2回
2015/10 訪問
「天ぷら」と「蕎麦」の高いレベルでの並立がコンセプト、一軒で二度楽しめる店
土曜日の午後に成城学園の駅前で催された、若手のテナー歌手による「まちなかコンサート」に出かけた。
その後に、連れの友人のたっての希望で訪れたのがこちらの店。
5時半からの予約を入れておいたので、タクシーで向かうつもりでいたが、ちょうど二子玉川行きのバスが出るところだったので、これに飛び乗り、最寄りのバス停から10分ほどの道のりを歩きだす。
私は3回目だが、過去2回はいずれも昼時。
何しろ日の高い時間帯でも迷ってしまうような場所なので、たどり着けるか心配だったが、友人の感が冴えて無事到着。
予約の際にカウンターでとお願いしておいたが、目の前の籠に季節の野菜や茸が盛られ、ご主人の包丁さばきも眺められる2席が用意されていた。
夜のコースから4,000円「月コース」を選択し、足りなければ追加することとする。
アラカルトの天種は別書きになっており、この日はそこに記載の無い「牡蠣」も有るとのこと。
そう言われれば、頼みたくなるのは必定。
コースに含まれない「穴子1尾」と「牡蠣2粒」を早々に注文しておく。
まず出されたのが、定番の「和風サラダ」。
ちぎったレタスと水菜に揚げ蕎麦を散らし、酢の当たりの柔らかなドレッシングが掛けられている。
次いで、早速天ぷらが揚がって来る。
出て来た順番は次の通り。
*巻海老の頭:硬い殻は外されており、素揚げでは無く少し衣も付いているのでソフトな揚げ上がりで、上々のスタート。
*巻海老2尾:それほどレアな状態では無いが、独特の甘みと確かな旨みが感じられる。
*グリーンアスパラ:太めのものが1本分。揚げる前に筋が障らないように丁寧に包丁目が入っており、食感が心地良い。
*鱚:肉厚だが、箸を当てるとほろっと崩れる。半身をレモンと塩で、残りの半身をおろし入りの天つゆでいただく。
*ヤングコーン:サクッとした軽快な歯応え。
*牡蠣(追加分):結構な大きさのものがコロッと登場し、頬張ればジュースがほとばしる。
産地を聴くのを忘れたが、やはり牡蠣は少し火を通した方が旨味を増すことを確認。
*さつま芋:この時期に甘味を増す旬物。カリカリの衣を纏い、じっくりと揚げられて半割で出される。
このタイプのさつま芋は時々見かけるが、こちらでも素材の良さをそのまま味わえる。
*穴子(追加分):一尾をカットして揚げたものが、二人に分けて供される。
ご主人は'美味しい方をご婦人へ'と言って、尾の方を連れに、胴の方を私に出してくれた。
一般的に鰻や穴子は、よく動かす尾の方が美味とされているが、私はたっぷりと身の厚い胴の方が案外有り難かったりして…。
*かきあげ:まさに真打登場と言った出来栄え。
今回はいつもの芝海老と刻んだアスパラに加え、蓮根の小角切りが入っており、この食感がまた楽しい。
ご主人が天ぷらの技に秀でているのは当然だが、蕎麦屋で出されるかき揚げとして、これ以上のものに出会ったことは無い。
酒は最初に「蕎麦ビール」、その後「日高見」「乾坤一」を注文。
美味い天ぷらと共に、存分に楽しむ。
'声掛け'で頼んだ蕎麦は「せいろ」と「粗挽き」の二色でお願いした。
こちらも相変わらずきちんとした仕事。
天ぷらを揚げる合間に素早く蕎麦を茹で上げて、一枚ずつ出してくれる。
ともに香りは十分で「せいろ」の適度な歯応えとコシ、「粗挽き」の野趣は有ってもざらつきの無い舌触りが秀逸。
少し残しておいた「かきあげ」と共に味わってみたが、こちらも当然ながら美味い。
つゆも丁寧な仕上がりで、薬味や蕎麦湯も手抜かりは無い。
最後にデザートとして、こちらの定番の「蕎麦がきの黒蜜掛け」が出され、暫し余韻に浸る。
忙しい中でもご主人とは、作業の合間に言葉を交わせた。
常連客とは言えない私の事もきちんと覚えていてくれて、方々の店の話題などで和やかに会話が弾む。
お勘定は一人ちょうど6,000円で、この内容ならば破格と言える。
週末のため次々と入店してくる客に対し、天ぷらにも蕎麦にもそつのない仕事振りでこなしていく、段取りと手際の良さにも感心。
今回も極めて満足度の高い、寛いだ時間が流れた。
改めて、わざわざ足を運ぶ価値の有る店であることを実感。
逆に誰でも気軽に寄れる場所に無いことが、かえって好ましいとすら思えてしまう。
(重複するものも多いが、新たに16枚の写真を追加掲載)
≪2014年4月のレビュー≫
前回から3年半近く経過。
こちらについては料理の出来はもとより、雰囲気や接客面でも大変良い印象が残っており、再訪したい気持ちをずっと抱き続けながら、やはり場所的に行きづらいためなかなか叶わなかった。
最近になって相次いでアップされたマイレビュアーさん方の書き込みを拝見し、是非近いうちにと言う思いが高まっていた。
