30回
2023/02 訪問
客を想い流儀を極める @代々木八幡
塩を使わずに、出汁と素材が持つ自然の味だけで究極の美味を追求する。
しかも、最上等な京料理のレベルで。
毎日市場に通って得る情報の確度や目利きの素晴らしさもある。だが、捌いてみないと分からない素材のコンディションもあるだろう。出汁についても、同じように作っても出来が異なる博打性がつきまとう。
開店時間が迫る中、究極の判断に迫られ続ける。それは自分との戦い。それを毎日毎日繰り返している。
まるで楽しんでいるような、大将の笑顔に刻まれた皺にはそんな相が見える。
当日の献立も、後述するこしあぶらとフグの白子以外、全く塩を使っていないそうだ。
随分と酒を飲んでも次の日に辛くない。
懐石の流れを疲れずに、胃もたれせずに楽しむことが出来る。もちろん、それは高血圧や動脈硬化、腎臓病の予防にも繋がる。
そして、作り手の気合いがこもった料理を食べることで食べた側に伝わってくるものがあるように思える。それこそが人の心を豊かにする栄養なのかも。
[先付]こしあぶら精進揚げ(山形 最上)
季節を先取りする粋。
山菜の女王を頂く。若々しい青さを極寒の時期に頂く贅沢。
[前菜]根芋吉野煮(出汁と薄口、吉野の葛を引いて)
綺麗な白色は徹底した管理をして育てられた証。
潔い食感と心地よいとろみそして、抵抗なく体に沁みる出汁。
[前菜]メジマグロ叩き(新玉葱と自家製ポン酢)
綺麗なピンク。
トロけるような脂の美味さに新玉葱の軽快な食感がバランス。
[椀]川千鳥(長崎)
脂の乗ったすっぽんの椀。
急いで食べて、と大将から注意され、写真を撮り忘れたが、透き通る汁にスッポンの肉がしっかり。
しなやかな食感と力強い旨味が印象的。
それにしても、塩を一切使っていないとは思えない旨味のバランス。
なんて贅沢な。
[向付]鰯(能登)
このお店で鰯の刺身は意外。だが、なるほど。食べてみて分かる他では食べられない最高級品。
[焼き物]桜鱒蕗味噌焼き はじかみ
自家製の蕗味噌を塗った桜鱒。仕上げに真っ赤な炭を上から当てて焼く。
刀鍛冶みたいな真剣な大将の表情。
[肴]独活の2種盛り
ウドを2種の食べ方で頂く。中は酒盗で炊き、皮はきんぴらに。
[肴]田芹の焼き浸し
炭で焼いた芹に切り胡麻。それを目の前でカツオ醤油でお浸しに。
今までに体験した事のない歯応えの心地よさ。力強い胡麻の香り。
[焼き物]長崎天然トラフグ白子
この時期の1番旨い食材。ですよね。
一気に広がる芳醇さとクリーミーさ。旨みが凝縮した表皮のおかげで美味が何度も反復する。
[小鍋]うるいと鍵蕨の小鍋
このスープは名古屋コーチンのガラと肩ロースを4時間半炊いたもの。
[ご飯]徳島産あわみのり
・白ご飯
・もち豚と九条葱のカツ煮
・おにぎり
・自家製千枚漬け 赤出汁
[裏メニュー]すっぽん 肝
卸したその日だけ食べれる生の肝。胡麻油、生姜醤油で頂く。
生まれて初めて体験。
弾力と潔さを兼ね備えた歯応え。冷んやり艶を感じる舌触り。品の良い芳醇さとコク。
レバーを含めて肉の内臓として、一番美味かった。
[甘味]愛媛の甘平、高知のさくらんぼ
[お酒]
・信州亀齢 シルバーラベル(長野)美山錦大吟醸
・寒菊 ocean99凪(千葉)吟醸うすにごり
・〆張鶴(新潟)山田錦純米吟醸
・而今(三重)無濾過生 特別純米
・十四代 (山形)無濾過生 中取り純生
2023/02/26 更新
2022/10 訪問
温故知新の会席を味わう @代々木八幡
秋の終わりに訪れると店構えがバージョンアップしていた。
暖簾を止めて、しめ縄の形の美しさを強調。
行燈に書かれた店名の書体がより高貴な雰囲気を漂わせていた。
盛り塩に乗せられたカボチャの顔やお化けは、粋なハロウィン仕様の表現だ。
引き戸を開けると現れる大将の笑顔は、変わっていなかった。
当日はカウンターが鈴なり。初めての6人並びだ。
そう、このお店にはカウンター越しに料理人の所作を観たり大将との会話を楽しむところに魅力を感じるお客が集まるのだ。大将もそのコミュニケーションを大事にしている様子。なので、狭くても文句を言うお客は皆無だ。
上品に、そして、賑やかに料理が進む。
店内ごがサッパリしているなと思ったら、いつも壁の上に飾られていた大きな熊手が無い。それを見て新鮮な決意を改めて感じたのだった。
[先付]くわいチップ 焼き獅子唐
一杯目のビールに合わせて作ってくれる先付。
揚げたてのクワイは軽快でありながら深さのある噛み応え。繊細な塩加減と香ばしさを感じつつ、この先の期待感が高まる。
[前菜]小蕪風呂ふき
フーフー言いながら。舌先を刺激するしなやかな繊維と甘みの後から追いかけるほのかな苦味に自然を感じる。それを自家製の柚子味噌が包み込み、その融合がとてもリッチ。
[前菜]柿なます
石和の柿はシャキッとしてほのかに甘い。なますの歯応えも軽快で、気持ちが引き締まり味覚が敏感になってくる。
[椀]湯葉汁 山葵【超絶・名物】
大将が京都の修行時代に作っていた名物料理だとか。
味覚を研ぎ澄まして感じてみる。非常に繊細な美味さ。味わえば味わうほど深さを感じるこの出汁は何だろう。
海老や蟹の甲羅を焼いたような香ばしさに似た風味がかすかにかんじられるが、そんな単純では無いはず。
繊細な湯葉が主役。それに甲殻類は強すぎるような。大豆などの豆類を煎って根菜の干物と炊いたような…。素人の推理は続くばかり。
結局、教えてもらえなかった。
[向付]関アジ アオリイカ 針生姜
大分の関アジに佐島のアオリイカという一流の素材。肉厚の関アジはクロスに入った隠し包丁によってとても食べやすく。身が引き締まりながら脂の甘みあり。
アオリイカも鮮度抜群でコリコリした歯応えを残しつつ品のある甘みを放つ。
[焼き物]黒むつ レモン
内房の黒むつは肉厚。その切り身はコロッとした形で食欲を唆る焼き色が付いている。
その白身は極薄味で、レモンの効果が抜群だった。
[揚げ物]焼き海老芋
25cmもありそうな大きな京都の海老芋。
その長さを生かしてカットされたシルエットだ。
[蒸し物]
シラカワ丹波蒸し
京の魚、シラカワは白甘鯛のこと。それに丹波栗とは。素晴らしく雅な京の風情を纏った一皿だ。
黒の椀の中のシラカワは繊細な肌を見せて
[小鍋]白子みぞれ鍋
本日のクライマックスは鍋。土鍋でグツグツした状態で提供される。
熱々の白子は北海道浦河町産。衣の香ばしさと白子のクリーミーで芳醇な味わいが最高。
最後は匙で全ての旨みを纏ったしぐれを頂く。
[ご飯]あわみのり 新米 赤出し
・炊きたての柔らかいところ
香り豊かな炊き汁を纏った新米。若々しい芯を感じながら楽しむ。
・蒸らした白米を浅漬けと共に
ふっくら甘味のある上質なご飯。
・新筍すき焼き【絶品】
10月に筍を食べられる感動。近江牛の贅沢な旨みと新筍のコリコリ感。それがご飯で広がっていく。
・いくら醤油漬け
粒が揃った上質ないくらはとても品のある漬け具合。プチプチが心地よく、ベタベタにならないところが普通と違う。
・蕪の葉とジャコの炒め
油を吸った蕪の葉は心地よい苦味と香ばしさ有り。ジャコの塩味と旨味が合わさり充実感のある味わいに。
ここで満腹満足。
[甘味]有の実 クイーンルージュ
もぎたてを予感させる歯応えとジューシーさ。
後味がとても爽快。
[お酒]
・加賀錦 荷札酒(新潟)朝日 純米大吟醸
・天美(山口)特別純米
・田酒(青森)山田錦100% 純米大吟醸
・而今(三重)火入れ 特別純米
・十四代 本丸 秘伝玉返し(山形)特別本醸造
2022/11/06 更新
2022/08 訪問
季節巡り 歳重ねる @代々木八幡
初めてこのお店を訪ねたのは7年前の10月。
仕入れは築地から豊洲へ変わったが、大将は必ず自ら出向いて漁の状況をや魚の状態の変化を肌で感じ続けている。
「京料理は出汁料理」と。その日の其々の料理専用の出汁を取る。その出来が良いと気持ちが上がったり。
それを毎日毎日。
荒業をひたすらに継続する精神力。一瞬の味の変化を見逃さぬ集中力。それらを持ち合わせながらお客とも付き合う。
敬服。
さて、当日は蒸し暑い真夏の日。
爽やかな秋、実りの秋がやって来る。そんな期待を胸に抱かせる料理と美酒に酔った。
正に礼讃を礼讃したくなる日になった。
[先付]
・無果花 田楽
自家製の練った味噌を焼いたいちぢくに。
[前菜]
・新生姜と枝豆のかき揚げ
新生姜は千切りに、沼田の枝豆は生のまま皮を剥いてカリカリに揚げます。
[前菜]
・芋、蛸、南京の冷やし鉢
