葡萄党幹事長さんのマイ★ベストレストラン 2016

葡萄党活動レポート

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葡萄党幹事長 (60代前半・男性・東京都) 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

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この1年、毎月ないしは年に数回以上行く店はレビューをしていない。本当に好きな店は常連として通うようになったそれらの数店舗。従ってこのベスト10はそれらの数店舗の他に、今年新たに行くようになった店を10店挙げている。1位にはベストレストラン世界8位となったナリサワ。コンパクトな店内で繰り広げられるワールドワイドな里山キュイジーヌが素晴らしい。特別な日に、たまには行ってみたいレストランと言えるのではないだろうか。神楽坂の老舗料亭、うを徳も同じような特別感が通じる。めったに足を踏み入れられない、わくわくできるところが料理を超えて心に残る。老舗料亭に比べれば同じ老舗でもフレンチの歴史は浅い。それでもランスヤナギダテのように、長年同じコンセプトを守り続ける老舗らしい老舗はまだまだ沢山あるように思う。対して神楽坂に佇む来経のように、和洋の新しい融合も楽しめた。ベテランシェフが20年以上のニューヨーク滞在で完成させた創作和食と、いかにも割烹らしいインテリアの組み合わせだけでも新しさを感じる。そして今年新たに開業した店も多かった。白金のラクレリエールはミシュラン星付きフレンチの移転あとに開業。以前の店を上回るパフォーマンスで今後に期待が持てる。ミシュランの星を取った大将の2店目、銀座吉澤も大将自ら自分の苗字を付けるだけあって、味も雰囲気もサービスも最初から本家を上回っている。その大将の修行先、銀座座屋も相変わらずの安定感。東京以外で1店だけ挙げるとすれば、沖縄の新しいリゾート、チャタンハーバーに開業したブリュワリー。街自体のこれからの発展が楽しみ。そして新しい店が次々に開業する神楽坂では、鴛鴦夫婦の割烹えびはらや、ミシュラン星付き、日本酒が素晴らしい店の2号店、月よみ庵も素晴らしかった。こうして今年1年を振り返ると、やはり新旧の入れ替わりが目立つ年だったように思う。

マイ★ベストレストラン

1位

NARISAWA (青山一丁目、外苑前、乃木坂 / イノベーティブ)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥60,000~¥79,999 -

2016/05訪問 2019/01/29

世界8位の里山キュイジーヌ

2016年ワールドレストランベスト50で世界8位、アジアトップとなったナリサワ。日本の食材に徹底的に拘り、自然に感謝するように滋味深い味わいを標榜する世界のナリサワ。日本中から最高の食材を集め、食材本来の持つパフォーマンスを最大限に活かす技は、もはや芸術の域に達している。

スペシャリテの森のパンや、里山の風景、森のエッセンスなど、オーナーシェフの料理への思いを込めたコンセプチュアルな皿も楽しいが、日本中から集められた旬の走り、盛り、名残の野菜、魚、肉の数々に、ただただ感激してしまう。そしてその全てにおいて、過去に囚われないシェフ独自の解釈を経て完成された形態を生み出していて、それはまさにイノベーティブ里山キュイジーヌであり、ベネフィシャル&サスティナブルガストロノミーと呼ぶに相応しい、世界広しと言えども他に例のない独自のナリサワワールドを創り出していると言える。

今回の京都の鴨肉も素晴らしかった。北京ダックのように何度も、何度も米油を掛けてカリカリに皮を焼き上げている。にも拘らず真っ赤な色をした肉はふわふわに柔らかい。鴨肉の味わいも見事に引き出され、仄かな甘味と旨みが皮の内側に凝縮されている。フレンチに日本料理や中華料理の技を融合させて、新しい日本料理と言える仕上がりになっている。添えられた春菊や大蒜の香りが丁度よいバランスで、ビーツのソースとも良く馴染んでいて申し分ない。

スタートは日本の原始林を思い起こさせる楢や杉の香りの水。ホウレン草で色付けしたおからや揚げた牛蒡が土と森のイメージ。スガハラのガラス器に泳ぐ稚鮎は、まるで生きているような躍動感。骨を刺したスッポンのフリットも唐揚げのようで面白い。朴葉に乗せられた葱のフリットは真っ黒で、何か怪しげな生物の卵の様相。食べると初めて甘味のある葱であることが分かる。

島根牛の鮨、伊勢海老とキャビアに並ぶのは沖縄県産の海ヘビスープ。爬虫類らしい野趣あふれる香りと味わいは、冬瓜や海ヘビと同じ沖縄県産のター芋と好対象で面白い。明石の鯛は関東のレストランでは2店舗にしか卸していないという有名な仲買人水口氏のセレクト。やはり真鯛は明石に限ると思える、ぷりっとしつつ旨みをたっぷり蓄えた熟成感。ボタン海老の甘さとの相性も良い。

静岡県産の大きな赤座海老は、大きいだけのことはあるまったりとした甘味と甲殻類独特の香りを楽しめる。特に殻だけカリカリに火入れして、身は殆ど生に近い仕上がりは、香りと食感、旨みの良いとこ取り。蕗の薹や独活との味わいのコントラストと見た目の美しさも素晴らしい。

トマトの酸味と空豆を合わせた桑名の蛤は、オーソドックスなバターにオリーブオイルを効かせて、昔懐かしい焼き蛤をモダンに変身させている。焼き物はグジ。本場山口から瀬戸内の甘鯛を木の芽焼きに。まるで京料理の世界。神奈川の鮑には京都の白子筍を合わせている。京都の筍だけでもこの時期垂涎と言えるのに、鮑と一緒とはあまりの嬉しさに泣けてくる。鴨の前には虎河豚とその白子。ワインより日本酒が合う。

デセールでは太古の昔から日本の味を支える千年麹と椿の灰の謎を解き明かす。最後の最後まで楽しくて仕方がない。シェフの思いと料理、スタッフ、客が一体となって、あたかもショータイムを創り出しているかのような時間が過ぎていく。ワインは料理に合わせたデギュスタシオンがお奨め。皿ごとに少しづつというコースも用意されているが、ソムリエにお奨めを聞いて、都度グラスで注文する方が楽しめること請け合い。

乾杯は2006年のドンペリ、ミレジメ。これがハウスシャンパーニュというところが世界のナリサワ。2006年はミーハーなドンペリイメージを吹き飛ばすトラディションな味わい。里山料理には杜氏、佐藤卯兵衛氏が秋田の新政から繰り出す純米大吟醸。シャルドネは味わいが素晴らしいドメーヌ、ジャンクロードラトー。1996年のシャトードポマールに続いて、鴨肉にはシャトーグリュオラローズのドンペリと同じ2006年。良くもこれだけ楽しく流れるように出すことができるものと感心させられる。

場所は東京メトロ銀座線、半蔵門線の青山一丁目駅。青山一丁目交差点をホンダ本社側に出て渋谷方面に歩いて3分。青山通り沿い左手側の、新しく出来た1階がオープンに吹きぬけたビルの奥に見える曲面ガラスの別館1階にある。

ほんのりと薄明かりの店内は、白いインテリアがフレンチレストランらしい趣き。客もスタッフも半分近くが外国人。わずか数卓のテーブルをゆったり配置し、隣の会話は殆ど聞こえない居心地の良さ。ガラス張りのキッチンでは研修生を含む外国人が大勢働く姿が見える。まるでパリあたりの店にいるような錯覚を覚える。

客の2倍はいると思えるスタッフの至れり尽つくせりのサービスに酔いしれ、縄文からの日本の風土を意識しながら、楽しく美味しく寛げる貴重な店。世界8位、アジア1位の称号がなくても、誰もが存分に満足できる最高の店と言っても過言ではないと思われる。


NARISAWA Spring Collection,2016 25000円

里山の風景 森のエッセンス
稚鮎のフリット 桜のソース
佐賀県産骨付きスッポンのフリット
葱のフリット

島根県産島根牛の鮨
静岡県産伊勢海老とキャビア
 ビーツのアラレ
沖縄県産イラブーのスープ
 海ヘビ 冬瓜とター芋

兵庫県産仲買人水口氏の明石の鯛と柚子のジュレ
 石川県産ボタン海老とパクチー 柚子胡椒
殻だけ焼いた静岡県産活き赤座海老
 石川県産蕗の薹 東京都産立川の独活
 蕗の薹のソース

三重県産桑名の蛤 トマトと空豆
 バターとオリーブオイル
山口県産甘鯛の木の芽焼き 桜と供に
神奈川県産鮑と京都府産白子筍 島根県産花山椒

山口県産天然虎河豚と虎河豚白子のフリット
 黒文字の串刺し
京都府産鴨肉 春菊と大蒜 ビーツのソース

椿と麹
 椿の花弁と葉 椿の灰掛け 千年の麹の甘酒
福岡県産抹茶のアイスクリーム
エスプレッソダブル
桜の最中

森のパン 2010 桜と柑橘


2006 Champagne Brut
 Dom PERIGNON MILLESIME
 4000円/120mlグラス

風の森 こぼれ酒
 油長酒造 奈良県 2000円/120mlグラス

新政 純米大吟醸 佐藤卯兵衛
 新政酒造 秋田県 4000円/120mlグラス

2009 POUILLY FUISSE VIEILLES VIGNES
 DOMAINE JEAN CLAUDE LAPIERRE
 4000円/120mlグラス

1996 CHATEAU de POMMARD
 4000円/120mlグラス

2006 CHATEAU GRUAUD LAROSE
 4000円/120mlグラス


別途消費税 サービス料10%

  • 京都府産鴨肉 春菊と大蒜 ビーツのソース
  • 里山の風景 森のエッセンス
  • 稚鮎のフリット 桜のソース

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2位

うを徳 (飯田橋、牛込神楽坂、神楽坂 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2016/02訪問 2016/02/13

