hongo555さんのマイ★ベストレストラン 2017

Mangiare è un'avventura! 美味しい&楽しい店のご案内

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

コメント

今年のテーマは「旅先の名店」でした。
もちろん地元の馴染みの店にも足繁く通いましたが、旅先(出張含む)での食事は気候も風土も食材も異なり、大変刺激的かつ楽しい経験をすることができました。
その中でも特に印象に残るお店をベストに選出しています。
特に印象的だったのは「寿司」です。
江戸前は大変素晴らしい技術に裏打ちされた優れた食事ですが、江戸前に引けを取らない地方の名店がいくつもありました。
特に高松の「中川」と旭川の「鮨みなと」は地元&近海のネタと地元のお米と地元のお酒を合わせて出してくれる地域密着型総合芸術ともいうべき高いクオリティの食事を提供してくれました。

テーマとは別に嬉しかったのは地元の名店の復活です。
「Abats.」はオーナーシェフの体調不良により一旦閉店したのですが、秋に再開し、休業前とやや趣向を変えて更に美味しいものを提供してくれる店に生まれ変わりました。グランメゾン級の皿が楽しめます。私見ですが、ミシュランの星かビブグルマンに近々選定される可能性すらあると思います。まあシェフが極めて個性的なので、星は難しいかな(笑)。
自ら信じる美味しいものを自己の分身として提供し続ける姿勢には感銘を受けています。
末長くお付き合いしたい名店です。

今年はマイブームが餃子からトンカツに入れ替わりました。
昨年まであれほど餃子を追い求めていたのに、気がついてみるといつの間にかとんかつを追いかけていました。
そのきっかけになったのは「ポンチ軒」「とんかつひなた」「丸山吉平」です。
いずれも肉の良さはもちろんのこと、揚げの技術が素晴らしいです。
肉の美味しさを引き出す専門家としての技量は、本当に素晴らしいと感謝しています。

なお、レストランの順番はその時につけた点数ではなく、俯瞰してドーパミンの分泌量が多かった順番としました。
常に「楽しい」が基準です。

来年も美味しくて楽しいお店に数多く出会えますように。

マイ★ベストレストラン

1位

寿司 中川 (片原町(高松)、瓦町、今橋 / 寿司)

2回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2019/12訪問 2022/02/02

ここでしか食べられない至福&極上の旅寿司再び 瀬戸内の幸と丸尾本店の酒を堪能しました

昼間に駄目元で丸尾本店まで行ったんですけど、やはりこの時期は仕込み中で蔵の入口はシャッターが降りており、店舗も閉まっていて悦凱陣は購入できませんでした。残念です。
高松市内で丸尾本店の酒を扱っている店は2軒知っているんですが、両方ともこの時期はほとんど扱いがなくて純米大吟醸を1本購入できただけでした。
まもなく興のうすにごりが出るので、首長くして待ってま〜す!

ということで、待望の寿司中川にやって来ました。
2年ほど前に伺って以来、幾度か出張で高松に来ながらその度に会食とか会食とか会食などでいつも機会を逃して悔しい思いをしていました。
趣向を凝らした寿司前&瀬戸内の魚介を使った寿司と一緒に丸尾本店の酒を堪能できる店を他に知りません。
ようやく再訪が叶いました。

本日は中川さんの正面、付け台の前に案内されました。これは嬉しいです。
寿司職人の手元を拝見するのが大好きなものですから。
お酒は全てお任せでお願いします。今日は丸尾さんの何がいただけるのか期待でワクワクします。
以下、飲んだ酒は全て悦凱陣ほか丸尾さんです。

最初は金比羅大芝居ですね。前回はこちらでこの酒を初めていただいたんでした。
昨日のことのように覚えています。本当に旨い酒です。
今日はまず冷やでいただきました。逸る気持ちを抑えます。

先付がわりに出て来たのは瀬戸内のコモンフグでした。
この時期はトラフグもクサフグも揚がりますし、豊後水道ではクロサバフグが大量発生して網やら仕掛けやらが食いちぎられて漁業被害が出ているそうですから、どんどん食べないと(笑)。
湯引きしてあるフグはもちろんフワッとクニュッとしてとても美味しいんですが、とにかくこのポン酢が素晴らしい。
香りはもちろん、味わいがしっかり強くて好みです。
こんなのが最初から出て来たら酒が進んで困っちゃうよ。

金比羅大芝居の次は阿州山田の純米、これも大好きな酒です。
精米70%でこれほど上品な味、上品な酸味が楽しめる酒は他に知りません。
しかも燗つけると旨味と甘味がぐんと乗ります。
こんなに美味しい酒と瀬戸内の酒肴が楽しめるなんて最高だぁ。
どうせ死ぬならこのあと死にたいくらい(笑)。

燗酒をゆるゆる楽しんでいたら次に出て来たのが巨大なあん肝でした。羅臼産だそうですよ。
1つで5人前はあろうかというデカいあん肝(本当に5皿に分けてた)をちょっと温度を上げるくらいの感じで軽く蒸してあり、白和え風の柿が添えられています。
こちらは軽く出汁醤油が振り掛けてありますが、何もつけずにいただいて十分美味しい。
年末に高松でこんな極上のあん肝がいただけるなんて思ってもみなかったので、多少尿酸値が上がっても(この前の健康診断では正常値でした)絶対に全部食べます。
濃厚な甘みがあってものすごく美味しい。これは堪らん。

今度は28BYの山廃遠野亀の尾を熱燗でいただきながら(中川さんが弟子の山田くんに都度温度を指示して燗つけてくれます)瀬戸内のサワラとアオリイカ、それに小川のうにの盛り合わせです!
小川のうに使うなんてさすがですね。先日鳥田中でいただいて以来です。

熱燗にして甘みと酒の骨格がよりはっきりした遠野亀の尾(24BYより酸度が控えめです)とおろしたての山葵に塩を混ぜてサワラに乗せていただくと白身の上品な甘みが引き立って抜群です。
アオリイカって夏の甘みの強い烏賊という認識ですが、この時期でも十分甘いし厚くて噛み応えのある身が素晴らしい。
一番熱燗に合うように思いました。

小川のうにはこの時期どこのなんでしょうね。冬は噴火湾あたりでしょうか。
やはり最高級品と言われるだけあって房が大きくて型も良く、うにの旨味を堪能できました。
うには燗冷ましにぴったりです。
温度に応じて表情を変えるお酒と旬の酒肴、贅沢な時間です。

寿司前の締めは地元産の原木椎茸と白子のホイル蒸しです。
これが美味しくないはずがないですよね。
アツアツで口の中火傷しそうでしたが、ありがたく頂戴しました。
椎茸のグアニル酸がマタチにいい感じに移ってとんでもない旨さです。

しかも、悦凱陣の遠野亀の尾なんていう4年に一回くらいしか仕込まない酒が普通に出てくる寿司屋なんて他にないよねとワイフと一緒に感嘆しきり。
しかもガンガン燗つけちゃうんですから。
これだけ温度を上げても全く潰れないどころか、旨さが際立つ銘酒です。

さて、居酒屋タイムが惜しまれつつ終了して、ここからは握りの時間。
中川さんのあつあつの酢飯で握る寿司の始まりです。
○漬け 旨味たっぷりの漬けにシャリが合います
○赤身 対照的にあっさりした軽い味わいの赤身でした
◎スミイカ 酢橘たっぷり絞って塩でいただきました 凄い旨味です

ここで中川さんのオススメで28BYの赤磐雄町の山廃純米にチェンジ。
身体が熱いので最初は冷やでいただきます。
◎瀬戸内の鯵 脂の乗りが抜群です 美味いとしか言いようがない・・・
◎軽く蒸した白甘鯛に炙ったサワラの皮を入れた握り 激ウマ!
○かんずりを乗せたタコ 越後のかんずりって辛いだけじゃなくて素材を上手に引き立ててくれますけど、瀬戸内の蛸との相性がすんばらしいです これから自宅でタコ刺しを食べるときはかんずり使います!
○渡り蟹の内子 酒肴で出してくれました まろやかな塩味が悦凱陣とよく合います
◎渡り蟹のほぐし身の握り まず酒のアテとして摘んでくださいと置かれました ちょっと摘んでお酒をいただいて最後に酢飯と一緒にパクリ 堪りません

ここでちょっとわがままを言って陳ね酒をお願いしたところ、もうそんなにないんですよと言いながら26BYのオオセトを出してくれました。
言ってみるもんだなぁ(笑)。ありがとうございます。
ちょっと我を忘れてお酒に浸っちゃいました。

さて、お寿司の続きです。
◎シラサエビ シラサエビって釣りに使う小さいのはよく見かけますが、これだけ大きいのはなかなかお目にかかれません
その辺の車海老(笑)より段違いに美味しいです 釣りに使うのはもったいないよ(笑)
○小鰭 強く締めていなくて温かいシャリにとてもよく合います
◉炙りノドグロとニンニク これはヤヴァい 寿司にニンニク使うなんてと思いましたがこれがびっくりの美味しさです
のどぐろの脂とニンニクが寿司になるなんて凄いことです これはあったら絶対に食べないと
◎いくら 自家製です あっさりした醤油漬けで脂が立たずとても滑らかでした
○御御御付け 四国のワカメって本当に美味しいですね
○締めのトロたく トロは包丁で叩いて甘みを引き出してくれます 目でも美味しい一品です
◎追加でコモンフグの握り 最初にいただいたフグの味が忘れられなくて握ってもらいました 最高です!
 
デザートは燕石を注いでいただくバニラアイスと焙じ茶です。
燕石をバニラアイスにかけちゃうなんてものすごく贅沢ですけど、美味しいんだから文句なしです。
エレガントな甘みと甘さ控えめのアイスクリームが合うんでしょうね。
とっても満足です。

食後にはご一緒した地元の方とも楽しく談笑させていただき(サン・ラの話ができるとは思いませんでしたよ)あっという間の3時間でした。
中川さんには絶対に銀座に来ないでくださいねってお願いしました。
だって週一で通う羽目になって中川破産しちゃうから(笑)。

楽しくてとても美味しい旅寿司をまた中川さんにたっぷりと味あわせていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
ご馳走様でした!!!旅寿司最高です!


その後東京に戻って悦凱陣を無事入手できたので、正月の準備は万全です。
偶然にも興の24BYを飲む機会もいただけてとても幸せな年末を過ごしてます(笑)。

 
旅寿司が好きです。

寿司という食べ物については、やはり江戸前がトータルのバランスが取れているとは思っていますが、日本各地にはその土地ならではのお寿司文化があるわけですし。
また、最近都内で流行している劇場型寿司店(→美味しいんだけど何か乗せられちゃってる感じがしないでもない)や高級素材をガンガン使ってこれ見よがしの寿司前とお酒&ワインを出す割に肝心の寿司に特段の印象がない寿司店(→話題もソツがないし気配り目配りも素晴らしいのにそのホスピタリティがお寿司に向いてない)、老舗とは名ばかりの名前に胡座をかいているだけの寿司店(→あの店とかあの店とかそれからあの店とか)などを目にするにつけ、本当に美味しい寿司って何かなと考えるようになりました。
そうすると東京では味わえない、地元の魚と旬の食材、地元のお酒に合わせた美味しい寿司と寿司前で勝負している地方の雄に俄然気持ちが向きます。
それで最近は意識して旅に出たり出張で赴いた先で、これはと思うお店に伺うようにしていますが、これが美味しくて楽しい満足感たっぷりの店ばかりで、旅寿司に嵌り始めています。

寿司中川は、琴平で美味しい日本酒を醸造する丸尾本店の「悦 凱陣(よろこび がいじん)」を専門に取り扱う店と聞いて、季節ごとに付き合いのある酒屋に少量入荷してくる悦凱陣を心待ちにしている身としては、この個性的で芳醇な味わいのお酒と酒肴をどのように合わせてくれるのか、また地物のネタで握る寿司も楽しみで、ワクワクしつつ伺いました。

お店の場所は客引きがたくさん出没する(社長!いかがでしょう!っていう客引きを30年ぶりに見ました)お世辞にも雰囲気の良いエリアではありませんが、店内はそれとは隔絶された、細部にまで非常に気を遣って設えられている気持ちの良い空間に仕上がっていました。
外扉を入った敷いてある石畳や照明、美しい板張りの内壁と天井の竿縁、盛台と付け台の白木、客を迎えに出る&見送るための専用引き戸、ホシザキの冷蔵庫の扉に至るまで、店内で客の目に触れるところには全て神経が届いています。気持ちが良いなぁ。

で、店主の中川さんとは初対面ですのでご挨拶して、早速お酒を。
「お酒は何になさいますか?」
「こちらは悦凱陣専門と伺いましたのでお酒で」
「初めからお酒で宜しいですか?」
「もちろんです。悦凱陣大好きなので楽しみにして来ました」
「では、そのつもりで参ります(にこっ)」
おお、これで飲みたい放題払いたい放題コース(笑)のスタートです。

お店からの宣戦布告(笑)はなんと金比羅大芝居でした。
これ飲んでみたかったんですよ〜〜〜!!!
ネット通販では見かけますが、現物を見たことがない私にとっては「幻の酒」でした。
きっと飲みながらニヤついていたことでしょう(笑)。
悦凱陣としては柔らかめの酸味で豊かな香りが口いっぱいに拡がり、鼻に抜けていきます。
たまらん。

酒肴は河豚の皮のお造りから。金比羅大芝居と絶妙のコンビネーションです。
お酒の味と香りを熟知した酒肴の組み合わせですね。すごいです。
お次はオオセト純米の山廃27BYです。
こちらとワタリガニと山芋の擂り流しもまた相性が抜群に良いです。
この調子で、讃州山田錦山廃純米吟醸の27BYをヒヤとぬる燗でたちぽん、興無濾過生の24BYをヒヤと熱燗でさよりの一夜干し、瀬戸内のうになどのお造り、オオセト純米の26BYをヒヤで鰆の塩焼と、もう悦凱陣とベストマッチの酒肴のオンパレードです。
飲むと食べたくなり、食べるとまた飲みたくなる、これは無間食天国ですね(笑)。
しかも、すでにこの段階で悦凱陣を5種類&7通りでいただいています。最高です。

で、ここからはお寿司に参ります。
こちらの舎利は温かいを通り越して、かなりの温度で供されます。
この温度で出される握り寿司はこれまでいただいたことがありませんが、ネタの旨さが際立つお寿司です。
ネタの香りと味が舎利と赤酢に包まれてストレートに伝わってきます。
こんなお寿司食べたことない!素直に美味しいです。

もちろんお寿司になっても悦凱陣のバイ・ザ・猪口は終わりません。
花巻亀の尾の27BYと海老名亀の尾20BYをそれぞれヒヤと燗で楽しんだ後、何と冷蔵庫から14BYの赤磐雄町が登場しました。
これだけの期間、よくぞ上手に寝かせたものです。
私だったら我慢できずに途中で絶対飲んじゃいます(笑)。
冷酒でも非常に香りが高く、悦凱陣の特徴である非常に好ましい酸味と熊本九号酵母が醸し出す甘みと旨みを存分に楽しみました。
ここまで育てるなんて、中川さんの技量も胆力も物凄いです。大したものだなぁ。

寿司ネタは瀬戸内海のものでほぼ1年中賄えるそうです。これも羨ましい話です。
200kg超のクロマグロなんか使わなくたって、美味しいもの満載ですから。
そういうものは東京にやってくるので、東京で食べればいいんです。
旅寿司は本当に楽しくて美味しいです。
今回特に印象に残ったのは白砂海老(しらさえび)です。
車海老よりもひと回り小さいのですが、甘みは車海老より強く、身の弾力もありました。
海老の味がはっきりとしていて、温度の高い舎利とよく合いました。
比較のためにと車海老も握ってもらいましたが、白砂海老の旨みの強さがよくわかりました。
中川さんが握るお寿司と悦凱陣(特に燗酒)は抜群に相性が良いので、いくらでも飲めて食べられそうな錯覚に陥りますが(笑)、フードファイターでもないのでそろそろお腹いっぱい、ちょっと残念です。
お寿司をいただきながら、悦凱陣を4種類&7通りでいただきましたので、合計9種類の悦凱陣をヒヤとぬる燗&熱燗でいただくことができました。
こんな体験、めったにできません。このお店と悦凱陣と中川さんに感謝です。

最後にお米で作ったアイスクリーム(米粒が残る食感がなかなか良いです)に讃州山田錦の26BY純米大吟醸を注いで、一緒にいただきました。これで10種類です。
もう思い残すことがないくらい、悦凱陣を堪能してお寿司を楽しみました。
すごい店&すごい体験でした。

帰りがけには中川さんが外まで見送って下さいました。
高松でこれだけのお寿司とお酒を出すには相当の努力をされてきたのだと思いますが、それが見事に結実しているように思います。
中川さんの飾らないお人柄もお店の味わいですね。
残念なことに地元香川の方でも悦凱陣を知る人は多くないとか。
このお酒の美味しさを知ってもらうために一所懸命になっている中川さんを微力ながら(飲むことで)応援させていただきます。

あ〜楽しかった。
是非また参ります。ご馳走様でした!!!