遠州の小芋、佐島の蛸、牛窓のそうめんカボチャ。女性が好みそうな3点の炊き合わせ。柚子を振って涼やかに。
[向付]
・尾鷲の大鯵
夏用のポン酢で、薬味をたっぷり。
[椀]
・冬瓜と黒鮑
冬瓜は鳥出汁で炊き、鮑の出汁と合わせて吉野の葛で溶
隠し新生姜。
[焼き物]
・天草の海うなぎ
炭を回しながら焼き切った鰻。塩と山葵で頂く。
[焼き物]
・京都の田辺茄子
茄子のみで勝負した料理。この出汁が実は1番難しい仕事だったと大将。
[小鍋]
・富良野の松茸と近江牛鍋
超高級食材で…圧倒的な最高の出汁。
[食事] 徳島あわみのり
・カツカツオ
自家製ソースで。
・雑炊
・胡瓜浅漬け 山椒昆布
[止め椀]
・味噌汁
[水菓子]
・岡山の白桃
2022/10/09 更新
2021/10 訪問
秋の宴に気づきあり @代々木八幡
「脂が乗る」それは良い言葉。
それは中高年の一般人以外にとってね。
久しぶりの訪問。人の服装も街中の景色もすっかり秋の様相だ。
葉野菜の変化を楽しんだ後のこれからの季節は、やはり魚が良い。
寒さを覚える早朝に大将が見定めて手に入れた魚介は格別。それらは脂が乗り始めたこの時期にこそ味わい深いもの。そして、珠玉の食材達には巧みな調理が施され官能的なストーリーが構成される。
お客にも上流な方が増えていると聞く。
新進気鋭の若い大将に脂が乗ってきている。
自分も一緒に成長しないとな。そんな心地よい緊張が走るのだった。
[先付]
・丸十 銀杏
[前菜]
・柿なます
・黒舞茸 車海老 信田煮
[向付]
・鯛(淡路)ボタン海老(増毛)
[椀]
・白甘鯛 焼茄子
[焼き物]
・太刀魚 丹波松茸 京春菊 鬼灯
[小鍋]
・牡蠣みぞれ鍋 壬生菜 近江かぶ
[食事]
新米
・味噌カツ(もち豚)
・とろろ じゃこ 卵
[止め椀]
・胡瓜ぬか漬け 昆布
[水菓子]
・香川のシャインマスカット
2021/11/12 更新
2021/06 訪問
夏を愉しみ美味礼讃 @代々木八幡
「料理は自然を素材にし、人間の一番原始的な本能を充たしながら、その技術をほとんど芸術にまで高めている」
かの、北大路魯山人が残した言葉だ。
新型コロナもなんのその。
コツコツと、ひたすらに、それを実践してくれている。
[先付]わくわくコーンかき揚げ
[前菜一]赤みずお浸し ふり柚子
[前菜二]淡路の鯵砧巻き
[椀]夏かぶ 床節 露生姜 星柚子
[向]鯒(コチ) 洗い茗荷 山葵
[焼き物]四万十川鮎 バジル酢
[酢の物]壱岐岩牡蠣 ポンすだち酢
[揚げ物]甘鯛フライ(レアで) 自家製タルタルソース
[赤楽小鍋]夏鴨 アメーラ 賀茂茄子 粟生
九条ねぎ
[食事]
・白米 胡瓜かくや 赤出し
・とろろごはん
・チャーハン
・近江牛卵かけ
・鴨だし煮麺
[水菓子]夕張メロン
2021/07/02 更新
2021/01 訪問
春を待ちつつ美味礼讃 @代々木八幡
美味を楽しむこと、とても元気が出る。
美しい器に美しい盛り付けを見ること、感性が磨かれる。
そんな体験をさせてもらえるお店。
心から礼讃したい。
[先付]新筍 慈姑
[前菜一]壬生菜浸し
[前菜二]細魚寿司 千社唐 子持ち鮎
[椀]丸餅 海老芋 辛子
[向]鯛 ビーツ 山葵
[凌ぎ]ヨコワ炙り 出汁ポン酢 河豚葱
[焼き物一]新鱒 蕗味噌 編笠柚子
[焼き物二]河豚白子
[蒸し物]玉地蒸し すだち
[煮物]淀大根 鴨 葱 山椒
[揚げ物]カキフライ タルタルソース
[和え物]京春菊 松の実和え
[食事]あわみのり 千枚漬け 赤出汁
[フルーツ]紅まどんな
2021/07/01 更新
2020/11 訪問
京料理の道理から外れないサプライズに感服 @代々木八幡
京都、その歴史によって培われた文化からコンサバティブなイメージを持つ。
料理の世界も然り。
本場京都でも、イタリアンと合わせてみたり、メキシカンと合わせてみたり。そんなチャレンジをされている京料理のお店を見かけるが、どうも奇をてらったというか話題作りが先行していると言うか。関東の人間である小生もついつい横目で見てしまうのだ。
ここ、代々木八幡の小さな京料理のお店で、この日、正しい道理から外れない見事なサプライズを味わうことが出来た。
京料理の道を磨きながらも常識に囚われずに挑戦を続ける大将には素直に頭が下がる。
[先付]藤九郎銀杏 慈姑チップス
これほど深い味わいの銀杏を他に知らない。煎りたて、揚げたての贅沢なおつまみだ。
[前菜一]鯵棒寿司 針生姜
ピンと張った針生姜が透き通る鯖の上に乗る。実に粋だ。
[前菜ニ]雲子玉地蒸し 黒トリュフ【絶品】
椀の蓋を開けた瞬間に放たれる森の香り。湯気の中から姿を現したのは、まさかの黒トリュフ。
玉地の出汁はあくまで繊細。そこに秘められた熱々の雲子は艶かでしなやかな食感。とても上品な芳醇さだ。
山海の珍味が出会う繊細の極み。
[前菜三]海老芋 磯部揚げ
深黄の器に黒緑色の塊が3つ。まるで投げ入れられた石ころのような景に驚く。恐る恐る箸で摘まみ上げると磯の香りが立ち昇る。それを一口。滑らかな歯応えと上手に出汁の浸みた海老芋が、細かな粒子となった海苔の旨味を広げていく。その繰り返しがとても楽しく、思わず目を細めた。
山海の幸協業による美味、第2弾だ。
[椀]ハマグリ 松茸
今シーズン最後の松茸をここで食べられて幸せ。
耳かきの先ほどの塩。それだけしか調味をしない超高質料理だ。ハマグリの力強く上品な磯感のある出汁に松茸の森の香りが見事に一体化する。
山海の幸協業による美味、第3弾。
[向付]鰤藁叩き
フワッと燃え上がる藁の炎に鰹をくぐらせて香りづけ。四国出身の慣れた手つきが心強い。
脂が満遍なくのった上等な鰹はそれだけで美味。その所作は贅沢でダイナミック印象だが、辛味大根の爽やかな絡みと極細のチャイブの香りを添えることでその味は上品で繊細な美味さに変化する。
[焼物一]甘鯛若狭焼き
シンプルに見せる匠の料理が出てきましたよ。若い甘鯛なのか、白身は甘く引き締まった感じが残る。それに香ばしく焼かれた細かなウロコ。その両者が実に繊細な美味として味覚に入ってくる。噛み締めた時に皮から染み出る脂の旨味も忘れ得ぬ。酢橘で味の変化を楽しんだり。京料理らしい甘鯛の楽しみ方。
[焼物ニ]焼き茄子 白味噌
黒の椀に白味噌。そこに焼き那須の島。赤軸法蓮草の色彩、細かく削られた鰹節のふんわりとしたシルエットが美しい。
上品な青味のある茄子に濃厚で甘辛な白味噌が良く絡む。
前の料理のシンプルさとの対比的な味覚の効果を感じる。
[煮物]丸大根 鶉丸 唐草大根 針葱
料理の最後は出汁で煮込まれた大根の優しい美味、舌触りの楽しいウズラの肉団子。ここまでの展開で味覚神経が大満足状態。そこで味わうこの料理の美味さのパワーが絶頂を超えた更なる満足の域へ誘ってくれるのだった。
そして、肉団子の中に仕掛けられたウズラの卵。最後のサプライズはまさかのド直球。そのユーモアに、やられた。
[ご飯]栗ごはん、イクラ、松茸すき焼き、玉子かけごはん
秋の贅沢極みご飯に腹づつみを打つ。今夜も粋な仕掛けと美味い料理をありがとう。
・牛蒡山椒金平と胡瓜ぬか漬け
・根芋の赤出汁
[果物]山形ラフランス
この楓の葉の器を目に焼き付けてつつ今年の秋と別れを思う。
[お酒]
・加茂錦 荷札酒(新潟)槽場汲み生原酒 美山錦
・鳳凰美田 碧判(栃木)純米吟醸無濾過生原酒 山田錦
・田酒(青森)純米吟醸 辨慶
・而今(三重)無濾過特別純米
・十四代(山形) 中取り純生吟醸
・十四代(山形) 大吟醸 播州山田錦
2021/01/15 更新
2020/06 訪問
幸せの溜め息 @代々木八幡
アフターコロナで口数が少なくなる。話す相手の数も減らさねば。周りへの気配りや心配り気から、いつしかそれが自然とエチケットになった。抵抗無く美味ものが身体に滲み入った時、知らず知らずに溜まっていたストレスがため息となってフーッと出る。今宵、初めてそんな感覚に。感謝。
[前菜1]湯葉チップス
最初のビールに合わせて作って頂いた。極薄で軽快な歯応えに絶妙な塩加減。
[先付]小豆ハタ昆布〆 新生姜
キラキラと輝くクリスタルの皿に宝石のように載せられている。紫の小さな花弁や大葉、ゴマがちりばまれたハタらまるで宝石のよう。
序盤は舌の感覚が冴えている。その上品な締め具合と微かなハタの甘みを楽しむ。
[前菜2]琵琶の精進揚げ(長崎)
背の高い六角の磁器を覗き込む。香を焚く器らしい。緑の器に美しいオレンジ色が映える。
熱々で甘い琵琶。揚げたその衣には全く卵を使わない、精進のこだわり。