神楽坂で文豪に愛された料亭

明治の文豪、泉鏡花が愛した料亭として神楽坂ではあまりにも有名。八丁堀の魚屋で鏡花の小説のモデルでもあった徳次郎が、この神楽坂で仕出し屋を始めてから間もなく150年が経とうとしている。先代が亡くなり、若い6代目が大将を襲名してからでも既に2年となる。軽子坂を登り切った神楽坂の古くからの一等地にある、いかにも神楽坂らしい黒塀の佇まいは、最近の神楽坂の人気店がこぞって真似をしてきた美しい江戸町家のファサード。ミシュランの星を持つ料理は東京らしい料亭料理の典型であり、この店出身の有名料理人も数多く、独立してミシュランの星を取った料理人もいる。鰹出汁の香りが漂う皿の数々は、厳選された素材の良さと、かたくなに伝統を踏蹴する明治からの東京スタイルが感動的。会席コースは普段は20000円と25000円の2種類。今回は正月の祝い前菜や雑煮からなる買い得な期間限定、名残正月会席コース。造りの昆布で締めたヒラメが旨みたっぷりで美味しい。分厚い切り身でありながら、丁度よい歯応えで日本酒が進む。厚さだけではなく、とにかくボリウムが多いのも東京会席の伝統かもしれない。活きホタテや甘海老も素材の良さが光っている。正月祝い膳でもある前菜は、アワビやアワビの肝を使った正月料理が一通り。味付けはいずれも東京らしいしっかりとした濃い目。しかし濃い目でありながら、これだけ美味しく仕上げられるのは、長年の伝統からくる自信に裏打ちされた思いと腕があるからかもしれない。最近流行りの薄い味付けの京風会席とは対極にある、まさに東京らしい日本料理の手本と言える。椀物に変わって雑煮は合鴨。千住葱との組み合わせも東京らしさ満載。繊細な京野菜とは違う、甘味を押さえることなくたっぷりと、芳醇なほどに蓄える東京野菜の旨さ溌剌。焼物のサワラには鱈の白子。濃厚な味噌に漬けられたサワラはもとより、白子にさえしっかりと火を入れて味を調えており、伝統が貫き通されていて気持ちが良いほど。吹き寄せの海老芋の旨煮の、ほろっとした食感が素晴らしく美味しい。椎茸の甘味も海老芋に合っている。日本酒がいくらでも飲めてしまう。正月らしいささげご飯のもさっとした舌の感触さえ、日本酒の供になってしまう。乾杯はシャンパーニュと言っても分からないくらい繊細なフランチャコルタ。瓶内長期熟成の泡は、しっかりした味わいでボリウミーな料理を引き立てる。日本酒は石川の農口の山廃が美味しい。日本酒のセレクトは料亭らしい誰もが知る銘柄を並べてはいるが、その中にもきらりと光る季節の日本酒が控えている。場所は東京メトロ南北線、東西線、有楽町線、都営大江戸線の飯田橋駅。B4出口を軽子坂に出て、坂を登り切り、下った先の左手。駅から徒歩4分の距離に、江戸情緒を感じる黒塀の一戸建。引戸を開けると大将の母親となる先代の女将が、親しみ易い満面の笑みで出迎えてくれる。着物の似合う女将は、江戸っ子らしい気風の持ち主でもあり、今のこの店の大黒柱でもある。明治、大正、昭和、平成と時を重ね、この店を舞台に、この料理を前にしながら動いてきた、文芸はもとより政治経済の歴史に思いを馳せると、この変わらぬスタイルはこれからもずっとこのままでいて欲しいと願わずにいられない。

期間限定 名残正月会席 7560円
正月祝い前菜
 アワビとアワビの肝 金糸鮨 数の子 伊達巻
 なますのイクラ乗せ 錦玉子 甘栗
 黒豆 なますのイクラ乗せ
雑煮 合い鴨 千住葱 舞茸 手毬麩 小松菜 小吉備餅
造り盛合せ
 ヒラメの昆布〆 活きホタテ 甘海老
焼物 サワラの西京味噌漬け焼き 鱈の白子
 八幡巻き オリーブの大徳寺納豆詰め 蓮揚げ
旬菜の旨煮吹き寄せ
 海老芋 つくね 椎茸の含め煮 麩
食事 ささげご飯 なめこ汁 新香
デザート 生姜のクレームブリュレ 540円

NM Franciacorta Cuvee Prestige
 C'adel Bosso 5184円/375mlボトル
2014 asatsuyu あさつゆ
 KENZO ESTATE 7992円/375mlボトル
農口 山廃吟醸 無濾過生原酒
 農口酒造 石川県 1404円/180ml徳利

別途サービス料10%

  • 造り盛合せ ヒラメの昆布〆 活きホタテ 甘海老
  • 正月祝い前菜 アワビとアワビの肝 金糸鮨 数の子 伊達巻 なますのイクラ乗せ 錦玉子 甘栗 黒豆 なますのイクラ乗せ
  • 雑煮 合い鴨 千住葱 舞茸 手毬麩 小松菜 小吉備餅

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3位

レストラン・ランス・ヤナギダテ (表参道、明治神宮前、外苑前 / フレンチ、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2016/06訪問 2016/06/11

青山で今や老舗のフレンチ

表参道交差点から程近い一等地、青山通りから少し入った路地の突き当たりの奥まった緑の中に、ひっそりと佇むように小さなエントランスサイン。間もなく開業20年を迎える老舗正統派フレンチ。店名はオーナーシェフが修業したシャンパーニュ地方の都市名。本場フランスの3つ星を始めとした数々の星付きレストランで修業したシェフの料理は、オーソドックスなフレンチらしい料理に、いかにオリジナリティを加えて食べる人に楽しんで食べて貰うかを考え抜いているように思われる、いわゆる食べ手への愛を感じる料理。

丁寧に作られたコンソメや季節の素材、キャビアやトリュフもふんだんに使っていて、クラシックな味わいとモダンなビジュアルが、いかにもフレンチらしい真っ白なインテリア空間で繰り広げられていく。コースはメニューにないアミューズの多さに驚くところから始まる。日によって、5種類から10種類近く出されることもある。今回は7種類のアミューズが、一皿一皿時間を掛けて出され、オードブルが出る頃には、この店お勧めのシャンパーニュで酔っ払ってしまっていた。

黒毛和牛のフィレが柔らかく火入れされていて美味しい。フレッシュなサマートリュフがたっぷりと掛けられ、下に敷かれたソースもフレッシュトリュフで作ったサマートリュフソース。味わいのしっかりした柔らかい和牛が、季節感たっぷりのトリュフにサンドイッチされ、素晴らしい香りと食感と味わいのコントラストを引き出されている。素材も料理もビジュアルも正統派ながら、全ての料理がどこかシャンパーニュに合うように作られているところが素晴らしい。

コースは、とにもかくにもアミューズが面白い。旬の走りは、もう秋の栗から始まる。軽い栗の香りが、冷たいスープから漂う。スープの下からはドライアイスの煙がテーブルに漂い、初夏の蒸し暑さを忘れさせてくれる。コンソメジュレと馬糞ウニの組合せも鉄板。丁寧に作られたコンソメに作り手の愛情が詰まっている。人参のエスプーマが蟹と完熟トマトに合っている。カリフラワーのムースにもズワイ蟹。キャビアとの組合せが美味しい。冷たいスプーンにはグリンピースとフロマージュ。茄子にはフレッシュトリュフ。アミューズの〆はハマグリの椀物。会席料理に通じる構成。

オードブルはアメリケーヌソースに浸かるオマール海老。これもアミューズ同様、シャンパーニュに合っている。いくらでも飲めてしまう。ポアソンは真鯛、ヴィアンドは和牛。素材の選択からして正統派らしい。火入れはかなりしっかりしているのに、全体的に満遍なく柔らかい。シェフの腕を感じる仕上がり。さすが実力派の店。クラシックなソースに一番合う火入れではないだろうか。アヴァンデセールもグランデセールも凝っていて、最後まで楽しく食べることができる。

シャンパーニュはたくさん飲めるように、気軽なハウスシャンパーニュを用意している。今回は最大手のメゾン、ポルジェス。シャンパーニュらしさがしっかりある、最もコストパフォーマンス重視なシャンパーニュの一つ。これならどの皿にもシャンパーニュを合わせることができる。白ワイン、赤ワインもコストパフォーマンスの良いドメーヌ物をグラスで開けていて、料理とワインを楽しむことを目指す店の姿勢が良く現れている。

場所は東京メトロ千代田線、半蔵門線、銀座線の表参道。一番青学方面寄りに出て、渋谷に向かって右側。旧紀伊国屋、今のAOビルの手前の路地を右手、北青山方面に曲がった突き当りにある。鬱蒼とした感のある緑豊かなアプローチの先には、小さく目立たないエントランスサイン。今や老舗の奥ゆかしさが漂っている。真っ白なフレンチらしい空間では、レストランウェディングも頻繁に行われている。丸テーブルの間隔には余裕があって、隣の声が気にならないのが落ち着く。

青山で20年の歴史となるシャンパーニュの館。旬な素材を厳選して、クラシックな料理を丁寧に仕上げるフレンチらしいフレンチ。アミューズの種類の多さや、その中身が面白くて、いくらでもシャンパーニュが飲みたくなってしまう店でもある。新しいフレンチが次々にオープンする青山で、20年、30年と人気を続ける数店のうちの一軒。モダンな創作系フレンチとは一線を画す正統派フレンチの一軒として、これからもシャンパーニュ好きを引き付け続けて欲しいと願わずにはいられない店となっている。


