る。

応対は、焼き係のお兄さん。しばらく話して分かったことは、この人がこの店の脳で、口で、腕でもあるようだ。
仕事が好き、ということ以上に、お酒と食べ物が好き、そこからかれの興味も、話題も始まっていくことがわかる。こういう店を一軒、リードして、まわして、引っ張って行くのに、彼は最適の人ではないか、と思われた。

お通しがカウンターに置かれる。さっぱりとした薄味で煮た玉こんにゃく。まるで生の大根のように白くてやわらかい、白醤油で煮た切干大根のやさしい、ひかえめな甘味、これには油揚げの千切りも。なにより、黒い色の醤油とたっぷりの砂糖に頼りがちな東京風に比べて、こちらのほうが、よほど好みの味だ。

お酒は、よく冷えた山形の大辛純米酒、大虎。申し分なし。これで行く。

菜の花白和えは、豆腐とクリームチーズに白醤油、生パプリカも入って、上品な薄味がうれしい。こういうやさしい、うっすらと甘いのが山形の味なのか。どこか京都の味にも似ている。 

山形ハーブ鶏の白レバームースに山形リンゴのコンポート、これはリンゴを赤ワインで煮たものだが、砂糖をほとんど使わないで、りんごの自然な甘さと酸味を生かしてある。この白レバーだが、焼くために串にさしたのを見ると、ほんとうに白い。見た目も味も、鶏のレバーではなく、フォワグラそのものに思える。これには、薄くて全粒粉のカリカリのクラッカー、スウェーデンの WASAクラッカーにそっくりだが、日本で作っているという。この薄くてパリッとして、麦の薫るクラッカーがレバームースとりんごコンポートによく合って、止まらなくなる。
そして、これには、赤ワインしかないので、山形朝日町ワイナリーのRed Zinfandelを注文。まるでボルドーの赤のような、フルボディーの、たくましいワイン。これは自宅用に買い置きしたい赤だ。

山形千日和牛の芋煮、 里芋、舞茸、牛蒡、こんにゃく、そして牛肉。これも醤油の色が薄いのが好ましい。

焼き物は、鶏ハラミの焼き鳥、ミニトマト串、千日和牛串、三色焼きは、胸、腿、脛肉。
さらに、稀少小部位のふりそで、そろばんなどの瞬間燻製焼き鳥、金針菜、山形の和豚もち豚は、赤ワインたれで焼いいて、ブドウの枝で瞬間燻製して香りをつけてある。

〆は、山形名物、板蕎麦。かなりアル・デンテのきしめん風の幅広麺、蕎麦粉たっぷりの実力蕎麦で、山形の蕎麦は宅配で以前から買っているんだが、これは打ち立てだから蕎麦の味がしっかりしている。イタリアのタリアテッレという手打ち麺によく似ている。山形タリアテッレだな。蕎麦つゆは、これも醤油の色は薄いが、昆布と鰹節の味が非常に力強い。これは旨い。

デザートは山形白卵のプリン、これは実際は、上を厚みのあるカリカリに焼いたカラメルが覆っているから、クレム・ブリュレと呼んだほうがいい。

デザートワインは、山形羽前白梅、これは純米梅酒で、梅湧水という梅酒。通常、梅酒は焼酎で梅の実の味と香りを抽出するが、こちらは純米酒を使った梅酒なので、甘みも軽やかで、梅の酸味とやわらかな甘さが十二分に生かされた食後酒だ。

目の前で焼いてくれているお兄さんは、山形の出身だということだ。日本酒には非常に詳しい、というより、かれが日本酒をどれほど好きなのかが、熱のこもった話ぶりで伝わってくる。そして山形の食材や料理にたいする思い入れ、でもそういう話を知識としてではなく、かれは好きでしょうがないから、話さずにはいられない、そんな感じで話してくれる。

お酒や料理の世話をしてくれているお姉さんも、すぐ目の前のカウンター越しに話が始まり、最初は手探りで、だんだんに相手のことが見えてきて、話が広がっていく。吞み、食い、話すうちにお姉さんと私たち二人の距離が近くなってくる。そして、おたがいに、なんでも話せるような気になってくる。でもそれは、たぶん、お酒のせいからくる、わたしの錯覚もあるんだろうが、でも、そういう、だんだんに空気があたたまってくる感じが、いい。

こういう酒場に出掛けてくるとき、わたしたちは心のどこかで、こういう距離感の変化、人間同士が近付いてゆく時間を期待しているんじゃないか、などど考えてたりもしながら、お酒がすすむ。
次々に入ってくるお客さんたちのコートが濡れている。外は、雨が強くなっているようだ。

外に出てみると、やっぱり雨だ。見送りに出てくれたお姉さんのやさしい声を、お別れの声を背中で聞きながら、雨の裏道を歩き始める。
そう言えば、以前にも、こんなふうに、旨い酒と料理を心から楽しんだあと、濡れた舗道を歩いて帰るということがあった。de ja vu、いや、見た景色ではなく、あの、背中で聞いた、人間のやさしい声、背中の暖かさは、マニュアルでも作りものでもない、なにか本当のものだった、と信じたい。さっきまで知らなかった、ほかの人間と、この雨の晩、たまたま、短い間ではあるけれど、ふれあえた、という思いになる。

思えば、わたしは、街歩きをして酒を吞むとき、いつも心のどこかに、こういうケミストリー、つまり人との関係の化学変化というか、そういう、短いけれど、楽しい、静かな時間、小さな奇跡への期待感があるんだろう。
もちろん、大部分の場合、そういう期待はみごとに裏切られてしまうんだが、ごくこく稀に、ほんの短い間にせよ、こんなふうに、心も身体も、なにか、あたたかいもので満たされて、そういうあたたかさを抱いて、雨の中を歩いて帰る、そういう幸福な時間が与えられる、ということも、ごく稀にではあるが、ある。
そしてそれは、幸運なことだ。

  • 大辛大虎

  • とら

  • こんにゃく、だいこん

  • 山形の赤ワイン

  • 白和え

  • 白レバームース

  • デザート

  • 純米梅酒

  • 純米梅酒

  • 板蕎麦

  • 金針菜

  • ふりそで

  • 芋煮

  • そろばん

  • もち豚

  • 稀少

2017/02/21 更新

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