[前菜3]蛤(鹿島)本三つ葉 浸し
切子細工を施した透明のガラスに淡い白色の出汁。上品なピンクをした蛤は肉厚でこの上なく深い旨味。添えられた本三つ葉が色彩と食感、味わいに変化をつけていた。最後に出汁を啜る。ため息が出た。
[お椀]白甘鯛のくずうち 青柚子
漆黒の椀に白銀の白甘鯛の鱗が静かな光を放っている。松の葉のように細く切られた青柚子がその上に橋をかけ、天井のダウンライトがまるで満月のように水面に映る。霊験の景、か。
出汁は昆布と鯛のだけ。塩は耳かき一サジだけだとか。箸を入れるとくず粉に封印された甘鯛の味が冴える。ハラミの皮の旨味は特筆ものだ。
[お向]初鰹
深い赤と黄。キメの細かな素直な歯応えにエネルギッシュな赤身の旨味。辛子と薬味が爽やか。
[揚物]ヤングコーン
ちびマルコちゃんの花輪くんのヘアスタイルのように髭がなびいている。それがさっくり甘く、素朴に贅沢。本体もコリコリで楽しい。
[焼物1]本モロコ 木の芽酢【希少・絶品】
琵琶湖の天然モロコは京料理の超高級食材。それを長時間かけて遠い炭で焼いたもの。小生が入店した時から焼き始めているとか。最後は網の目に頭を指し込んだ状態で、それはまるで剣山のよう。
噛むごとに滲み出る深い熟成感。淡水魚故に旨味が凝縮しても塩辛くない。なるほど。
[焼物2]加茂茄子 田楽
立派な加茂茄子。京都洛北農業の特産だ。そして香ばしい焼き目のついた美味い味噌。木の芽の香りとともに夏を味わん。
[凌ぎ]白瓜雷干し このこ和え
焼き場の上にぶら下がっていた螺旋状の細いやつ。まさかハエとり紙じゃないよな、と思っていたやつ。
それがこんな風に出てくるとは。
[煮物]巻海老 板オクラ 黄ニラ餡
[小吸物]うすい豆すり流し【絶品】
青味とコク、満遍なく広がる上質でサラサラの舌触りが贅沢。
[食事]今宵もしっかり頂きました。
・まずは、白米
・カルビ新ペコロス新じゃが
・じゃこ万願寺実山椒
・とろろ
・TKG
・鯵なめろう
・まご茶漬け
[デザート]桃(長野)
◇智則(島根)純米吟醸
◇日高見(宮城)吟醸
◇みむろ杉(奈良)純米吟醸 山田錦
◇北島(滋賀)純米吟醸
◇而今(三重)純米吟醸 山田錦火入れ
◇写楽(福島)夏吟うすにごり、
2021/07/01 更新
2020/04 訪問
料理を介した以心伝心 @代々木八幡
時節に合わせて早めに訪問。
日のあるうちにこの引戸を開けるのは初めてだ。
この時間、当たり前だが先客はいない。カウンターの真ん中に漆の盆一つと綺麗に畳まれた真白のナプキンが置かれている。その様に親しい亭主から茶事に招かれたような厳かな気持ちになる。
ビールを一口飲んで世間話をしながら料理が始まる。調理する大将の後ろでお弟子さんがキビキビと動く。当日は、いつもよりも指示が多く、こまめだ。話の内容や小生の飲み具合、食べる様子を見ながらその場でメニューをアレンジしてくれているようだ。嗚呼なんという贅沢。
そして、ありがたい発見が。一人心澄まして頂く一皿一皿には美しさや美味しさの奥に込められたメッセージが感じられる。つい反応して、いつもと違う観点から深く考え事をしてみたり。うむ、店内がまるで茶室のような小宇宙的空間に、そんな感覚になる。酒に酔ったかこの感覚に酔ったか解らぬが、料理には更なる深さがあることを知った。
そう、京都の有名な文人が「茶道の哲学」を説いていた。Stay Home Week に読んでみようかな。
[先付]うるいのお浸し
蓋付きの透明な器の中にジオラマのような綺麗な世界がある。鹿島の蛤の身は優しい肌色。繊細な葉脈が浮くうるいの葉の淡い緑。それらが淡い白色の海に小さな島を形成している。
うるいは若く優しい食感。蛤の出汁は冷やしてもこんなに美味いのか。サラッとしながら深い旨味は素直に身体に滲みて。
新酢橘が爽やかで、健康を楽しもうと、そんな気になった。
[前菜1]平貝のフライ
知多半島の篠島で採れた大きな平貝。まだビールが残っていたので、その様子を見てアレンジしてくれた。衣の香ばしさと貝の甘み、それだけ。全く調味していないのだとか。リッチな歯応えと研ぎ澄まされた旨味。噛み締めつつ、つい無言になる。
添えられていたのは、可愛らしいたらの芽だ。
[前菜2]ホタルイカの辛子酢味噌和え 京菜花と独活を添えて
富山のホタルイカはその大きさに驚かされる。パリッとした歯応え。ワタはタップリで上品な芳醇さと広がりのある味わい。目玉やくちばし、軟骨が念入りに取り除かれているからだろう。一杯の存在を感じながらこんなにも充実した味わいを楽しむのは初めての経験だ。
辛子酢味噌の効果も加わり、美しい緑の京菜花はそのほろ苦さがシャープに感じる。
ホタルイカの旨味の広がりと京菜花のシャープ感の対比を楽しのに、思わず目蓋を閉じていた。
[お椀]沢煮椀 胡椒
見よ、髪の毛と同じくらいの細さに切られ野菜達を。それらが椀の中に流れを表わしている。沢の流れ、か。椀の蓋にも松葉で流れが描かれていた。
微かなトロみの中で舌先に感じる極細の野菜の食感が気持ち良い。同じく細切りにされた豚の出汁と脂は全体的な印象に力強さを与えている。
[お向]マコカレイ(佐島)白烏賊、馬糞ウニ和え(長崎)
まるで満開の桜のよう。今年はゆっくりと楽しめなかったから、魚見て花見だ。マカガレイがこんなにも色鮮やかだったとは。軽く酢橘を振って塩と山葵で頂いた。味覚が研ぎ澄まさせる感覚だ。
[焼物1]那須牛サーロイン ポン酢おろし
上質なサーロインを炭焼きに。これは元気が出るな。おろしたての大根は舌先が楽しくなる粒感で水々しく適度な辛味だ。それとタップリの浅月を乗せて口に運ぶ。冷んやりしたおろしと熱々の肉のコントラスト。広がる肉汁の旨味。爽やかさで抑えられた脂感。中年にも安心美味な元気補充の仕掛け。
天豆のホクホクは歯触りと舌触りの変化に。
[焼物2]京都物集女の筍
皮ごとの炭焼きで真っ黒になった熱々の筍を躊躇なく剥いていく。勿体ないなと思ってしまうほど。そしてその中心から取り出した真っ白な芯だけを切って。その身を覆う木の芽はタップリ。旬の香りが店内に広がる。
キメの細かい歯応えと甘みをしっかりと残した素晴らしい焼き具合だった。滲み出る筍汁に広がる木の芽の風味にStayHomeで失いかけた季節感を取り戻す。ため息が漏れる。
[酢の物]淡路鯵を新生姜で巻いて
器の上で咲く美しい花弁。脂の乗った鯵に旨苦い薄切り新生姜の取り合わせが絶妙。微かな胡麻の香ばしさも合流。サッパリとした後味だ。
木の芽の後に生姜の流れ。特徴のある嬉しい刺激で味覚自体が満たされてゆく。
[凌ぎ]薄い豆浸し
実に優しい凌ぎだった。確かに味覚もボリュームもしっかりと楽しんだ状況。それを乗り越えるための一品として絶好のアレンジ。お凌ぎと言えば、ついつい小さなお寿司やうどんみたいな腹持ちの良いものを想像するが、そんな我々素人の発想は軽く裏切られるのだ。
薄い豆の青味とコクを引き立てる、極々繊細な出汁が積み重ねていた美味さの物語をリセットしてくれる。これから始まるクライマックスを最大に楽しめるように。
[煮物]淡路鯛と2色のニラ餡
新緑を表すような器の蓋を開けると豊かな香りとともに湯気が立ち昇る。中央にお香のように置かれた小さな白い塊はおろし生姜だ。その効果かな。
白と緑のニラの下から堂々と顔と出したのが見事な鯛。その鮮やかな縞模様は丁寧に皮引きされた証。その身は崩れずにしっかりと形を残す。更に口の中にリッチなボリューム感を与えてくれる。出汁の餡を纏った力強い身の旨味をニラの青味と苦味が立体的に感じさせる。満足度が絶頂になる瞬間だ。
[食事]筍ご飯 赤出汁 胡瓜ぬか漬け
・白ごはん カラスミ、ジャコ唐辛子
・車海老の天丼 本三つ葉【絶品】
平らなかき揚げのように整えられた天ぷらはパリッとした後からプリッとしたエビの歯応え。香ばしいタレは海老の頭で出汁を取ったもの。
満腹中枢を麻痺させる美味。これでまたペロリと一杯。
[水菓子]琵琶(長崎)
上品な甘み。
[お帰り]出汁に貝割れ大根
最後に一杯だけ出汁を飲んで帰りたいと、わがままを言わせていただいた。
出汁に始まり出汁に終わる至福の会食だった。
◇みむろ杉(奈良)無濾過 純米吟醸雄町
◇日高見(宮城)純米 短稈渡船
◇高砂(三重)松喰鶴 純米大吟醸 山田錦
◇写楽(福島)純米吟醸 赤磐雄町
◇田酒(青森)純米 山田錦
◇花陽浴(埼玉)無濾過 純米大吟醸
2021/07/01 更新
2020/04 訪問
負けないこと 止めないこと @代々木八幡