コースB 9000円

アミューズ 栗のヴィシソワーズ
アミューズ コンソメのジュレ 北海道産馬糞ウニ
 フーヴイエ
アミューズ 人参のエスプーマ
 蟹とアボカドのムース 完熟トマトのピュレ
アミューズ カリフラワーのムース コンソメのジュレ
 ズワイ蟹とキャビア乗せ バジルソース
アミューズ グリンピースとフロマージュ スプーン仕立て
アミューズ 茄子のソテー アワビとその肝
 サマートリュフ乗せ
アミューズ 九十九里産ハマグリのスープ仕立て

オードブル オマール海老とウニ
 ホワイトアスパラガスのブランマンジェ
 オマール海老のアメリケーヌソース キャビア乗せ
ポアソン 真鯛のグリエ ラタトゥイユ添え
 バルサミコソース
ヴィアンド 牛フィレのグリエ サマートリュフ乗せ
 サマートリュフのソース
ミニバケット プレーンパン エシレバター

アヴァンデセール わらび餅とバニラアイス
 アングレーズソース
グランデセール カカオのアイス
 色々なベリー添え チョコレートの蓋
カフェ エスプレッソ
プチフール オレンジピール トリュフ フィナンシェ


NM Champagne BRUT Pol Gesse
 1600円/120mlグラス
2014 VOUVRAY CUVEE DE SILEX
 DOMAINE DES AUBUISIERES
 1500円/120mlグラス
2013 BOURGOGNE LA GIBRYOTTE
 1500円/120mlグラス

別途サービス料10%

  • 牛フィレのグリエ サマートリュフ乗せ サマートリュフのソース
  • 真鯛のグリエ ラタトゥイユ添え バルサミコソース
  • オマール海老とウニ ホワイトアスパラガスのブランマンジェ オマール海老のアメリケーヌソース キャビア乗せ

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4位

來経 (牛込神楽坂、飯田橋、神楽坂 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2016/11訪問 2016/12/13

神楽坂の隠れ家割烹

ニューヨークの有名日本料理店の料理長だった大将が、請われてこの店を引き受けてから2年。大将の料理は京料理のような日本の伝統と、モダンフレンチのような美しいビジュアルがオリジナリティ豊かに融合している。ニューヨークには足掛け23年在住と言う大将は、既にバランスの取れた形を完成させていて、脂の乗り切った腕を感じる料理の数々は安定感さえ漂わせている。料理はお任せコースのみ。会席料理のフルコースが供されるため、皿数が多く全体のボリウムはかなり多い。外国人でも十分満足できる。

フレンチの影響を受けた料理は、京料理をベースとした創作日本料理と言えるジャンル。今回のカマスは太白胡麻油を使った油焼き。絶妙にしたカリっとした食感と白身の万遍のない柔らかさが、白胡麻油の上品な香りと相まって美味しい。ジュレ寄せも丁寧に引かれた出汁の味わいが素晴らしい。ズワイ蟹の旨みを引き立て、山芋との食感のハーモニーが楽しい。鱧は松茸、丸茄子と合わせて、鱧の骨から引いた出汁を使って椀物に仕上げている。向付の前に製作中の自家製カラスミをサービスしてくれる大将の気さくさも、居心地の良さを作り出している。

向付は北海道産ホタテ貝と赤貝の組み合せ。鯛の頭の煮凝りを掛けたビジュアルも美しい。向付を挟んでカラスミの次には蕪の皮を実山椒に漬けた煮物。日本酒が進んでしまう。さらに松茸、鮑茸、平茸、シメジの4種類の茸と百合根と栗、銀杏という秋の味覚のオールスター。京桜味噌と落花生味噌を合わせた鉄火味噌掛け。何とも言い難い複雑な美味しさ。舞茸には根三つ葉を合わせて繊細に仕上げている。比内地鶏とフォアグラ、海老芋の組み合わせもこの店の真骨頂。和洋の融合。〆は独活の西京味噌椀の京風と秋刀魚とイクラの土鍋炊き込みご飯。炊き込みご飯は生姜と牛蒡を使い田舎風。最後まで楽しい。

乾杯の泡には、マルティニブリュットがハーフで用意されている。日本酒は上喜元や黒龍などの純米吟醸や大吟醸が全国から一通り。ズワイ蟹の先付から鳴門金時のアイスクリームまで、他にない和洋の融合と言う料理の数々に、じっくり合わせて楽しむにも十分な品揃えとなっている。

場所は神楽坂の知る人ぞ知る裏通り。JR総武中央線、東京メトロ南北線、有楽町線、東西線、都営三田線の飯田橋駅B3出口から神楽坂に出て、坂上に向かって登り始める直ぐの路地を左手、理科大側に入る。熱海湯で有名な階段を下りて、アグネスホテルの裏側となる路地を右に行った左手にひっそりと佇む。黒壁に嵌め殺しの窓と割烹らしい白木の扉だけという目立たぬエントランス。

インテリアも外観同様シンブル。白木を中心とした流行りのお洒落割烹。4人テーブルの個室が2室と、L型8人掛けのカウンター席。イケメンのベテラン大将や、気の置けない和装の仲居との会話も楽しく居心地がすこぶる良い店。神楽坂の割烹はどこも質が高く、価格も手頃で居心地の良い店が多いが、接待にもプライベートにも利用しやすい隠れ家割烹として、この店の持つ秘められたパフォーマンスは計り知れないものがあるかもしれないと思わせられる。

11月のお任せコース 14000円
先付 ズワイ蟹と山芋のジュレ寄せ
椀物 鱧と松茸 丸茄子
 鱧の骨と昆布出汁のお椀
強肴 自家製カラスミ
向付 北海道産ホタテ貝と赤貝
 鯛の頭の煮凝り掛け
強肴 蕪の皮の実山椒煮
強肴 松茸 鮑茸 平茸 シメジ
 百合根と栗 銀杏の鉄火味噌掛け
鉢肴 カマス 太白白胡麻の油焼き
口替 舞茸と根三つ葉
止肴 比内地鶏とフォアグラ
 海老芋と赤万願寺唐辛子
止椀 独活の西京味噌椀
食事 秋刀魚とイクラ
 生姜牛蒡炊き込みご飯 香の物
水菓子 鳴門金時のアイスクリーム
 巨峰と無花果
大将が入れる煎茶

MARTINI Brut 350mlボトル
 限定コースのウェルカムドリンク
上喜元 純米吟醸 完全発酵
 酒田酒造 山形県 1100円/1合徳利
黒龍 純米吟醸
 黒龍酒造 福井県 950円/1合徳利

* * * * * * * * * *

(過去のレビュー)

和牛リブロースのたまり醤油煮がまさに和洋の良いとこ取り。柔らかいリブロースの仕上がりは、大将の素材への目利き振りと火入れの確かさが滲み出ている。出汁の効いたたまり醤油煮も、軽快な味わいが素晴らしい。肉塊の下には里芋のマッシュポテト、上には黒トリュフと万願寺唐辛子。さらにその上に、カウンターで大将がエスプーマを掛けるパフォーマンス。これぞ和洋の融合、絶妙なバランス感覚。

先付のズワイ蟹とトンブリの組み合わせが斬新で美味しく、食感も楽しい。鰯のつみれはふわふわでシンジョのような舌触り。出汁の味わいとぴったりで、とてもつみれ汁とは思えない美味しさ。頭、身、骨をバラバラにして、それぞれが一番美味しくなるように揚げた吉野川の鮎も素晴らしい。和牛に続く〆めは土鍋炊き込みご飯。烏賊墨で真っ黒な土鍋炊き込みご飯は初めて。水蛸と黒いご飯との組み合わせは、意外に良く合っている。止め椀が白味噌仕立てと言うのも珍しい。丸茄子が美味しい。水菓子の栗のプディングまで、どの皿にも和洋の渾然一体となった香りが漂っている。

9月のお任せコース 14000円
先付 ズワイ蟹と生ホタテ貝のトンブリ和え
 柚子のムースと金粉乗せ
椀物 秋田県産蓴菜と平茸
 鰯つみれ椀
向付 鰹炙り 酒盗のXO醤ピリ辛甘味ダレ
鉢肴 名残鱧と舞茸の生湯葉餡掛け
油物 高知県吉野川産鮎の唐揚げ
口替 マスカットのグラニテ
強肴 和牛リブロースのたまり醤油煮
 黒トリュフと黒アワビ茸
 万願寺唐辛子 エスプーマ掛け
食事 水蛸と烏賊墨の土鍋炊き込みご飯
止椀 丸茄子の白味噌仕立て
香物 水茄子と胡瓜
水菓子 無花果と栗のプディング

MARTINI Brut 350mlボトル
 限定コースのウェルカムドリンク
上喜元 純米吟醸 完全発酵
 酒田酒造 山形県 1100円/1合徳利
黒龍 純米吟醸
 黒龍酒造 福井県 950円/1合徳利

  • カマス 太白白胡麻の油焼き
  • 鱧と松茸 丸茄子 鱧の骨と昆布出汁のお椀
  • 北海道産ホタテ貝と赤貝 鯛の頭の煮凝り掛け

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5位

ラ クレリエール (白金高輪、白金台、広尾 / フレンチ)

2回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥20,000~¥29,999

2017/08訪問 2017/08/07

白金高輪の旬の素材フレンチ

夏には夏の旬。素材を活かす丁寧な料理が素晴らしいエレガントなフレンチ。開業して2年目となり、オーナーシェフの料理は驚くほど進化している。スペシャリテのブータンノワールのミニバーガーは健在。そして夏のスペシャリテは静岡県産の鮎。1年前に比べて鮎の苦味をまったく感じない身の味わい、カリカリふわふわの頭の火入れ、そして北海道産の熊笹から作った茶をソースにしていて、この組み合わせが素晴らしく美味しい。