  • 先付がわりのコモンフグポン酢和え 一気にトップギアな感じ
  • お刺身の盛り合わせ 瀬戸内の旨すぎるサワラ アオリイカに小川のうになんて!
  • 脂ノリノリの鯵 これも抜群に美味しかった

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2位

Abats. (本郷三丁目、水道橋、春日 / ビストロ、惣菜・デリ、フレンチ)

12回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 ¥4,000~¥4,999

2020/08訪問 2020/10/10

惜別の辞 業態変更&移転前「最後の絶品料理」・・・気がつくと朝(笑)

8月末でこちらのお店を閉めると聞いたのが前回伺った時。
突然のことで冗談かと思いましたが店主の気持ちは決まっていたようです。
あっという間に最終日と相成りました。

コロナで売り上げが激減する店&閉店する店があるなか、こちらは勝手連的常連(笑)が応援に大挙して押しかけて繁盛するという稀有な店です。
しかし、コロナ禍で思うところあったようで、料理を提供するよりも厳選した素材でシャルキュトリを販売する店舗を出したいとのこと、こちらのお店を閉めて11月くらいを目処に江戸川橋界隈で再スタートを切ることになりました。

今日は本郷のお店の閉店を惜しむ常連で寿司詰め満員、席がないのでワインだけ飲んで店主に声を掛けて帰る客もいます。
皆さん名残惜しそうに店主と言葉を交わしています。
でも、3密じゃないかこれ、入口のドア開けといてよ!・・・といってもひっきりなしに誰かが出入りするのでドアは開けっ放しと同じです(笑)。

それだけこの店は愛されていたわけで。
これも店主の傍若無人な振る舞いと物言い(笑)とは対極の、繊細で他では味わえない料理の数々を知ってしまった客がせっせと通った結果です。
店主は中途半端に体育会で(笑)、若い客にはグラスワイン頼むと注ぐ手間かかるからボトルにして勝手に飲んでろとか言う割に、私のような年上にはボトルで頼んでいてもグラスが空く前に注ぎに来る男です。

この店には本郷に住んで以来10年以上、折に触れ通いました。
季節のジビエと魚介、全部一から手作りのシャルキュトリ、他ではあまり見かけない美味しいワイン、何よりエレガントで唸るしかない料理の数々と、忙しくなるのが嫌いで料理が一段落すると私の前に椅子を出して一緒に飲み始めちゃうラフな態度がこの店のユニークな、まさに独自という意味での特徴でした。

グランメゾン級の料理が出てきて、素晴らしいワインが供され、自家製の4年ものの蝦夷鹿のハムが前菜に出てくるガストロノミアをずっとワンオペでやり続けてきました。
店主が性格的にほかの料理人を使えないタイプであることは重々承知していることですけど(笑)、もしこの人が後進をきっちり指導して優秀なチームを作れていたなら、確実に星やらビブグルマンやらが後ろからついてくる店になっていたことと思います。
ただ、そういう店になって欲しいという気持ちは全くなくて、地元で飛び切り旨い料理とワインを出してくれる大好きなビストロであり続けてくれると信じて疑わずに10年通っていたわけですから自分にとっては生活の一部&日常そのもの、なのでこちらを閉めると聞いた時の衝撃はすごかった。
この街で生活してきてこれほど落胆し残念に思ったことはありません。
時の流れは無情です。

でも、最後のディナーはいつもと変わらずスタート。
カウンター正面の厨房奥が見えるいつもの席に座り、いつものように出てくる泡をいただきます。
そしてここのところ毎回決まって出てくる砂肝のコンフィ。
自宅でも火を入れていただくことがあったのですが、やはり店の味には仕上がりません。
強火で表面だけ火入れして、コンフィなのにカリッと仕上げるのが独特で美味しいんです。
これもこの店で食べる最後ですけど、いつもと変わらず美味しい(当たり前だ)。

店主が出してくれた最初のワインはK19AK_DDという山梨の白ワイン。
意外だ、国産も出すんだね。もちろん初めて飲みます。
白ですがオレンジワインのようなくすんだやや明るい橙色です。
香りは爽やかでりんごのようです。
口に含むと軽くて甘く、後から若干の酸味と苦味が感じられます。
色のイメージもあるのか、少し柑橘系の味わいもあります。
肉にも魚介にも合いそうなユーティリティプレイヤーです。
美味しいなぁ。こういうワインをどこから見つけてくるんだろうか。

アミューズの後は魚介が出てきました。
今日はシャルキュトリじゃなく魚介メインと聞いていましたのでそれはそれで楽しみです。
出てきたのは黄羽太です。おお、ハタを使うとは珍しい。
根セロリと梨をゴロゴロと切って黄羽太とマリネしてあります。ライムの香りが爽やかなセヴィーチェですね。
北海道の実家から送ってきた香りの高い茗荷とブロッコリースプラウトが味のアクセントです。
黄羽太は淡白ながら旨味が十分で、根セロリや茗荷の苦味と梨の甘さが絶妙。
あれ、こんな料理もできるんだね。すごいなぁ。
ワインとのアッビナメントも抜群です。
秋を先取りしたような一品でした。

お次の料理は大きな帆立の貝柱と自家製ベーコンのソテー。
マッシュした茄子が敷いてあります。
素材の味だけで塩は使っていないようですが十分旨い。
ベーコンの塩味が帆立を肉のようにがっちりした味わいに引き立ててあります。
噛み締めると徐々に肉が魚介に変化していく感じ。
なんとも不思議でオリジナリティのある料理です。
敷いてある茄子の甘みがまた帆立の旨味を強調しています。
よくこんな料理思い付くね、と店主に聞いたらパクった!と言ってました(笑)。

K19AK_DDにはちょっと荷が重かったので、即飲み干してマコン・フュイッセにチェンジ。
ドメーヌ・ジルーの2006年シャルドネです。
これは素晴らしく旨い。こんなワインどうやって引いているんだろうか。
数は少ないけど美味しいワインだと言っていましたがまさにその通り。
リュット・レゾネのビオワインです。
シャープな香りと伸びやかな甘み・酸味があり、かなりの後引きです。
ベーコンの香りをまとってソテーした帆立の貝柱にピッタリハマりました。

次も魚介かな・・・とよく見たら鮑の肝焼きです。
なんだか最後に大盤振る舞いしてないか?(笑)。
ちょっと独特の匂いがしますがにらをソテーしてマッシュしバターと一緒に焼いてあるんだそうで。
また面白いことするねぇ。
香りは思いの外きつくなく、鮑の肝とニラとバターが一緒になるとこんな味なの?という料理でした。
ワインでフランベしてから使っているので、ほんのり甘い香りもしますが味は男前です。
マコン・フュイッセにしておいて良かった。
この硬派なテクスチャをしっかりサポートしてくれました。
こういう時のビオワインって外れるとどうしようもなくなりますが、今日は大当たりです。

で、美味しくて興奮気味に食べていると今度はサラダです。
桃とグリーンアスパラガスとチコリを和えたあっさりしたサラダ。
ニラバターで焼いた鮑の肝の後ですから、リセットですね。
でもコントルノのような皿でもそこは店主の技が効いていて、苦味のあるオリーブオイルががっちり桃の甘みを引き出しています。
苦甘いっていうのは口の中がさっぱりしますね。

カウンターの奥で食事しているご夫婦と思しきお二人には見覚えがなかったのですが、この店を閉めた後に入居するイタリアンのシェフと奥様だと店主に紹介してもらいました。
もう次が決まってるんだ、やること早いねぇ(笑)。
トスカーナで修行してきたそうですから、オープンしたら一度伺ってみることにします。
ほぼ居抜きでお店を使うようですけど使い難くないんだろうか。でも開店が楽しみです。
たっぷり召し上がって皆さんに挨拶してお帰りになりました。

いよいよメイン。この店で味わう最後のメインはなんでしょう・・・
お、羽太ですね。黄羽太ではなく真羽太です。鮑の次は羽太とは頑張ったね。
敷いてあるソースは鮑の肝です。
肝焼きの残りかと思ったけど(笑)当然別に仕立ててあります。
皮目がこんがり焼けていてとても美味しそう。
付け添えはクスクスです。

切りつけは小さめですが身は厚くとてもジューシーです。
身から脂がじわじわと湧き出してきてさすが羽太ですね、旨味がぎっしりです。
この時期でも真羽太が獲れるところがあるのか聞いたら、知り合いの漁師の網に偶々引っかかったんだとか。
季節外れの美味しい味覚を楽しませてもらいました。
でもこれで最後か・・・

と思ったら、今度は仔牛肉が出てきました。
客の気持ちをよく理解しているようです(笑)。
ホワイトヴィールがポアレしてありますよ。
下に一緒に炊いたフォンと焼き目のついた赤パプリカが敷いてあります。
中は半生ですが、フォンで炊いてあるのでとてもジューシーで軽い。
柔らかいだけでなく、肉の弾力が感じられて食べ応えがあります。
こんなに美味しいポアレは食べたことないなぁ。

あの料理も最後、この料理も最後、みんな最後と思ってしっかりいただきました。
こんなに美味しい料理を、こんなにフランクに楽しく食べさせてくれた店は他にありません。
今日で閉めてしまうとは本当に残念です・・・
これまでいただいた数々の料理はしっかり記憶に留めてありますが、これからは思い立ってもいただけないとは悲しい。

惜別の想いが募り、いつまでも立ち去らない客と一緒に飲み会が始まりました。
料理のサーブは終わったので、店主はいつものようにドッかと私の前の椅子に座ってワインをガブガブ飲みます。
どの客も残念な気持ちでいっぱいでしょうに、湿っぽい空気は皆無です。
この店らしく、ラフにぐいぐいワインを飲んで楽しく語り合いました。

で、気がつくと翌朝(笑)。
店主と終電を逃して帰れなくなった客に、近所なのに飲み汚くて居座った客(我々夫婦です)の6人で飲み続けました。

これまで本当にお世話になりました。
この店ほど素敵な店にこれから出会える自信はありません。
もし出会えるとしたら、11月開店予定のシャルキュトリ専門店でしょうか。
次の店でも大いに楽しませてもらいたいものです。

店名も変えないそうですから、Abats.第二章がこれから始まるわけですね。
シャルキュトリの販売なら毎日早く店を締めることができますから、まだ小さいお子さんの面倒も見られます。
とても子煩悩な店主ですから、お子さんの成長を身近で見守れるようにとの考えもあったんでしょう。
客より家族です。当然です。
でもこの店を愛した客が結構たくさんいたことも忘れないでね。

ご馳走様でした!!・・・とは今日(今朝)だけは言いたくないなぁ。
大好きな店でした。

これまで本当に本当にありがとうございました!!
本郷三丁目に燦然と輝く孤高のガストロノミア、Abats.です。
現在はランチ休止中で、毎週水〜土のディナーのみ席数を限って営業しています。
毎日300人だ400人だと東京のコロナ新規感染者は増加中ですから、本郷界隈も夜の人出はさっぱりです。
どの店も閑古鳥が鳴いてますが、こちらは少数ながらも毎日コンスタントな来客があるようです。
さすが人気店、旨いものを手頃な価格で楽しませてくれる店には胃袋を掴まれた客が夜な夜な訪れて来るんですね。

それにしてもGoToトラブル(笑)は継続するのにお盆の帰省は自粛しろだの、総合的に判断すると爆発的感染には至っていないだの、認識の甘さと対応の迷走ぶりばかりが目立つ昨今、せめてしっかり肉でも食って夏負けしない身体を作ろうとやってきました。
夜の飲食は基本的に徒歩圏&なるべく短時間で済ますように心掛けています。
9日間で1万人も感染者が増えている状況ですから、最早どこで感染しても不思議ではありません。

さて、本日電話してから伺ってみると先客はお一人様が2名だけ、我々と離れた席に座っていますのでソーシャル・ディスタンスは保たれています。
換気もしっかりして3密を回避した上で営業しています。

先づ泡をいただいて黒板メニューを拝見しましたが、先日から大きく変わっていません。
こういう時は黒板に書かれていないメニューが出てくることを期待してお任せにします。
それでもワイフは鮎のコンフィがあったら必ず入れてとリクエストは怠りません。
任せたんだから任せればいいのに(笑)。

アミューズにはいつもの砂肝のコンフィ。
軽く火を通してあって、美味しそうな香りを纏って小皿に乗って出てきます。
これ食べるとAbats.の料理始まりっていう実感が湧きます。
胃の噴門部も開くというものです(笑)。

ワインはオススメのカラバーリョ、マルヴァジアです。
シチリアの白ワインですが、よく見たらSalinaと書いてあります。
サリーナってシチリアの脇の小さな小さな島ですよ。
ストロンボリ島よりは大きいけど。
あんなところでワイン造ってるのかと、ちょっとびっくりしました。
あとで調べてみよう・・・

産地には驚きましたが、ワインは酸味があってややドライ、至って飲みやすいです。
レモンのような柑橘系の香りがします。
これはこの店の料理に合うな。
出足快調です。

最初に出てきたのはシャルキュトリ各種。
あら、この店に似合わないかわいいポーションですけど、貯蔵庫を整理していて偶然発掘された長期熟成系(笑)なので是非とのこと、それは有難き幸せです。
貯蔵庫から偶然発見って・・・そんなことあるのかなと思いつつ、自分に当てはめるとCDやLPの棚を整理していて、レアなCD発見したり同じアルバムが複数(それも3枚とか)出てきたりすることがありますから、まあそういうことなのかなと。

それにしても、8年ものの岩中豚に4年ものの蝦夷鹿、真鴨は2年、一番短い合鴨でも1年寝かせてある(正確には知らずに寝てた)・・・って凄いね。
お任せしたらメニューに載っていないものがいきなり出てきましたよ。
任せて良かったです(笑)。

どれも水分がすっかり抜けて肉の持つ旨味が凝縮されています。
小さいですが噛むほどに旨味が溢れ出してきて、一枚でワインが一本空きそう。
特に蝦夷鹿は大変エレガントな旨味があって、忘れがたい味でした。
岩中豚もとても旨い。はっきり言ってヤヴァいくらい旨い。
他の肉ももちろん旨いんですけど、岩中豚と蝦夷鹿にヤラレました。

お次は薩摩地鶏と栗のパテ。
スライスして重ねてあります。
パテですが栗が固いので食べやすいように配慮してくれているんですねきっと。
若鶏のバロティーヌ、パテ・ド・カンパーニュ、それにブーダン・ノワールを勝手にAbats.三大シャルキュトリと呼んでいますけど(笑)、それに次ぐ旨さ。

と思ったらブーダン・ノワールが登場。
やはり1年ほど寝かせたものらしく少ししかないけど食べてとのことです。
普通は腸詰にしますが、こちらではパテとしてつくります。
このほうが寝かせるのに向いているんでしょうか。
濃厚な旨味とスパイスの香りが素晴らしい。
マルヴァジアでは負けてしまいそうです。
フルボディの赤が欲しくなりますが・・・今日は蒸し暑いから白で。

Le Rocher des Violettesという(フランスのワインは全くわからない)シェニンブラン100%の白ワインが出てきました。
桃のような甘い香りがしますが、案外ドライで酸味もそこそこあります。
香り華やかでボディはしっかり、喉越し爽やかですね。大変美味しいです。
ところでモンルイ シュル ロワールってどこだ?(笑)

お次は突然のガスパチョ!
この店でガスパチョが出て来るのは初めてですが、これだけ蒸し暑いと確かに飲みたくなる味です。
グリーンと赤の2層になってますね。オシャレです(笑)。
下層のグリーンはスパイシーなきゅうりで胡椒が効いています。
上はもちろんトマトで生にんにくが効いたエッジの効いた味。
程よい酸味もあって喉を冷たく滑っていく感じが堪らない。

通称スペインのフライパン地方、グラナダでもセビージャでもヘレスでも毎昼&毎晩欠かさずいただいていました。
レシピは店ごとに違うそうですが、トマトとにんにくたっぷりという基本は同じです。
グラナダの露店で飲んだガスパチョが美味し過ぎて忘れられません。おかわりしたもんなぁ(笑)。
なんてことを思い出す美味しさでした。
しかも冷えたワインととてもよく合います。

さて、ワイフお待ちかねの鮎のコンフィが出てきましたよ。
前回いただいたものよりさらに太った立派な天然鮎です。
よくこんな鮎が手に入るものだと感心します。
完成まで1週間ほど寝かせてあるそうですが、骨もほろほろと崩れるほど柔らかく、甘い身とほろ苦いワタと一緒にいただくと盛夏の味です。

長らく鮎は塩焼き&土鍋炊き込みご飯に勝る食べ方はないと思っていましたが、ここ数年鮎のコンフィをいただくようになってその考えがぐらついています。
興奮する旨さというか、嗅覚、味覚&食感、視覚に訴える旨さです。
お任せにリクエスト入れてくれてありがとう(笑)。

今度はお肉ですね。
ホロホロ鳥のソテーに自家製ベーコンが合わせてあります。
肉汁にワインとワインビネガーを合わせたシンプルなソースが回し掛けられており、軽い味わいに仕上げてあるのに旨味がすごい。
先日、中目黒でいただいたホロホロ鳥のグリルも絶品でしたが、これはそのさらに上を行く旨さです。
ベーコンの燻製香と脂がホロホロ鳥の淡白な美味しさにインパクトを加えていて、ソースの軽い酸味と甘味が余韻を楽しませてくれます。

いつも感心するんですけど、グランメゾン並みに完成度の高い皿がさりげなく出てくる店です。
シェフに人を育てる能力とか、統括して作品を作り上げる能力があれば、今頃どこぞの有名レストランの顔として活躍しているんではないかと妄想してしまいます。
この人にそんな能力ゼロだもんね(笑)。

ということで、客も少ない&知った顔ばかりなので、あとは適当にワインが開いて飲み会になりました。
シェフも飲むので全員で割り勘です。
こういう客との繋がりを仕事としてではなく軽やかに楽しめる仲間ウチのサロンのような雰囲気が、この店の真骨頂なのだと改めて思いました。
よく覚えてないけど一体ワイン何本空けたんだろう・・・