仕事のない日の17時に伺った。無理を言って早めにお店を開けてもらったのはCOVID-19による緊急事態宣言からの休業要請がある中で20時までに退店する計算だ。
お客同士の距離を保つ為に完全予約制で1日2組限定としながらも営業を継続している。
皆のために感染拡大と闘ってくれている人達やウイルス被害から会社や家族を守ろうとしている人達にここでゆっくりと美味しいものを食べてもらいたい。精魂込めた料理が明日への活力や癒しに繋がれば。そんな大将の思いによるものらしい。
ハートが熱くなる中で、今日の会席がスタートした。
[先付]ミニ青梗菜(静岡)のお浸し
春の息吹を感じさせる青菜に白糸のような新生姜が乗る。青菜の初々しい歯応えの後を由比の桜海老の香りが追いかける。
冷えた出汁が爽やかに胃に染みる。
[前菜1]アオリイカ(淡路)と筍(やましろ)木の芽和え
落ち着きのある薄緑。白味噌と和えた木の芽の風味は上品で深い。しっかりとしたアオリイカとサクッと軽快な筍の歯応えの違いを楽しむ。
[前菜2]コシアブラ(山形)の天婦羅
女王さまの登場。芽が開かない状態で頂く贅沢。生まれたばかりの繊細な歯触りと蕾の皮のほろ苦さ。これを楽しめるのが和食の妙。
[お椀]天然蛤(鹿島)
蛤だけで採った出汁はしっかりとした濃さを残す。一啜りしただけで一気に広がる洗練された天然の味わいに感動。蛤の身は厚く噛み締めるごとに更なる旨味が滲む。美味さ無限大。
蛤の上で美しい葉脈を見せているのはウルイだ。
[向付1]明石鯛 菜花昆布締め【超絶】
なんとも美しい盛り合わせ。深い器の立ち上がりには満開の桜が描かれている。中央に配された淡路の天然の鯛の身の美しさが見事に映える。
朝〆とは思えない深い甘みは今でも忘れられない。初めて感じる美味さだった。
[向付2]松輪鯵
蓮の花弁の全てに福の字が記されたありがたいお皿。そこに松輪のアジが輝いていた。黄金の胡麻を纏うように。見た目の美しさがその美味さにそのまま乗り移った印象。舌触りに艶、脂に爽やかさ。
[焼物]あかむつ
むむむ、さりげなく出てくる高級魚。その一番脂が乗るところを頂く。パリパリした皮と共に官能的なハラミを楽しむ。
添えられた蕗味噌の淡い苦味がノドグロの濃厚さを飽きさせない効果に。
[小吸物]碓井豆(京都)すり流し
雅で鮮やかな緑にうっとり。そこに浮いているのは針うど。そして銀箔(後で気づいた)。上等で粋な演出だ。豆のコクと出汁の旨み。
[酢の物]たいら貝、タラの芽、わらび、こごみ
透明な切子ガラスの器に瑞々しい山菜が盛り付けられている。中でもこごみの立断面を見せる包丁は見事。眩しく愛らしい。新すだちをギュッと絞って頂く。
[煮物]若芽(大槌町) 筍(やましろ)
待ってました。この季節の名物、若竹煮だ。汚れのない真っ白な竹の子と浅湯でのワカメ。出汁が美味しく入っていて、定番ながら新鮮で嬉しい驚きがある。
[揚げ物]車海老のフライ
天然物は丸くなるんですよとからかわれたが、なるほど自然な形で自然に美味さを感じるかも。ボリュームのある身の部分だけ粗挽きの衣を纏う。その香ばしさとジューシーさが美味。足を摘んで甲羅の中にある味噌を頂く。隠された上等な珍味。
[凌ぎ]鯛出汁ご飯
鯛の骨で取った出汁の炊き込み。時折弾ける小柱の旨味と爽やかな三つ葉の青味が楽しい。
[焚き物]新じゃが(長崎)新玉葱(淡路)牛カルビ
これ以上豪華な顔ぶれはないだろう、の肉シャガ。一緒に煮込まれたはずだがそれぞれの主張がしっかりしていた。中でも長崎の新ジャガは小さいながらもジャガイモの旨味がしっかり。これをおかずに絶品のご飯を頂く贅沢。
[食事]あわみのり 胡瓜ぬか漬け 赤出し
・まずは白ごはんで
・雲丹と海苔を乗せて
・葉ごぼうとじゃこを乗せて
・トドメの卵かけご飯
よく食べました。
[水菓子]デコポン(和歌山)
酸味よりも甘味が勝ったジューシーなデコポン。驚くほど後味が爽やか。
◇くどき上手 亀仙人(山形)純米大吟醸
◇澤屋まつもと 守破離(京都)山田錦 純米大吟醸
◇酔鯨 花ごろも(高知)純米大吟醸
◇黒龍 春しぼり(福井)吟醸原酒2回火入れ
◇みむろ杉(奈良)純米大吟醸 山田錦火入れ
◇而今(三重)純米大吟醸 雄町無濾過
よく呑みました。
2021/07/01 更新
2020/02 訪問
余寒の厳しさを忘れさせる春の予感を味わう @代々木八幡
立春が過ぎても厳しい寒さが続く。そんな折に温かな雰囲気に包まれて春を感じさせる上質な山海の幸を堪能す。
なんて、大人を気取りたくなるお店。
毎週通うわけにはいかないが、季節の変わり目にふと思いたち伺うこと4年。日本の料理、京都の料理の粋を間近に体験できる貴重な空間だ。
さてさて、
[先付]京菜花のバチコ浸し
バチコとはナマコの卵巣の干物。手間と時間が費やされた珍味中の珍味だ。それと新鮮な菜花を合わせたと思うと感慨深い。季節の梅柄があしらわれた器に鮮やかな緑な京菜花にバチコのだオレンジ色が冴える。上品な苦味と深みのある出汁。日本の大人の贅。この塩味はバチコをもどして出したものだけだとか。
[前菜]栃木の新アスパラのかき揚げと雲丹の磯辺揚げ
アスパラの切口をこれだけ一度に見れる料理はそう多くない。沢山の切断面から滲み出る甘み。なるほど。
同じ皿に揚げたての磯辺揚げが載せられる。三角に三角の磯辺揚げという、幾何学的な装いがユニーク。上品な芳醇さを醸し出す雲丹とこだわり抜いた上等な海苔。贅沢な磯の香りの美味。
[椀]桜鱒 粕汁仕たて
粕汁の海に肉厚の噴火湾の桜鱒が島のように隆起している。そこに小葱とミョウガ、カラスミがトッピングされている。しなやかさを残す桜鱒の歯応えは心地よく、その脂の旨味が粕汁によって広がる感じだ。汁はしっかりとボリュームがあり、体の芯から温まる感じだった。
[向付け]めじ鮪(山口)鯛(淡路)関鯵(大分)
関アジの皮の輝きとその断面から垣間見る身の美しさ。鯛の身はその筋肉の断面がよく見える。土佐醤油で頂く。程よく残った歯応えが新鮮な天然物の逞しさを感じさせる。そして、シャキッとした歯触りの浜防風が粋だ。
[焚き物]聖護院蕪
湯気の奥、安土桃山の狩野派による絵画のような色彩にうっとり。先ほどの粕漬けと対比的な透明感のある汁は鯛の骨からとった出汁だとか。無限なまでに純粋な汁に蕪の繊細な甘みと菊菜の青味が引き立っていた。鼻の奥をくすぐる柚子が楽しい。
[酢の物]生牡蠣
ガラスの器の中、蓋て封印されたオイスターホワイトと琥珀色の世界。蓋を閉じたまま外から眺める美しさ、蓋を開け香りが広がる一瞬を楽しんで。佐賀の牡蠣の磯感とクリーム感の加減は深過ぎずもしっかりと旨味の神経に届き、ポン酢の餡が爽やかさを誘う。
[焼き物]白甘鯛 ふく白子
食欲を唆る香ばしい香りが漂う。カウンターの中で真剣に包丁仕事をする大将のその所作に安心感と緊張感が相まった独特な雰囲気が。
カリッとした大きな鱗の食感と深みのある旨味がにじむ白甘鯛は長崎から、シワの無い純白の河豚の白子は下関の天然物らしい。
クライマックスに相応しい美味エネルギーの強さに贅を感じる。少しずつ
春の訪れを告げる蕗の味噌はそれだけでも酒が進む。酢橘で味の変化を楽しむ。
[炊き合わせ]新筍とわらびの信太巻
春を代表する山の幸、竹の子を2月に食べれるとは。この新筍は九州の八女産らしい。木目の細かい食感が素晴らしい。そしてその奥に感じる上品な出汁はえぐみや酸味を全く感じさせることなく滲みていた。揚げで巻かれたワラビの断面が綺麗。
力強い緑の木の芽が山の趣きを漂わせている。
[和え物]芹の胡麻和え
秋田の三関芹は白い根が沢山ついた上物。潔い歯応えが心地よく、口内の奥から湧き上がる胡麻の香りと青味を含んだ汁のコンビネーションに贅沢な野趣を感じる。
[食事]徳島産 あわみのり
・白ごはん
・芹ごはん
・牛九条葱山椒煮
・卵かけご飯
・葉ごぼう雑魚
・赤出汁
・千枚漬け
[フルーツ]甘平
愛媛の甘平は瑞々しく甘さと酸味のバランスが上品。
◇東洋美人 おりがらみ
◇黒龍 垂れ口 純米吟醸
◇加茂錦 荷札酒 山田錦 無濾過生原酒
◇田酒 山田錦 純米吟醸
◇而今 千本錦無濾過生 純米吟醸
◇十四代 山田錦 大吟醸
2021/07/01 更新
2019/11 訪問
色彩と味わいの美に浸る至福の京の宴 @代々木八幡
冬の味覚を楽しみに。お店へ向かう足取りはついつい速まる。
最上質の食材を繊細かつ美しく仕上げるための調理場の風景は思いの外、大胆で力強い。カウンター越しにその様子をかなりの範囲望むことができる京料理のお店は極少ないのではないか。