今回のヴィアンドはフランスからピジョンラミエ。初めに調理前の姿をテーブルで見せてくれるパフォーマンス。本物のジビエはその姿から見るからに美味しそう。メインの皿が楽しみになる。旬のジビエもシェフのスペシャリテ。火入れの柔らかさも申し分ない。肉に詰められたフォアグラ。アーモンドを使い、フォアグラを薄く挟むように詰めることで、伝統的なフォアグラ詰めとは一線を画すモダンな味わいとなっている。ピジョンのソースも美味しい。ボンジリのローストも添えられていて楽しい。

ブータンノワール以外のアミューズも食材を活かす美味しさ。石川県でタイトルを取ったミニトマトの花小町。本田雅弘の作る甘いさが丁度良いミニトマト。中には夏野菜を詰め、噛めば噛むほどミニトマトの甘さと渾然一体となり、口の中であたかもガスパチョのような仕上がりとなる。エイの白身のフリットもほんのりとした甘さが、じわじわと口の中に広がっていく。

夏の玉蜀黍は長野県産のゴールドラッシュ。カクテルグラスにはムースの間にゴールドラッシュの髭茶から作ったジュレが挟まれている。甘い玉蜀黍と軽いジュレの味わいが真夏のカクテルらしい。タルトは焼いた玉蜀黍と蒸した玉蜀黍を合わせた日本料理風。珍しくチョリソーを乗せて夏らしさを上乗せ。

土用丑の日の鰻にはオーストラリア産の黒トリュフ。この時期は南半球がトリュフの旬。乗せたトリュフにトリュフ入りの卵黄、トリュフソースと嬉しいトリュフの3方攻め。鰻とトリュフがとても良く合うことに驚く。コースに追加したアワビ。山口県萩産の大きなアワビが柔らかく火入れされて、軽快な甘さを最高に美味しく楽しめる。肝のソースも夏らしい軽さ。

アオリイカのスープも軽やかな味わい。わずかに上がるイカの香り。焼いたアオリイカとブランダートとスープの相性も良い。ポアソンはクエ。白身を丁寧に丁寧に火入れし、クエの味わいを損なうことなく柔らかく仕上がっている。モンサンミシェルのムール貝との相性も良い。クエは別添えでフリットにもされ、2重に旬のクエを味わえる。デセールもパイナップルのソルベ、シャンパーニュのアイスクリーム、ミルフィーユと夏らしいラインナップ。

ワインは夏の旬に合わせた料理に合う品揃え。今回はシャンパーニュ、白、赤は持ち込み。事前の情報で持ち込みワインに料理を合わせてくれるシェフの心遣いがありがたい。クエに合わせるのはヴィーニュ。銘柄にこだわらず、コストパフォーマンスの良いところを押さえているのが分かる。ディジェスティフもマールやフィーヌを中心に充実している。

場所は東京メトロ南北線、都営三田線の白金高輪駅。白金1丁目交差点方面の3番出口を出て、1丁目交差点を恵比寿方面のバス通りへ。バス通りから恵比寿に向かい徒歩10分。本妙寺の先、白金の丘小中一貫校の手前の信号を右手、白金4丁目商店街方面へ。4丁目商店街のほぼ真ん中、右側のマンション1階にある。駅からはゆっくり歩いて12分。

旬の素材を活かす丁寧な料理と工夫に工夫を重ねた火入れとソース。エレガントな雰囲気を真っ白なインテリアとともに醸し出す料理のビジュアルが美しいフレンチ。この地に開業して3年目となり、オーナーシェフの料理は近所の女性人気を中心に、広く全国からファンが集まるようになった。毎日のように進化を続けるシェフの料理が、これからどうなっていくのか楽しみで仕方がない。

Menu Lumiere 光 6500円
追加料理 アワビ 5000円/個

アミューズ 3種
 ブータンノワールのミニバーガー
 石川県本田雅弘のミニトマト花小町
  夏野菜とパスピエールのガスパチョ風
 エイのフリットと花小町のスプーン乗せ
オードブル
 長野県産ゴールドラッシュのムース
  髭茶のジュレのカクテル
 焼いた玉蜀黍と蒸した玉蜀黍のタルト
  チョリソーとクリーム乗せ
オードブル
 頭・身・尾をそれぞれ火入れした静岡県産鮎
  北海道産熊笹茶のソース
オードブル
 土用丑の日の鰻ロースト
  オーストラリア産黒トリュフ乗せ
  トリュフ入り卵黄 トリュフソース
コンソメ
 アオリイカとブランダード
 アオリイカのコンソメスープ
アワビ
 山口県萩産アワビ
  アワビの肝とブイヨンのソース
ポアソン
 クエのポアレ モンサンミシェルのムール貝
 クエのフリット
ヴィアンド
 ピションラミエのロースト
  フォアグラとアーモンド詰め
  ピジョンの肝のソース ボンジリのフリット
アバンデセール
 パイナップルのソルベ
グランデセール
 ミルフィーユ シャンパーニュのアイスクリーム
カフェ エスプレッソ
プチフール カヌレ マカロン ガレット

2009 CHAMPAGNE BRUT CRISTAL
 LOUIS ROEDERER 3000円/持込抜栓料
2014 Vigna di Milo
 Vigneri 9800円/750mlボトル

Fine de la Marne Gui Charlmagne
 1300円/45mlグラス

別途消費税・サービス料10%

丁寧な素材への愛を感じるエレガントなフレンチ。シェフの経歴がそうさせているのかもしれないと思わせられる。白金の星付きフレンチが移転して、後輩に居抜きで譲ったのがこの店とのこと。オーナーシェフは丸ビル最上階のミシュラン星付きフレンチでシェフを務めた後、表参道や恵比寿の星付きフレンチでスーシェフとして腕を磨き、今回独立してこの店を開業した。シェフのこだわりは素材のセレクション。東京で手に入る素材を活かすのが、東京で店を開くフレンチ本来の姿という信念を持っている。今や東京で手に入らない素材はないと言っても過言ではない中、日本料理に通じる旬の走り、盛り、名残を、東京で味わうならこれと言うお奨めを選ぶことに意義を感じているのかもしれない。

アミューズやオードブルの皿数が多いのもこの店の特徴。季節に合わせて、色々な食材を色々な形で楽しんで貰いたいと言う気持ちが現れている。今回はスペシャリテとも言える鹿のパイ包み焼きが素晴らしかった。この時期は高知県産の夏鹿の引き締まった赤身が旬を感じさせている。パイを切り分ける瞬間のフォアグラとトリュフが合わさった香りが何とも言えない。これぞパイ包み焼きの醍醐味。旬の夏鹿を100%堪能できる。コースのスタートはブータンノワール。パテにして小さなバンズに挟み、ミニバーガーとする楽しい演出。ちゃんと紙袋に入っている。玉蜀黍のタルトは焼いたコーンと煮たコーンの食べ比べ。玉蜀黍の髭も揚げて、余すところなく食べさせる。5層のピュレとムースも玉蜀黍。芯を使ったジュレが掛かり、まさに玉蜀黍を全て使い果たす。

ビジュアルが美しい砂土原茄子とアオリイカ。静岡県産の鮎は頭、身、骨をばらばらにしたあと、それぞれに最良な火入れをし、リゾットを挟んで再構築。鮎ご飯をイメージしているとのこと。鮎の苦味を感じない、今風の鮎ご飯フレンチスタイル。岩牡蠣はぷりぷりの食感のまま、カルボナーラソースをたっぷり身に纏い美味しい。ピュリニーの供には最高の味わい。箸休めか口直しのように石川の本田農園のすっきり甘いトマト。氷に囲まれた夏の味覚。蛸のラビオリにはテーブルでブイヤベースが掛けられる。地中海に浮かぶ蛸の味わいも楽しく美味しい。ポアソンは稀少なエイの頬肉。柔らかくてあっさり、エイのイメージが変わる。ヴィアンドのパイ包み焼きまで、次々に現れる皿。楽しくて、美味しくて、あっという間に時間が過ぎていく。

デセールの前の口直しには、はっかの香り漂う新生姜のジュース。最後まで日本の旬へのこだわりを感じる。デセールは数え切れないくらい何層にも積み重ねられたミルフィーユ。数千層はあるという肌理の細かい仕上がり。カフェはエスプレッソ、ハーブティーなど一通り。プチフールも充実していて、コース全体のコストパフォーマンスは驚異的とも言える。ワインも充実しているが、今回は持ち込み。抜詮料は1本3000円と高くない。ワインに合わせた料理の数々はオーナーシェフやマネージャーのワインへの造詣の深さを伺わせる。ディジェスティフもマール、カルバドス、ブランデーと開いている。いずれも有名どころで申し分ない。

フレンチのイメージの強い、フレンチの激戦区で、新進気鋭のフレンチが集まる白金に、また新しいフレンチがオープンした。オーナーシェフの料理は、この何年か他の店にいる時からずっと食べ続けているが、初めて独立した店での味わいを見る限り、今までいた店とはかなり違う路線を目指しているように思う。それは日本におけるフレンチのあり方を求めているようでもあり、本当は自分らしさを求めているのではないかと感じる、伸び盛りの若者のような良い意味でういういしい、溌剌さと言えるのではないだろうか。


シェフにお任せ 10皿のランチコース 5500円

アミューズ ブータンノワールのミニバーガー
 トマト 軽い味わい
アミューズ 玉蜀黍のタルト 焼いたコーンと煮たコーン 髭の唐揚げ
 5層となった玉蜀黍のピュレとムース 玉蜀黍の芯と韓国茶のジュレ