ああ楽しかった。
少人数で適切な距離を保って換気を怠らなければ、十分楽しむことができますね。

ご馳走様でした!!!
毎度お馴染み本郷三丁目に燦然と輝く唯我独尊の味わい、肉ビストロAbats.です。
シャルキュトリの旨さ、ソシソンの出来栄え、テリーヌ&パテの味わいに特徴ある一品料理の数々、ポーションどれを取っても勝手に(海外の)グランメゾン級だと思っております。
ワインも個性的で美味しいものがラインナップされていて、しかも呑み助(笑)のシェフが全部飲んでから仕入れているので、出てくる料理との相性もぴったりです。

さて、緊急事態宣言が解除されて営業体勢はどうするのか電話したところ、当面は席数を減らして(ってもともとカウンター8席&テーブル6席でしたけど)ディナーのみ営業を再開するとのことです。
ディナーは水曜日から土曜日まで、ランチはしばらく再開の予定はないそうです。

ということで久しぶりにAbats.のディナーを味わいに来ました。
ご機嫌伺いに電話したら、席が空いていたものですから。
メニューは黒板にあるものか、コースかお任せかです。
コースはワインを飲むための5皿でメインは別だそうです。
で、今日のコースってなに?と聞くとまだ決めてないって(笑)おいおい。
つまりコースもお任せってことですね。

じゃあその適当コース(笑)でワインを飲んで、足りなかったらメインをドーンといきましょう。
シャルキュトリの盛り合わせも2人前で5,800円と黒板に書いてあるので注文しようかなと思ったら、もうそんなに食べられる年齢じゃないでしょ、と軽くあしらわれ(笑)メインもあることですからコースで我慢です。
ちくしょ〜、何だか悔しい・・・

ということで泡をもらってコースのスタート。
客は我々を含めて5人ですからかなり間が空いています。
入口も開放しているので3密は回避できてますよ。

ワインはお任せのCoteaux du Giennois2014で、かなりのミネラル感があって軽くはなく、控えめな柑橘系の香りがします。
最初から肉を食べる気満々なので、軽くて華やかはなしでお願いしたらドンピシャが出て来ました。
これはとても好みの味です。
そういえばこちらでワインを任せて外れたことってないよなぁ。

最初はアミューズがわりの砂肝のコンフィ。
軽くプライパンで温めて脂をしっかり出してから小皿で提供されます。
予め低温の油で火入れしてありますからしっとり柔らかくてはっきりした塩味です。
これはこのミネラル感のあるワインに合うよね。最初から美味しいです。

お次はパストラミビーフです。
今日はランプ肉だそうで、薄く切りつけてオリーブオイルを纏わせてありますね。
十分熟成していて肉の素材としての味がはっきりと伝わって来ます。
強い旨味がじわじわ出て来て、赤ワインが欲しくなります。
こういうボディのしっかりした白ワインでも負けそうです。
添えられた酢漬けのキャベツも良いアクセントですね。

ワイフには鴨のソシソン、私には長期熟成のパテ・ド・カンパーニュが出て来ました。
鴨のソシソンはフレッシュで鴨肉の癖のない旨味が前面に出てます。
香りも爽やかでわずかに使ってあるハーブが効いていますね。
パテ・ド・カンパーニュは反対に濃厚。
どっしり重い肉質で、ステーキを食べているような食べ応えです。
長期熟成って1年くらいでしょうか(聞けよ)。
旨味が溢れ出してきて、いつまでも噛んでいられます。

肉が続いたので今度はスープ。
ワイフには大好物のグリーンピースのポタージュ、私にはグリーンアスパラの粗濾しスープ。
肉から一転して軽さと甘さが楽しめます。
ブロードがしっかり効かせてあってコクもありますね。
コースの真ん中にスープってこちらの店ではよくありますが、なかなかいいアイディアです。

さて、ワインがルーブル・ド・ペローというシャルドネに替わりました。
貴腐ワインが足してあるそうで、酸味がやや高くわずかに苦味も感じます。
白ワインですが、これもシャルキュトリにとても合いそうだ・・・と思っていたら、ブーダンノワールにりんご煮と赤キャベツが添えられて登場。
おお、結構なボリュームだよ。

チョコレートのような黒に近いワインレッドですが、口当たりはとても滑らかで上品なブーダンノワールです。
これも結構な期間寝かせてあって、甘みと旨味のバランスが良く、しかもとても濃厚なのに口の中できれいに消えていきます。
後味が軽いので、白ワインでも十分戦う余地があります。
むしろ勝ってるかも(笑)。唸るほど旨いとはこのことですな。

コースの最後はワイフのリクエスト通りに天然鮎のコンフィです。
養殖かと思うくらい立派なサイズ(25cmくらい)で、きっと藻を食いまくっていたんでしょうね。
ふっくら太っていてとても美味しそうです。
コンフィなので香りもしっかり残っており、頭から齧るとスイカの香りがします。
さすが香魚。
6月に解禁になったばかりだというのに(例年そうだよね)もうこんなサイズの天然鮎がいただけるとは幸せです。

泡1本にワインを2本飲んだのでワイフはもうお腹いっぱいだそうです。
では私だけリダニョーか山形豚のソテーをがっつり・・・と思ったけど、自家製の美味しいパンが残っているので、もう一品パテをいただくことにしました。

赤のグラスワインをもらって、追加したのは薩摩地鶏と栗のパテ。
日本三大地鶏の薩摩地鶏のモモとムネを層状に敷き詰めて、間に栗と香辛料とハーブを入れ、じっくり寝かせた逸品です。
美味しそ〜!コースに入っていなかったので思わず追加です。

薩摩地鶏の肉の旨味がたっぷりで、栗は甘味ではなく食感と香りのアクセントですね。
豚肉とはまた違って繊維質でじんわりと旨味が増していきます。
酸味の強い赤ワインとも相性がいいです。
鶏肉は焼酎にも日本酒にもビールにもウイスキーにも赤ワインにも合いますね。

ああ美味しかった。
4月7日の緊急事態宣言を受けて店内での飲食提供を休止してから約2ヶ月、久しぶりにAbats.の個性的で美味しい肉料理とワインを楽しむことができました。
やっぱりこちらの食事は味わいといい、素材といい、ボリュームといい、技術といい比較できるような店がありません。

単に個性的というと何か違う気がする。
ふわっと軽いのに肉の濃厚な旨味が引き出されていて、何を食べてもAbats.の料理です。
肉を熟成させて美味しくすることに本当に長けているシェフです。
こういう状況になって、改めてこの店の凄さを実感しました。

ご馳走様でした!!!


今日は本郷でランチタイムです。
ご近所でなにウロチョロしてるんだって感じですが、今日は所用があって夫婦揃って午後半休なので、こんな天気の良い日はいそいそとAbats.に向かうことにしました。

ランチの目的はガッツリ肉を喰らうこと。
先日ディナーで伺った時は、(この店としては)少量多品種の皿を堪能したのですが、塊の肉は食べられなかったのでランチで欲望を満たす作戦です。
肉欲っていうのは本来はこういう意味ですよね(笑)。

本日のランチメニューは・・・あら、蝦夷鹿のパイ包み焼きが消されてる!
一人分くらい残ってるかも(いやしい)と思って、シェフに聞いたら開店直後に瞬間蒸発したそうで(笑)。残念です。
でも豚肩ロースト、子羊肩ロースト、ピエ・ド・コションの詰め物、シャルキュトリ盛り合わせはあります。
では・・・豚肩ローストとピエ・ド・コションをお願いします。
両方とも巨大な肉を喰らう豪快なランチです。

13時以降は松前産人参のポタージュスープが付くとメニューに書いてあります。
でもこちらのシェフはとても気前が良いので、13時前でも関係なく振舞ってますね(笑)。
ディナーの時もグラスが空いているとワイン注いでくれたりするし。
自分でルール作って自分でぶっ壊してますよ。面白い&良い人だ(笑)。

シェフと話をしつつ待つこと暫し、先にその松前産人参ポタージュが出てきました。
きっと実家の北海道から届いた人参をガンガン擦り下ろして惜しげも無く投入したと思われるスープです。
オリーブオイルが回しかけられていて見るからに美味しそう。

早速いただくと濃厚で甘くて、ブロードが効いていて&香りが抜群。
自家製のパンを千切って一滴残さず掬い取っていただきました。
ランチにこんな美味しいスープが出てくるなんて、午後仕事があっても手に付かないよ。
午後半休で良かった(笑)。

さて、メインの塊肉が目の前にやってきました(写真参照)。やたっ!
豚肩ローストとピエ・ド・コションは、両方とも期待通り巨大です。
重さを聞くと、目分量だけど500gくらいかなって(笑)。
我々のギラついた目を見て、少し大きく切り出してくれたようです。ありがとうございます。

逸る気持ちを抑えつつ、ピエ・ド・コションをカットして一口。
溢れ出す肉汁を下顎で受け止めながらガシガシ噛みます。
豚肉ってこんなに美味しかったっけ?っていうくらい美味しい。
揚げてとんかつにするのも大変美味しいですけど、豚足にひき肉をたっぷり詰めてローストすると、もう最高に美味しい肉の完成です。
なんじゃこりゃ。美味過ぎだよ。

堪らず泡をグラスで一杯もらうことにしました。
ワインなしでこれを食べるなんて犯罪です(笑)。
la flautaという微発泡の白で、とてもさっぱりした口当たりです。
これがあれば肉を食べ続けられます。

ワインを飲んで肉を喰らうとさらに美味しくて笑うか泣くか、感情を爆発させないとどうにかなりそう(大袈裟だ)。
・・・他の客は大人しく普通に食べてますけど、平気なのかな。
というか周りを見回すと女性客が圧倒的多数、男性客は私を含めて3人です。
このボリュームのお肉を喰らいに来るのは専ら肉食女子なんですね。

ワイフの豚肩ローストもすんごい肉汁。溢れ出す食べる化粧水ですね(笑)。
豚肉好きで良かったなぁ、としみじみ思います。蝦夷鹿も食べたかったけど。
こんな豪快な脂たっぷりの豚肩を塊で食べられる幸せと肉を噛みしめまくりました。

あ、肉の下にはたっぷりとワイルドライスとレンズ豆が敷いてありますね。
これも肉を咀嚼する合間に一緒にいただきます。
ふっくら炊けていて美味しいだけでなく、溢れた肉汁を綺麗に受け止めてくれるので全量摂取ができます。
理想的なランチ(これがランチでいいのかというのは別にして)です。

泡のグラスもあっという間になくなってしまい・・・
まだ肉は塊のまま大量に残っているので、仕方なくワインをお代わりすることにします。
だってワインがないと食べられないんだもん。
今度は赤にしよう。

これ旨いよとシェフが出してくれたのは、la petite commanderieというカリニャンとシラーのビオでした。
カルカッソンヌですから南ですね(それくらいはわかる)。
香りがとにかく素晴らしくて、抜栓した途端にバラのような芳香が立ち上ります。
香りと同じく味もふくよかで、舌に乗るととてもエレガント。ちょっとうっとりしちゃう味です。
昼からこんなに旨いワイン飲んじゃってどうしよう(笑)。

ここからは冷めたら嫌なので肉とワインだけに集中。
肉を咀嚼して&感激して、ワインの香りと味を楽しみました。
大満足です。ガッツリ肉を喰らう目的は果たしました。
ミッション・コンプリートです。
あ、ワイン空いちゃった。ボトルで出すから・・・(笑)。

さて、クレマが仄かに苦甘いエスプレッソをいただいて今日の極上肉ランチも終了。
本当に美味しかった。わざわざ食べに来る甲斐のあるランチです。
これで1,500円はコスパ良過ぎですよ。
我々はワイン飲んじゃったので1,500円じゃ済みませんでしたけど(笑)。

この店がご近所で&会社のそばになくて本当に良かった。
もし会社のそばにあったら、通い詰めて午後は仕事しない不良会社員になってしまいますからね。

今日もご馳走様でした!!



毎度お馴染み、唯一無二の料理を食べさせてくれるAbats.です。
昨日メールが来て3人目のお子さんが無事産まれたとのこと、おめでとうございます!
母子ともに健康です。良かった良かった。
3人の男の子を育てるのは大変だと思いますけど、しっかり営業して家族を支えてください。

ということで早速売り上げに貢献しないと(笑)。
美味しいものを食べさせていただくと、お子さんがすくすくと順調に成長する仕組みです。
他のお客さんもたくさん食べてたくさん飲んで協力して下さいね。

まずはキノコのゼリー寄せで泡を飲んで乾杯。
豚肉のブロードで事前に冷やし固めた旨味たっぷりのアスピックです。
ゼラチンは使っていませんから、フォークでホロホロと気持ちよくほぐれます。
口の中に広がる旨味が強いので、この分量でもグラスがすぐに空いてしまいます(笑)。

ワインはこちらではいつもお任せです。
飲んだことのないワイン&よく知らないフランスのワインが出てくるので、お任せしたほうが食事とのマリアージュを安心して楽しめます。
一本目はモンテ・ディ・ロアリのビオが出てきました。
アンフォラに入れて一次発酵させてからジュースを加えて瓶詰し、瓶内二次発酵させたマルヴァジア主体の無濾過微発泡ワインです。
ラベルの通りヴェネトのヴァレッジォで生産された白ですね。
セミドライで口当たりが軽いので魚や野菜のマリネのようなアンティパストにはかなり向いています。
こちらでイタリアのワインが出てくるなんて珍しいな。

さて、アミューズの次は久しぶりのシャルキュトリ盛り合わせ。
以前はえげつない量が盛り付けられていましたが、復活してからは普通の量+エクストラくらいになりました。
それでもロースハム、ジャンボノー、合鴨のスモーク、鴨の生ハム、蝦夷鹿の生ハム&サラミ、猪のラルドという豪華な盛り合わせです。
こんなの出されたらワインがいくらあっても足りません(笑)。
どんどん食べて&ワインもガブガブ、これがAbats.のすごいところ&怖いところです。

一本目を飲み終えたらすぐに二本目が出てきました。ワンオペなのによく見てますね。
今度もマルヴァジアのビオだ。またイタリアのワインです。宗旨替えしたのかな(笑)。
クアルティチェッロという名前のエミリア・ロマーニャで造られたワインです。
フルーティなのにミネラル分があってシャルキュトリにぴったりです。
ジュースのように飲んでしまいそう(笑)。

さて、至福のシャルキュトリタイム(笑)が終わり、蝦夷鹿の3年ものの生ハムが異常な旨さだった、いや猪のラルドも凄かったとか話していたら、今度は根セロリのサラダと蓮根のサラダと一緒に煮込み料理が出てきました。
本日のスペシャリテ、鮑と海老、烏賊に塊のジャンボノーをゴロゴロ入れて&ワインたっぷり入れて煮込んだ小鍋仕立てのブレゼです。

あれ、こんなのメニューに載ってないよ、と言ったら、ちょっと思いついて作ってみたんだそうで・・・思いつきでこんなものができるなんて凄過ぎ。
鮑も海老も烏賊もジャンボノーもゴロゴロしていてとても食べ応えがあり、すべての旨味が溶け出したスープというかとろみの強いソースがまた絶品です。
もちろん自家製のパンに一滴残さず塗りつけていただきました。
これは本当に素晴らしい美味しさ、魚介と肉の旨味がバランス良く合わさったポルトガルのカタプラーナ鍋のような味わいでした。美味し過ぎだよこれ。
一緒に出てきた根セロリと蓮根もブレゼとワインの良い橋渡し役で、給食のように三角食べしました。

またワインがあっという間に空いてしまい(笑)、今度はイグニスという名前のコート・デュ・ローヌになりました。
グルナッシュとシラーが半々のフルボディですが、甘さもしっかりあって、肉にも魚にも合わせやすそうな味わいです。
南イタリアの甘みのはっきりした赤ワインが好きな我々としては、とても美味しくいただけました。

メインの焼き上がりまでこれ食べてて下さい、と言われて出てきたのは仔牛のモツ煮です。
味噌はもちろん入れてないと言っていましたけど(笑)、両国や錦糸町の大衆酒場で出てきそうな美味しいモツ煮込み。
普通、こういう味はアル添の日本酒か焼酎のお湯割にぴったりなんですけど、不思議と赤ワインにも合います。
むしろ赤ワインにぴったりと言ってもいいくらい。
今日もどんどん機嫌が良くなってきました。毎度のことですけど。

さて愈々メイン、今日は真鴨のグリルがドカンとやってきました。
結構なデカさです。真鴨ってこんなにデカかったかな。
完璧に血抜きがしてあって香りはとても良いです。若干の血の香りも野趣がありますね。
しっかり火が通っているのに柔らかくて、噛むと肉の旨味が溢れ出てきます。
脂はほぼ落ちていますが、肉に溶けた脂を回し掛けてあるので、肉のツヤも味わいも素晴らしい。
さっきいただいた鮑もとても美味しかったのに、もうそんなこと忘れて鴨肉にかぶりついてます。

この鴨肉にワインを・・・と思ったらラ・レジャンド・フォンレオーというオー・メドックの赤が出てきました。
こちらはカベルネとメルロだそうで、鴨肉との相性も良いですね。
まあすでに3本空けているので、何飲んでも一緒かもしれないけど(笑)。
こんない美味しい鴨料理は久しぶりに食べました。
やっぱりAbats.の食事はいつでも大満足です。

この店では食後の珈琲をいつも飲まないので(一時出なかったことがあったので何となく頼まなくなりました)、もう少しワインを飲もうかな・・・と思ったら先ほどのイグニスがポンとテーブルに置かれましたよ。
相変わらずシェフはよく飲んでよく食べる客には気前がいいです(笑)。ありがたくいただきます。

ということでアミューズ、オードブルのシャルキュトリ、ポワソン替わりのブレゼにメインの真鴨をがっつりいただき、ワインを4本(もらったワインも空けちゃったので5本だ)飲んで、デセールすっ飛ばして本日の食事もめでたく終了。
今日もヤヴァい美味しさでした。
何の緊張感もない和やかな雰囲気で、途轍もなく&こちらの期待を軽く超えてくる美味いものがポンポン出てくる凄い店です。
パスタとかリゾを出さないのもとても良いですし、シェフが選んでいるワインの品揃えも個性的で素晴らしい。
しかもシャルキュトリは買って帰れるので、ウチ飲みにも対応可能です。万能選手ですね。

そういえばクリスマスの丸鳥の詰め物や年末年始のシャルキュトリ詰め合わせの販売も始まっていました。
どちらも5,400円、価格以上のボリュームと美味しさは(勝手に私が)保証しますので、よろしかったら是非。

今日もご馳走様でした!!
お腹いっぱいです!!