テキパキと働く弟子たちの前で腕を振るう大将との会話を楽しめるのも魅力の一つだ。
このお店に通わせてもらうようになって、4年が経つ。その巡る季節の変化も楽しいが、昨年の同じ季節との変化を確認するのもまた愉しい。
今年もまた去年より深くなった、美味を堪能した。
感謝。
[先付]ムカゴと新生姜のかき揚げ
ビールのお供にと。ムカゴは栄養たっぷりの秋の食べ物。新生姜と合わせることで、土っぽさや酸味が薄れて旨味が際立っていた。
[前菜]秋鯖の棒寿司
首折れ鯖をギリ〆で。生で食べらるくらい新鮮な鯖を旨味を引き出すために最短の時間で〆たのだとか。透けるようなピンク。これほどの生感覚で鯖を楽しめる機会は少ない。
[お椀]川千鳥の腕【絶品】
スッポンだけでとった出汁は透明感あり、とても上品。ワイルドなスッポンを丁寧に調理された証。芽葱の緑と柚皮の黄が爽やかさを与えて綺麗だ。スッポンの肉は弾力性に富み旨味が深い。餅に出汁がよく絡んで美味し。ほのかに香る忍び生姜香りが京を感じさせた。
[向付け]鯛(明石)アオリイカ(長崎)縞鯵(和歌山)
銀杏の葉を模した器の曲線が優雅だ。色は上品な変化を持つ鬱金色だ。その器の中に三種の魚が慎ましく寄り添うように盛られていた。
[焼き物]松葉蟹(浜坂)【絶品】
最高級ブランドの松葉蟹。その証に浜坂の松竹丸のタグが付いている。焼いた脚は瑞々しくも濃い旨味。茹でたハサミの部分はボリューミーで身の繊維がしっかりした食感。解した身と蟹のミソを和えたものは芳醇でありながら新鮮なしなやかさが。そこにさっと酢橘を振って、絶品の珍味。
いけないいけない、お酒が進んでしまう。
[凌ぎ]江戸川春菊浸し
黒い器に深い緑の一色。春菊の味を引き出す上品な出汁。調味は酢橘だけだとか。だだ、ひたすらに春菊の美味さを楽しむ。爽やかな青味と苦味に酸味。そしてその食感は活きいきとしている。生命感を感じるポリシーの効いた一品。
[蒸し物]香箱蟹玉地蒸し
先程の春菊が「静」ならこの茶碗蒸しは明らかな「動」だ。内子の鮮やかな橙がビビッドだ。味の方も多彩で深い旨味。この連鎖攻撃で、味覚中枢が心地よく混乱する。
大将が雄雌の甲羅を見せてくれた。こんなに違うんだな。雄は脱皮の回数が多い分だけ大きく成長するらしい。
[揚げ物]江戸前太刀魚 煮おろし
出た、和製京風のトリック。感じすぎだろうか。色彩豊かな皿に鎮座するオレンジの切り身。サーモンだと思わせて、実は太刀魚なのだ。実に肉厚。ハラスの美味さと上品さはサーモンもはるかに及ばないだろう。衣の香ばしさとおろしの清涼感。三次元の旨味を感じる。
[煮物]京蕪と雲子
繊細な白とクリームの色合いに見惚れてしまう。鱈の白子は艶のある食感と上品なコク。そして、鯛の骨でとった出汁を品よく吸った蕪は円やか。それらを三河みりんでキリッとした仕上げられた白味噌の出汁に絡めて頂く。ジワッと身体の内側から美味と温もりが染みる。
[スペシャリテ]京都の海老芋
絶妙の加減で炊かれた海老芋をスライス。この厚みが絶妙だったモコモコせずに出汁の美味さと芋の旨味を口の中に広げることができる。アクセントのふり柚子が効いていた。
[食事]
・丹波栗ご飯
丹波の栗はその風土や気候の特徴から最上質と言われる。なるほど、ムラのない深い甘み。こんなに美味い栗ご飯は他にない。ハズ。
・仙台牛と九条葱すき焼きごはん
大きな一枚の仙台牛でご飯が見えない。しなやかで柔らかな食感、肉の旨味はとても深い。そこに九条葱の甘苦感が加わり贅沢なすき焼きご飯に。
・玉子かけご飯
・赤出汁、胡瓜の古漬け
[水菓子]石和の柿 長野のシャインマスカット
2021/07/01 更新
2019/09 訪問
松茸ずくしは贅沢かつ上品に @代々木八幡
日本中から最上質な旬の食材を集めること。それは名の通った店にしかできないこと。でも、それだけではない。料理人が毎日のように市場に足を運び目利きをしてこそ本物が手に入る。そして、培った人脈と信頼によって食材が集められたりもする。このお店は、小さいながらそんな弛まぬ努力と熱意が溢れ、その賜物のような料理を頂くことが出来る。よく考えたらお客として、とてもありがたいこと。
前回は夏と秋の変わり目を鱧松の土瓶蒸しで楽しんだ。当日は日本全国の最上質な食と共に、秋真っただ中の松茸尽くしを豪快かつ上品に堪能。和食って、いいな。
[先付け]白ダツの吉野煮
白ダツとは海老芋の茎のこと。真っ白で艶やかな様相は入念な下ごしらえによるものだろう。しなやかながら潔い歯応えが心地よく、いりこ出汁の上品さと生姜の粋が身体に浸みる。
[精進]丹波栗と銀杏の白和え
滑らかな口当たりのあとで、コリッとした歯ごたえ。具材が全く見えないのでそのちょっとした驚きが楽しい。丹波栗のコクの深さはとても上質なものだった。
[お碗]鹿島の天然蛤 【絶品】
立派な蛤は口の中が一杯になる充実感。その出汁は旨味が深く、松茸の香りと相まって超絶な贅沢さを味わせてくれる。松茸の食感はシャキシャキと心地よく、それがとても長続きする幸せ。
この苫小牧産。
[向付]明石鯛
小振りに切られた明石の鯛は最上質。その上品な甘さは他では体験できないのではないか。面白かったのは生の松茸の柄の部分を解したものが付け合わせに。上品な海の味覚に山の香りが加わり贅沢な自然の美味の演出となった。この松茸は 岩手産。
[焼物]房州のかます松茸巻き 【絶品】
身の締まったカマスが松茸にしっかりと巻き付いて焼かれていた。この見た目、なかなかの迫力。やや熟成感のあるカマスの旨味とそれを吸った松茸を食べ合わせる。美味。
付け合わせのじゃこ万願寺は色合い美しく、味のアクセントにも。
[強肴]甘海老 【絶品】
橙の器に朱とピンクの大きな甘えび。目が覚めるような鮮やかさに暫く見とれてしまう。これだけ大きな甘海老にはめったにお目にかかれない。充実した噛み心地と広がる甘味と旨味。足の付け根や甲羅の中の味噌までの全てが楽しめる。
北海道の島牧で採れたものだとか。
[酢の物 ]山形のおばこ鰆
山形のプライドフィッシュであるおばこ鰆は独自の〆方や神経抜きが施された日本一の鰆だとか。なるほど、高熟成を感じさせる甘味だ。
ミョウガを中心に様々な野菜を細く切りそろえた錦野菜の透けたり反射したりする様相は繊細で上品。ポン酢ゼリーで食べやすく。
[煮物]里芋 菊菜 粟麩
入間の里芋が綺麗な白色の六角を描いている。菊菜の緑は深く、歯応えに変化を与えてくれている。香ばしく焼かれた麩は出汁を吸って旨味を倍増か。そこに乗せられた針柚子が爽やかなアクセントに。素材自身の味わいや歯応えの特長をとても楽しませてくれる料理。
[スペシャリテ]松茸フライ【絶品】
大きな傘の苫小牧産松茸は傘の部分の包丁を入れ、柄の部分は手で裂かれている。衣は薄く一定の厚み。その香ばしさと旨味が熱々の松茸をコーティングしている。目を細めながらその旨味の相乗と香りを楽しむ。あまりの美味さにお代わりを頂いてしまった。途中途中で酢橘を振って気分転換。
[食事]
・まずは白飯
新米の香り、旨味。赤出汁には焼き茄子がはいり、上品で深みのあるほろ苦さ。
・新筋子と海苔を乗せて
芳醇な筋子の旨味。
・松茸ご飯に新筋子を乗せて
山海の幸が出会う贅沢の極み。
・しぐれ煮に玉子
安定の美味さ。これでノックアウト。
[水菓子]有りの実
新高という品種の梨。甘みのある果汁がたっぷりで自然の美味さをそのまま頂く感じ。
2021/07/01 更新
2019/08 訪問
天然モノの生前の様子を想い味わう贅沢かな @代々木八幡
猛暑のピークは越えたある小雨の夜に伺った。
このお店を訪れるたびに、感じ入ることや学ばせてもらうことが多い。
ついさっきまで自然の中で悠々と逞しく生きていたものの命を頂く贅沢さとありがたさ。それをこの日は憶えた。大将は料理を出す時に必ずどこで獲れたものか、どこで育ったものかを教えてくれる。調理されたそれを見ながら味わいながらその生い立ちを想う。正解は不明ながらその想像は不思議とリアルだ。結構楽しい。
[先付] 焼き無花果田楽
この時期がベストコンディションの京都のイチジクは立派なサイズ。それを炭焼きに。果肉の綺麗な朱色の上に白味噌が乗る。最後に上からバーナーで炙って、おろした酢橘の皮を振りかけてある。乗っけから嬉しい気合いを頂く。
アツアツで頂く。上品で深みのある甘さが口の中に広がる。お弟子さんが丁寧に練ったという白味噌は舌触りがとても滑らかで、イチジクの甘みに洗練さを与えていた。
[前菜] アスパラのかき揚げ
