『ぼくの、腸内フローラ騒動。』ジュリアス・スージーさんの日記

Eat for health,performance and esthetic

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ジュリアス・スージー (男性・東京都)

日記詳細

ぼくは身をもって体験したよ、
腸内フローラはありがたく、かつまた恐ろしいんだ。
いや、順を追って話そう。



腸内フローラという言葉がマスコミを賑わわすようになってひさしく、
さらには近年ではアメリカ国立衛生研究所の
ヒトマイクロバイオームプロジェクトは、
ヒトと細菌の共生と相互作用の研究として、
次世代医療革命として期待されている。
なるほど、たしかにこれは食事、健康、ダイエット、
そして医療が重なる領域での
ひじょうに興味深いトピックであり、今後の展開が愉しみだけれど、
しかしながら研究は、いよいよこれから、という段階にすぎない。
まだまだわからないことだらけだ。
にもかかわらず、マスコミや薬局では、
ヨーグルトや乳酸菌サプリが健康に良い・・・
とかなんとか素朴で楽天的な商品開発および宣伝競争に明け暮れているけれど、
しかしながら、ヒトと細菌の関係は、
まったくもってそんなたんじゅんなはなしではない。


まずは概説。
人間の腸内には数兆もの細菌がいて、
しかもその種類も1万種を越え、多様性に富み、
人の体重 の1%から3%ほどもいるそうな。
かれら腸内微生物群は、われわれの食事のタンパク質や脂質、
炭水化物の多くを、吸収可能な栄養素に分解し、
ビタミンや、抗炎症物質などの有益な化合物を生成してくれる。
かつまた有害物質を解毒してもくれる、
ありがたいものでもありうる。
しかし他方、その菌構成が悪ければ、
その人の健康を害しもする両義的なもの。
したがって綺麗なお花畑さながらの、
バランス良くゆたかな細菌叢(腸内フローラ)であることが望ましい、
と言われている。


腸内細菌叢が理想的な状態であれば、
ストレス、食欲、吸収など体調を改善もすれば、
アレルギーの低減、免疫賦活などの生体防御、
下痢、便秘、癌、高脂血症、高血圧、糖尿病はたまた鬱病などの疾病予防と回復、
免疫刺激、変異原作用、発癌、生体酸化、
腸内腐敗などの抑制を通して老化を遅らせることにも作用するそうな。



しかしながら腸内環境は、ひじょうに複雑な微生物生態系であり、
菌の構成ひとつとってさえも、一方で各国それぞれに特徴があるとされながらも、
他方では、その国の人同士と言えども個体差が大きく千差万別であるとされる。
たとえば人の正常な細菌構成にしても、2012 年に、
米国国立衛生研究所(NIH; National Institutes of Health)が、
ようやく明らかにした段階で、
研究はいよいよこれから、という感じである。
われわれは 過度期に生きていて、
だからこその腸内フローラ悲喜劇が蔓延している。






おもえば、長いこと、腸内細菌叢の構成は、
言わば、善玉菌、悪玉菌、日和見菌と見立てることができて、
そこで人は健康になりたければ、
善玉菌(=ビフィズス菌)を増やし、
かつまた日和見菌を善玉菌の味方につけることが
秘訣である、と言われてきた。
いまにしておもえばたいそうたんじゅんで楽観的な見解ではある。



これによって世にヨーグルト信仰が生まれたのだけれど、
しかし好事魔多し、これに(部分的ながら)異論を唱えたのが
内視鏡の先生の新谷弘実さんで、
『病気にならない生き方』サンマーク出版 2005年刊 
のなかで、かれは唱えた、
これまで30万人の腸を内視鏡で見たなかで、
ヨーグルトを常食している人の腸相はきまって悪い、
なぜなら牛乳~ヨーグルトの蛋白質カゼインは消化がしにくく、
かつまた攪拌~均質化(ホモゲナイズ)の段階で空気が混じり脂肪が酸化する、
そのうえ高温殺菌であれば脂肪はさらにいっそう酸化し、
蛋白質も編成してしまう最悪の食品であるかららしい。
これは衝撃的な見解で、
腸内環境を良くしようとおもってヨーグルトを食べ続けた結果、
腸相が悪くなってしまってはモトもコもない。
またかれは、大人が牛乳を飲む習慣を持つとむしろ骨粗鬆症になりやすい、
とも主張した。
新谷先生のこれらの説に、乳製品業界は営業妨害として大反発したけれど、
しかし新谷先生は一歩も引かなかった。