毎度お馴染み、Abats.です。
最近肉イタリアンだの肉フレンチだのにフラフラ出かけてみて、今更ながらこちらの肉料理の実力を思い知らされた次第です。
早速電話して席をお願いしました。

今日は(も)お任せです。
こちらは今食べたいものがどうのではなく、どんな美味しいもの出してくれるのか口を大きく開けて待っていれば良いので(笑)、最近はメニューの黒板見てあれこれ言わず、出されたものを喜んで食べてます。
もちろん黒板はチェックして、これはというものはリクエストしますけど。

今日は蝦夷鹿のこれといったのがないとのことなので、野禽をメインにします。
毛を毟られてボディになった野禽をずらりと並べてもらうとかなりワイルドな感じですが、どれも美味しそうです。
ちょうど良い感じになった山鳩をメインにお願いすることにして今日のAbats.がスタート。

最初は豚肉のスネのjambonneauです。
ジャンボノーというと骨付きハムのイメージですが、ハムではなく低温で火入れしてあるそうで。
火入れして溶け出した肉の脂質とゼラチン質で固めるんだとか。
余計なものが一切入っていない自然な味わいで、豚肉の繊維質な食感と柔らかい塩味と甘みのバランスが素晴らしい。
シェフが全部自分で作ってますから安心してがっつきます。
パリで食べたジャンボノーはかなり塩が強くて(それはそれで美味しいんですけど)たくさんは食べられませんでしたが、こちらはいくらでもお腹に入りそうな優しい塩味です。素材の良さがよくわかります。
豆と煮込んでもとても美味しいので買って帰ろうっと。
こちらは自家製のソシソンやらパテやらをグラム単位で販売もしているので、急な飲兵衛の来客とか、夜中に突然ワインが飲みたくなった時とか、朝起きてとにかく肉を食べないと気が済まない気分の時などにとても助かります(笑)。
あ、言い忘れましたが、付け合せの茹でインゲンも甘くて美味しいですよ。

お次はホロホロ鳥のガランティーヌ!
これ大好物なんです。良い肉質のホロホロ鳥が入荷した時以外作らないので、あって嬉しい。
脂の甘みと肉の上品な香り、噛み応えのあるしっかりとした肉の塊です。
ほんの少しの塩と胡椒が味を引き立ててくれますね。
表面に薄っすら張ったアスピックも絶妙の味わいです。

こんなの食べたらワインが止まりません。
これ1つで150gはありますから、いくらでも飲めそうな気がします。
今日も最初から絶好調だ(笑)。
ワインはchateau de Caraguilhes(カラギズ)というラングドックのビオです。
カリニャンとグルナッシュのブレンドだそうですが、タンニンがしっかり感じられる少し重めな味わいで、肉料理にとてもよく合います。

次に出てきたのは鵯(ひよどり)のムースです。
こちらも骨まですり潰して入れ込んである自家製で、同じく店で焼いているパン(これが下手なパン屋より美味しいパンなんですよ)と一緒にいただきます。
口の中で旨味が弾けてますよ。これはヤヴァい旨さ。
レバーペーストに思いっきり旨味を足して味を濃くした感じです。

これ、炊きたてのご飯に盛って山わさびを乗せて醤油かけて食べたら10杯は食べられるんじゃないかな(笑)。
牛乳で伸ばして味を整えて、根菜を炊いてもきっと美味しいと思います。
もちろんパンに乗せてそのまま味わうのが一番シンプルに美味しいですけど、あまりに美味しいので他のアレンジを考えてしまいます。
残しておいてちびちび食べよう・・・(笑)。

メインの前にスープが登場。
今日は豚の骨で取ったブロードにキノコを細かく切って旨味を加えた食べるスープとのことです。
スープボウルの脇に乗せてあるのは・・・食べてみるとすぐにわかりました。ラルドですね。
それも半端なく美味しい。
ここまで透明になっているということはかなりの長期間寝かせてある極上ラルドだと思われます。
どれくらい寝かせてあるの?と聞いたら、3年以上だと。
そりゃすごい。
脂が酸化した感じは微塵もなく、旨味に甘味、塩味に若干の苦味もあってこれはずっと口に入れておきたい「肉のガム」ですね(笑)。
キノコが主役と思わせて実は肉素材がポイントとは相変わらず上手です。
途中からパンを追加して、スープに浸していただきました。堪らんなぁ・・・

怒涛の旨味攻撃を食らって圧倒されてしまいましたが、ワインを飲みながらメインが出てくるまで砂肝のコンフィ(ホロホロ鳥のデカい砂肝です)をつまんで小休止。
相変わらず美味しいものだらけで、しかも独特の味わいを楽しませてくれる店です。
全部一人で仕込んで、下拵えして、料理して、盛り付けて客に出してワイン用意して、下げて洗い物してですから本当に大変なはずですが、自分一人が気ままで良いんだとか。
弟子を育てるなんてことには全く興味がない一匹狼シェフ(笑)です。

さて、メインの山鳩のグリルがやってきました。
山鳩は小さいイメージがありましたが、見たところ案外肉厚でボリュームがありますよ。
肉汁に加えて作った少し酸味とコクのあるソースがたっぷりかかっています。

一口含むととてもジューシーで柔らかく、野禽のクセなど微塵もありません。
ほんのりバターの香りをまとってとても美味しく仕上がっていますね。
肉の旨味を付け添えの白茄子と芽キャベツのソテーがひきたててくれます。
特にこの白茄子がとても新鮮で美味しいです。
山鳩に気持ちが集中していましたが、この茄子の美味しさにも驚きました。
やるなぁ。さすが一匹狼(笑)。

食後に珈琲をいただいて、大満足の肉三昧コース終了。美味しかった。
単に美味しいだけでなく、どこにも似ていない個性的な料理を堪能しました。
ハマると通い続ける羽目になると思いますよ(笑)。

ご馳走様でした。体調管理に留意して近々また寄ります!



本日は仕事で御茶ノ水まで来たので、ちょっと足を伸ばしてこの前夜伺った時にランチを再開したと聞いたAbats.に寄りました。
先日いただいたリー・ド・ヴォーの美味しさが忘れられず、ちょっと寄ってまだ食べられるのか確認しておこうかと。
電話かチャットで聞けば良いんですけど、やっぱりなんだかんだ理由をつけて寄りたくなる店なんです(笑)。

午後1時過ぎにお店に着くと店内は数名の先客のみ。
ランチタイムのピークを外して伺うとすぐに入れそうですが、メニューによっては売り切れてしまうこともあり、食べられないかもリスクとトレードオフです。
ランチは1種類だけの用意で毎日変わリ、何を出すかはAbats.のウェブサイトに掲載されるそうです。

今日は何が食べられるのかな?
私はサイトを観ずに来たので、何が食べられるのか楽しみです。
あ、夜はワンオペですがランチタイムは女性のホールスタッフがいます。
ランチは短時間で勝負ですから一人では対応しきれないんでしょうね。

さて、ランチを聞いてみると今日は仔羊のステーク・アッシェ、スープはカリフラワーのポタージュだそうです!
先日いただいた仔羊のテリーヌが激旨でしたから、今日も仔羊がステーク・アッシェでいただけるなんて、これは期待できます。
ステーク・アッシェ(Steak Hache)はフランスの家庭料理の代表格、叩いた肉を塊まりにして焼いて食べる肉100%のハンバーグ、肉のパテです。

客が来てから叩いてある肉を計量&手捏ねしてフライパンで表面を焼き、さらにオーブンでじっくり火入れしていきますから、ランチでも全く手を抜かない姿勢を貫いています。素晴らしい。
結構どっさり計量しているので、どれくらいのボリュームなの?と聞くと300gとか。
おお、それはなかなかの大きさですね。

焼き上がる少し前にカリフラワーのポタージュと自家製のパンが出てきました。
パンは夜も出しているしっかり小麦の香りと旨味を感じる一品、カリフラワーのポタージュは初めていただきます。
ポタージュはカリフラワーがたっぷり入っていて濃厚ですが、ほんのり甘めで優しい味わいです。
カリフラワーの素材の味と上手に炊かれたブロードが合わせてあって、上品な香りがします。
うん、とても美味しいですね。さすがです。

パンをポタージュにちょっと浸してもぐもぐしながらステーク・アッシェを待ちます。
約10分後大きな肉の塊が焼けて出てきました。
結構迫力あるなぁ(笑)。

下にソースと茹でたキャベツが大量に敷いてあり、さらに上にはこれも結構なボリュームのマッシュポテト、パセリも彩りを添えています。
早速一口いただくと、とてもジューシーで肉汁ジュワジュワです。仔羊の脂肪分と柔らかくミンチされた肉がよく合わさって美味しいです。美味しすぎです(笑)。
ステーク・アッシェというと普通は肉だけなんですが、こちらはクミンやグリーンペッパーが練りこんであり、香りも味も素晴らしいです。
にんじんも少し入っていてパセリとの色合いもきれいですし。
しかもフレンチマスタードやら何やらいっぱい合わせてあるソースがまた美味しくて、ガンガン食べてしまいます。
うーん、ランチにわざわざ足を運ぶだけの甲斐のある料理ですね。さすがです!
マッシュポテトは対照的に塩と酢のシンプルな味付けで、これもバランスがいいです。

こ、これは…ワインが飲みたいぞ(笑)。
食べ終わってから飲んでも仕方ないので、ここは迷わずソーヴィニヨン・ブランをいただきました。
一杯くらい良いよね。
ということで、ミネラルを感じるさっぱりした白をいただいて完食しました。
私の後もどんどんお客さんが入ってきます。やっぱりランチも人気なんですね。
付近にお勤めの方に愛されてるんだと思います。

とても美味しいランチをいただけて幸せでした。満足満足。
ご馳走様でした!!!


いつもとんでもなく美味しいものを食べさせてくれる近所の名店です。
ついついワインをガブガブ飲んじゃってすぐ3〜4万円コースになっちゃうのが玉に瑕ですが、美味しいんだから仕方がありません。
というか、他の客の2倍くらい食べて3倍くらい呑んでますから、むしろ安いと言えるのかも。
今日も何か美味しいもの食べさせてよ、とお任せでお願いします。

店の入口正面の壁に本日のメニューが板書されてますが、眺めているとあれもこれも食べたくなって収拾がつかなくなるので、一通り眺めてから徐ろに「お任せで」とお願いします(笑)。
どれだけ喰うか&呑むか店主がよく知っているので安心です。

今日のスターターは砂肝のコンフィ。
軽くオイルに浸してからオーブンでじっくり焼き上げてありますが、少しも硬くない絶妙の火入れ加減。泡にぴったりですねぇ。相変わらず最初から美味しいです。
こちらのお店は店主お一人なので、料理は次から次に出てくる訳ではありません。
ですから食事はのんびりゆっくりいただくことにしています。
あ、こちらは酒を飲まない方は食事できません。食事だけというのはNGなんです。
ランチはもちろん飲まなくてOKですが、ワイフが平日休んだ際にランチに寄ったら何も言わずにワインが出てきたそうです(笑)。呑兵衛大歓迎の店です。店主もかなり呑みます。

お次はシャルキュトリの盛り合わせ。以前のやんちゃなボリュームの盛り合わせはやめて普通になりました。なんであんなに盛り付けてたの?と聞いたらその時の自分がわからないと言ってました(笑)。
蝦夷鹿の生ハム、合鴨のスモーク、鴨の生ハム、ウリ坊のコッパとラルド、それにロースハムです。
全部こちらの店で作っています。それぞれの肉の旨味がしっかり引き出されていて、塩気も控えめながら十分です。回しかけられたオリーブオイルが食欲をそそります。
マコン・ペロンヌをボトルでいただいて、お肉をゆっくり噛みしめました。
このワインは如何にもブルゴーニュというふっくらした味わいのシャルドネですが、ミネラル感もあってとても美味しいです。貴腐ぶどうを加えて苦味を少し出しているんだとか。
肉に負けないしっかりしたボディですね。酸味もあって飲み飽きません。

さて、よく飲んでよく食べる我々に前菜がもう一品でてきました。
仔羊と猪のパテです。仔羊をテリーヌにするなんて結構な手間がかかるんじゃないかなぁ。
脂が多いし骨っぽいからテリーヌにするだけの肉を用意するのがまず面倒ですが、きっと根気よく作ったんでしょうね。感謝していただきます。
しっかりした肉々しい旨味が口に広がり、しっとりとしていて食べやすいです。
仔羊のテリーヌなんて初めて食べましたよ。これは美味しいです。
猪のテリーヌはくるみが混ぜ込んであり、食感の違いも含めて良いアクセントです。
猪のしっかりした肉感と香辛料の香りが絶妙ですね。こちらもとても美味しいです。
よくできてるなぁ。自家製でここまで作るなんて、マニアです(笑)。

口直しには独活のピクルスが登場。意外です。
店主の実家の北海道から届いたものをピクルスにしたんだそうです。なるほど。
パリッとした食感と爽やかな酸味が素晴らしい。天然物なので香りもまだまだしっかり残っていて、ほんのり苦味もあるのが春っぽいです。
マコン・ペロンヌとの相性もいいですね。口の中がさっぱりします。

さあ、今日のメインは何かな。
白を飲んでいるので、それに合わせて魚介が出てきました。
お、烏賊の印籠詰だ。
烏賊墨と下足を合わせた黒いソースが合わせてあります。
とても良い香りですね。
オーブンでじっくり焼いてあって柔らかく、中には烏賊の卵がたっぷり入っています。
烏賊墨と下足のソースも上品な香りでめちゃくちゃ美味しい!こりゃたまらん!
ワインをメイエ・フォンネのリースリングにして、ソースもパンで掬って残らずいただきました。
こんなに美味しい烏賊料理が近所のフレンチビストロで味わえるなんて幸せだ。

はい、もう一品できました、と出されたのは鮭のグリル。
これも実家の北海道から送られてきた天然物を熟成させて使っているそうです。
同じく北海道から届いた行者にんにくのソテーが付け合わせです。
行者にんにくって醤油漬けにするだけかと思っていたんですが、ソテーするとあの独特の風味がなくなって甘くて上品な味になるんですね。知らなかった。
ほんのり苦味もあって鮭のグリルと良く合います。
肉の前菜に魚介のメインとはなかなか良いですね。お腹にも優しいし。

ご機嫌で食べていたら、さらに被せてたけのこのグリルが出てきました。
まだ出すんだ(笑)。もちろん食べますけど。
この時期は友人の東北の生産者から送ってもらった筍を湯がいて、一晩浸けてから焼くんだそうですが、もう本当に素晴らしい旨味。
付け添えのアンチョビムースがまたとてもよく合います。
よく考えられたAbats.らしいというか店主らしい一皿です。
独活に烏賊に行者にんにくに筍かあ、春満載のコースですね。最高です。
お任せにして良かった。

お腹もかなり膨れてきて、そろそろデザートかなと思ったら、なんとお肉が焼かれてどーんと出てきましたよ。
まだ食べられますよね、と聞かれてうんまあと頷いたらこれです(笑)。
こんがりと美味しそうに焼かれたお肉に何かのラルドが乗せてありますね。
これ何?と聞いたらまず一口食べてみてと。
口に放り込むとなんとも柔らかい食感です。
ミルキーですが、口の中でばらける感覚もありますね。
食べたことがあるようなないような…わからないので教えてもらったら、仔牛のリー・ド・ヴォーでした。
おお、ぷるんとした食感はシビレ=Sweetbreadだったんですね。これはまた珍しいものを。
仔牛の胸腺は母牛のミルクを飲むのに必要な器官で、成長するとなくなるらしいですから仔牛にしかありません。
焼肉屋さんで出てくることはありますけど、フレンチでも使うんですね。
ラルドは猪でした。
ラルドをリー・ド・ヴォーに合わせるとミルキーな食感にジュージーさが加わり、いつまでも噛んでいたいような旨味に変化します。これはすごい。

これは赤ワインが欲しくなる味なので、エピヌイユのピノ・ノワールをグラスでいただきました。
ラベルにブーケ・ドゥ・グロゼイユと書かれていますね。赤スグリの花束ってどういう意味だろう。
酸味があってやや軽い味わいでしたが、リー・ド・ヴォーにとてもよく合いました。
夢中で食べちゃいましたよ(笑)。

もうお腹いっぱい。
このポーションで8皿も食べれば膨れますよね。
デザートも入りません(笑)。

満足満足。何も言うことなしです。
これだけ食べて飲んでですから、やっぱりコスパは抜群です。
本日は2人で3万円ちょっとでした。
19時から食べ始めて店を出たのは23時前、4時間近く飲んだり食べたりしましたが、何だかあっという間でした。

自宅まで歩いて帰れる距離にこの店があるなんて、本当に我々は運が良いです(笑)。

ご馳走様でした!!



