めん丸ヒロさんが投稿した釜揚うどん一忠(大阪/近鉄八尾)の口コミ詳細

めん丸ヒロのうどん&ラーメン紀行

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めん丸ヒロ (男性・大阪府) 認証済

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閉店釜揚うどん一忠八尾/うどん

1

  • 昼の点数:4.0

    • ~¥999 / 1人
      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2016/02 訪問

  • 昼の点数:4.0

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ~¥999
    / 1人

最後の冬釜

2016/02
釜揚げうどん 大 ¥720


この八尾の地で昭和49年より42年余りにわたり営んできた「釜揚げうどん 一忠」が、今年の夏で暖簾を下ろす。
この店の店主・森岡一彦氏は大阪に讃岐うどんを根付かせ、釜揚げという食べ方を広めた「関西さぬきうどんの父」だと言っていい人物だろう。
メニューは釜揚げのみ(夏季はざるもある)という潔さにも惚れぼれするし、その釜揚げうどんだけで長年客を惹きつけて来たわけだから畏れ入る。

店構えは昭和が薫る重厚なテイストだ。亜麻色の暖簾には濃い茶で伸びやかに「一忠」と書かれている。その横の陳列には「春夏冬 二升 五合」と書かれた皿が飾られている。
「あきない(秋ない) ますます(升升) はんじょう(半升)」と読ませるようだが、この昭和的手法もここでは違和感がない。
暖簾をくぐり店に入ると左手に厨房、右手にテーブルが並ぶ。厨房では森岡店主が向うむきでうどんを茹でている。おかみさんの「いらっしゃいませ!」という声と同時に顔だけこちらに向け、「いらっしゃい!」と微笑む。僕が店主の姿を見るのは今日で5度目だ。釜揚げの大を注文して席に着く。そして厨房の方を見る。

何より、森岡店主のうどんに賭けた人生を感じることができるのは、彼のうどんを茹でる後ろ姿だと僕は思う。「男の背中」という言葉があるが、それは「うどんに賭けた男の背中」なのである。
茹で釜に向かい、右手には丸棒を持つ。やや前かがみになってうどんを何本かすくい上げると、左指でうどんに触れ、茹で加減を確認する。真剣な眼差しであることは、後ろから見ていても容易に察しがつく。その前かがみの後ろ姿からはうどんを愛し、より美味しいうどんを作って、お客さんに喜んで食べてもらおうというオーラが発せられているからだ。
森岡店主は秒単位でうどんの茹で具合を確認する。よく見かけるうどんの大型店舗のように、大量にうどんを茹でておいて、客が釜揚げを注文すれば多少の茹で時間の長短はお構いなしで出されるものとは比べる由もない。それでも十分美味いと言う人がいるならば、一忠の釜揚げを一度食べれば良い。きっと目から鱗が落ちるはずだ。
ここの釜揚げうどんはとんでもなく美味い。但し食べられるのは7月31日までだ。

そんな背中を持つ男に弟子がつかない訳はない。森岡店主が育てた弟子のお店を調べるとこれだけある。

「釜揚げうどん 一心」東大阪市
「釜揚げうどん 一心」住吉区
「桂ちゃん」平野区
「山田製麺所」旭区
「釜揚げうどん 一誠」八尾市
「釜揚げうどん 一紀」西成区
「一忠」札幌市
「一匠」鳴門市

まだまだあるかもしれないし、あったかもしれない。
僕はまだ「桂ちゃん」と「一紀」にしか行ったことがないが、共通して言えることは、どちらも美味しいということだ。更に言えることは「一忠」の釜揚げを踏襲しながらも、そのコピーではないことだ。どちらが美味しいかということでもなく、それぞれの個性ある味を提供していると思う。もちろん師匠がそうしているように、手打ちうどんだ。

今日はセルフですりおろす生姜の形が、ライオンの赤ちゃんだ。
「この残った生姜はどうするのだろう?」
と、ずっと思っていた疑問は前回おかみさんから聞いて解決した。大きいものは洗って切って再利用するし、小さなものは佃煮を作る時に使うらしい。
擦りおろしが適量になった頃に大徳利に入った熱々の出汁が届く。この出汁を千代口(ちょこ)に注ぐのは難しいので、初めての人はおかみさんに教えてもらった方が良い。知らずにやると火傷をする恐れがある。