ぼく自身は、かれのヴェジタリアンの勧めには、主観的にはあるていど共感するけれど、
しかし、客観的に見ればヴェジタリアンにもデブはけっして少なくなく、
しかも必ずしもポテチだのピザだのハチミツたっぷりのパンケーキだののせいばかりではなく、
大事なことは デブならではの腸内フローラ が形成されているからである。
むしろ肉食の人の方が痩せている率が多いという説もある、たとえ腸相が悪い可能性があるにしても。
また果実をたくさん食べましょうというアドヴァイスもまたやや疑わしい。
ましてやミラクルエンザイム理論にはまったく惹かれない。
すなわちぼくは新谷先生の思想には、ほぼ賛同していないのだけれど、
しかしそれはそれとして、
ヨーグルトが腸相を悪くする、
そして牛乳が骨粗鬆症を招くという意見には聞くべきものがあるのではないかしら。


なるほど、ならば乳酸菌は錠剤で摂取すれば良い!
ということにはなるのだけれど、
しかし世の中にはヨーグルト同様、
さまざまな菌種のサプリが各種出回っていて、
人それぞれどの菌種が合っているのか、
2週間ほど試してみなければわからない。
こうして乳酸菌マニアは、自分に合った乳酸菌錠剤を探して、
何万円~何十万円と費やす旅に出ることになる。



しかしながらこれはひじょうにロスが多く、
カネがかかるわりにはなかなか効果が現れにくく、
遠慮なく言えばほとんど無駄である。
なぜなら、そもそも乳酸菌はそうとうにデリケートなもので、
体内に摂取しても胃酸で死んでしまったりするし、
いやいや、死菌でもじゅうぶん効果があるのだという説もあれば、
うちの菌は生きたままで腸まで届くというものもあるのだけれど、
しかし生きたまま腸に届いたところで、
その人に合っていなければなんの意味もなく、
またよしんば合っていたとしても、
腸内に住み着きコロニーを形成しなければ役割は果たせず、
そのまま体を通り過ぎてゆくならばまったくもってナンセンスである。



ざんねんながらこうした展開になりがちなことには理由がある。
人それぞれの細菌叢は、まず最初に赤ちゃんが母親の産道をとおるときに
さまざまな菌をもらい、そのときから腸内フローラは形成されはじめ、
生後3歳以降は比較的安定的であり、
その構成こそ年齢に応じて相応の変化があるにせよ、
それぞれの年齢においては、どちらかといえば変化を好まず、
自立性をそなえ、異物を排除する免疫機構をそなえているそうな。
これを 腸のホメオスタシス と呼ぶそうな。
つまり新たに摂取した菌はもともと排除される確率の高い運命にあって、
なかなか住みつきにくく、
ましてやコロニーを形成するにはほぼ至りがたいらしい。
それが証拠に、ある人を一定期間に複数回検便し、
その細菌叢を検査しても、健康であれば大きな変化は見られないそうな。
例外は、病気によって免疫が乱れているときで、
とくに抗生物質を投与されたりすると、
腸内細菌叢は大いに乱れ始めるそうな。
しかし病気が治れば、ふたたび腸内細菌叢は、
それまで同様ではないにせよ、平衡状態へ戻るそうな。



もっとも、効くときは驚くほど効くもので、
不眠症の人がその人に合ったヨーグルトを摂取すれば、
魔法のようにすやすや眠れるというような例もある。
ただし、これは菌が定住したか否かとは無関係なことである。


さて、そこで現れる考えが、
自前の腸内フローラに良いエサを与えて、
綺麗なお花畑に育てましょ、というもの。
食物繊維を食べましょう、
オリゴ糖を与えましょう、
キムチや納豆が良いでしょう、
ビール酵母錠剤(エビオス錠)や
ビール酵母+乳酸菌錠剤(強力わかもと)もありますよ。
なるほど、これならば比較的安上がりである。
そこでぼくはキムチ納豆を毎朝食べ、
かつまたエビオスとわかもとを混ぜて飲むようにしてみた。
すると霊験あらたか!
それまで1日1回だった便通は、たちまち1日3回になった。
あきらかに良い変化が起こっているようにおもえたものだ、最初は。