全国的に猛暑ですねー。
テレビでは連日熱中症の危険が水分が塩分がミネラルがと言っていますが、こんなに連呼すると耳に入らなくなるんじゃないかと勝手に心配しています。
私は暑いと食欲が落ちるんですけど、ワイフは反対に食欲が増進するそうで(笑)、気がつくとこちらの席の予約が入っていました。
食べろと。あ、はいはい。
abats.なら望むところです!

ということで、いつものカウンター席に陣取ると早速グラスの泡が出てきました。
盛夏のabats.劇場の開演です。楽しみー!
やっぱりこの席に座るとテンション上がります。
自然と胃も活性化しているようで、泡が良い感じに染み渡りました。準備万端です(笑)。

まずはアミューズ代わりの泉州の水茄子(旬ですね〜)に自家製の鶏もも肉の生ハム添え。
水茄子の爽やかな甘みと生ハムの塩味の組み合わせ、またそれぞれの食感の違いがユニークです。
甘塩っぱいとワインがスイスイ喉を通っちゃうんですよね。これは危ないアミューズです。

次は、冷蔵庫からゴソゴソ四角いホテルパンのような深いトレーを出してきて何を分厚く切っているのかと思ったら、鯖です、間にマンゴー挟んでます、とのこと。
甘エビとマンゴーのジュレがけは食べたことがありますが、鯖と合わせるとはちょっと驚きです。
でもこれが食べてみると実に美味しい。
マンゴーの上品な甘みと鯖のイノシン酸がこんなに合うなんてねぇ。
マンゴーに何か秘密があるのかな。本日一番の驚きでした。
グランメゾン級に手の込んだ料理が次々と出てくるのに、こんな冒険しちゃうのもこの店らしいなと感心しました。

驚きはさらに続きます。今度は50度のお湯で3時間湯煎した牛ヒレ肉を薄切りにして、ほんの少しオリープオイルと黒胡椒を纏わせた一皿です。パストラミ・ビーフですね。
まるで日本酒の火入れのようですね。
付け添えのトレビスは色を合わせたかったからとか。
確かにアントシアニンと牛肉って色の相性は良いですね。
この牛肉が絶品でした。パストラミっぽくもありますが、ソースのないザウアーブラウテンのようなイメージでしょうか。
牛肉の旨味と甘味が十分に引き出されていて、生肉のようで生肉でない食感です。
これでいつの間にか赤ワインが1本なくなりました。早くも2本です。

お次はガスパチョです。いきなりスペインに飛びましたが、この店ではよくあることです(笑)。
偶にカザフスタンとかトルコとかベネズエラに行くこともあるので楽しいです。
ガスパチョの下にはシェフの実家の北海道から送られてきた新鮮なキュウリがムース状になっていて混ぜても、もしくは2層のままいただいても美味しいです。
最初はそのまま、後半は混ぜていただきましたが酸味と塩気のバランスが良くて牛肉の濃厚な味がきれいさっぱりリセットされます。
途中にこういう夏らしいスープが出てくるのは本当に気持ちが良いです。
夏も悪くないなぁ(笑)。

さて続いて出てきたのはパテ・ド・カンパーニュです。
休業前のやんちゃしていた頃を彷彿とさせるようなボリュームですが、当時はシャルキュトリの盛り合わせはフードファイター専用メニューのようでしたから、それから比べると大人しくなりました。
でも美味しさは以前より増して、さらに旨味がどんと出て熟成が進んでいます。
ワインも3本目が残り少なくなりました。何だか今日はワインがスイスイ入ります。

本日は是非これを食べてもらいたかったと出てきたのが、鮎のコンフィです。
大型の天然鮎(!)をオリーブオイルに漬けてからじっくり極低温で火入れした一品ですが、もうこれは本当にどうにかなりそうに美味しい鮎でした。
鮎をそのまま炭火で焼いて食べるのが一番美味しいと50年以上信じて疑いませんでしたが、それはこの日にあっさり覆りました。鮎はコンフィでいただくのがベストです。断言します!

で、コースは一応これで終了とのことですが、すっかりテンションが上がってしまったので肉を出せと強請ったところ、豚肉のandouilleをサッとソテーにしてくれました。
早く一緒に飲みたいから料理はここまでねと言われ(笑)、じゃあメインではなくてワインのアテにするかと敷いてあったレンズ豆に移ったプティ・サレ風の豚肉の旨味を楽しみながら、ここから先はワイン大会になってしまいました。

気がつくとワインが5本が空(笑)。やばい。
久しぶりにやってしまいました・・・
それもこれも出てくる皿が美味しすぎる所為です、って文句言う話じゃないんですけど。
厳選されたビオワインは、いつも旅行と食事とヨーロッパサッカーの話題の潤滑油、もとい潤滑酒です。

ご馳走様でした!!!



いつも食べログで皆さんのコメントを拝見していると、ああ、こんな店が近くになったらなぁ〜、この店に行くなら、こことここをルートに入れてツアーにしないとなぁ〜などとアームチェアトラベラーさながら日々妄想を膨らませている(笑)のですが、私の身近にも本当にこの店があって良かったと思える店があります。

それがこちらのAbats.です。
ギリギリ徒歩圏かなくらいの距離にあるので勝手にご近所扱いしていますが、グランメゾン級のいろいろ手を加えた、または豪快&シンプルな料理の数々が、気の置けないシンプルな空間でいただけます。
この店が近所にあって良かった。幸運です。

店内の半分以上はキッチンスペースで、仕込みから何から全て一人でやっているので、こんなにスペースがいるのかと思うくらいですが、まあシェフが好きなように&思うがままに腕を揮うにはこれくらい必要なんでしょうね。
キッチンは綺麗に片付けられて&磨かれており、とても気持ちの良い空間に保たれています。
ここで美味しいものが魔法のように作り出されていきます。
クリエイティブな料理というよりはオーソドックスな欧州&周辺各国の料理をシェフが自分流にアレンジして出してくれるんですが、昼前から相当時間をかけて毎日仕込みをやっているようで(見てないけど)、客に見えないところからみるみるうちに素材がお皿の上に構成され、やがて自分の前にすぅぅ〜っと出てきます(笑)。
オープンキッチンなのに、何をしているのかイマイチわからないのも楽しいです。
そういう意味では不思議な店ですね。
さて、今回はちょっと嬉しいことがあったので、ささやかなお祝いをしに伺いました。
で、champagneで乾杯。シェフも一緒に乾杯してくれました。

初冬はきのこの旨味が増す時期ということで、きのこのゼリー寄せからスタート。
旨味が強くて、噛みしめるほどに口の中に幸福感が広がります。
こんな量じゃなくてもっと食べさせて欲しいですが(笑)、まあコースなので大人になりましょう。
乾杯したダニエル・デュモンとも相性が良く、テンションが上がります。
次は意外というか変化球的な(今まで出したことないでしょ)あん肝寄せが登場しました。
しかもとんぶりと長芋をいろいろ工夫した(らしい)ソースを乗せて食べると、えも言われぬ美味しさです。
何でこの組み合わせでこの味になるんでしょうか(笑)。
北海道のご実家から送ってもらっている野菜や素材を使用しているとのことで、素材の特性をよく見極めて美味しさを引き出すシェフの技量に感心しきりです。

さて、アミューズとオードブルでchampagneを空けた後、前回もいただいてワイフがとても気に入ったクプールがメインのクロ・サンティーユをいただきます。
すると出てきたのが鶏肉を使った一皿(メニューが軽くなったよね〜 笑)で、鶏肉で作ったモモハムとレバーのパテでした。
本当に上手に作ってあります(ってプロに失礼ですが)から、咀嚼する喜びと旨味の広がりを味わいつつ、ワイングビグビです。
さらに、鶏の様々な部位の旨味を凝縮したような特製モツ煮込みが出てきました。
正統派フレンチとは言えませんが、これは非常に、いや異常に美味しいです。
鶏って捨てるところがないとはシェフのいつもの口癖ですが、本当にその言葉を実感します。
旨味が余すところなく引き出されていて、ちょっと日本酒が飲みたくなる味でした。
でもクロ・サンティーユの酸味との相性も非常に良いです。

その後はアントレ。
ワイフの前に置かれたのは蝦夷鹿のキョフテ、私は小鴨のアローストです。
キョフテというのは、中東ではポピュラーなミートローフのような料理なんだそうですが、シェフはトルコにもいたことがあって、そこのお店で覚えたんだとか。
趣味はシルクロードを旅先で買った馬に乗って彷徨うことだそうですから(笑)、実に様々な地域の料理の引き出しを持っている人です。ああ面白い。
しかもどの皿も実際に見たイメージを遥かに上回る美味しさですから、何も言うことはありません。
で、キョフテは程良い火の通り加減で柔らかく、ワインベースのやや酸味のあるソースが絶妙です(お行儀無視で一口もらった)。
私のアローストは、小鴨を丸ごとじっくり焼いて部位ごとにバラして再構成した一皿で、ムネ肉は淡白なのに肉汁もあり、モモは噛み応えがありますがソースとの相性が素晴らしいので、噛むほどに旨さが増していく感じです。飲み込むのが惜しいです(笑)。
もちろんお行儀無視でワイフに一口献上しました。

今回も大満足のお皿をいただきました。
コースとしての総合力&意外性も含めた構成力はお休みする前よりも格段に上がっている印象です。
本当に美味しかった。
本当にこの店が近くにあるありがたさをしみじみ感じつつ、幸せな気分でお店を後にしました。

あ、年末は28日までだそうです。29日はお正月用のシャルキュトリセット(もちろん注文しました)の販売のみです。ご予約受付中です(ちょっとお店の宣伝モードでした 笑)。

ご馳走様でした!!!
年末年始に英気を養って、来年も美味しいものを食べさせてください。
え、1月は10日くらいまで休むって? おいおい(笑)。



こちらの店は、たぶん東京では一番、全国でも有数のシャルキュトリ、ソシソンがいただけるフレンチを主体としたワインバーだったんですが、オーナーシェフが過労で体調を崩し、春先から半年ほど休業していました。
お店には「閉店します」との貼紙があり突然のことで驚きましたが、めでたく10月から再開しました。良かった良かった。
何せオーナーシェフ1人でワインサーブから片付け&皿洗い、もちろん料理も全て一から仕込みをするので、長年の疲労が蓄積していたんだと思います。
体調が戻ってまた料理ができるようになったことを心から祝福したいと思います。

復活後はメニューが変わりました。
これまではアラカルト主体でシャルキュトリをお腹にパンパンに詰めて自分がソシソンになった気分で帰る店だったのですが(笑)、10月からは3800円と6000円のコースのみ、店の電話をなくしたので予約は直接お店に行くか常連さん経由だけ、という「半会員制」みたいな仕組みです。
これまでは9席ほどのカウンターに6人掛けのテーブルが一つあったのですが、テーブルはなくしてしまい、そのかわりにシャルキュトリのテイクアウト販売が始まりました。
それと常連さん専用のドア脇の2人掛けエクストラテーブルも健在です。

まずは泡をいただきながらメニューを…あ、そうだ、見なくていいんだ、お任せだ(笑)。
今日は肉までがっつり行きたいので、6000円のコースをお願いしました。

「トサカをキノコと固めたよ」と最初に出してくれたのはゼリー寄せです。鶏のトサカのコリッとした食感とキノコの旨味がゼリーにたっぷりと含まれていて、ちょっと熱燗が呑みたくなりましたが(笑)、ミネラルをしっかり感じるリムーのシャルドネとも抜群に合います。
お次は鯖。冷製ですが甘みを強く感じる美味しい鯖で、付け添えの柿のシトラス漬けとの相性が良いですね。サルサヴェルデが良いアクセントです。
こういう軽いお皿も出すようになったなんて心境の変化かな、何れにしても腕を上げたな(笑)。
3皿目はムール貝とセロリのムースです。
もともとムール貝は香草類と相性が良いのですが、ほんの少し粗めのムース状にして食感を残すところがらしいですね。これでは白ワインがすぐになくなるのも道理です(と言って次を飲む 笑)。

ここからはお肉ですが、以前ならドーンとシャルキュトリの盛り合わせのところを、また鶏肉できました。おお、軽い。
鶏肉のモモを固めてソシソンにしてありますが、温度を上げて少し柔らかさと香りを出しています。
付け添えのリードボーソースがお皿を舐めたくなるほどの美味しさ(笑)で、さすがに舐めるわけにはいかないのでフォークで丁寧に掬って全部いただきました。
クプール主体のクロ・サンティーユは良い酸味があって食欲を増進させてくれます。いろいろな品種が混ざっているそうで、ボディはミディアムですが鉄分も果実味もタンニンもしっかりあります。

で、グラニテ代わりの黄人参のポタージュ。
箸休め的にソルベなんかを出すのはよくありますけど、ポタージュも良いですね。
甘いものは得意じゃないのですが、甘みの強い黄人参そのままの味で、玉ねぎとかパプリカとか、余計なものが入っていないのが良いです。シンプルに黄人参と甘みを引き出すためのほんの少しのお塩だけ。
メインの前にもう一品、ホロホロ鳥のバロティーヌが胸肉のハムとともに登場。
メインを待たずに赤ワインを空けさせようって魂胆でしょうか(笑)。
ファルスには同じ鶏肉の様々な部位が使われていて、微妙な味と食感の違いが楽しめます。
ハムのアスピックはゼラチンなどが入っていない純粋なもので、こんなに美味しいのは久しぶりにいただきました。
これだけでワインがグラス3杯は必要な美味しさ。食べ終わるのが惜しいです(笑)。

さて、メインに辿り着きました。ここまでのんびり1時間半くらいでしょうか。
こういうお店はゆっくりゆっくり食事を楽しむことができるのが嬉しいです。
これだけカジュアルな店でありながら、グランメゾンの趣さえ感じます。
ワイフは和牛のイチボ、私は蝦夷鹿のランプ肉をそれぞれソテーしてもらいました。
おお、ボリュームが以前の半分以下だ(笑)。ここにも心境の変化を感じます。
でも黄ニラのソテーが敷かれた蝦夷鹿のランプ肉は丁度良い火加減で、最後に振りかけた数粒の塩が味を引き締めています。
シンプルに美味しい。脂身のない赤身を咀嚼する喜びを堪能します。

純粋にお皿に向き合って食べること。味わうこと。飲むこと。そして楽しく時間を過ごすこと。
その全てがこの店で味わえます。
ちょっとワイルドな感じのワインを飲みながらのシェフとの会話が本日のデセールでした。

ご馳走様でした。そして復活おめでとう!!
これからも体調に気をつけて美味しいものを食べさせてくださいな。


  • 今日のメニューが何も書かれていない黒板が店の終わりを告げています この光景には胸が詰まってしまう
  • 知り合いの漁師の網に偶々引っかかった季節外れの羽太が最後のメインとはこの店らしい(笑)
  • メインは食いしん坊向けに魚と肉両方ありました(笑) 仔牛のポアレです ポアレする前にフォンで炊いてありますね

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3位

PIZZA BORSA (池袋、要町 / ピザ、イタリアン)

7回

  • 夜の点数: 4.3

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 昼の点数: 4.8

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.8
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥3,000~¥3,999 ¥4,000~¥4,999

2018/06訪問 2019/06/11

祝4周年! カジュアルなのにしっかり仕事してあるイタリアン 池袋にあるからBORSAです!

