2回
2014/04 訪問
手焼きにこだわり60余年の老舗!尼崎が誇る瓦煎餅と匠の技がここに。
2014.4
25年間、値段据え置きだった名物カステラ焼きが4月1日より値上がりになりました。それでも一袋330円ですから、材料費と手間を考えると十分安いと思います。お一人様3袋までだそうです。
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立花、いや尼崎を代表する名店を紹介します。
この中田屋さんは、立花駅から北に延びる立花商店街の中でも老舗中の老舗の手焼き煎餅屋さんです。
私が生まれる前から、六十数年営業を続けておりまして、ここのカステラ焼きは、私なんぞまだ歯が生えてない赤ん坊のときから食しておりました。
煎餅というと、普通は草加煎餅のように米を原料とするものとお思いでしょうが、神戸発祥の瓦煎餅は、小麦粉、卵、砂糖を原料とする甘いお菓子です。ちなみに生まれも育ちも尼崎の私は、納豆といえば甘納豆しか知らなかったように、煎餅といえばこの小麦原料の瓦煎餅しか知りませんでした。本来の煎餅の原料が米だと知ったのは大きくなってからなのでした。
神戸の瓦煎餅といえば、亀井堂と菊水総本店が有名ですが、立花の中田屋瓦煎餅も負けていません。っていうか、今もなお頑固に手焼きにこだわり続けているこの店の煎餅が一番美味しいと思っています。原料表示を見ると蜂蜜が入っているので、菊水系列かもしれませんね。店の奥の作業場で、大将が丁寧に手焼きで瓦状に焼き、表面にいろいろなデザインの焼き印を押します。尼崎の名所を押した尼崎八景なんてのも手土産にすると珍しいと思います。
この焼き印(鉄製のこてです)を初回2万円ぐらいで製作しますと、ずっとオリジナルの煎餅をここで作ることができます。会社や学校の記念品や、個人のお祝いごとの贈答品に使われています。桂べかこ(現桂南光)さんもご自分の似顔絵の焼き印を作って、煎餅にされておられましたし、私の知り合いは、子どもが生まれたときに記念の焼き印を作って、毎年、誕生日が来ると煎餅を作って配ってくれます。ここの煎餅は、そのへんのよくある瓦煎餅とは全く違って本当に美味しいので、いつも喜んで貰っています。ただ固いだけではなく、口に入れると良い感じで溶けていくのです。そのかわり、湿気てしまいやすいので、2枚ずつ袋に大きな乾燥剤の袋と一緒に封入されています。一度開封すると、2枚ともすぐに食べてしまう必要がありますね。中には湿気た煎餅が好きだという人もいますけど。
もうひとつの名物のカステラ焼きも、縁日でよくあるベビーカステラと全く違う美味しさです。原料は小麦粉、砂糖、卵、蜂蜜などですから、瓦煎餅とほとんど同じです。変な混ぜ物は入ってないので、子どものおやつに最適です。
一度、店の奥の作業場で焼いているところを見せてもらったことがありますが、そのときはびっくりしました。縁日の屋台でやっているような鉄板でひっくり返して一度にたくさん焼くのではなく、手持ちの器具を使って本当に手焼きで焼いているのです。これでは、午前中に売り切れるぐらいの量しか作れなくても仕方ないなあと納得しました。
他にも、こけしあられなどいろいろな種類の銘菓があり、少量の袋に入って値段も安いので、ここに来るとつい何種類も買ってしまいます。
口数の少ない大将とは対照的に、店頭の奥さんは、明るくほがらかで、お店の雰囲気はとてもいいものがあります。三代目を継ぐ人がいるのか、ちょっと心配ですが、ずっと続いてほしい立花が誇る名店であります。
2017/04/05 更新
寡黙な職人肌の大将と、明るく愛想の良い奥さんのコンビで、相変わらず元気にやってはります。スタッフの方がいなくなったせいか、たまに娘さんが手伝っているか、以前はずっと奥で焼き専門だった大将を店頭で見ることが多くなってきたことが変わったことでしょうか。人気のカステラ焼きが、午前中に売り切れることが多いのは相変わらずです。
このカステラ焼き、そこらへんの屋台のベビーカステラと違って素性の確かな材料を使った手焼きです。適度な弾力と噛み応えがあって、じわっと来る美味しさが堪りません。爺が赤ん坊のときから食べ続けているのですが、家にあるのを見つけるとつい手が出てしまい、食べ出したら止まらなくなります。もう爺の身体の一部になっているぐらいで、客観的な評価なんて無理ですんでよろしく。
カステラ焼きと瓦煎餅が2枚看板ですが、おかき類もとてもたくさんの種類があり、どれも1袋300円~400円のリーズナブルなお値段です。
奥の仕事場で焼いているところを見せてもらったことがあるのですが、ぴあ尼崎食本に写真で紹介されているように、文字通りの手焼きです。焼き型を手にもっていっぺんに数枚しか焼けないんですよ。こんな手がかかる焼き方で作っているものをこんなお値段で買えるのが申し訳ないぐらいです。
ホントに町の人間国宝といえるぐらい貴重な存在です。無理をしない範囲でずっと続けてほしいなと思います。