オードブル 砂土原茄子とアオリイカ ハーブの香り
 石川県産野菜のサラダ 赤紫蘇のソース
オードブル 静岡県産鮎
 頭・身・骨それぞれ火入れしてリゾットを挟んだ鮎ご飯風

オードブル 徳島県産岩牡蠣 カルボナーラソース
オードブル 石川県産本田農園のトマト
オードブル 蛸のラビオリ ブイヤベース

ポアソン 北海道釧路のエイ頬肉
 万願寺唐辛子と石川県産トマト
ヴィアンド 高知県産夏鹿のパイ包み焼き
 フォアグラとトリュフ バルサミコ酢と鹿肉のソース

新生姜のジュース はっかオイル
デセール ミルフィーユ
カフェ エスプレッソダブル
プチフール 4種


持ち込みワイン 抜栓料 3000円/本

NM CHAMPAGNE BRUT Blanc de Biancs GRAND CRU PHILIPPE GLAVIER
2010 PULIGNY-MONTRACHET LA GARENNE Domaine Luis Jadot
1996 CHATEAU DE POMMARD
2004 GEVREY CHAMBERTIN 1er cru Combe Aux Moines V.V.
2000 CHATEAU RAUZAN-SEGLA

Marc de Bourgogne Domaine Comte Georges 1500円/60mlグラス
Calvados Rarete Lemorton Vieux 1300円/60mlグラス
Poire Williams Massenez 1300円/60mlグラス

別途消費税・サービス料10%

  • ピションラミエのロースト フォアグラとアーモンド詰め ピジョンの肝のソース ボンジリのフリット
  • ブータンノワールのミニバーガー
  • 頭・身・尾をそれぞれ火入れした静岡県産鮎 北海道産熊笹茶のソース

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6位

銀座 よし澤 (銀座一丁目、宝町、京橋 / 日本料理)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2016/03訪問 2016/04/05

銀座で会席料理の極み

ミシュランで星を取った大将がその本店を弟子に任せ、女将と一緒に同じ銀座で新たに開業した2号店。自分たちの名前を付けるほどの思い入れを感じる店となっている。鰹の藁焼きで人気を得た本店に対して、この店はより本格的な日本料理を標榜している。特に出汁への拘りが凄い。昆布、鰹節、鮪節の3種類を丁寧に引いて、料理ごとに絶妙なブレンドとなっている。伝統的な会席料理の流れを意識しながらも、京料理とも江戸の料亭料理とも異なる、新しい東京の日本料理と言えなくもない。旬の魚、野菜を、季節の香りを大事にしながらコースに仕立てる。藁焼きで人気が出ただけのことはあり、香りを大切にする火入れが上手い。魚、野菜だけではなく、肉料理も希望があればコースに加えることができる。魚がちゃんと焼ければ、当然、肉もちゃんと焼けると大将は笑う。今回は佐賀牛のサーロインをコースに加えて貰った。刺しが入り過ぎずに、赤身の肉自体が柔らかくて旨みたっぷり。確かに火入れの具合が文句なしで美味しい。肉には海老芋が添えられていて、余分な脂を吸い取ってくれるような気がする。コースの始めには、脂の乗ったノドグロ。軽く炙った握りが出る。まずはお腹が空き過ぎていてはいけないと大将は言う。椀物の出汁の美味しさに驚く。柔らかな蛤だけでも美味しいが、若布のシンジョが寄り添い、何と言っても上品で複雑に奥深い出汁の香りと味わいに感激する。藁焼きはやらないつもりだったが、客がみな声を揃えて藁焼きはやらないのかと聞くので、新しい藁焼きに挑戦したとのこと。鰹に代わってサワラの藁焼き。大将は本店の鰹より、藁焼きにはこのサワラの方が合っていると言う。白身に近い柔らかであっさりしたサワラは、藁の香りが鰹以上に合うのかもしれない。サワラの旨みが最大限に活かされているように思える。平貝の大きな黒い殻には、平貝の造りと蛍烏賊に旬の色々な野菜を組み合わせている。走りの筍、蕨にエンドウ豆が造りに合うとは知らなかった。春の魚貝と春の野菜の競演が、綺麗に光る大きな貝殻の上で繰り広げられている。八寸のバリエーションが充実している。金目鯛の茶碗蒸しが大胆。上には蕗の薹のジュレがたっぷりと掛かっている贅沢な茶碗蒸し。赤貝と菜の花の組み合わせもいかにも春らしい。白魚の白扇揚げがさくさく、ほくほくで頬が落ちる。金時人参はカステラにされ、のし梅はクリームチーズが挟まれていて楽しい。イイ蛸と花山葵の組み合わせも文句なし。焼き物は青森県のサクラ鱒。軽い味わいの木の芽焼きは、火入れの柔らかさが素晴らしい。ほろほろの赤身が舌の上で蕩ける。サーロインの後の〆めは、何とクエ。クエの味が良く出たスープとともに、最後まで贅沢な気分に浸っていられる。この店のスペシャリテは本店同様、藁焼きとご飯。香の物が入る瓢箪型の器を開けると、牛蒡味噌漬けを始めとする美味しそうな漬物が並ぶ。京料理に欠かせない雑魚山椒も添えられる。しかし主役はやはりご飯そのもの。土鍋で炊くご飯は、今や山形名物と言っても過言ではない、つや姫。本当につやつやしている。しかも4段階のご飯を食べ比べさせてくれる。時間とともに変化する米の味が、それぞれ全く違う特徴があって、それぞれ全く違う美味しさがあることを知って欲しいと大将は言う。まずは炊き上がる前のアルデンテ。芯はあっても、だからこそ余計にもっちりした表面の甘い味わいがはっきりと分かる。続いては炊きたての光り輝くご飯。ほくほくしている。そして丁度良く蒸らしたご飯らしいご飯。一番甘い。最後におこげ。香りが堪らない。水菓子も酒糟のアイスに大吟醸のジュレと日本酒と合わない訳がないバリエーション。最後のわらび餅まで、全てが流れるように構成されている。日本酒も大将にお任せで料理に合わせて、色々と出して貰える。すっきりした日本海側から、しっかりとした東北、西日本の蔵元まで味わいの幅は広い。丁寧で上品、複雑さもある出汁の料理に合わせて、上品なふくよかさが特長となる日本酒を選んでいるように思える。場所は東京メトロ有楽町線、銀座一丁目駅。10番出口を出て左手、中央通から昭和通に向かう途中を左に曲がった左側。銀座らしいブティックの前を地下に降りる階段がエントランス。銀座一丁目のほぼど真ん中にこの店はある。割烹らしい白木のカウンターに6、7席。個室も4人、6人の2室があり、本店よりも多少広くなった。個室は接待の社用族も多いが、カウンターでの大将との会話が楽しい寛げる店となっている。日本酒を頼むと、最初に猪口を選ぶときに猪口の中に小さな神様の人形が入っていると、当たりと言われ土産を貰える。強面の大将が、カウンターで客に寛いで貰いたいがために、一生懸命努力しているのが分かって微笑ましい。銀座一丁目という銀座ではある意味特徴ある店が集まる場所で、新しい日本料理を目指す大将が、美人女将と頑張る2号店。本店の人気を上回るのは、もう時間の問題だけかもしれない。

16800円のコース
凌ぎ ノドグロ炙りの握り
椀物 蛤のお椀 若布のシンジョ
藁焼 サワラの藁丸焼き
 大蒜 生姜 新玉葱
向付 平貝の殻に平貝と蛍烏賊
 筍 薇 エンドウ豆 春野菜
八寸
 高知産金目鯛の茶碗蒸 蕗の薹ジュレ
 赤貝の菜の花寄せ 芥子味噌
 白魚の白扇揚げ
 金時人参のカステラ風
 のし梅とクリームチーズ
 イイ蛸 花山葵のジュレ
鉢肴 青森産サクラ鱒 木の芽焼き
 新玉葱焼き
強肴 佐賀牛のサーロイン 海老芋
 バルサミコ酢
止椀 クエのスープ
香物 牛蒡味噌漬け 蕗のきゃらぶき
 紅芯大根の甘酢漬け 糠漬け
雑魚山椒
食事 つや姫の土鍋炊きご飯
 4種類の火入れ
 アルデンテ 炊きたて 蒸して おこげ
水菓子 酒糟のアイスと湯葉 大吟醸のジュレ
わらび餅

料理に合せた大将お奨めの日本酒
 4000円程度/1人
飛露喜 特別純米 無濾過生原酒
 廣木酒造店 福島県 60ml/猪口
八海山 越後で候 しぼりたて生酒
 八海醸造 新潟県 60ml/猪口
松の司 楽 しぼりたて 純米吟醸
 松瀬酒造 滋賀県 60ml/猪口
天寶一 辛口純米千本錦 無濾過本生
 天寶一 広島県 60ml/猪口
写楽 初しぼり 純米酒 H27BY
 宮泉銘醸 福島県 60ml/猪口

別途消費税・サービス料10%

  • 強肴 佐賀牛のサーロイン 海老芋 バルサミコ酢
  • 藁焼 サワラの藁丸焼き 大蒜 生姜 新玉葱
  • 向付 平貝の殻に平貝と蛍烏賊 筍 薇 エンドウ豆 春野菜

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7位

和しょく えびはら (牛込神楽坂、神楽坂、飯田橋 / 日本料理)

3回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2018/01訪問 2018/01/23

牛込神楽坂駅前の日本料理

出汁と炭火焼きが素晴らしい牛込神楽坂の会席料理店。京懐石の流れを汲み、丁寧に引かれた出汁と備長炭による絶妙な火入れが旬の食材を引き立てている。大将と女将の誠実さを、そのまま絵にしたような料理の数々が優しい味わい。こだわり抜いた器たちが、料理と一体となって美しいビジュアルを織りなしている。お任せコースは毎回手の込んだ八寸、旬の向付、一工夫された土鍋炊き込みご飯などを季節ごとに楽しめる。引き算の美学とも言える日本料理を実感できる店となっている。