ランチにとっても美味しいかつカレーと生姜焼きを鱈腹食べたので、夜になってもお腹がほとんど減っていなかったのですが、今日は暑かったからよく冷えた白ワインを飲みたいねということになり、それならばPizzaでしょうと駄目元で電話したら偶々最後のテーブルが空いているとのこと、ラッキーです。
やっぱり今日は良い日です。

店内は我々のテーブル以外既に満席、相変わらずの人気ですね。良いことです。
あれ、いつものピッツァイオーロじゃないし、他のスタッフも全員存じ上げない方ばかりです。
何かあったのかと恐る恐る伺ったら(似たような体験が何度かあるものですから)、本日のピッツァイオーロがこちらのオーナーさんで、いつもの方は本日お休みとのこと、スタッフはローテーションしているんだとか。
これだけの繁盛店でほぼ無休で営業されてますから考えてみれば当然のことですね。浅はかでした。
お変わりなくということで安心しました。

さて、泡をいただきながらメニューの算段を。
本日のスペシャリテは白インゲン豆とツナのサラダと角切生ハムのオイル漬け、メインにはハンガリー産鴨のソテーがあります。ピッツァはしらすです。時期ですからきっと美味しい筈ですね。
ここの黒板メニューは数は決して多くないものの、しっかり考えられた季節の美味しいものが並んでいますから、グランドメニューと並行して眺めることをお勧めします。

まずは白インゲン豆とツナのサラダとオリーブを白ワインでいただきました。白白です(笑)。
今日は暑かったので冷えた白ワインが特に美味しく感じます。
白インゲン豆にはレクチンが含まれていますからしっかり熱変成させないと身体に良くありませんが、煮るととても美味しい豆です。イタリアではレンズ豆と並んで最もポピュラーな豆ですね。
ドレッシングの酸味が程良くて、caraffaでお願いした白ワインに合います。
オリーブもしっかり漬かっていました。
一皿一皿カジュアルな体裁なんですが、細かいところまで仕事してあってどれを食べてもハズレがないのがこのピッツェリアの素晴らしいところです。

今日はきりっと冷えたワインを飲むのが目当てなので、次にチーズとsottaceti(ピクルス)をお願いします。
今日のチーズは3種類。カマンベール・ブファラ(ちょっと珍しい)、ロビオラ・カプラ(結構珍しい)、それとゴルゴンゾーラ・ドルチェ(普通)です。
タレッジョが大好きな我々は迷わずロピオラです。
クリームチーズですが濃厚&独特の匂いがしてウォッシュタイプのようなクセがあります。
好きな人は好きですよね。
ピクルスは自家製でcavolifiore(カリフラワー)がとても美味しいので気に入っていつもお願いしています。

日本橋あたりのなんちゃってイタリアン(笑)よりよほどしっかり素材を選んで少しでもイタリアの味に近いものを提供しようという志を感じます。

さて、白ワインもcaraffaで十分楽しんだので、そろそろピッツァを。
スペシャリテのneonato(稚魚全般を指しますがまあしらすです)のマリナーラをお願いしました。
ピッツァ用のチーズの質をもう少し上げてもらえると嬉しいんですが、焼きたてはサクッとして程良い塩気があって、にんにくが効いていてものすごく美味しいです!
しらすがちょうど時期だというのも嬉しい偶然ですが、しらすとにんにくの相性が良いというのが素晴らしいですね。トマトソースは甘くなく、高温&短時間の熱変成で美味しくなります。
ただピッツァ用のチーズの質をもう少し上げてもらえると嬉しいです。
もっともっと美味しく&冷めた時の味もキープできるんじゃないかと思います。

ワインを楽しく&美味しくいただいて、antipastoもformaggioも良い素材を揃えて、ピッツァも旬の食材を食べて、これで2人で8000円しないなんてCP良すぎです。
クオリティと技術の高い店が、青山とか銀座に出店したい気持ちは理解できますが、何でもかんでも銀座に集まらなくても良いと思いますし、むしろ都内各所に散らばっているほうが、回遊性もあるし行く楽しみもあるので、是非これからも池袋で頑張って欲しいと思います。

7月上旬で開店4周年をお迎えになるそうです!
飲食店の世界では4周年は足掛け5周年としてお祝いすることもあるそうですが、5年と言わず10年20年と池袋で美味しいピッツァを食べさせて欲しいものです。

ご馳走様でした!!!



2017年最大の収穫、PIZZA BORSAです。
こちらで2017年の外食の締めをしようかなと、年末の買い出し前に伺いました。

都内で美味しいピッツァ(断じてピザではない)を求めてここ数年いろいろなお店を食べ歩き、ナポリで食べるような気軽でシンパティコで薪釜のピッツェリアは日本でも徐々に増えて来た印象を持っていますが、何故かピッツァはイタリアン=オシャレ系の食べ物だと認識されているようで、これでもかと食材乗せて馬鹿みたいに高くしているお店も目立ちます。

おにぎりは日本人共通の母の味、ソウルフードですが、和食とは殊更に意識しないですよね。
焼鳥屋さんでシメにいただく焼きおにぎりが途轍もなく美味しかったり、割烹で炊き立てほっかほかの土鍋ご飯で作った海苔のおにぎりと御御御付けと沢庵が震えるほど美味しかったり、伊達と酔狂で季節に松茸ご飯をおにぎりに仕立ててもらったりするのは美味しい&楽しい経験ですが、あくまでもおにぎりはおにぎりという確立されたジャンル&カテゴリーです。
おにぎりはおにぎり屋さんがあって、コンビニ最大の売れ筋商品=日本で最もポピュラーな食べ物であるのと同様に、ピッツァもピッツェリアがあって街中で歩きながらコルニチョーネを頬張るイタリアで最もポピュラーな食べ物ですから、美味しくて安く&小腹が減った時にすぐ食べられる気軽なものなんです。
だからピッツァ1枚が20€したらイタリアでは誰も食べませんが、日本で3000円程度のピザ(断じてピッツァではない)が罷り通るのには強い違和感を感じます。
まあ配達するアルバイト君の人件費込みの価格設定でしょうから理解できないことはないですが、ピッツァは焼き立てをその場で食べるものなので、わざわざ美味しくなくて高いピザを食べることもないんじゃないかと。
あ、でも宅配してくれるナポリのピッツェリアあったな(笑)。
確か10枚以上まとめてとかそういうサービスだったと思います。

例によって前置きが長くなりました。
どうもピッツァのことになると大人気なく語ってしまうようです。
で、こちらのピッツァはメニューを見ればわかりますが、価格は1500円くらいまでです。
安いから良いと言っているのではなく、この価格でピッツァは十分楽しめる&楽しんでもらおうというお店と店主の主張が感じられます。心意気ってやつですね。
しかも非常に美味しいナポリピッツァです。生地はやや薄めくらいで数十秒で火が入ります。
なのにクリスピーにはならずとてもchewyな食感で、小麦粉の甘みと焼けてとろけたモッツァレッラからちょっと分離した脂が何とも言えず美味しいです。

ああ早く食べたいという気持ちを抑えつつ、まずはワイフの言いつけを守ってヴェジタブル・ファースト(笑)。
グランドメニューのボルササラダとスペシャリテの牛タンとアンディーブのサラダをワシワシ食べます。
vino bianco della casaをカラフェで頼んでるし、牛タン一緒に食べてるから野菜が先だろうが何だろうが変わらないと思うんですが(笑)まあ気持ちの問題です。
で、ナポリだと1euroで食べられるイタリア人のおにぎり、アランチーニもいただきます。
こちらのアランチーニは小さいですが、ふっくらと揚がっていてトマトソースで和えたリーゾの粒感が丁度良い食感です。ああ、美味しい。
この後年末の買い出しなんだよ〜。お腹いっぱいになったら買い物なんてどうでもよくなっちゃいますからこれくらいにしとかないといけないんだけど、白ワインにはコッツェですよね〜ということでムール貝追加。
時期的に身が小さいですが、味はしっかり出ていて出汁はパンにたっぷり吸わせていただきます。
ピッツェリアなのに、ピッツァ以外にもいろいろ楽しめるので、この店は繁盛しているんですね。

で、今日はメインに行かないのでピッツァで締めます。
どれどれ、黒板を見ると・・・あ、ンドゥイヤのピッツァがある!!
ンドゥイヤ(ランドゥイヤともいいます)は、豚肉に唐辛子を混ぜ込んで腸に詰めて熟成させた長期保存可能なサラミの一種です。
イタリアのかかと、カラブリアとかレッジョの特産品ですが、発酵して柔らかいものも多いので、オリーブオイルで延ばしてパスタに絡めたりと調味料としても大変使い勝手が良い食材です。
イタリア版「なんでもからいっちゃ」ですね(笑)。
日本にも入ってきてはいますが、まだご存知の方が少ないので、もっとこの美味しさを知ってもらいたいものだと思っていたら、あら、ここで出会うとは嬉しいです!

やや興奮気味に注文&到着したスペシャリテのお味は期待通りでした。
ピッツァでンドゥイヤをいただくのは初めてでしたが、ピリッと辛いなかにもお肉の旨味がしっかり感じられ、薪釜でパリッと高温で焼かれて分離した油分が生地に染み込んでいて得も言われぬ美味しさです。
これは堪らん!ワイン御代わり!しようかと思ったらワイフに嗜められました(笑)。残念。

では締めにもう1枚(挫けない)、ビアンケッティをお願いしました。
ビアンケッティは直訳すれば「小さい白」でシラスなどの小魚のことです。
bianchettoと言えば、イタリアでは漂白剤です。
あ、インテルの試合を観戦しに行った時にビアンケッティっていう選手が途中から出てきました。関係ないけど(笑)。
白ですからトマトペーストも敷かず、チーズとシラスの塩気でいただきます。
上に乗せられたルーコラ(ルッコラなんていう名前の野菜はありません)の爽やかな苦味が食欲をそそりますね。
あっという間に食べ終わり、店主と年末のご挨拶をしてお店を後にしました。

池袋にあるからこそ、この価格で経営できるんでしょうね。
青山辺りではできません。
つまり池袋はナポリってことです。
大きな街で人も沢山いるのに全く垢抜けないところも同じです(笑)。

本当に価値ある店です。
星なんか付いちゃったら個人的には嫌だなー(笑)。

ご馳走様でした!!!
さ、買い出し買い出し。



こちらに何度か伺うようになってから、黒板に書いてあるメインがずっと気になっていました。
いつも「さあ、今日はメインまで食べるぞっ!」と意気込んでお店に入るのですが、BORSAはantipastoとpizzaが美味しくてついつい食べ過ぎてしまい、当然ワインもカプカプ飲んじゃうので(笑)、メインにたどり着くことができていませんでした。
で、今晩は前菜はともかくpizzaをちょっと我慢してメインまで行こうと初めから決めて来ました。

まずはantipastoから。
ブロッコリー(イタリア語でもブロッコロです)はシンプルに塩とアーリオオーリオだけの味付けですが、これが抜群に美味い。
自宅でもすぐできますが、お店でいただくと美味しさ倍増です(笑)。
他には生ハムとサルーミの盛り合わせ(モルタデッラが美味しい)、トリッパ、豚肉のパテなどをワインとともに流し込みます(鯨飲しているわけではない)。
トリッパは丁寧に下茹でして臭みを完全に抜いてあってその上に濃いめの味付けのトマトソースがしっかり沁み込んでいますし、パテはこれまでのギネスを簡単に超える美味しさでした。
味付けは若干薄いですがトラステヴェレのトラットリアでいただいているような感覚になります。
vino della casaがカラフェで出てくるのも、店が狭くてワイワイ騒がしいのもらしいですね。

で、今日は1人1枚と決めているpizzaを。
ワイフは好物のナポレターナ、私は黒板に書かれているシラスのpizzaをお願いしました。
シラスは大量にニンニクが乗っていて、シラスはアンチョビの代わりになっています。
アンチョビよりは塩辛くないですが、焼かれて旨みが凝縮しているので非常に美味しいです。
ああ、もう1枚食べたい(笑)。
ワイフのナポレターナをワンピースもらって我慢しました。
ナポレターナも似たような素材ですが、モッツァレッラとオレガノが味と香りのアクセントですね。
今までは「こりゃ美味しい!さあとっとと次のpizzaもお願いしよう!」モードなんですが(今もそう)、今日はここで徐に本日のメイン、モチ豚のグリルをお願いします。初志貫徹!!

モチ豚のグリルはメインらしくそこそこのボリュームで、食べやすく一口サイズにカットしてあります。
個人的にはナイフとフォークで切り分けながら食べるほうが好きなんですが、柔らかいのに噛み応えがあって大変美味しいお肉でした。
チーズソースが濃厚でこれには好き嫌いがあるとは思いますが、私はきっぱり大好きです(笑)。
甘みと旨み、豚肉との相性もぴったりで良く研究されているなと感心します。
お皿には野菜もたっぷり盛り付けてあり、豚肉を食べ進めるのにはバランスが良いです。
これに赤ワインを飲むわけですから楽しくないわけがないですよね。最高です。

何だかあっという間に食べちゃったなぁ。
もっとゆっくり味わいたいんですが、トラットリアとかピッツェリアは本来こういうもんですから、食べ終わったらさっさと出ます。
コーヒーをいただいてチェックしたら16000円でした。
そりゃあワインをカラフェで5つも飲めばこうなりますよね(笑)。
コストパフォーマンス良すぎ&飲み過ぎ注意です。

帰りがけにご主人が表まで見送ってくれました。
ご丁寧にありがとうございます。
いつ伺っても本当に美味しいpizzaがいただけるので、他の店に行く気になれません。
その辺のイタリアンも全然敵わないかも。恐るべしPIZZA BORSA(笑)。
また次回も宜しくお願いします!!ご馳走様でした!!

次回はデザートまで行こう(笑)。


買物したついでに夕飯はピッツァだよねということになり、それならこの前食べて美味しかったPIZZA BORSAに行こうと電話しました。
生憎満席とのこと、人気があるんですね〜。さすがです。
場所柄お若い方が多く、ご家族連れなどは少ないので回転が良い店ですから、席が空いたら電話をもらうことにして近くを散策すること約10分、電話が鳴りました。
やたっ!!目論見通りです(笑)。

店内はお若い方で満席。賑やかで活気があります。
最近はグランドメニューよりも黒板の「今日のオススメ」からチョイスすることが多いのですが、今日も燻製サンマとアンディーブのサラダ、ムール貝の白ワイン蒸し、角切り生ハムのオイル漬けをいただきました。
この店はピッツァも美味しいですが、antipastoも美味しいものが揃っています。
いきなりピッツァでももちろん良いです。
気分に合わせて腰を据えて食べるか、さっとピッツァだけいただいて飲み歩くか、どちらも楽しいですね。

で、スモーキーなサンマ(イタリアでもよく食べる魚でcostardella=コスタルデッラといいます)のサラダは香りの良いオリーブオイルが回しかけられていて大変美味です。
ムール貝は小ぶりでしたが味はしっかりしていて、何よりスープが美味しい。
このスープは取っておいて、後でピッツァのcornicione=コルニチオーネ:縁の部分を浸して食べたんですが、うまさ炸裂!でした(笑)。
生ハムは好みですが、私は薄切りをメロンとかオレンジとかペコリーノチーズとかに巻いて食べるのが一番好きです。でもこの角切り風のオイル漬けも白ワインによく合います。
酸味のある赤ワインも相性が良いんじゃないかなぁ。

じゃあ、徐にピッツァを。
まずは黒板のオススメに書いてあるネオナート(しらす)のマリナーラをいただきます。
しらすの塩気とトマトの甘み&酸味、オリーブオイルとチーズのマリアージュ(イタリア語だとマリタート)が抜群でした。
これが薄くてさっくり火が通ったピッツァ生地の上に熱々で乗っているんですから堪りません。
一瞬で食べ終わり、次はビアンコ フィレをお願いしました。
こちらはトマトソースベースではなく、モッツァレッラとペコリーノ・ロマーノのダブルチーズにプチトマトとバジルが乗ったピッツァです。
トマトソースではありませんが、焼けたチーズの油脂と塩分がトマトに乗っかっていて、やばい美味しさ。こんな調子じゃピッツァ5枚くらい食べちゃいます(笑)。
こんなに食べたら(食べられるけど)太っちゃうという妻の怒りの声に、じゃあ最後にナポレターナをいただくことに。
これはトマトソースとモッツァレッラですが、アッチューゲとorigano(オレガノはトスカーナ地方ではacciuga=アッチューガといいますから、アッチューゲ&アッチューガの相性は抜群です)とたっぶりのにんにくスライスが乗ったパンチの効いたピッツァです。
あんまり美味しくて写真撮るの忘れちゃいました(笑)。

本当はもっと食べたかったんですが、妻の焼け付くような視線を感じ、胃袋を畳みました。ちぇ。
メインの「オリーブポーク骨つきロースのグリル」も気になるんだよなぁ・・・
いつ行ってもクオリティの高いピッツァが食べられる本当に楽しくて美味しい店です。


次回は一人で行こう(笑)。
小論文〜我が国における極私的ピッツァ論考

1.【我が国のピッツァ暗黒時代】
日本でピッツァ(断じてピザではない)というとケータリングのチェーン店とか単に胃袋を満たすだけの食べ放題の店のイメージか、居酒屋で小腹が空いた時のサイドメニュー的な扱いが長く〜この店が赤坂にピザレストラン(断じてピッツァではない)の日本1号店を出したのが1973年ですから感覚値で30年くらい〜続き、食事として決して満足のいくものではないという認識しかありませんでした。

2.【我が国のピッツァ黎明期】
それが2000年(だったと思います)都内では広尾にピッツェリアが出来てから、少しずつアメリカ発のピザではなく、イタリア発、それもナポリ発祥の生地モチモチの「ピッツァ」という食べ物は美味しい!という情報が日本国内にも広がり始めました。
もちろん、1954年に六本木に開店したピザを出す洋食屋さんもありましたが、一部の人に知られていただけだったので(私は父親が池袋から車で帰宅する途中でよく連れてきてもらいました)、日本で”市民権”を得たのは2000年以降ってことですね。

2-1.【極私的イタリアピッツァ体験】
私が新婚旅行でイタリアに渡ったのが1993年で、その頃はまだ通過がリラでしたが、リラは円に対して比較的弱く、新婚でお金もない割にかなりお得にワインやらピッツァやらを飲み食いした覚えがあります。
一言で言えば、味をしめたってことです(笑)。
もちろん当時からローマやナポリ、ミラノ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどの主要都市にはピッツェリアがわんさかありましたから、安くて美味しいピッツァは旅行者にとっても大変ありがたい食べ物でした。
しかもピッツェリアにいる職人さんやホールのスタッフは例外なく陽気でフレンドリーで、今日ほどこのピッツァを食べに行こうかと毎回楽しみにしていました。
ランチタイムにはイタリアの方もピッツェリアに行きますが、大抵コーラかミネラルウォーターと一緒にピッツァを食べるのもイメージと違っていて面白かったです。