グリーンアスパラを2cm弱に切って綺麗に縦横ランダムに並べてかき揚げに。この季節はオーストラリア産のアスパラが旬なのだとか。確かに。心地よい歯応えを残しながらジューシー。その甘い汁が口の中で衣に浸みてその香ばしさと一体となった時の充実感は口に表せない。
[吸物]ハモマツ土瓶蒸し 【季節・名物】
日本料理の世界の季節は前のめりだ。夏の終わりと秋の始まりのこの時期の名物、ハモと松茸の土瓶蒸しだ。最初はお猪口に注いでその出汁を楽しむ。この所作が実に楽しい。絶妙な濃さの加減の旨味はとても品があり、松茸の香りはしっかり。次は酢橘を絞って松茸を頂く。コリっとした歯応え心地よく、噛むごとに野山の香りが立つ。鱧は繊細な骨切りが施されていて花が咲いたような出で立ちだ。その味の奥に感じた不思議。鱧は極めて凶暴な性格で強い生命力を持つと言われる。その海の強者のエネルギーのような味わいが微かながら確かに感じられた。正に山海の自然の贅沢。
[向付] 明石の鯛 余市のボタン海老【絶品】
涼しげなガラスの器だ。二品を自家製の煎り酒で頂く。
鯛は透き通るようなピンクで、照明により細かな細胞の一粒一粒が虹色に反射していた。激しい潮流にもまれたことによる身の締り具合は明らかだ。それでいて凛とした旨味もあり。しっかりと餌にありついた上等な鯛であることに違いない。
それに比してボタン海老はとろみのある柔らかな舌触りで深い甘みがある。それでいて臭みは全くない。
[焼物] 秋田の鱸とじゃこ満願寺
蓼酢で頂く。スズキの筋肉質な白身はパサつかず。噛みしめると充実した旨味が口内に滲む。皮目は香ばしく脂の旨味深し。
付け合わせのじゃこ満願寺唐辛子は彩の赤と緑。
[小吸物] もやしの信太巻きの吸物【絶句】
一口啜って、ため息が出る。鯛の骨だけでとった出汁は超絶繊細な旨味。それを最高度に感じさせる塩の加減が素晴らしい。そこにほのかな酢橘の香りが。
油揚げに巻かれたもやしの断面は一本一本が均等な円形。もやしを見て美しいと感じたのは生まれて初めての体験だ。
[酢の物] 鰯の砧巻き
今度は蓋を開けると、わーと小さな声が漏れる。鰯をキュウリで巻いたもの。トッピングの土佐酢ゼリーの艶が加わりその様相は芸術品のよう。清かな青味と鰯の脂の味わいを土佐酢が包む。
[強肴] 子持ち鮎の有馬煮【絶品】
縁の高い六角の器の中心に、艶のある琥珀色の鮎の顔が見える。この立派な顎は水中の石の表面に生えた苔を剥ぎとり食べ続けることにより発達したものだろう。
潔い歯応え、卵を抱いた鮎全身の複雑な味わいに上等な甘みが絡む。そして、山椒の香りは夏の香り。
味、技、思いの全てが凝縮したような料理だ。
[煮物]長芋梅煮と蛸 オクラ餡
サクッとした長芋、柔らかな蛸の歯応えの対比が楽しい。品のある出汁が効いたオクラの餡は微細な泡が立ち、その香りを膨らませていた。
[食事]徳島の米の土鍋炊き 赤出汁 千枚漬け
・白ご飯
何も付けずにそのまま一杯。粒、コク、甘み。まずはデフォルトの美味さを確認。
・淡島カメチャブ
淡路島の玉ねぎに、淡島通りの肉店の牛、それを礼讃出汁で。肉の美味さの感じさせ方が実に上品。ペロリ。
・サマートリュフ卵かけ【絶品】
さりげなくトリュフ。その香りはこのお店において全く違和感が無い。広がりとコクのある上等な玉子。その黄身が熱々のご飯に触れて甘みを増している。そこにトリュフの芳醇な香りと歯応えが加わり絶品のTKGに。
・佐賀の海苔と礼文島の雲丹
この島ウニは濃い色。オレンジや黄色と言うよりは少し茶が入ったような。さては利尻昆布を沢山食べて育った超贅沢ウニか。それを丁寧にちぎった海苔に乗せてご飯と頂く超贅沢。これでTNOだ。
[水菓子] 有の実
塩水にさらした梨は酸味なく素直な甘み。シャキシャキした歯応えとこの水々しさで、興奮が絶頂に達した味覚中枢神経をクールダウン。
本日も匠工と美味に感謝。
◇亀齢(長野)兵庫山田錦 純米吟醸
◇而今 火入れ(三重)
◇十四代(山形)白鶴錦 純米大吟醸【希少・超絶】
2021/07/01 更新
2019/08 訪問
希少高級素材 ここにマナガツオあり @代々木八幡
梅雨が明けて夏本番だ。こういう時には鰻や肉を食べてスタミナをつけるか、はんなりと京料理で涼を楽しむか。迷った末の後者の選択。
前回訪問時に大将が発した「京料理は出汁料理」とのフレーズが未だ心に残る。当日の献立は汁物が6種。それぞれの美味さをダイレクトに楽しむことが出来た。
一方で美味い料理には美味い酒。と、いつも飲みすぎてしまう。当日は最後まで味覚を保ちながら料理を楽しもうと、お酒は控えめを目指す。
[先付]賀茂茄子の揚げ浸し ~黄交足止
冷製。素揚げされた京の賀茂茄子は心地良い歯応えを残す。ほのかに感じる油の香りが芍薬を唆る。艶やかで生命力を感じさせる緑は枝豆。コリッコリだ。爽やかな茗荷の歯ざわりと苦味と感じながらふり柚子の香りを楽しむ。さて、最後の一滴まで出汁を啜り、最上の物語のスタートだ。
[前菜]鯵とトウモロコシの天ぷら ~団扇皿
非常に繊細な衣で揚げられた淡路の鰺は歯切れよし、臭みなし。黒七味と塩だけで調味されている。なんとも硬派な一品だが、その味わいには優しさと甘さが備わる。
青森のトウモロコシは甘さに品があるな。
[椀]甘鯛と煮麺 ~紫式部
待ってましたの椀だ。紫式部の花をあしらった椀の蓋を開けて思わずため息が。なんとも幽玄な美しさ。真白な萩の煮麺は清流のような流れ。甘鯛の皮目に着いた金色の焼き目が絶妙な彩り。島原の青柚子の皮が優雅に弧を描く。大人の美だ。甘鯛は市場で捌いた瞬間に塩をしてもらうのだとか。お店では一切塩を振らない。その味わいはとても上品で贅沢な均質感がある。そして、大人の味わいほのか。限りなく繊細な鰹と昆布の出汁を感じつつ。
[向付]鯛 ~蟹絵皿
明石の鯛を自家製煎り酒で頂く。若々しい歯応えとそれを追いかける上品な甘み。軽く湯引きした皮は上品なゼラチン質でその感触を舌先で楽しむ。
彩と付け合せは加賀太胡瓜の漬物と石川の花穂だ。淡い緑と桃色が品を感じさせる。
[汁物]鯛出汁 信太巻き ~そば猪口
本日、3つ目の汁物の登場に歓喜。塩をした明石の鯛と昆布だけで丁寧にとった出汁は心身に浸みる。輪切りにされた酢橘と全く同じ太さに整えられた信太巻きは上品な香ばしさと旨味の中に夏もやしのシャキッとした歯応えが。仕掛けお手業の妙は感動ものだ。そしてまた、最後の一滴まで出汁を楽しむ。飲みやすいそば猪口に感謝。
[焼物]真魚鰹の味噌幽庵焼き ~鮑型織部
「西に鮭なく東にマナガツオなし」これは京都の料理人が皮肉を込めて使う言葉だそうだ。その昔、夏の時期に新鮮な鰹が手に入らなかった京都では瀬戸内で取れたこの魚を鰹に見立てそう呼んだとか。その味がとても良かったことから料亭では珍重され、これこそが真の鰹(真魚鰹)だと言われるようになったらしい。京都で修行を積んだこのお店の大将の当時の親方がそう言葉するのをよく聞いていたとか。なるほど奥が深い。
東京ではあまり知られない、西国の最高級魚を味噌幽庵焼きで頂く。瀬戸内は淡路で獲れた真魚鰹だ。
焼き目に照りのあるふっくらとした出で立ち。味噌の漬かり具合は上品で、皮目のコラーゲン的な舌触りと旨味が引き立っていた。
葉唐辛子の金平が味のアクセント。
[酢の物]冷やしトマト ~ガラス蓋物
平泉のトマトをそのままで。これは見た目も味も涼し。トマトの爽やかな酸味を感じる冷たい出汁も美味。4つ目の出汁。
[煮物]冬瓜 ~有田山水画
鶏のボンジリの強さが冬瓜にしっかりと浸みていた。その餡と新生姜の爽やかさのコントラストが良かった。5つ目の出汁。
伏見唐辛子はピリッと鋭い辛さで美味さに陶酔していたところから我に返った。
[強肴]黒鮑の白雲丹和え ~京焼波型
房州の黒鮑と奥尻の白雲丹の出会いはドラマチックだ。厚みのある鮑はとても柔らかく炊かれていて、上品な磯感と共に自身の深い味わいを残す。さっぱりとした雲丹と粒感を残しこってりとした肝が融合し、広がりと深さのあるペーストに。大将から一口で行ってくださいと言われて躊躇しながらやってみた。柔らかく深い歯応えと艶のあるしなやかな舌触り、その後の爆発的な美味さ。それがとても長続きする幸せ。
[食事]土鍋炊きご飯
・まずはそのまま
充実の料理の後のシンプルな白飯はこの上なく美味い。
いつもなら、ここから始まるエンドレスゲーム。上質なTKGから牛しぐれ煮、イクラやコノワタ、牛肉焼きにカラスミなどなど、ギブアップを告げるまで出し続けてくれるのだが…。
・鱧かつ丼