今回は向付の刺身が素晴らしかった。佐渡の寒鰤はまさに大トロ。真っ白な白身が舌の上で蕩けていく。三浦のアオリイカのねっとりとした食感と仄かな甘味が美味しい。北海道産のホッキ貝は軽く表面を炙って旨みが倍増。三者三様の刺身のアンサンブルに感激できる。付け合せは聖護院蕪の拍子木切り。瑞々しい聖護院蕪が贅沢で静岡産の山葵に合う。先付は真鱈の白子。揚げ出汁となった蕩ける白子にスタートからうっとりする。米崎産の生牡蠣もぷりっとしていてミルキー。

この店のスペシャリテとも言える八寸。今回は1月らしい華やかな彩り。柔らかいあん肝、ふっくらした栗の渋皮煮、ぷりぷりの車海老旨煮など食感のリズム感が軽快。鰊の昆布巻きや菜の花のおひたし、河豚の煮凝り、胡桃きんとん、数の子明太子に鰯の梅煮と、正月と春を一気に感じる品揃えも愉しい。胡桃入りのきんとんや明太子が乗った数の子など、斬新な組合せが美味しい。

向付に続く凌ぎは揚げ餅。店内で作った自家製のカラスミを塗した揚げ餅が止まらない美味しさ。岡山のサワラは柚子味噌焼き。時間を掛けて備長炭で火入れしたサワラがふわふわで白身らしいあっさりした美味しさと、柚子味噌のバランスが絶妙。鴨つくねには生湯葉と九条葱を合わせる。これも複雑に出汁が絡んで日本酒のとも。〆の食事はイケメンの真鯛。水菓子の紅マドンナはまるでゼリーのような食感で甘さに驚く。

今年最初の日本酒は新政ナンバー6の2017年頒布会向けG-type。すっきりした口当たりとしっかりした日本酒らしい味わいが正月らしい。メニューには純米、純米吟醸、純米大吟醸などが全国の銘醸から常時数種類ずつラインナップされている。特に大将や女将が気に入ったニッチなセレクトが嬉しい。今回も茨城の水府自慢や島根の出雲富士など、地元で人気の銘柄を掘り出してきていて感心する。

場所は都営大江戸線、牛込神楽坂駅。A3出口を大久保通りに出た目の前右手のビル1階。駅の出口から徒歩0分という至近。店の入り口上に掛けられた大きな木の看板に、平仮名で縦に書かれた店名が目印。カウンター6席とテーブルが3卓。しかし客それぞれに合わせて丁寧に料理を造ることを信条とする大将は、予約を1日2、3組しか取らない。厨房の良く見えるオープンカウンターの居心地が良い。インテリアはシンプルで心和む雰囲気。

毎朝築地で仕入れる目利き大将の料理は、丁寧に引いた出汁と備長炭による絶妙な炭火の火入れ、こだわりの器を合わせた料理の美しいビジュアル。旬の食材を季節感たっぷりに香りと味わい、食感や見た目で縦横無尽に表現する誠実を絵に描いたような大将の店。大将と鴛鴦夫婦の見本のような女将が選ぶ日本酒もかなり楽しく美味しい。 神楽坂好き、神楽坂通の客たちにとっての自分使いの店として、しっかりと神楽坂に根付いているように感じる店でもある。

お任せコース 8000円
先付 真鱈白子の揚げ出し
強肴 岩手県陸前高田市米崎産
 広田湾の生真牡蠣
八寸 あん肝 栗の渋皮煮 車海老の旨煮
 鰊の昆布巻き 菜の花のおひたし
 河豚の煮凝り 胡桃きんとん
 数の子明太子 鰯の梅煮 
向付 新潟県産寒鰤 佐渡の鰤大トロ
 神奈川県三浦産アオリイカ
 北海道産ホッキ貝の炙り
 聖護院蕪の拍子木切り
 辛味大根 山葵
凌ぎ 自家製カラスミの揚げ餅
鉢肴 岡山県産サワラの柚子味噌焼き
 紫花豆 蓮の酢漬け
椀物 鴨つくねの小鍋仕立て
 生湯葉と九条葱 原木椎茸
食事 真鯛の土鍋炊き込みご飯
 ナメコの赤出汁 香の物
水菓子 群馬県産弥生姫 紅マドンナ

新政 No.6 G-type 2017年特別頒布会
 新政酒造 秋田県 サービス/1合徳利
SUIHUJIMAN10号 水府自慢 純米大吟醸
 明利酒類 茨城県 1200円/1合徳利
IZUMOHUJI 出雲富士 純米吟醸
 富士酒造 島根県 1200円/1合徳利

別途消費税・サービス料10%

牛込神楽坂で一番の日本料理店。旬の素材にこだわり、丁寧に引かれた出汁、備長炭による絶妙な炭火の火入れが素晴らしい。まさに誠実を絵に描いたような料理の数々。器にも凝り、料理と一体となったビジュアルも美しい。大将と女将、夫唱婦随のもてなしも居心地満点。お任せコースは先付から水菓子まで十分な皿数と手抜きのない内容がコストパフォーマンス抜群。女将が選ぶ料理に合わせた日本酒のバリエーションも申し分ない。

今回は秋の旬を絵画にしたような八寸が素晴らしかった。エボ鯛の時間を掛けた炭火焼は、自家製のカラスミをたっぷり塗して焼かれ、あっさりした旨みの柔らかな白身とカラスミの塩味がぴったり。オオマサリやキヌカツギの美味しさも、粟麩田楽や蓮根の食感のコントラストも楽しく、何より添えられた揚げた稲穂と合わせたビジュアルが美しい秋の風景。ひとつひとつの素材を大切に扱う大将の気持ちが伝わる。

先付はズワイ蟹の小椀。京小蕪と花びら茸との食感の組合せが上品。菊花の淡い黄色が、その名の通り味わいにも花を添えている。煮物は白バイ貝。この時期のバイ貝の旬の濃厚さ。焼物は今や希少価値の本シシャモ。北海道産の雄は締まった身の味わいが懐かしい。向付はカワハギの肝和えが嬉しい限り。ホッカイシマエビの軽い甘さ、スミイカのねっとりした甘さの対比も面白い。ツブ貝も秋らしい旨み。添えられたシントリ菜がさっぱりしていて良いアクセント。

凌ぎは鯖鮨。分厚く切られた〆鯖と生姜のコンビネーションが鉄板の組合せ。そして今回のメインの一つは松茸の土瓶蒸し。松茸の香りも秋らしさとは言え、出汁のしっかりした松茸そのものの味わいが素晴らしい。松茸とハモと真鯛から取った出汁が美味しくないはずがない。贅沢この上ない土瓶蒸し。食事の土鍋炊き込みご飯も、旬の丹波シメジ。銀杏とシメジの香り、味わいも秋の美味しさ。甘いシャインマスカットとあっさりしたラフランスまで全く手抜きがない。

日本酒は純米、純米吟醸、純米大吟醸などが全国の銘醸から常時数種類ずつラインナップされている。佐賀の竹の園はちょっと変わったぱんだの旅。新潟の高千代も新潟らしくない、しっかりした日本酒らしい味わいのかなりの辛口。メニューにない女将のお勧め裏メニューも楽しい。今回は栃木で江戸時代から続く蔵元、仙禽。ブルゴーニュのドメーヌのように麹米、酒米の全てを特定の田圃のものを、自ら管理しながら使用するこだわりの酒造。2017年の無垢が切れのあるコクの味わい。

場所は都営大江戸線、牛込神楽坂駅。A3出口を大久保通りに出た目の前右手のビル1階。駅の出口から徒歩0分という至近。店の入り口上に掛けられた大きな木の看板に、平仮名で縦に書かれた店名が目印。カウンター6席とテーブルが3卓。しかし客それぞれに合わせて丁寧に料理を造ることを信条とする大将は、予約を1日2、3組しか取らない。厨房の良く見えるオープンカウンターの居心地が良い。インテリアはシンプルで心和む雰囲気。

京懐石の流れを汲む神楽坂では貴重な日本料理店。毎朝築地で仕入れる目利き大将の料理は、丁寧に引いた出汁と備長炭による絶妙な炭火の火入れ、こだわりの器を合わせた料理の美しいビジュアル。旬の食材を季節感たっぷりに香りと味わい、食感や見た目で縦横無尽に表現する誠実を絵に描いたような大将の店。大将と鴛鴦夫婦の見本のような女将が選ぶ日本酒もかなり楽しく美味しい。 神楽坂好き、神楽坂通の客たちにとっての自分使いの店として、しっかりと神楽坂に根付いているように感じる店でもある。

お任せコース 8000円
先付 京小蕪と花びら茸 ズワイ蟹と菊花
強肴 白バイ貝の旨煮
鉢肴 北海道産本シシャモ雄の土佐酢〆焼き
 銀杏の素揚げ
向付 カワハギの肝和え 黒七味掛け
 増毛産ホッカイシマエビ シントリ菜
 ツブ貝 スミイカ
凌ぎ 〆鯖と生姜の鯖鮨
蒸物 松茸の土瓶蒸し ハモと真鯛
八寸 エボ鯛の自家製カラスミ焼き
 富士宮産オオマサリ キヌカツギ
 粟麩の田楽 蓮根 稲穂揚げ
食事 丹波シメジと銀杏の土鍋炊き込みご飯
 ナメコの赤出汁 香の物
水菓子 シャインマスカットとラフランス