3.【我が国のピッツァ拡大期】
日本でもその頃から「ピッツェリア」という専門店があるのだということが徐々に知られてきて、ピッツァはお届けするものではなく、子供が食べ放題でお腹をいっぱいにするものでもなく、ようやく一つの外食産業のジャンルとして定着し始めました。
「VERA PIZZA」の看板を掲げ、ピッツァのレシピに一定の条件を設定した「真のナポリピッツァ協会/Associazione Verace Pizza Napoletana」の日本支部が設立されたのが2006年ですから、日本で本格的にピッツァが街中で食べられるようになったのは21世紀に入ってからということになります。
以降はもう皆さんご存知の通り、北は北海道から、南は九州沖縄まで、全国津々浦々に美味しいピッツァを出す店ができましたとさ。
めでたしめでたし。


てなことはどうでも良くて、ピッツァは専用の薪窯で1分くらいで焼き上げられたパリッパリ&モッチモチのやつをはぐはぐ食べさせてくれればもうそれだけで幸せになれる食べ物です。
ナポリではコルニチョーネ(額縁=ピッツァの周りのほぼ生地だけのところ)を一袋1.5ユーロくらいで買って、歩きながらモグモグ食べるくらいですから、とにかく安くてすぐ食べられて味も満足、っていうのがピッツァという存在ですね。
日本だと「おにぎり」とか「すけろく」みたいな、気の置けない友人的存在です。
ちなみに日本のおにぎりに相当するアランチーニ(ライスコロッケですね)もこの店で出してくれます。
さすが~、わかってらっしゃる。

でも、最近はピッツァが1枚2000円とか3000円とかする店も増えてきて、ナポレターナが見たら、全員日本でピッツェリアやりたい〜〜と言い出しかねない状況になってきました【我が国のピッツァバブル期】。
美味しいんだったら高くたっていいじゃん!そもそも寿司だって江戸時代のファーストフードだったんだからさ!という反論が聞こえてきそうですが、庶民の食べ物なんだから安いことが大前提なんですよ、ピッツァって。

例によって前置きが長くなりました。
で、この店は焼きたてのピッツァが1枚1000円ちょっとでいただけます。
MargheritaもMarinaraも1000円、アッチューゲの効いたNapoletanaが1150円、一番高いQuattro Formaggiでも1500円です。
しかもとっても美味しい&本格的です。
焼く直前に薪窯にサーレをちょっと投げ込んでからピッツァを入れるので、こちらの系列かなと思ったら、やっぱりピッツァイオーロがそこのご出身でしたが、サクサクもちもちのピッツァを咀嚼しつつワインやビール(ちょっと高いけどモレッティも冷えてます)で流し込む喜びを、池袋で味わえるなんて、本当に嬉しいです。
これは【我が国のピッツァ定着期】に入っていると言っても良いんじゃないだろうか。
きちんと美味しいピッツァが日本でもこんなに手軽に、美味しく食べられるなんて良い時代になったものだとしみじみ・・・

で、店名のBORSAって「ふくろ」のことですが・・・
あ〜、ブクロだからか(笑)。
店名から、立地から、薪窯から、価格設定から、何もかもニクいお店でした。

ご馳走様でした!!


  • fagiolo bianco 白インゲン豆とツナのサラダ よくできてます シンプルなのにしっかり美味しいです
  • オリーブもよく浸かっていてワインのアテにぴったり
  • 熟成したロビオラ この匂いと味が堪らない

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4位

鮨みなと (旭川 / 寿司)

2回

  • 夜の点数: 4.7

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2017/11訪問 2018/06/11

2度目のみなと 「おこづかい3万円で充実寿司!」

旅寿司が大好きです。

旅行でも出張でも、時間さえ許せばその土地土地の美味しい魚介をシンプルに味わえるお寿司をいただこうと探し回っています(笑)。
全国各地の美味しいもの、地元の旬の食材を吟味して美味しく食べさせてくれるお寿司屋さんは、その土地土地の代表選手だという認識で、襟を正して暖簾をくぐっています。
加えて地元のあまり見かけない日本酒を出していただけたりしたら、もう何も言うことはありません。

こちらには昨年の初夏に初めて訪れて、その美味しさとネタの豊富さ、ネタごとの完成度の高さにすっかり魅せられて、札幌出張の折に足を伸ばして是非再訪したいと思っていたのですが、いまや札幌は日帰り出張圏内(笑)、泊まるとなったら取引先とススキノで会食ということが続き、なかなかお伺いできずにいました。仕事なんですから当然ですけど。
また、昨年は仕事の都合でまとまった休暇が取れず、ではイタリア行きは潔く諦めて、代わりに(と言っては何ですが)初冬の道東から道央を巡りましょうということになりました。
もちろんこちらは、その小旅行のメインイベントです。

カウンターは相変わらず(と言っても2度目ですが)きちんと整えられており、先代の奥様が大きな声で出迎えて下さいます。
ちょっと大袈裟ですけど(笑)歓迎して下さって嬉しいです。
いつもの(と言っても2度目ですが)カウンターに設えられた席に座ります。
気持ちの良い&さあお寿司を食べるぞという気になる空間です。
カウンター席は左片肘の背凭れの高い椅子です。大変座りやすいですね。
私は左利きなので右に肘掛けがある椅子もご用意いただけると嬉しいです。無理か(笑)。

でもこんなに座りやすい椅子を設えてあるお寿司屋さんはないんじゃないかなぁ。
カウンターの白木の一枚板に拘るお寿司屋さんは多いですが、椅子に凝るお寿司屋さんは少ないですね。
こんなに立派な&大きな背凭れのある椅子自体、高級店ではまず見かけません(最近は都内でもあります)。
ゆっくりくつろいで欲しいというお店の意向でしょうか。

では早速お酒から。
まずはここに来るとお願いする(と言っても2度目ですが)二世古の吟風をいただきます。
相変わらずお銚子兼ちろりは使いにくいですが、2度目ですから慣れないと。
こちらは寿司前の居酒屋さんタイムとその後のお寿司屋さんタイムがしっかり分かれているので、ゆっくり美味しいお酒と酒肴をいただいて、その余韻を楽しみつつお寿司でお腹一杯にすることができます。
このスタイルがとても気に入ってます&心地良いです。
というか寿司屋の王道ですよね。

こちらの寿司前はよく考えられていて、プレゼンテーションも構成もテクスチャーも非常に完成度が高いです。
銀座のお寿司屋さんもぜひ参考にして欲しいと思います。負けてる店かなりありますから(笑)。
旭川は内陸で海がないからって舐めてかかると足元掬われます。
お、煮凝り出てきた。これはゼリー寄せではなくて魚のゼラチン質だけで固めてある食感&口溶けの素晴らしい煮凝りです。
これだけで2〜3合飲めちゃいます。が、酒肴はどんどん出てきます。
鮃は数日熟成されて旨みが増しています。ツブ貝は通常サイズの10倍くらいあるようなものを薄造りにしてあり、細かい波切りにしてあってコリッとした部分と柔らかい部分の食感が同時に楽しめます。
酒肴としてお酒に合うだけでなく、お皿として味わえるようにも工夫してあって、日本料理の指向性も結構強く感じられます。
さすがすし善出身、寿司前と寿司のクオリティを両方とも高めてトータルで満足できるように考えられていますね。
すし善も円山と他の店舗では全く別物ですから、やはり職人さんの技量やホスピタリティや自覚が大切なんでしょう。

酒肴の嵐はその後も途切れる事なく、雄の蝦蛄、煮蛸、鰊、鰹などがどんどん出てきました。
もうお酒もどんどん進んでしまいます。
寿司前にこれだけ時間をかけるお寿司屋さんは肝心のお寿司が期待を下回ることがあるのですが、こちらはそのような心配はありませんから、安心して飲んじゃいます。
お酒と酒肴でこんなに気分良くなっているのに、このあと美味しいお寿司が待っているんですからもう堪りません。至福の時とはこのことでしょう。

このあとも鰆の塩焼、あん肝、マタチの茶碗蒸し、平貝の磯辺焼きなど趣向を凝らした寿司前を堪能しました。
一つ一つのお皿に小技が効かせてあるので、いちいち感心してじっくり味わうものですから、なかなか寿司前が終わらないのですが、お店も長居することが前提で料理の流れを組んでいるようなので、ゆっくりと落ち着いて寿司前を楽しむことができました。
良い店だなぁ。

追加も含めて15品ほど(!)も寿司前の酒肴を楽しんで、いよいよお寿司です。
最初は春子から。春子が一番に出てくるとは意外でしたが、特に美味しいのが手に入ったとのことで、自信のあるものを最初に持ってくるんだとか。
確かに味も香りも包丁の入れ方も申し分なく、この店の実力を知るのにもってこいのトップバッターです。
その後はボタン海老、鯵(これがんまい!)、北寄、中とろ、毛蟹、ウニなどが続きます。
どれも下処理が丁寧で素材の持つ味と香りを十分に引き出していますね。
固めに仕上げてある舎利との相性も良く、すいすい口の中に収まっていきます。
お寿司は少量多品種の代表的な料理ですから、握り一貫に込められた技を楽しむものと理解していますが、お酒の美味しさも手伝って気分は上々、卑しいとは思いつつもっと食べたいという気持ちが高まります。餓鬼ですな(笑)。
焼き穴子までの12貫で一通りです。
お話を伺いながら、お酒を楽しみながら、技に感心しながら飲み食べしたあっという間の3時間半でした。
楽しいと&美味しいと瞬く間に時間が過ぎ去ってしまうものですね。残念です。
締めに海苔巻きサビ入りをいただいて、大満足の旅寿司を終えました。

大将が小雪の舞う寒い中、外でお見送りしてくれました。
11月下旬ですから北海道はすっかり冬の装いです。
飲んだお酒も効果がすぐに切れそうな気温の低下でしたが、それ以上にお腹と気持ちが温まりました。
頻繁に来ることはできませんが、それが却って良いのかもしれません。
また次回を楽しみにしています。
季節が巡るごとに訪れたい旭川の名店です。

ご馳走様でした!!



握り寿司は華屋輿兵衛が江戸で始めたと物の本で読んだことがありますが、江戸前だけでなく旅先で味わう寿司もまた格別です。
特に北海道は「蝦夷前」を標榜する寿司店がいくつもあり、鮮度だけでなく、素材に一工夫も二工夫もして美味しいものを食べさせてくれるので、旅先での楽しい思い出になります。
こちらの「鮨みなと」は機会があったら是非伺ってみたいと思っていたお寿司屋さんで、前回は直前に電話して満席だったので、今回は2週間ほど前に予約の電話を入れました。

満を持して(ランチは北見で美味しい蕎麦をいただきましたが少量にとどめました)18時に来店、店内は15人ほどが座れるカウンターと奥に幾つか宴席用の座敷があり、そこそこの大箱です。
先代は地元の普通の寿司店として経営していたようですが、二代目が店を旭川の中心部に移転され屋号も「港寿司」から「鮨みなと」にしたとか。CI導入ですね。
ちなみに店主は中港さんと仰います。なんで「鮨なかみなと」にしなかったんだろう。まあいいか。
二代目は東京・札幌の寿司店や割烹などで修行されていたとのことで、寿司前の酒肴がなかなか上手です。

ネタも酒肴も北海道のものを中心に、季節ごとに産地ごとに良いものを選んでいるようで築地からも仕入れているとか。
日本酒も北海道以外の銘酒が並んでいますが、メニューにないものも用意があるそうで、例えば倶知安の「二世古」の吟風を使った純米酒なんかがあったりします。
ほかにもいろいろ用意があり、心憎いばかりの品揃えでした。

酒肴はどれも美味しかったですし、しっかりと出汁を含ませて品良くお酒に合うように工夫されたものばかりでした。
とくに鰹の漬けは脂の乗りもほどほどあって酸味と旨味が素晴らしく、あさつきをすり潰して乗せるとニンニクのような香りと味わいになって、初鰹をいただいているような印象的な一品でした。
撥子を細切りにして茶碗蒸しに浮かべた一品も味と香りと食感が絶妙で、どんどんお酒が進んでしまいます。
錫のチロリで供される日本酒は温度が変わりにくいので、ぬる燗でも冷やでも冷酒でもOKですが、やや注ぎにくいのとふたを開けないと最後までお酒が出てこないので(笑)、変えていただいた方が良いかもしれませんね。

ともかく、酒肴はなにをいただいても美味しさに唸るものばかりで、テンションもどんどん上がります。
で、酒肴を頂き始めてからはや1時間半が経過した頃、ようやくお寿司の出番となりました。

お寿司は赤酢できりっと締めた小ぶりの酢飯に旬のネタが手際良く握られて出てきます。
カウンターはもちろんオープンキッチンですから、次に何が出てくるか(お、それお隣さんかぁみたいなのも楽しいです)を眺めつつお酒をちびりと飲るのがまたたまりません。
で、白身から始まっていろいろと握っていただいたのですが、どれも口の中でパラリと解けて旨味がどっと広がります。
むらさきは刷毛で塗ってあるので、そのまま本手返しでパッといただけるのも嬉しいですね。
やっぱりお寿司はこうでないと。
と、テンションアゲアゲで食べ進めることあっという間の1時間半、18時の開店直後にお邪魔しましたのにすでに21時になってしまいました。
旭川初訪問の友人用に有名居酒屋を予約していたのですが、お母さんから電話があり「いつになったらお顔を拝見できるんですか?」とやんわり嗜められてしまったので(笑)、後ろ髪を引かれつつ、お店を後にしました。
美味しくて楽しくて時間を忘れる旅寿司の醍醐味を堪能しました。
札幌出張が入ったら、足を伸ばして必ず寄ろう!と密かに誓いました。

  • 暖簾 渋いです
  • 煮凝り 酒肴に最適
  • 寿司前 準備万端(笑)

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5位

丸山吉平 (浅草橋、新御徒町、仲御徒町 / とんかつ)

1回

  • 昼の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2017/10訪問 2017/10/12

女性店員さんが入ってました

孤高のとんかつ屋、丸山吉平。
これまで店主が全てお一人で仕切っておられたので、いろいろと緊張が増す場面を目撃された方もいらっしゃるかと思いますが、10月初旬の開店直後に伺ったところ「いらっしゃいませ〜」という明るい女性の声が。
カウンターの中に入ったお若い女性がお皿の片付けや配膳などを担当されることになったようです。
もともと低温でじっくり揚げるとんかつですから、これまでは揚げている間にお皿にキャベツを盛りつけたり、ご飯やお味噌汁の用意をされたりしていましたが、その業務を分担されたので、店主はお客さんとカウンター越しに話をする余裕もできたみたいです。
本来は話好きの気の良い方ですから、ローカルルールを守らない客に目くじら立てたりして心をささくれ立たさないようにすれば、お客さんはもっと喜んでたくさん来るんじゃないかと思います。
私が伺った時も、常連さんと思しき男性と浅草のタンメンのお話とか、女性の蕎麦職人さんの話とか、実はとんかつは揚げたてを切らないでそのまま食べるのが一番美味しいとか、本当に楽しそうに話をされていました。
良い感じじゃないですか、丸山吉平。
(こんなこと書くと、大きなお世話だばかやろ〜と言われそうですが)

このお店でいつも感心するのはお店の清潔さです。
細かいところまでよく拭き掃除がしてあって、非常に気持ちの良い空間です。
油の匂いも籠っていませんし、低温調理ですから普通のとんかつ屋さんで聞こえてくる「ジュワ〜」という音も聞こえません。
たまに「ポロン」とか「コロン」とかフライヤーから揚げてまっせというサイン代わりの音がするだけです。

この店で変わってるなと思うのはメニューにお味噌汁だけ付いていることです。
つまりご飯は別売りです。
おそらく夜営業されている時にとんかつを酒肴に飲むお客さんを想定してのことかと思うのですが、飲むお客さんは少数派だと思うので、ご飯もセットにしたほうがわかりやすいです。
(こんなこと書くと、俺の勝手だばかやろ〜と言われそうですが)

でもそんなことはどうでも良いくらい、ここのとんかつは本当に美味しいです。
今日はロース250で。
ジューシーなとんかつとはこのことだと言わんばかりに肉汁が浮き出している一切れを頬張る喜びは、何物にも代えがたい。
本当に何もつけずに一皿食べられるくらいの味の良さ&香りの良さですよね。
低温で揚げると本当に良いことずくめです。

あっという間に食べ終わってしまい、もっと食べたかったのですが、お客さんがどやどやと入り始めたので、後ろ髪を引かれるようにしてお店を出ました。

あ〜美味しかった。
次回は絶対に二皿食べようと心に誓って順順餃子房に向かいました。
だって美味しい脂で弾みがついちゃったんだもん(笑)。


  • とんかつ屋らしからぬデザイン
  • ロース250アップ
  • 低温で揚げるとお肉の香りと油の旨味が際立ちます

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6位

松幸 (天文館通、高見馬場、甲東中学校前 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥5,000~¥5,999 -

2017/06訪問 2018/06/09

このからあげは本当にヤバイ美味しさです ゆずぽん酢キャベツ&ポテトサラダも最高でした

鹿児島出張です。
日中の訪問日程も無事終了し、楽しみにしていた天文館の夜がやってきました(笑)。
かなり賑やかです。

このお店は事前情報何もなしで、地元の方にご紹介&お連れいただきました。
天文館の中心部にあり、時間ともなれば着飾った夜の蝶(死語)や客引きのお兄さんが闊歩するエリアに、間口も小さくシンプルな看板が出ているだけの店で、見過ごして通り越してしまいました。
待ち合わせに遅刻です。ごめんなさい。
客引きのお兄さんが親切にも店の場所を案内してくれましたので(この店のあとお待ちしてます!と名刺を渡されましたが)助かりました(笑)。