ドーンと出て来たこれには驚いた。淡白な鱧は衣を纏って揚げられて特製のタレにくぐらせてある。それをとき過ぎない上質な玉子でとじてある。その黄身のオレンジが鮮やかで、九条ネギの緑との色合いがパワフル。
それらが極上の旨味となって口の中に飛び込んでくる。それに炊きたてのご飯の食感と甘みが合流。
勿論、この一杯で気持ちよくギブアップだ。
・千枚漬け
上品な酸味と歯応えが効果的な気分転換に。
・赤出汁
これが6つ目の出汁。安心と懐かしさを感じる美味さだ。
[水菓子]夕張メロン ~三角吹き墨
小生の脳内にある味覚中枢はこの辺りで、幸せの混乱状態に陥った。それを水々しいメロンが優しくクールダウンしてくれた。
◇東洋美人 ippo 千本錦 純米大吟醸(山口)
◇磯自慢 山田錦 純米吟醸(静岡)
◇まつもと 守破離 五百万石(京都)
◇写楽 純米(福島)
◇而今 火入れ(三重)
◇田酒 古城錦 純米吟醸(青森)
2021/07/01 更新
2019/05 訪問
孤高なる謙虚さが生む最上質な美味さ @代々木八幡
5月の終わり、正に小満のタイミングだ。
京料理の修行を積んだ若い大将が腕を振るう小さなお店。料理に対するその直向きな姿勢とその料理の美味さが口コミで広がり、今やその人気は地域のトップクラスだ。大将の「京料理は出汁料理」との言葉通りその日の一品一品それぞれの専用の出汁を準備するのだとか。本当にありがたい。
さて。早速。
[先付]三つ葉のお浸し
繊細な出汁にほ海老の香りがほのかに香る。三つ葉の食感は極新鮮で繊細だ。だからこそ、極細に切られた新生姜の香りが生きたように感じた。味覚を研ぎ澄ます、大切な最初の一品だ。
[揚げ物]伊良湖ヒラメのフライと南会津コシアブラの天ぷら
笹雪の器に込められた粋。旬の山海の品をそれぞれに合わせた揚げ方で頂く贅沢。
[前菜]マコガレイ手まり寿司、うすい豆のお浸し、信太巻
特筆すべきは出汁とともに頂くうすい豆の繊細さだ。蒸し暑い梅雨も爽やかに乗り切りましょうと。そして、名前を聞き忘れた小さな魚の揚げ物が美味。その大きさは山椒の葉で隠れてしまうほど。にじみ出る肝の苦味と香ばしさを衣が捕らえていた。
[椀]グジの椀
贅沢な夏の椀。具を覆うよう配されたアスパラソバージュと青柚子が鮮やかだ。
[向付]ハタ/アオリイカ/ウニ
ハタは松輪のもので、艶のある舌触りと甘さがとても良かった。洋野のウニは水々しく滑らかでありながら、深い旨味だ。お見事。
[焼き物]四万十の鮎【超絶】
鮎は香魚とも言われ、四万十川の鮎は最高級とされる。それは豊かな森林から放出されたミネラルを含む清流と上質な藻が豊富だかららしい。そんな最上の鮎は焼き姿も美しい。水流を思わせる器の上で背をこちらに向けて配された。そして、力強く口を開けた様子に天然の力強さを感じる。頭からカプリ。サクッとした心地よい歯触りの後から感じる旨味は超絶に美味い。これが四万十の藻の味香。苦味よりもはるかに勝った旨味に万歳。
白ゴーヤの漬物が鮎の贅沢な後味に爽やかさを加える。
[焼き物]内房のカマス塩焼き
カマスは肉厚で身が締まった感じだ。レモンを絞り、脂と言うよりは白身の味をシンプルに味わう。粗めの大根おろしはこれだけでも美味し。焼イチジクの深い甘みはプチデザートの存在感。
[強肴]アワビの肝和え【絶品】
なんと贅沢な!三重のアワビがドカンと。熱々の茄子を土台に、肝の海に浮いている。幾重にも重なるヒダのように切られたその身はとても柔らかく、しなやかな食感。肝は実に上品に出汁で延ばされていて、これはもはや食べ物では無く最上質な飲み物であるような。
[煮物]豚の角煮【絶品・感動】
弾力があって旨味深い肉だ。絶妙な脂の残し方、筋を感じさせない煮加減。一口食べたその瞬間に、我が半世紀の人生で一番美味い豚の角煮だと心に刻んだ。
そして、新メークイーンは舌触り滑らかで、超絶な甘さだ。それもそのはず。三度も丁寧に濾したのだとか。感謝。
アスパラと木の芽の若々しい緑がアクセントに。
[ご飯]徳島のお米の土鍋炊きご飯
・白飯→とろろ→牛しぐれ→玉子→ウニ
[甘味]本わらび餅
全粒わらび粉餅をその場で練って出してくれる。その様子には迫力あり。その熱々のわらび餅にかけられた香り高い粗挽きのきな粉もまた美味し。
[お酒]
・東洋美人 西都の雫
・飛露喜 (福島)特別純米
・北島(滋賀)純米 雄町
・山形正宗(山形) 夏ノ純米
・田酒(青森) 純米吟醸 短稈渡船
己を殺して料理に向き合うストイックさ。見えないところで手間を惜しまず施す最高の仕込み。そして何よりも、表出する孤高なる謙虚さこそがお客の心を動かしているのだろう。
登りつめる超一流店への道。実るほどこうべを垂れる稲穂であれ。
2021/07/01 更新
2019/04 訪問
雨の日に料理で花見とは ありがたし @代々木八幡
このお店は自分にとって人間道の学びの場。
1つの道を極めた様を観るに、料理はそれを楽しむことで最も身近な共感をもってその極みを記憶することが出来るからだ。
新年度の当日は生憎の雨。珍しくカウンターのみの営業。贅沢な夜になりそうだ。
[先付1]菜花のお浸し 由比の桜海老を乗せて
ガラスの椀の中に春の風景が見える。新緑の丘に満開の桜だ。「ただいま」と言いたくなるこのお店の美味い出汁。菜花は若い食感、由比浦原沖で採れた桜海老は香り豊かだ。外国産とは比べ物にならないと大将が熱く語っていた。ガラスの蓋を開いた瞬間に広がる爽やかな香りは不思議に花の香りに感じた。
[先付2]たらの芽と漉油の天ぷら
山菜の女王と呼ばれるコシアブラと王者のたらの芽。それぞれの小さな芽が発する自然の香りをありがたく頂く。
[前菜]桜鯛の手毬寿司/わらび信太巻き/花びらゆりね/からすみ/ホタルイカのぬた和え
とても彩り鮮やかな一皿。桜の花が散る様を表したよう。ホタルイカは丁寧な下ごしらえのお蔭でとても舌触りが良く上品な芳醇さ。信田巻きのお揚げは出汁が浸みて美味い。キリッと結ばれたあさつきが引き締まった印象に。
[椀]沢煮椀
豚の出汁が加わり流れに変化が。細く切られたタップリの野菜とともにその汁を楽しむ。
鮮やかな緑の葉の上に散る黒胡椒が繊細なアクセントに。
[向付]真子鰈(江戸前)/ウニ(浜中)/鰆(三重)
アスパラ
鮮度高く引き締まった身に舌先で甘みや脂身を探る。
[焼き物]太刀魚(竹岡)の照り焼き
「焼き物は堂々と」との対象の言葉通り、立派な太刀魚だ。照り、炙り加減が絶妙で程よい脂とタレのバランスが引き立つ感じだ。食べ応えあり、ふき味噌やはじかみで変化を楽しむ。
[煮物]若竹煮 ウドの梅煮を添えて
短い旬のタイミングを捉えた一品。日本料理店におけるこの季節の定番メニューではあるが、伏見の筍は均等の取れた歯応え、鳴門のワカメは薄くとも力強く、それらが最上の出汁に浸る。見慣れた若竹煮に対して敢えて見た目に変化をつけず。他の追従を許さぬ作り手の自信と気合いが見える。
[食事]
・ホタルいかの土鍋炊きご飯
今年は不漁で手に入りにくいと言われるホタルイカがぎっしり。
・白ご飯
徳島のあわみのりはバランスのとれた米だと感じる。贅沢な粒感、しっかりとした腰に適度な甘み。このまま、2杯は行けそうだが止めておいた。
・このわた
熱々のご飯の上に立ち昇る磯感と爽やかな芳醇さ。
・かつ丼
まさかのかつ丼に心中は狂喜乱舞だ。カツでご飯が見えない贅沢。クライマックスに相応しい甘から出汁のパワーに目が醒める。
・カラスミご飯
宝石を散りばめたような煌めき、鼻に抜ける豊かな香り。
本日はこれにて大満足。に相応しい感じだった。
[甘味]マンゴー
[お酒]
・亀齢(長野): 純米吟醸 無濾過生原酒 山田錦
・雨後の月(広島): 十三夜おりがらみ生酒
・奈良萬(福島): 純米吟醸生酒 酒未来
・巌(群馬): 直汲 特別純米
・東洋美人(山口): 一歩 純米大吟醸 山田錦
2021/07/01 更新
2019/02 訪問
立春を前に暦にちなんだ京料理の妙を知る
立春が聴こえて寒さが一瞬だけ緩んだ気がして。
そんな朝に予約の連絡をしたところ、その時に豊洲にいた大将がその場で極上の松葉蟹を仕入れてくれた。
日本料理は季節や暦を表現する風習がある。素材だけでなく見た目にもそれらをより具現的に厳格に表現することが京料理特徴の一つだ。
江戸の職人のような気っ風の良さ、京料理のしきたりを備えた厳かさ、両方を持ち合わせる若き大将には毎回心が動かされる。
[先付精進]菜の花の辛子和え、丹波栗の渋皮煮
正に甘辛精進料理。丹波栗は昨年仕込んで漬けてあったもの。渋皮に甘みが浸みて美味い。この鬼皮を剥いた状態から、鬼はぎ として節分に掛けてあるらしい。
