1回
2020/11 訪問
柴崎亭の新店は週2日昼のみ営業、石郷岡店主自ら厨房に立ち、至上最強のワンコインを目指すという中華そばを振る舞う・・
2020/11/20 更新
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この日訪問したのは、10月21日祖師ヶ谷大蔵にオ
ープンした「世田谷中華そば祖師ヶ谷7丁目食堂」
柴崎亭の新店で、至上最強のワンコイン中華そば
を目指すという。現在営業日程は、水曜日と木曜
日の昼のみという変則営業。これは石郷岡店主自
らが厨房に立たなければならないためで、いずれ
厨房を任せられる人材が見つかれば営業日程も変
更される可能性があるようだ。
お店は、以前「中華そば こましょう」が営業し
ていた場所にある。小田急線祖師ヶ谷大蔵駅北口
から祖師ヶ谷通りを100㍍ほど北上、セブンイレ
ブン手前で右折しその通り沿いにあるのだが、右
折した瞬間目に飛び込んできたのは、30人は越え
ようかという長ーい行列。一瞬諦めかけたがここ
まで来て諦める訳にはいかないと最後尾に接続。
結局待ち時間は1時間半、久々に足が棒になりま
した。笑
ただ、待っている間、店内から「長い間お待たせ
してすみません！・・ありがとうございました！」
と石郷岡店主の大きな声が最後尾からでも聞こえ
てきて、何か活気のようなものが店内から伝わっ
てくると待っていても苦にならないから不思議だ
漸く順番がきて、お若い女性スタッフさんに促さ
れるように入店！、店内はL字のカウンター席の
みで10席ほどあり、厨房とカウンターの間の台は
低くどの席からも厨房内が見通せる造りになって
いる。店内に券売機はなく、女性スタッフさんか
ら「ご注文はお作りする前にお聞きします！」と
前置きがあった。
案内されたのは奥の端席。目の前には冷水にカッ
トレモンが大量に入った大きな瓶。その横には瓶
に植えられた観葉植物が置かれていて癒される。
厨房中央には七輪があり、注文のつど大ぶりのチ
ャーシューに炙りを入れる手間の掛け方に驚かさ
れる。至上最強のワンコイン中華そばを目指すそ
の一端が見れたような気がする。
注文は1ロット3人分で作る前に石郷岡店主自らオ
ーダーを聞いてお支払いは女性スタッフさんに現
金前払いでお渡しするルールになっている。
そのお品書きを見ると、メニューは、"世田谷中華
そば"¥500、"祖師ヶ谷塩そば"¥500、"煮干焼豚麺
"¥1000(30食限定)の3種で、限定は既に売り切れ
ていた。ちなみに、大盛は対応不可、トッピング
などアラカルトも無い。調味料は胡椒のみでティ
ッシュや爪楊枝は置かれていない。
石郷岡店主から注文を聞かれ、塩と醤油(中華そば)
で！とお願いした。運賃払って片道1時間半、外待
ち1時間半でたどり着いたラーメンを1杯だけで済
ます訳にはいかない。しかも2杯で¥1000ポッキリ笑
石郷岡店主から「塩は油が無いので塩からいきま
すかね？」と問われれば、それでお願いします！
と答えるしかない。笑
麺は大釜で釜ゆで、平ザルで掬い湯切りして丼に
盛るのだが、体に染み付いたような一連の作業は
流れるように自然で、見応えがある。また、柴崎
亭の常連さん一見さん問わず気さくに話し掛ける
お姿にはオーラすら感じる。
いいなーこの雰囲気、なんて思っていたところに
まずは、"祖師ヶ谷塩そば"のご登場！
器は丸く開いた形の麺丼、そこにスープはとても
塩とは思えない濃い色合いで、具は七輪で炙った
焼豚、太メンマ、青菜という構成でシンプルだが
一つ一つの具に存在感がある。そして柴崎亭と言
えば麺線が綺麗に整えられた美観にあるが、やは
りその特徴も出ている。
早速スープから頂いてみると、うぁ！出汁が濃い！
凄ぇー、何だコレ？、いや、淡麗な塩から想像す
るような優しい味ではありません。しかも動物系
の出汁も一切感じられないのにこれだけ出汁と塩