そして釜揚げうどんの食べ方には決まりがある。(僕が決めているだけだけど)
①初めに千代口に注いだ出汁だけを一口味わう。
醤油の香りといりこ、鰹がガツンと来る。讃岐の出汁を大阪流に美味くしたプレミアム出汁だ。
②茹で湯に浸かった熱々のうどんを、何も付けずにそのまま1本啜ってみる。
頭の中でファンファーレが鳴る。小麦が香り、モチモチながらコシがあるうどんだ。
③うどん数本を何も薬味を入れない出汁に浸して啜り込む。
うどんと出汁だけのシンプルだけどピュアな味が愉しめる。うどんと出汁の相性は最高だ。
④出汁にネギ、生姜、揚げ玉、すりゴマなどの薬味を入れ、うどんをズズッと音を立てながら啜り込む。
脳内イメージを表す漢字は、全てが「旨」に変わる。
⑤うどんが無くなったら、すりおろした生姜の残り全部を出汁に投入し、よくかき混ぜて飲み干す。
身体はポカポカを通り越して、汗ばんでくる。

食べ終わった感想はいつも同じだ。
「シンプルなのに、どうしてこんなに美味しいのだろう⁉︎」

そんな美味しさが経験できるのも、あと5ヶ月。
「あと何回この名品を味わうことができるのだろう?」

今度は春の釜揚げ、そして最後は夏の釜揚げを食べよう。

ごちそうさん‼️

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『讃岐伝統文化のかほり』
2014/10
釜揚げうどん大 ¥720

讃岐には釜揚げうどんで名高い店が2店あった。まんのう町の「長田うどん」と屋島の「わらや」だ。かつては「東のわらや、西の長田」と語られるほど美味しく、讃岐人から愛される店だった。この2店も師弟関係があったと聞く。しかしこれは過去の話である。

東の「わらや」は昔と変わらず営業しているが、西の「長田」は今から10数年前、店主が亡くなった時に後継者問題で内部分裂が起きた。暖簾を引き継いだ形の長田うどん派は、先代の味が出せずに一時期衰退した。(現在は味を取り戻し人気店に復活している)
一方の派はまんのう町を出て善通寺市に「長田in香の香」という屋号で店を開いた。先代に近い味を再現したので人気を博し、今や本家を凌ぐほどの釜揚げ名店となった。

さて、大阪の八尾で営む「一忠」は1974年に開業した。店主の森岡さんは前述の長田うどん先代の弟子として修行を積んでいる。
独立して40年間釜揚げうどん一筋、夏季のざるうどん以外に他のメニューはなく、揚げ物類のトッピングもない。釜揚げという食べ方は、最もうどんが旨いとされる茹でたてをそのまま水洗いせずに鉢にとる。作り置きうどんや冷凍うどんでは味わえない、いわば贅沢品なのである。

小麦の香り豊か、熱いうどんなのにしっかりコシがある。だし汁に漬けてすすると、鰹と昆布の中から主張してくるいりこ風味の雄々しさが、讃岐の伝統をしっかりと踏襲しているのが分かる。うどんは太麺と細麺が選べるが、当然太麺の方が良いだろう。これは正に讃岐の男うどんである。

店主の森岡さんには何人かの弟子がいて、それぞれが釜揚げうどん店として独立している。彼の甥っ子「桂ちゃん」もそのひとりで、平野区で美味しい釜揚げを食べさせてくれる。
このように師匠が弟子を育て、またその弟子が師匠となり、弟子を育てる。連綿と受け継がれるその技能は、日本の文化そのものである。

「先日はありがとうございました。」
帰り際、少し手の空いた店主に声を掛けた。森岡さんとは2週間ほど前に、ある場所で出会い、話をしたばかりだ。
「おぅ!早速来てくれたんやな、どうやった?」
「美味しかったです。桂ちゃんよりコシがありますね。」
「それは、どうかな?」
優れた師匠は、独立した弟子を決して見下さない。

美しい日本文化だ。

  • 釜揚げうどん 大 ¥720

  • 釜揚げうどん 大 ¥720

2016/02/28 更新

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