[先付]白魚の天ぷら
宍道湖の白魚は見た事もない大きさだ。上品な油の香りが浸みサクッとした食感の衣。それと共にフワッとした白身の食感、絶妙な塩加減で引き出される繊細な旨味。シンプルながら深い味わいの一品。
[前菜]蕗の田舎煮、鯛柚香寿司、
シャキシャキした蕗の歯応えと微かに感じる爽やかな苦味が野生のエネルギーを連想させる。
皿には梅を形取った人参に香ばしく煎られた大豆が散らされている。春の訪れと節分の表現がとても美しい。
[椀]粕汁仕立て 秋田の桜鱒の炭焼き、芽蕪、仙台の芹
1月は白味噌仕立て、2月は粕汁仕立てとの決まりがあるのだとか。優しい白色に若々しい緑の色合い。なんと、新潟の田酒の粕を用いているとのこと。北国でまとめた料理。桜鱒は炭焼きによる焦げ目が付いて香ばしく、ハラスの部分は柔らかく味わい深い。可愛らしい芽蕪の炊き加減も素晴らしい。
[向付]尾鷲の鯖、京都のメジマグロ、余市のぼたん海老、小柴の平目
新鮮な鯖は獲ったその場で血を抜く首折れ鯖。〆具合はかなり薄く、鮮度の自信が表れている。ぼたん海老は大振りで口の中がその甘みで一杯になる贅沢さ。
[焼物]浜坂の松葉蟹の焼物【絶品】
待ってました。生きていた時は透き通るような綺麗なピンク色だった足が鮮やかな赤色に。身をほぐすと、艶やかで弾力性のあるしっかりとした繊維に別れる。それを山にして纏めてサッと酢橘を振って箸で掴んで口の中へ。広がる甘さと舌先に感じる太くしなやかな蟹肉繊維。蟹味噌を和えた繊維は新鮮な芳醇さを帯びていた。そして、最後は熱々の甲羅酒。贅沢の極み。
[強肴]ふくの白子 蕗味噌【絶品】
特大の白子。これを切り分けて塩を振って炭で焼く。とても新鮮なのだろう。形は崩れずしっかりとしている。薄皮は香ばしく、中は熱々。上品でコクのある深みのある味わい。
色合いも味わいも対比的な蕗味噌との相性も抜群だ。
[煮物]鴨と聖護院大根の煮物
刻み春菊の鮮やかな緑。とろみのついた出汁には重層的な旨味が感じられる。聖護院大根は炊き具合良く、繊維と微かな辛味を残した感じだ。海老芋の甘みとねっとり感。贅沢な野菜の旨味の中で鴨の食感と脂味が効果的なアクセントになっていた。知的な料理だ。
[食事]
・松葉蟹炊き込みご飯【絶品】
松葉蟹の旨味が良く出ている。トッピングの蟹味噌が上品なコク。
・すじこを乗せた松葉蟹ご飯
贅沢に贅沢を掛け合わせた、2乗の効果のある美味さ。
・白ご飯
リセット。
・牛のしぐれ煮を乗せて
・玉子かけご飯
・イカの塩辛を乗せて
・自家製のカラスミ【絶品珍味】
・キュウリのぬか漬け
・自家製の千枚漬け
・すくい豆腐の赤出汁
[甘味]大将季 だいまさきと読み、デコポンのことだとか
一粒一粒が瑞々しく深い甘みのデコポンだ。
◇亀鈴 無濾過生原酒(長野)
◇雨後の月 元平 搾りたて生酒(広島)【絶品】
相原酒造と望月商店がコラボして創り出したお酒だとか。料理をより美味しく食べるためのお酒だ。感心。
◇奈良萬 純米吟醸生酒(奈良)
◇而今 特別純米 火入れ(三重)
◇而今 特別純米 無濾過生原酒(三重)
◇而今 純米吟醸 千本錦無濾過生原酒(三重)
2021/07/01 更新
2019/01 訪問
絶やさない謙虚さ 料理は嘘をつかない
寒風吹き荒む中、京の正月料理を楽しみに伺った。
シンプルな見た目の奥に複雑で手の込んだ下拵えの技が潜む。気持ちと手間と時間が込められた料理には見栄えや美味に加えて何かを感じる、ような気がする。その有り難さに感覚を研ぐことも一つの料理の楽しみ方かもしれない。感心、感動。
それを信じて手間や謙虚さを惜しまないことは料理以外ににも通ずる事と思い、頂いた自らが年始めに意を固めるきっかけとなった。感謝。
[先付]このわた蒸し【絶品】
凍えた身体にしみる温かさ。そして、口の中いっぱいに広がる芳醇で新鮮な磯感。このわたの風味は熱を加えても不変なのかと感動。一口一口の合間に感じる爽やかさは酢橘によるもの。
[前菜]
・子持ち鮎の甘露煮【絶品】
奈良の希少な子持ち天然鮎は小振りで引き締まった感じ。絶妙な加減で甘露煮されて輪切りにされ積まれている。その断面は繊細で綺麗だ。肝の上品な苦味が加わり、とても知的で官能的な味わいに。天然でないとこの味にはならないとのこと。贅沢。
・赤なまこ
能登の赤なまこの食感に感動。一噛み目はかなりな噛み心地。二回三回と繰り返す毎に歯が通りやすくなり旨味が広がってくる。中毒になりそうな感覚だ。
・鯖棒寿司
・柿のくるみ和え
・くわい煎餅
皿の上に散らされた、亀甲に形取られた薄い煎餅。軽快な歯応えと香ばしさ。
[椀]京雑煮 2019バージョン
白味噌の海の中に真っ白な丸餅の島が浮かぶ。中央にアクセントのからしが。シンプルながら伝統を感じさせる印象だ。餅の下には唯一の具材が隠れていた。なんと、これが今年の干支にちなんだ猪肉。白全体の繊細さを損なわない上品な味付けだ。広がり感のある出汁と白味噌の上品さ。
[向付]平目(江戸前)、あおりいか(淡路)、かじき鮪(油津)
器の深さには歴史的な意味があると大将に教えてもらう。
[焼物]氷見鰤
とても綺麗な焼き色。脂の旨味が全体に行き渡り美味し。菊花蕪の爽やかな酸味、丁寧に下ごしらえされた縞笠柚子の甘みがリフレッシュ効果に。
[煮物]源助大根、新筍、車海老
春菊あんの緑と針柚子の橙が加わりとても彩の豊かな一皿だ。それぞれに掛けられた下ごしらえの手間に感心。それらの旨さの特徴を優しいあんで纏めている。
[スペシャリテ]海老芋揚げ【絶品】
巨大な海老芋を数種の出汁で何度も炊いて最上の甘さを引き出すのだとか。サクッと熱々を頂く。甘さの奥に粋な旨味あり。
[食事]
・香箱蟹のご飯
外子のオレンジ色とほうれん草の鮮やかな緑色がとても艶やか。
・いくらを乗せて
・白ご飯
・卵かけご飯
・牛しぐれを乗せて
・自家製からすみ
・赤だし
・胡瓜ぬか漬け
[甘味]しんしろ苺紅ほっぺ ミルク
◇雨後の月 特別純米 十三夜 おりがらみ(広島)
◇大観 しぼりたて特別純米(茨城)
◇宮泉 純米にごり(福島)
◇正宗 純米(山形)
◇写楽 初しぼり純米吟醸(福島)
◇而今 純米吟醸(三重)
◇田酒 純米大吟醸 斗瓶取(青森)
2021/07/01 更新
ザッザッザッ。
涼しげでリズム感のある音が聞こえる。
見上げると、神経を集中して鱧の骨切りをする大将の真剣な顔が見える。
今宵の宴の始まりだ。
匠の所作を見ながら料理や酒の話、そして世間話を。カウンター越しのこの楽しみこそが おまかせ の極意。
しとしとと小雨の降る梅雨の夜。
猛暑の夏を乗り越えるべく、上品にしてパワフルな料理を堪能させていただく。
[先付]賀茂茄子 田楽
自家製の玉味噌と上賀茂の大茄子。
カランカランと賀茂茄子を揚げる音に続いてパタパタとそれを焼くのに炭を仰ぐ音。
風情あるな。
山椒の香り共に夏の贅を頂く。
[前菜]潤菜 キウイ
広島のスーパー潤菜。
[小吸い物]ながれこ 夏かぶ
下田の床節と東北の夏かぶ、吉野の葛で。
ことぶしだけで取った出汁が素晴らしい。
品のあるコクとボリューム感のある旨み。
この時期の蕪は小ぶりで甘くないので素直に出汁が沁みるんですよと大将の解説。
なるほど、その通り。
[向付]鱧焼き霜 梅肉
天草の鱧を自家製の梅肉で。
燃えた骨を丁寧にハサミで切っている。
淡白な味のイメージを持つ鱧だが、香ばしさと共にしっかりとした旨み。
やはり上物は違う。
[椀]葉隠すっぽん
日光の水とすっぽんのみの汁。
ミニマルさを極めた最上等の料理だ。
身体に沁みる出汁。
プリプリの皮、骨まわりの筋肉。味わいと食感の変化も楽しい。
[箸休め]万願寺唐辛子
茗荷とじゃこ山椒。
[焼物]四万十鮎
バジル酢とはじかみで。
まるで泳いでいるような景。
頭から尻尾まで全部食べられる。
ほろ苦さとバジル酢のマッチが斬新だった。
[小鍋]葱鍋 トマト
恐竜のスープ。
グツグツと煮立った状態で到着。
爽やかなトマトの酸味と軽快なネギの苦味。
[食事]
・まずは白米
ぬか漬け、きんぴら、味噌汁 と共に。
・中川牛のカルビ肉じゃが
家庭料理の王様がこう化けるのか。豪華なる独創性を感じる料理。
・焼きトウモロコシご飯
ピュアホワイト。
・TKG
黄金の玉子で〆る。
[水菓子]春日居の夢桃香(ゆめとうか)
◇黒龍(福井)純米大吟醸
◇夏どぶろく(青森)
◇田酒(青森)火入れ 純米吟醸 山田錦
◇而今(三重)純米大吟醸 白鶴錦2022
◇十四代(山形)秘伝玉返し 本丸