ダレだけで重層感のある味わいに仕上げるとは、
凄い！としか言い様がありません。乾物と言って
も節や煮干しがくっきり顔を出すような出汁感で
は無く、色々なものが一体となった味わいで、所
謂"三本の矢"のような力強さ。ただ一方で尖った
ところがなくまろやかで丸みのある味わいと風味
は、香味野菜のようにも感じる。
実は、石郷岡店主がお客さんと話している時に、
「(弟子が)椎茸入れすぎちゃったんですよ！」と
いう言葉が耳に入り、あたかも失敗したかのよう
な話しぶりでしたが、いやいや、その椎茸も利い
ているから旨味も強いんだよー、石郷岡店主は、
大した役者です。笑
麺は、柴崎亭でお馴染みの田村製麺ではなく麺箱
には三河屋製麺の文字。その麺を啜ると、風味豊
かですが想像していたヤワな麺ではなく歯応えの
あるカタな中細ストレート麺。歯切れもよく、淡
麗でも出汁の強い煮干しラーメンでよくお目見え
するような麺。淡麗な塩には合わないはずだが、
合うんだなーこれが。それだけ塩でもスープに力
強さがあるからに他ならない。凄い！笑
具のチャーシューは厚みがあり、身が引き締まっ
た歯応えのある焼豚。七輪で炙った芳ばしさあり
肉の旨味も十二分に感じられる絶品！、これが
ワンコインで出すようなチャーシューか？凄い！
信じられない！笑
太メンマはコリコリとした食感がたまらんなー。
柔らかいメンマも良いけど、筍本来の歯応えで食
感を楽しめる。青菜もしゃきしゃきとした茎の食
感とそこから青菜本来の清涼感を感じ、ネギなど
の薬味要らずだというのもわかるような気がする。
スープも美味しく飲み干せば、一杯だけでも満足
感のあるボリューム。いや待てよ、この後中華そ
ばもあるけど大丈夫か？、と一瞬不安も過る。笑
さて、その"世田谷中華そば"は次のロットで作ら
れ石郷岡店主から手渡された。
醤油は、酸味も感じるほど醤油感たっぷりな味わ
いで、濃口ベースだとは思いますが、そこに塩で
は感じなかった鶏の旨味も感じられて、塩とは違
った昔ながらの中華そばに近い味わいだ。
ただ街中中華そばのような薄ペラいスープとは物
が違い、塩同様に圧倒的な乾物の出汁感が下支え
しているので終始その味わいを堪能できました。
醤油スープで頂く麺は同じ麺でも塩とはおもむき
が異なり二杯目でもゆるむことなくテンポよく食
すことができ、焼豚、太メンマ、青菜も¥1000で
二度楽しめるとは至福としか言い様がありません。
食べ終えれば、ここまで長い時間待たされたこと
もすっかり忘れてしまうほど満足感たっぷりの塩
と醤油に感無量！、ごちそうさまでした！(^^ゞ
最後に。二杯頂いて、石郷岡店主の目指す"至上最
強のワンコイン中華そば"の意味するところが何と
なくわかったような気がします。
巷では、一杯¥1000前後のラーメンも少くない時
代で、使う食材も高価で普通に作っても美味しい
ラーメンが主流になりつつある。そこに警鐘を鳴
らし続けているのが石郷岡店主ではないだろうか。
一杯ワンコインでもその枠でおさめる食材を駆使
し、職人の技で高価な食材にも負けない、いやそ
れ以上の味わいのラーメンに仕上げているところ
に強い反骨精神と職人魂を感じる。
石郷岡店主は、私よりも一回りお若いが、それで
も50歳。私と同じ昭和世代。昭和のラーメンと言
えば、具は焼豚、メンマ、ネギのみでシンプルで
安く、スープも飲み干せば腹も満足し、金の無い
学生時代はラーメンで食を繋ぐような時代だった。
そんな若き時代を思い出させてくれたのが柴崎亭
の新店、「世田谷中華そば祖師ヶ谷7丁目食堂」。
"至上最強のワンコイン中華そば"の真髄とはそこ
にあるような気がしてならない。
《味の評価》
・スープ★★★★★
・麺★★★★☆
・チャーシュー★★★★★
・他の具★★★★☆
《全体の評価》
・ビジュアル★★★★★
・ボリューム★★★★☆
・トータルバランス★★★★★
以上