しかし、ひとつだけ困ったことがあった。
ぼくはさらにいっそう太ってしまった!
身長170センチ、いまや体重87キロなのだ。
2年まえ2015年の初夏ぼくは最悪の体調だったけれど、
体重は72キロだったものだ。
さすがに87キロは、ない。
ないないないないない。
せめて72キロまで、
理想的には63キロまで落とすべきだろう。



なぜこんなに太ってしまったのだろう?
運動不足という理由は確実にある。
ただし食事だって週末ランチの二日以外はたいして食べてはいない。
酒は毎日大量に飲むゆえ、もともと内蔵脂肪は溜まっていて、
これが問題ではあるだろう。
そして第二の理由は、もしかして腸内細菌ではないだろうか。
なぜって、善玉の腸内細菌のなかには、
多糖質を分解できる菌があって、
多糖質をそのまま便として出してしまえばいいものを、
しかし腸内細菌が律儀に分解して、
エネルギー源として体内に吸収し、
こちらがたいして体を動かさなければ、
そのまま脂肪として貯め込んでしまうらしい。
腸内細菌は頼んでもいないのに脂肪貯蔵ホルモンをやたらと生産し、
勝手にどんどん脂肪をたくわえてしまうのだ!
なるほど、ネットにはエビオスやわかもとで太るという意見は散見されるし、
それどころか太りたいからそれらを飲むという人までいる。


なるほど、あるていどならば「健康的な太り」というような事態もあるだろうにせよ、
しかし腸内細菌がやたらと脂肪を溜め込んだ結果肥満してしまうような展開が、
とうてい健康的な事態だとはおもえない。
と同時に、腸内細菌が食欲を呼び起こしているのだ。
しかもある種の腸内細菌叢は糖尿病を引き起こす疑いさえ示唆されていて、
危なっかしくて仕方がない。
なんだなんだなんだ、善玉菌を増やした結果、糖尿病になりました!??
どこが善玉菌だよ、おい!
というツッコミが聞えてこないことがふしぎである。


すなわち、さいきんの世のなかは、
腸内細菌を増やしましょう増やしましょう、
と喧伝しているけれど、
しかし事態はけっしてそんなたんじゅんで楽天的なものではない。
あまりにもわからないことが多すぎる。



たとえば、デブと痩せでは腸内フローラが違うそうな。
しかもそれは、いわゆる善玉菌が多い少ないというたんじゅんな話ではなく(!)、
細菌叢の構成が違う、ということなのだ。
動物性蛋白および飽和脂肪を多く食べる人は、
Bacteroides 系の細菌が多く、痩せ型が多く、
他方、炭水化物をよく食べる人は、
Prevotella 系の細菌が多く、デブ率が高いそうな。
ならば、デブをやめたければ、
食生活を変えて、腸内フローラを痩せ型にすればいい、
ということにはなる。




さいきんぼくはデイヴ・アスプリー著 栗原百代 訳
『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』
(ダイヤモンド社 2015年)というひじょうにおもしろく刺激的な本を読んだ。
著者は1970年カリフォルニア生まれのIT企業家で、
かれのセオリーは、
低糖質ダイエットと、断食(ケトンダイエット)を組み合わせ、
上質の脂肪を採り、野菜をたくさん食べ、
ただし糖質は控えめにして、基本的に乳製品は採らない、
という(そうとう攻撃的な)戦略だ。
具体的には、食事は1日6時間内に行い、
毎日18時間ほどの断食を習慣にして、
この小断食によって毎日1回、腸内細菌たちを飢餓状態にさらし、
そのタイミングで痩せ菌のエサであるところのポリフェノールを与える。
そうすれば腸内フローラは痩せ型のものになるだろうという戦略である。
なお著者は小断食の途中の朝に、
代表的なポリフェノール食品であるところのコーヒーに、
バターを溶かして飲むことを、勧めている。


ぼくはこの方法に興味を持ち、
実行しはじめてみたところだ。
さぁ、効果はあるだろうか???





参考文献
https://www.cancerit.jp/17969.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_57/_pdf
http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/bookstand-enzyme.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim1997/15/2/15_2_57/_pdf
https://www.waseda.jp/top/news/39021

2017年4月14日

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