ジュリアス・スージーさんが投稿したカイバル(東京/銀座一丁目)の口コミ詳細

ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。

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ジュリアス・スージー (男性・東京都)

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カイバル銀座一丁目、宝町、京橋/インド料理、インドカレー

1

  • 夜の点数:4.2

    • [ 料理・味4.2
    • | サービス3.5
    • | 雰囲気5.0
    • | CP3.7
    • | 酒・ドリンク-
  • 昼の点数:4.2

    • [ 料理・味4.2
    • | サービス3.5
    • | 雰囲気5.0
    • | CP3.7
    • | 酒・ドリンク-
1回目

2014/01訪問

  • dinner:4.2

    • [ 料理・味4.2
    • | サービス3.5
    • | 雰囲気5.0
    • | CP3.7
    • | 酒・ドリンク-
  • lunch:4.2

    • [ 料理・味4.2
    • | サービス3.5
    • | 雰囲気5.0
    • | CP3.7
    • | 酒・ドリンク-

カイバルからはじまる、散歩の贅沢。

大雪の翌々日、晴れた日曜日の午後1時。
ぼくに会うためにわざわざ横浜の海辺の街から来てくれる彼女は、
待ち合わせに少し遅れるむね電話をくれ、
おかげでぼくは、メニューを詩のように味わいながら、読むことができた。
(あるいは週末だけかもしれないけれど)カイバルは、
ランチタイムであってなおア・ラ・カルトを注文することができ、
そのメニューは、インド料理好きにとってなんとも魅力的で、しかもまめに入れ替えている。
ムング豆と青バナナのカレー 1260円
牡蠣のカレー、ケララマサラ 1260円
カブとアサリとキノコのダンブック(圧力鍋を使ったワイン蒸し)840円
(ダンブックとは何語で、どういうスペルかしら?)
小エビのあたたかい(甘くない)ハルア 580円
そのほかたくさん興味深い料理が並ぶ。


Khyber。それは(インドの北西)パキスタンにも、アフガニスタンにも属している峠の名前で、
まわりはスレイマン山脈であり、4000~5000m級の峻厳な山岳地帯にあって、
ただしカイバル峠は標高1070メートル、したがって、
シルクロードから南下してインドに向かう交易路として重要な役割を果たしてきた。
(気の毒なことに、いまではアフガンといえば、
アメリカ軍が「テロとの闘い」と称してはるばる戦争をしにやってきた土地として、名高いけれど。)
おそらく銀座のこちらのカイバルは、
インド料理を、ムスリムの食とヒンドゥーの食が出会うことによって発展したものととらえ、
そのゆたかさをビリヤニとタンドール料理で表現しているのではないかしら。
カイバルの空間は、ぜんたいに漆喰を用いて、かわいいタイルをアクセントに使い、
高い天井から、ホオズキ状のムスリムランタンが下がっている。
床は、薄石。 chic な空間で、しかも光の扱いも巧く、
明るさの諧調がデリケートにつけてある。
やがて彼女は、もこもこのショートコートで颯爽と現れ、
ぼくは候補の料理を挙げ、
協議のもと、以下のメニューを注文した。


ハウスワイン(アルゼンチンの赤)ボトル 2300円くらいだったかしら。
濃くて、甘みが深い。


1)冷製 ナスのイマーム 350円×2
ナスに切れ目をいれ、オリーヴオイルで揚げ、
タマネギのニンニク風味マサラ&トマト炒めを詰め、
トマトソースで煮て、冷やしたものかしら
ちょっぴりイタリアンをおもわせるおしゃれな一品。
イマームとは、アラビア語で「規範」「指導者」というような意味ながら、
いま検索してみたところ、実はこの料理名はトルコ語で、Imam bayildi  イマーム・バユルドゥ、
イマームは「ウキウキ」というような意味であるらしく、 bayildi がどういう意味なのかは不明ながら、
人によっては「お坊さんが気絶しちゃった」と訳している人も見かけた。


2)温製 レバーとハツのグリル、マディラ酒風味 780円
レバーもハツもマディラ酒にしっかりマリネしてあって、くさみがまったくなく、うまみが深く、ひじょうにおいしい。


3)温製 パニールと野菜のタンドーリ・サラダ 840円
ふつうにおいしい。


4)温製 ラム・ビリヤニ 冷たいライタつき 1370円
(ライタ ひとつ追加。値段忘却)。


ポーションは茶碗1杯半ながら、今回のようにコース仕立てで食べるにはむしろうれしい。
金属のボウルで、注文ごとに20分ほどかけて、作っているようだ。
ラムがごろごろ入っている。香りの立たせ方は場所柄ややひかえめながら、
バランスが良く、おいしい。