「からあげ 松幸」と上品な明かりが灯った脇の暖簾をくぐると、そこはカウンターメイン&テーブルが2つ〜3つ設えてあるだけのこぢんまりした店です。
店内にはメニューらしきものは一切なく、連れて行ってくれた方も「店主が出すものを食べる店」とのことでしたので、お任せなんだなと、それなら任せればいいから楽だなと。
きっと鹿児島の美味しいものを食べさてもらえるに違いないと期待に鼻膨らませて(?)待つこと暫し、お刺身がドンと目の前に置かれました。
地元鹿児島の魚を中心に、旬の美味しい魚をいろいろと仕入れて盛り付けてくれます。
切りつけ方も豪快で大きく、食べ応えのあるお刺身です。
しかも鹿児島の甘いお醤油にとっても合います。
大将は「鹿児島に来たら鹿児島のもので食べてみるのがその土地を知る方法」と仰っていましたが、まさに郷に入れば郷に従えですね。
お醤油は当然どなたも慣れ親しんだ味や香りがあるでしょうけど、食事の際に⚪︎⚪︎でなければならない、となっては食の楽しさや新しい発見ができなくなってしまいます。
食の冒険は楽しいですね。
しかも、黒糖焼酎「朝日」や芋焼酎「三岳」のお湯割りともお刺身が大変よく合います。
口の中がさっぱりするというか爽やかになって、そこに甘口の醤油と食感の良い大ぶりの刺身がやってくるわけですからもうたまりません。
のっけから本鮪の大トロ、ウニ、鰈&エンガワといただけて、上着脱いで、腕まくりして、臨戦態勢です(笑)。

大将は、この界隈でずっと料理屋を営んできて、カウンター越しに沢山のお客さんと世の中を見てきたので、お話が大変興味深く、また含蓄のあるもので、時に笑い、時に大きく頷き、時に顔をしかめる(?)楽しい時間が過ごせました。
お店とお客さんの相性ってありますよね、と伺うと「うちはお客を選ぶ店だから」とはっきり仰いました。
私は美味しいものを美味しく食べるという一見シンプルな行為は、実は店(の人)と客との共同作業だと常日頃から思っているので、そのアナログな波長が合う合わないで「お客さんを選ぶ」という表現をされたのだと解釈しました。
飲食店は天文館界隈に数え切れないほどあるわけですから、合わない客が辛抱して食べる謂れはありません。
その意味では「お客さんが店を選ぶ」のでしょうけど、店もお客さんを選ぶことによって自然と快適な空間になることを経験則からよくご存知のようです。
この店を気に入ってきてくれるお客さんと一緒に場の雰囲気を作ることを重視していらっしゃるんですね。
楽しく過ごす&おもてなしの心意気&ホスピタリティ満載の大将です。きっととても優しい方なんだろうと思いました。

さて、メニューはありませんが、店名にも掲げる「からあげ」です。

ご近所の店にもお客さんが食べたいと注文すれば出前しているとか。
お店にいる間も数回揚げたてを出前されていました。優しい店です。
ひな鳥を丸ごとじっくり揚げて、皮パリパリ、お肉ジューシーに仕上がっています。
香りが抜群で、強烈に食欲を刺激します。無言で食べ続けてしまうほどの美味しさでした。
それにお皿に山盛りに乗ったキャベツ。これが甘みがあってふわふわで黒糖焼酎との相性抜群です。
トマトも美味しくて、酒肴というかメインの「おかず」ですね。
育ち盛りのお子さんなら軽くご飯3杯でしょう(笑)。
そう、このキャベツ!立派な酒肴に大変身します。
マヨネーズはちょこんと乗せてあるんですが、常連さんのお勧めは別皿にとって福山酢のゆずぽん酢黒酢入り(酢ばっか)をたっぷり掛けです。
口の中がさっぱりするので、更にからあげが入ります。そして黒糖焼酎のお湯割り。
給食の三角食べみたいに、正しくお酒が進みます(笑)。
美味し過ぎてあっという間に完食してしまったので、追加で手羽先のから揚げもいただきました。
手羽先は普通サイズの2倍はある大きいもので、ひな鳥同様にじっくり揚げます。
表面はパリパリですが、さっくりした歯触りで中のトロッとしたお肉が口の中で混ざると塩気と甘みと脂が混ざって最高の美味しさ&咀嚼感です。
まさに「美味しいものは脂と糖でできている」を実感しますよ(笑)。

美味しくて楽しい、疎かにしてはいけないことをいろいろと気づかされる、本当に良い店でした。
食べ終わった後の幸福感が堪りません。
この店が家のそばにあったら3日と置かずに通います。
次、いつ出張あるのかな〜(笑)。

それにしても鹿児島、美味しいものだらけです。

ご馳走様でした!!!


  • この灯り具合が良い感じ うっかり通り過ぎてしまうほど地味なので、よく見て歩きましょう
  • 揚げの技術がとても高くて美味しいひな鳥のからあげ ポテトサラダも絶品です
  • 皮のカリカリ具合がわかるアップです こんなに香ばしくてジューシーな唐揚げはなかなかお目にかかれません

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7位

とんかつひなた (高田馬場、西早稲田、学習院下 / とんかつ)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 3.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2017/09訪問 2017/09/14

湧き出す肉汁とほんのり香るハーブが特長の豚肉を食べ尽くす喜び テイクアウトのカツサンドは個人史上最高の美味しさ

一度は予約して「食べ比べコース」で素晴らしいとんかつワールド(笑)を堪能してください。テイクアウトのカツサンドも忘れずに。
最近、とんかつに嵌ってます。

知人がそれなら豚の部位ごとの違いを楽しめるとんかつ屋さんが高田馬場にあるよと教えてくれ、予約も取れるというので、早速電話して伺いました。
「食べ比べコース」というのがそれで、リブロース、ロース、ひれ、しきんぼ、とんとろ、らんぷの6種類の部位のとんかつを少しずつ、それにご飯かミニソースカツ丼、豚汁かチャーシュースープ、お新香が付いて3500円です。
普通のとんかつ屋さんというと大抵ロースとひれしかありませんし、あっても上ロースと上ひれみたいなバリエーションだけですから、ボリュームにも寄りますがこれは大いに楽しみです。
4人以上で予約するようですが、たまたま2人の予約申し込みがあったので、そちらと相席(っていっても全席カウンターなので隣同志になるだけ)になりました。

まずはビールで喉を潤し、これから揚げていただくお肉の部位の説明とお肉の状態について説明を受けます。
リブロースはロースのリブ側、肩ロースですね。ロースはその内側というか反対側です。
どちらもきれいなやや濃いめのピンク色で、見るだけで食欲をそそります。
脂と赤身がはっきり分かれているので、肉の旨みと甘み、脂のジューシーさを同時に味わえるそうです。
今までそんなこと考えながらとんかつ食べたことなかったなぁ、若いうちは脂があるけど安いロース、40歳過ぎたら脂のないひれ、くらいしか考えてなかったなぁ、と自らのとんかつに対する思い入れの薄さを密かに恥じつつ説明を聞きます。
ひれは内蔵に近い部分で脂肪分が少なく、キメが細かいので揚げても固くならずに美味しくいただけるということでとんかつにおいてはロースよりも上等な部位として知られていますが、しきんぼって聞いたこともありません。
足の付け根近くの外腿と内腿の間の肉がしきんぼだそうです。こちらもキメが細かくひれよりは脂があるので通好みのお肉だとか。
とんとろは豚の頬肉の下、肩口のお肉だそうです。グアンチャーレにする部位ですね。
脂はありますが筋状に赤身がしっかり入っていて揚げるとはっきりとした甘みを感じるとか。
おお、早く食べたい!
そして最後はらんぷ。お尻に近いところにある肉なので、よく動いていてしっかりとしまっており、噛み締めるごとに旨みを感じられる美味しい肉なのだそうです。
お願い!説明はもういいから早く揚げてください!ぐるるるる・・・(笑)。

ということで待つことしばし。
リブロースとロースの食べ比べからスタートです。
正直に言います。どっちもめちゃくちゃ美味いです。
能書き散々聞かされて(失礼)ドーパミン出まくってますから、「最初は何もつけずに一口。次はお好みでレモンと塩で・・・」なんて言われちゃうともう楽しくて嬉しくて理科の実験しているガキのようにあれこれ試してキャッキャと喜ぶバカ客の出来上がりです。
お次はひれとしきんぼ。
両方ともにサクッと揚がっていて断面には肉汁がたっぷりと湧き上がり、何だかもうとんかつなのかイノシン酸とグアニル酸の固まりを食べているのかわからなくなってきます。
とにかくひたすら美味いです。
ひれとしきんぼの違いとしては噛み応えとジューシーさでしょうか。
好みが分かれるところですが、私はしきんぼの旨さにやられました。
食べ比べの最後は、とんとろとらんぷです。
とんとろは一人一切れではなく肉塊で揚げてくれます。
衣に包まれたとんとろは脂の切れが良く、臭みもべたつく感じも全くありません。
赤身と脂のバランスを考えるとソースがとてもよく合います。辛子をたっぷり塗ってあっという間に胃の中に収まりました。
最後のらんぷは・・・噛み応えが素晴らしく、歯を押し返すような弾力とひれほどではないもののキメの細かさで噛むほどに旨さが増す味わいが楽しめました。
正直に言います。全部美味しいです。もう一周お願いします!!

さすがに2周することは、この後食べ比べコースを予約しているお客さんもいることなので無理です(当たり前だ)。
なので、締めのお食事に行く前にもう少し追加で食べさせて欲しいとお願いしたら、もちろんOKとのことでしたので、早速ランチで出しているらしい(看板に書いてあった)いちぼと串カツをお願いしてビールからお酒にチェンジです。
それではとても足りないので、特選リブロースかつとお土産にかつサンドも注文したところ、ホールの妙齢の女性にぷっと笑われ、まだ食べるんですか?と聞かれました。
う〜ん、この人接客向きじゃないなぁ。大きなお世話ですよ。

さて、気を取り直していちぼをいただきます。
いちぼはらんぷのそばのお尻の近くのお肉です。大きな部位ではないのでらんぷ程度の大きさなのですが、香りも肉汁の多さももちろん味も抜群です。
らんぷといちぼが一番好みかも。
普通のとんかつ屋さんでは食べられないよなぁ。ここに通うしかなさそうです。
もちろん既に通う気満々ですが(笑)。
串カツもネギとの相性が良くて、酒肴にピッタリです。
次回は最初に串カツいただいてちょっと飲もうと思いました。

そして食べ比べだと一切れしかいただけなかった特選リブロースを山盛りのキャベセンと共にがっつり頬張ります。
6切れもあるのでもうお肉のワンダーランドです(笑)。
最初は何もつけずにそのまま、次はウスターソース、そしてオリーブオイルと塩(これが強烈に美味い!)、とんかつソースとレモン、辛子と塩などと食べ分けて、あらもうお仕舞い。
ソースカツ丼とチャーシュースープと共に胃の中に吸い込まれていきました。
そうそう、このソースカツ丼(お茶碗サイズ)が美味しいんですよ。
じゅわっとソースが染みたロースの上に柚子胡椒がちょこなんと乗っており、この味のアクセントが良い具合です。
さすがに揚げ物を食べ続けていますので、口の中をご飯と柚子胡椒でさっぱりさせる感じですね。
豚汁もチャーシュースープも美味しかったですし、全部にお店独自の工夫というか美味しく食べさせようという意思が感じられるお店でした。
世の中にこんなに楽しいとんかつ屋さんがあるとは思いませんでした。
食べ比べ+α最高です。+αの方が多かったけど(笑)。

素晴らしいとんかつの世界を楽しむことができました。
本当にご馳走様でした!!

あ、かつサンドは自宅で夜遅くにハイボールの肴にいただきました。
作ってもらってから数時間経過しているので、ソースがパンに染みてしっとりしており、キャベツもいい具合にしんなりしているのに、お肉は柔らかさとジューシーさを全く失っておらず、しかもボリュームもたっぷりで、本当に満足度の高いかつサンドです。
まい⚪︎のかつサンドはもう食べられなくなりました。まるで別物です。
個人のかつサンドギネスがあっさり更新された瞬間でした。
本当にすごいとんかつ屋さんです。

  • はい、店名です
  • 店内のメニュー 入荷によってすぐに売り切れるものもあるそうです
  • 食べ比べコース概要

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8位

更來 (端野 / そば)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 2.5
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2017/05訪問 2017/05/04

  • 追加で食べたとじ 美味
  • 別注のかしわ
  • 3種盛りのうち最初の2種 更科と挽きぐるみ

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9位

五條 源兵衛 (大和二見、五条 / 日本料理、野菜料理)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2017/08訪問 2017/08/18

春夏秋冬訪れたい 野菜の「凄み」を感じさせる強烈に美味しいお皿たち

迷走台風5号が巡り巡って奄美から九州方面に上陸し、本州方面に向かってくるという予報が出た8月上旬、夏休みだというのにかなり空席の目立つ飛行機に乗って(これも台風のせいですね)関空に降り立ち、泉南を抜けて五條市までやってきました。
明日はきっと台風でぐちゃぐちゃになるでしょうから、今日はきっちり美味しいものをいただいて夏バテ解消&二日酔い解消(前の夜に広尾でワイン30杯以上飲んじゃったもので 笑)を狙います。

源兵衛さんは数日前に偶然テレビ番組で紹介されていたのを観て、なんの予備知識もなしに店名だけを頼りに五條市についてから電話してみたのですが、すでにランチは予約でいっぱい、13時以降に食材に余裕があれば電話をいただけることになりました。
結構な人気店なんでした。ミーハーなことですみません。

で、食べられないことも想定してあんな店こんな店をイメージしつつ「まちや館」で梅ジュース(150円です)をいただきながら酷暑をしのいでいました(まちや館の方はホスピタリティの塊りのような方で大変親切にしていただきました ありがとうございました)。
近くには天然醸造のナカコ将油(醤油じゃないんですね)や手作りのお餅で有名なお店もあり、重要伝統的建造物群保存地区でもある新町通りを散策することしばし、13時を少し過ぎた頃にお電話をいただけました!やたっ!
すでに品切れのお野菜もあるのでお任せでは全部のお皿を出せないとのことでしたが、それでもこちらのわがままを聞いてくださって席をご用意いただけたのですから、喜んで伺いました。
店に使用されている建物は伝統的建築物に指定されているそうで、天井が高くて外の酷暑とは違ったひんやりした空気が流れており、快適です。
屋根には灯り取りの窓が切られていますが、伝統的建築物に指定される前に開けたので滑り込みセーフだったとか(笑)。

さて、食事の前の梅紫蘇酢ジュースをいただいて暑さをリセット、食事の始まりです。
この梅紫蘇酢ジュースはデトックスにも良いそうで、食前に飲むと良いとの説明を受けて飲みますから身体に染み渡る感じがします(単純)。
椀物は夏野菜と餅米の温かいお汁です。
出汁が強く出ていて香りが高く、餅米の平たい団子との相性が抜群でした。
小さい小さい胡瓜(写真参照)を作っている契約農家さんの説明を受けていただくお椀は感心することばかりで、初めから食の楽しさを満喫することができました。
ほとんど毎朝、契約農家に出向いて野菜をもらってくるそうで、どのように作ったのか、どのような味や香りがして、どのように料理すると美味しくいただけるのかを研究しているので、私たちの口から胃に収まるまでのストーリーを聞きながらいただくと、ことさらに楽しさが増します。

向付として膾がわりに出てきたサラダはある意味メインディッシュ。
エゴマ、ナス、オクラ、トマトなどの朝採れ野菜が盛られたお皿は迫力さえ感じます。
みずみずしくて味が濃くて飲み込んだ途端に血肉に変わるような(大げさだ)美味しさです。
こんな美味しい野菜をいただけるなんて、五條市まで来て良かったねぇとワイフと頷き合いました。
そのあとが本当のメインである鉢肴、強肴、止め肴の三種がミニマルにセットされて登場。
特に玉ねぎが凄みすら感じる美味しさ&味の強さで、農薬を極力使わないで生育した野菜の本来の味とパワーをいただくことができました。

水菓子として「珍しい果物を今朝もらったのでデザートにいかがですか?」と出してくださったのはブドウに似た感じの丸い粒状の果実でした。
ジャポチカバという南米原産の果物だそうで、近所に住む畜産家が趣味で育てているのだそうです。
味はブドウとライチーの中間のような甘酸っぱさで、出汁とお新香の口をさっぱりとリセットしてくれました。

この店の良いものはもちろん野菜を中心とした地元の食材であり、歴史的な建物が醸し出す雰囲気であり、全体的な時間のゆったりした流れなのですが、それにも増して&一にも二にも「水」が良いことがよくわかる食事でした。
水が良いので野菜の味が良くなり、汁物の出汁が引き立ち、果物の甘さや個性が強くなり、何よりお茶が美味しいです。
番茶ってこんなに美味しい飲み物だったっけ?と感心しながら食後の余韻を楽しむことができました。本当に旅行に来て良かったなと思える時間を過ごしました。

予約もせずに無理を聞いてもらってありがとうございました。
次回は是非予約してお伺いします。ご馳走様でした。

ちなみに帰宅してからサイトを観たらミシュランの星がついている店だったことを知りました。
こんなところまで調査に来ているんですね。ご苦労様です(苦笑)。

  • 入り口の上品な暖簾
  • 入り口に出されている案内
  • 梅紫蘇酢のジュースです

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