2017 モダン仙禽 無垢 純米大吟醸
 せんきん 栃木県 1500円/1合徳利
竹の園 ぱんだの旅 誕生 純米吟醸
 矢野酒造 佐賀県 1200円/1合徳利
2017 高千代 CHAPTER SIX 純米吟醸
 高千代酒造 新潟県 1300円/1合徳利

別途消費税・サービス料10%

数ある神楽坂の日本料理店の中で唯一と言っても良い、本物の茶懐石の流れを汲む数少ない経歴の大将の店。元禄時代から3百年近い歴史を持つ茶懐石の専門店で修行した大将の料理は、素材そのものの味わいを最大限に引き出す、まさしく引き算の料理。丁寧な鰹出汁をベースとして、火入れに徹底して気を遣い、何より素材の選択に目利き振りを発揮する。今回の明石の真鯛も、見事に食べ頃となった軽い熟成感が、旨みたっぷりで素晴らしい。甘さいっぱいの三浦のヤリイカとの対比にうっとりとする。そえられた芹のお浸しも上品な仕上がり。料理の構成は茶懐石にこだわらない、一般的な会席料理らしい流れるように進むお任せコース。車海老の入った聖護院蕪の蒸し物も、出汁の絶妙な味わいに感動する。山形産のさむらい椎茸の火入れは、網の高さを微妙に見極めて、低温で均一に仕上げている。待っているカウンター席まで届く椎茸の香りに、料理が待ち切れなくなってしまう。椀物は銚子産の蛤シンジョ。旬の走りの蛤と菜の花の組み合わせに、房総半島の春の光景が思い浮かぶ。蛤そのものの出汁の味わいが見事。蕪蒸しにシンジョ、汲み上げ湯葉が京の香りを運ぶ。初筍とニシンの組み合せも日本酒を進める。子持ち公魚の火入れも丁度良い香ばしさ。花豆の柔らかさにも料理の丁寧さを感じる。揚げ物は蕗の薹の天婦羅とオコゼのあられ揚げの組み合せ。食感、香り、味わいのコンビネーションが素晴らしい。〆は小柱の土鍋炊込みご飯。土鍋らしいおこげの香りが堪らない。苺は弥生姫、柑橘はせとか。最後まで息をつかせぬ完璧な料理。文句のつけようがない。日本酒は北から南まで、最近の人気酒造を一通り揃えている。料理の素材同様、季節の日本酒に力を入れる酒蔵を見つけてもいる。料理に合わせてお勧めの日本酒も用意され、日本酒を選ぶだけでも楽しめる。場所は都営大江戸線、牛込神楽坂駅。A3出口を大久保通りに出た目の前右手のビル1階。駅からは徒歩0分という至近。店の入り口上に掛けられた大きな木の看板に、平仮名で縦に書かれた店名が目印。カウンター6席とテーブルが3卓。しかし客それぞれに合わせて丁寧に料理を造ることを信条とする大将は、予約を1日3、4組しか取らない。厨房の良く見えるオープンカウンターの居心地が良い。女将の柔らかい人当たりに癒される。インテリアも割烹らしい飾らなさに心和む。毎朝築地に通う大将の素材への目利きと、素材そのものの良さを引き出す出汁の料理と火入れの妙。神楽坂の奥の深さを感じさせる名店に出会ってしまった。

お任せコース 8000円
先付 聖護院蕪と車海老の蕪蒸し
前菜 山形産さむらい椎茸焼き
椀物 銚子産蛤のシンジョ 菜の花
向付 明石の真鯛 三浦のヤリイカ
 芹のお浸し
小鉢 汲み上げ湯葉
強肴 ニシンの炊き合せ
 広島産初筍 寒締ホウレン草
鉢肴 琵琶湖産子持ち公魚
 ゴールデンビーツ 花豆
油物 蕗の薹 オコゼのあられ揚げ
食事 小柱の土鍋炊込みご飯
 なめこの赤出汁 香の物
水菓子 弥生姫 せとか

彌右衛門 別品 純米酒
 大和川酒造 福島県 1200円/180ml徳利
伯楽星 純米吟醸
 新澤醸造店 宮城県 1300円/180ml片口
鍋島 純米吟醸 三十六萬石
 富久千代酒造 佐賀県 1200円/180ml片口
醸し人九平次 火と月の間に 純米吟醸
 萬乗醸造 愛知県 1200円/180ml徳利
新政 新年純米しぼりたて生
 新政酒造 秋田県 1500円/180ml徳利

別途消費税・サービス料10%

  • 新潟県産寒鰤 佐渡の鰤大トロ 神奈川県三浦産アオリイカ 北海道産ホッキ貝の炙り 聖護院蕪の拍子木切り 辛味大根 山葵
  • 真鱈白子の揚げ出し
  • あん肝 栗の渋皮煮 車海老の旨煮 鰊の昆布巻き 菜の花のおひたし 河豚の煮凝り 胡桃きんとん 数の子明太子 鰯の梅煮

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8位

月よみ庵 (飯田橋、牛込神楽坂、神楽坂 / ビストロ、ダイニングバー、日本酒バー)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2016/03訪問 2016/04/02

神楽坂に日本酒のための割烹

月読みと書いてツキヨミまたはツクヨミと読む神様がいる。天照大神の弟でありスサノオの兄となる日本創生の3大神。その神様が日本酒の神様に転向したのだろうかと思わせるような店名の割烹が、昨年神楽坂の街に誕生した。日本酒のための料理でミシュランの星を持つ、同じ神楽坂の名店の2号店。しかし本店よりも料理の質が高い。素材の選択も、調理の手間の掛け方も、本格的な日本料理。日本酒を美味しく飲める素材の選択や料理のアレンジも、決して本店に負けていない。しかも日本酒のための料理ではなく、本店以上に主役が料理となっていて、日本酒を引き立て役にしている。料理のコースは8千円からとなるが、料理に合わせた日本酒が出る1万5千円のマリアージュコースもある。また客の要望に合わせた、食事のないコースも予算に応じて組んでくれる。その場合、料理の内容や皿数はその日の仕入れによるため、同じ予算でも高級食材の場合は皿数が少なくなる場合もある。今回の造りは桜鯛が旬の味わい。ふっくらと身の引き締まった桜色の刺身が旨みたっぷりで美味しい。鰹は炙った皮と赤身が別々になっていて面白い。一緒なら普通のタタキかもしれないが、炙られて脂の染み出た皮の部分と、脂の乗った赤身そのものを分けて食べられるのは、上品な味わいを楽しめて良いかもしれない。八寸は菜の花と蛍烏賊の組合せが、酢味噌と合っていて面白い。細魚は根芋と芹のあっさりトリオが、蕗や独活と共にしっかりした味わいの日本酒を飲みたくさせる。馬刀貝の磯醤油も日本酒が止まらなくなる。揚げ出し豆腐は蓬を使っているところが珍しい。蓬の香りを活かす、軽い出汁の味付けも素晴らしい。出汁を引く手間を惜しんでいない。筍とカマスに蕗の薹を加えた天麩羅も、口の中が春爛漫になり日本酒との組合せを楽しめる。そして春と言えば鰆。幽庵味噌が魚そのものの味わいを邪魔しない丁度良い塩梅で、火入れ加減も申し分のない均一な柔らかさ。時間を掛けて熾した炭火と魚の距離や火入れの時間も絶妙となっているのが分かる。日本酒はミシュランの星を取った本店の燗付師が、この店の開業と共にこちらに移ったとのこと。常温は片口、燗酒は徳利で出される。また料理に合わせて肌理細やかに日本酒を選べるよう、日本酒は100ml単位となっている。乾杯は秋田の新政が特別に造ったという亜麻猫スパ-ク。うすにごりの微発泡が乾いた喉を潤す。料理に合わせる日本酒は拘りが凄い。八寸の素材の違いによって2種類、刺身の白身、赤身に2種類、その他皿ごとに最も合う日本酒を、最も合う温度にして提供する。ワインのソムリエと全く変わらない気遣いの燗付師の匠技に感動する。場所はJR、東京メトロ、都営地下鉄の飯田橋駅。神楽坂下の交差点から神楽坂を上って直ぐの右側。袋小路の奥の左側、新しいビルの2階にある。外階段を上ると割烹らしいエントランス。カウンター席のみの本店と違い、テーブル席も数席用意されている。カジュアルなインテリアは気軽に日本料理と日本酒を楽しめる割烹らしい割烹。大将も燗付師も柔らかい物腰で、気兼ねのないサービスが心地よい。しっかりとした日本料理の基本をベースに、その日の食材に合わせてアレンジした、日本酒を美味しく飲めるコースの構成。特に食事のない料理のお任せコースは、その日の仕入れ具合によって、日本酒を意識し過ぎることなく、流れるように構成されている。そしてその料理に合わせる日本酒は、この店の燗付師に任せておけば間違いがない。温度まで気遣って、一つ一つの食材に合わせてピタリと寄り添うものを選んで貰える。日本酒好きで神楽坂好きなら、この店を気に入らない理由が何一つ見当たらない。

お任せコース 5000円
八寸
 菜の花と蛍烏賊酢味噌
 細魚 根芋と芹
 蕗と独活の白掛け
 エンドウ豆の玉締め
 馬刀貝の磯醤油
椀物 蓬豆腐の揚げ出し
向付 桜鯛と鰹の造り
油物 筍とカマスの天婦羅
鉢肴 鰆の幽庵味噌焼き