5)ぼくはマドラス・コーヒー、彼女はチャイ。値段忘却。


どの料理もおいしく、ぼくはこのコースを存分に愉しみ、
ぼくらは会計を済ませ、店を出た。


じゃ、散歩でもしましょうか。
舗道のところどころに雪が残っている。
彼女は言った、「わたしのところは海が近いから、
雪があんまり積もらないんですよ。」
そんななにげない言葉が、ぼくには心地よい、
太平洋が暖流であることなんて忘れていたよ。
ぼくらは昭和通りを西へ向かい、
晴海通りに出たら南へ進み、
リニューアルした歌舞伎座の前を通り、
ひとけのない、がらんとした築地市場を眺めた。
黒光りする魚雷のようなマグロを競り落とす男たちの声もなく、
場内を行き来するターレット式運搬車の姿もなく、
早朝の喧騒が嘘のように静まりかえっている。
しばらくしたら警備員から言われた、「ごめんなさい、
きょうは市場休みですので、一般の方はご遠慮ください。」
ぼくらは退散し、また晴海通りに戻り、南へ歩き、勝どき橋を渡り、
(風が強く、ぼくはウールのハットが飛ばされないように、まぶかにかぶりなおした)、
川の向こうに林立する高層マンションを眺めた。
そしてさらに晴海通りを南へ進み、月島へ折れるつもりが角を曲がり忘れ、
晴海アイランド・トリトン・スクエアまで行ってしまい、
また戻って、こんどはちゃんと月島へ折れた。
彼女は携帯で川の写真をとった。
彼女は笑った、「写真にとると、綺麗な川みたいに見えるね。」


彼女は美しく、気も軽く、
写真撮影、音楽パフォーマンス、広報、多彩な実務まで、さまざまなことが質高くでき、
有能ゆえ重宝がられもすれば、たくさんの人に愛されてもいて、
それでいて、彼女はそんな自分にいくらか不満らしく、
しかも、(あろうことか)孤独に慣れている。
彼女の話には、人に対する独自の観点がはっきりあるから、
聞いていて、おもしろい。
彼女はおおむね性善説で寛容な人ながら、
そんな彼女にも、けっして許せないこともあって、
たまに示す、まっとうな怒りも、
言われたほうは言われてはじめて、その彼女の言い分のまっとうさに気づいたりする。
他方、ぼくには世間の人があたりまえにできることで、
なぜかぼくにはできないことがたくさんある。
また、ぼくも人間が好きで、かつまた孤独に慣れてもいるとはいえ、
ぼくの人間への関心の持ち方は、
ともすれば笑いを求め、ややもすれば、
比喩と誇張を駆使した毒舌に傾きがちだけれど、
そんなぼくの話を、彼女はにこにこ聞いてくれる。


あれはなんの話題のときだったろう、
「テレパス七瀬だねぇ」、
何年かぶりにぼくは彼女にそう言った。
(テレパス七瀬は、小説のヒロインで、
彼女は人の心を読む超能力をもち、さまざまな家にメイドの仕事をして、
さまざまな人の心のありようを、そのふしぎを、そのつど驚きながら探査してゆく。)
七瀬ならぬぼくの女友達は、綺麗で、気が軽く、
人間というイキモノが大好きで、
好奇心と愛が深く、人づきあいに先入観もなければ見栄もない。


ただ気ままに歩いて、なにかを眺め、お互いの近況や、
共通の友達の最近の出来事をしゃべり、感想を口にする。
ただそれだけなのに、ただただたのしい。
碁盤目に整理された土地に、瓦屋根の二階家の軒が並ぶ、そんな月島を抜け、
夕方の川沿いを歩き、勝どき橋をさっきとは逆にわたり、築地本願寺を鑑賞した。
そして夜になっていっそう華やかな銀座通りをわたって、
有楽町駅で、ぼくは彼女を見送った。
彼女は姿勢良く、改札を抜け、颯爽と雑踏のなかへ混じってゆき、
他方ぼくは丸の内まで高架沿いの、カーヴする煉瓦道を歩いた、
カイバルの食事からはじまった、彼女と過ごした幸福な半日の、
余韻を味わいながら。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


2014/12/21 更新

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