新政 亜麻猫 スパーク 特別純米生酒
 新政酒造 秋田県 1100円/100ml片口
瀧自慢 滝水流 辛口一徹純米
 瀧自慢酒造 三重県 700円/100ml片口
亀治 好日 純米吟醸 うすにごり
 鯉川酒造 山形県 800円/100ml徳利
錦屋 情熱 純米吟醸
 金の井酒造 宮城県 950円/100m片口
隆 白ラベル 純米吟醸 生 足柄若水
 川西屋酒造店 神奈川県 800円/100ml片口
玉櫻 純米近畿33号65
 玉櫻酒造 島根県 700円/100ml徳利
睡龍 生酛のどぶ 原酒瓶燗
 久保本家酒造 奈良県 850円/100ml片口
日置桜 鍛造生酛 強力 純米 25BY
 山根酒造場 島根県 950円/100ml徳利

別途消費税

  • 向付 桜鯛と鰹の造り
  • 八寸 菜の花と蛍烏賊酢味噌 細魚 根芋と芹  蕗と独活の白掛け エンドウ豆の玉締め 馬刀貝の磯醤油
  • 椀物 蓬豆腐の揚げ出し

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9位

チャタンハーバーブルワリー&レストラン (北谷町 / イタリアン、アメリカ料理、ステーキ)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2016/04訪問 2016/04/10

沖縄チャタンのマリーナリゾート

北谷町に新しく開発中のマリーナリゾート。北谷ヒルトンの海岸側に新設した大型クルーザー用の桟橋に隣接するエリアに、ビアレストランとビアバーがオープンした。このビアレストランは同じ建物の中に大きなビール醸造タンクを設置し、沖縄で初めての本格的な地ビール工場を併設している。マリーナらしいシンプルモダンな倉庫をモチーフにした洒落た建物が目を引く。レストランのメニューは地ビールを美味しく飲むためのレパートリーが充実している。やはりステーキが美味しい。ポークが定番となっているが牛肉もある。粒マスタードソースがしっかりした味付けで、さすが沖縄一番のホテルグループが経営するだけのことはあり、料理の質が全体的にかなり高い。シャルキュトリーの盛合せも、ワインが合わせられるレベル。魚介はムール貝のクラフトビール蒸しがスペシャリテ。季節の旬の素材も日によって揃えている。ビールと言えばスパイシーバッファローウィングも定番。甘辛な塩梅が地ビールを進める。クラフトビールは定番が5種類、その日のオリジナルビールが2種類の計7種類。定番の5種類は、ラガー、ヴァイツェン、ペールエール、インディアペールエール、スタウト。いずれも出来たての地ビールらしい切れ味で、醸造タンクを眺めながら、ますます美味しい気分に浸って飲むことができる。初めてならば、この定番5種類を飲み比べられるテイスティングセットが店のお勧め。100cc程度の小グラス5杯は、あっと言う間に飲めてしまう。窓の外にはこの店が保有する60人乗りの大型クルーザー。食事の前にサンセットクルージング。ビアバーの奥を抜けるとクルージングのフロントとなっていて、待合のソファーがある。ここで申し込み手続きを行い、いざレストランの目の前の桟橋から海に。ヤンマー製のツインエンジンは、何と30ノット、時速にすると60キロ近い高速運転が可能。風を切って夕闇の海へ。近海をぐるっと一周して戻ると、どっぷりと沈んだ太陽のあとに、この店の明かりが輝いて見える。場所は基地の街、嘉手納と宜野湾に挟まれた北谷町。那覇からはルート58を北に15キロ。車で30分ちょっとの距離。ヒルトン沖縄北谷リゾートの隣の区画にある。ほとんど宣伝をしていない地ビール工場併設のレストランバー。にも関わらずオ-プン以来、口コミだけで大盛況となっている。基地に囲まれた場所柄からか、宣伝をしていないためか、今現在、客の6、7割はアメリカ人。ビール好きのアメリカ人たちが口コミだけで集まってくほど、この地ビールの完成度は高い。こんな素敵なマリーナやレストランが出来て、素晴らしい地ビールが飲めるようになれば、今後、このエリアに人が集まってくるのは間違いない。地元の人たちの憩いの場としてだけではなく、ホテルや住宅開発をさらに進め、バスやタクシーの公共交通機関を充実させて、日本の誇る新しい観光名所となるよう、官民をあげて頑張って貰いたいもの。

シャルキュトリー盛合せ 1500円
 サラミ 生ハム各種
モッツァレラチーズとトマトのカプレーゼ 800円
赤座海老のロースト 時価
ムール貝のクラフトビール蒸し 800g 2000円
スパイシーバッファローウィング 1000円
 ブルーチーズディップとセロリスティック
ポークのステーキ 1800円
 マッシュポテト 粒マスタードソース

クラフトビール
テイスティングセット 1250円
 ラガー
 ヴァイツェン
 ペールエール
 インディアペールエール
 スタウト

  • ポークのステーキ マッシュポテト 粒マスタードソース
  • シャルキュトリー盛合せ
           サラミ 生ハム各種
  • スパイシーバッファローウィング ブルーチーズディップとセロリスティック

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10位

銀座 座屋 (銀座一丁目、宝町、東銀座 / 日本料理、日本酒バー、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2016/06訪問 2016/06/30

銀座で人気の藁焼き

銀座で人気の藁焼きの店。高知に本店があり、神戸、銀座、マドリードに店舗展開している。土佐料理と言うよりは、土佐の食材や日本酒を、オーソドックスな日本料理、京料理に近付けて再構築しているところが特徴の店となっている。鰹の藁焼きは一般に知られる鰹のタタキとは対極をなすような上品な味わい。大蒜や塩、山葵が別添えとなっていて、ビジュアルも香りも味わいも、藁の香ばしさを纏った上流階級の鰹という様相。火入れ加減が絶妙で柔らかく、旨みも包み込んでいる。

先付は白子と若布。白子はやはり真鯛に限る。濃厚さと軽快な口当たりのバランスが素晴らしい。アスパラガスとスナップエンドウの食感のコントラストも白子との相性が良い。天婦羅は白魚とタラの芽。軽い塩と脂も好感。真鯛の熟成も食べ頃でアオリイカの甘さも丁度良い。椀物は旬の九十九里産のしっかりと身の引き締まった蛤。丁寧に引かれた出汁が美味しい。蓬麩との組合せが珍しい。青森名産の桜鱒は利休焼きにされ、濃厚な味わいの蛍烏賊と合わせている。濃厚な土佐の日本酒との組合せも面白い。合馬産の筍も旬の味わい。これも出汁の味わいで楽しむことが出来る。

食事は四国自慢の米、ヒノヒカリの食べ方を3通り。ヒノヒカリは水に拘った四万十川源流の米を仕入れている。初めに土鍋炊き込みご飯を、炊きたての熱いまま、米そのものの味を確かめるように出される。次に高知自慢の鶏、土佐次郎の玉子掛けご飯。卵黄がプリッとして真ん丸。簡単には崩れない。この土佐次郎の卵を味わい切るには、10回以上混ぜてはいけないとのこと。食事の最後はおこげを海苔の手巻きに。同じヒノヒカリを3種類で味わうことが出来る。香の物には雑魚山椒が添えられ、京料理の雰囲気は十分。水菓子も、白玉、アイス、トチオトメとこれでもかという組合せ。最後まで楽しむことができる。

日本酒は土佐の日本酒、全18蔵の銘酒を揃えている。主には純米大吟醸か純米吟醸。京料理風のコース構成とは言え、やはり土佐の鰹には土佐の日本酒が合うらしい。どちらかというと濃厚なしっかりした味わいの日本酒が多い。

場所は銀座2丁目。東京メトロ有楽町線の銀座一丁目駅の有楽町を背にした一番前、昭和通り方面に出る。昭和通り向かった次のブロック。駅を出てからは徒歩1分の一等地。通り沿いのビルの中の、少し奥まったところに地下に降りるアプローチ階段がある。インテリアはやや照度の低いシックな雰囲気。京風と言うよりは、やはり土佐らしさが漂っている。カウンターの目の前では大将が藁焼きのパフォ-マンス。やはりこの店はこれを見ないといけない。

大将は職人肌で自信に満ち溢れた口調で、料理の説明や店の話をしてくれる。無駄のないキビキビした動きを見ているだけで、料理が美味しく思えてくる。オーセンティックな会席コースに土佐の食材と、土佐の日本酒、土佐の雰囲気を加えた店。銀座にオープンして8年、改装したての高知の本店は開業10年。マドリードに4店舗目を出店し、まだまだ勢いを増す座屋グループ。日本文化を世界に広めるためにも、これからも頑張り続けて貰いたいと思う。


お任せコース 15000円

先付 真鯛の白子と若布
 アスパラガスとスナップエンドウ
油物 白魚とタラの芽の天婦羅
向付 真鯛 アオリイカ
藁焼 鰹の藁焼き
 大蒜 塩 山葵添え
椀物 千葉県産地蛤 蓬麩
 那須高原産鍵蕨
鉢肴 青森県産桜鱒の利休焼き
 蛍烏賊
強肴 福岡県合馬産筍
食事 土鍋炊き込みご飯
 四万十川源流のヒノヒカリ
止椀 味噌汁 香物 雑魚山椒
食事 玉子掛けご飯
 高知県産地鶏土佐次郎の卵
食事 おこげの海苔巻
水菓子 白玉 大納言小豆 トチオトメ
 アイスクリーム スカイベリーソース


酔鯨 吟醸 しぼりたて新酒 季節限定生酒
 酔鯨酒造 高知県 1700円/1合徳利
南 玉乃井 純米吟醸
 南酒造場 高知県 1600円/1合徳利
美丈夫 純米大吟醸 吟の夢
 浜川商店 高知県 1500円/1合徳利
菊水 純米大吟醸
 菊水酒造 高知県 1100円/1合徳利

別途消費税・サービス料10%

  • 鰹の藁焼き 大蒜 塩 山葵添え
  • 真鯛 アオリイカ
  • 青森県産桜鱒の利休焼き 蛍烏賊

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