新宿での用事を午前中で終えて、急いで小田急線で成城学園まで向かう。
そこから電話を入れて空いているかを確認。
‘ラストオーダーは1時半ですが宜しいでしょうか’という問いに、’これからすぐに向かいます’と告げて、二子玉川行のバスに飛び乗る。
最寄りのバス停から分かりにくい道を10分近く辿り、何とか1時丁度に到着。
引き戸を開ければ、時間帯のせいか先客はご近所さんと思しき方が一人だけ。
カウンターの一番奥の席に通される。
ご主人は私の顔を見るなり、これだけ間が空いたにもかかわらず覚えていてくれた。(それだけ妙な能書きを垂れる、記憶に残る客だったという事だが)
まずビールを頼もうと品書きを眺めるが、花番である若い女将さんから「そばビール」を勧められてそれに従う。
料理は前回と同じ「昼の特別ランチ」にする。
内容は「サラダ・天ぷら(穴子・野菜4品・かき揚げ)・2色せいろ・デザート」というラインナップ。
時勢がら最近値上げされたようだが、野菜が一品増えている。
先に出された、揚げ蕎麦を散らした「和風サラダ」は前回と同様。
飲めるほどのドレッシングの優しい味わいが好ましい。
天ぷらはまず季節の「筍」と「グリーンアスパラ」、その後に名残りの「蕗の薹」と続く。
精妙な揚げ具合で、パウダーソルトで食せば、春の息吹が口に広がる。
「穴子」は一尾分。
ややきつめの揚げ加減だが味が濃く、おろし入りの天つゆとの相性が良い。
酒はおすすめの「天青 にごり酒」をもらう。
「かき揚げ」は前回も感心したが、相変わらず上々の出来。
5センチほどの厚みがあるが、油切れが良くからりとした仕上がり。
中身は芝エビと細かに刻んだアスパラだけだが、しっかりと中まで火が通り、箸で割ってもそれぞれがきちんと旨みと食感を残している。
主人の卓越の技を感じる。
最後の「さつま芋」もこちらの名物。
筒切りを丸のままじっくりと火を通し、半割にして出される。
レモンを絞れば、より甘味が立ってくる。
酒は昼なので控えめにしようと思っていたが、見事な天ぷらを前に「乾坤一」を追加してしまう。
蕎麦は2色のうち通常の「粗挽き」が切れており、代わりに「桜切り」になるとのこと。
当初から出来ることならば、先日AI94さんが食されたこちらに替えてもらおうと思っていたため、これは嬉しい申し出。
先に出された「桜切り」は仄かにピンク色。
しかし香りはしっかりあり、どういう製法か主人に聞いてみたら、桜の葉を微粉にして混ぜ込んで、色は別にかすかに付けているとのこと。
他店の「桜切り」でははっきりと桜の葉の存在が確認できるものもあるが、こちらのは見た目も食感も奥ゆかしい。
次いで出された「せいろ」は緑がかった色合いで、香りもしっかりと有る。
「春そば」かと主人に尋ねると、昨年秋に収穫の群馬産とのこと。
保存状態が良ければ、今の時期でも色と風味は楽しめるという事である。
どちらも端正に揃った細打ちで、食感やのど越しも素晴らしい。
「つゆ」もこの2つの蕎麦に合う、薫り高い仕上がり。
自然体の「蕎麦湯」も嬉しい。
デザートは「蕎麦がきの黒蜜かけ」で、葛とか寒天などの添加は無く、緩めに掻いた「蕎麦がき」を冷やしたものとのこと。
滑らかな舌触りと、炒った蕎麦の実のアクセントが楽しい。
期待通りの大満足の出来映えに、実に快適な時間を過ごせた。
この内容ならば、値段は極めて良心的である。
閉店時刻の2時を少し回ってしまったことを主人夫妻に詫びて、気持ちよく店を後にする。
帰りは前回同様、春の陽気に誘われて多摩川の土手沿いに、二子玉川まで30分ほどの道のりをのんびりと散策する。
芽吹き始めた緑と、川面を渡る風が心地よい。
まさに'I’ve been mellow'な、贅沢な午後であった。
≪2010年11月のレビュー≫
昔ながらの「江戸前蕎麦屋の天ぷら」は、厚めの衣で固い揚げ上がりが流儀。
これは伝統の種物である「天ぷらそば」用に、熱いかけ汁を吸っても簡単に崩れず、濃いめの醤油味とも釣り合うように仕立てられているためである。甘辛い「丼つゆ」が染みた衣が美味さの所以の、「蕎麦屋の天丼」と同じ理屈である。
40年ほど前から「天もり」という新顔の種物が世に広まり始めたが、味の面で納得することはほとんど無い。
気取って専用の「天つゆ」や「塩」を付けるところも多いが、おおかたは派手に衣の花を咲かせ、ボテっとした旧態然の「蕎麦屋の天ぷら」であるため、あっさりとした食し方には向かない。
蕎麦の「つゆ」で一緒に味わった方がよっぽど美味く、その方が両者の相性を楽しむ「天もり」本来の趣旨に適う。
「高級天ぷら屋」並みに、活け物の魚を使い、技術的にもまずまずのものを出す蕎麦屋もあるが、多様なサービスをさばく中で「蕎麦」と「天ぷら」という、ともに秒単位の仕事をコンスタントに高水準でこなしている店は稀で、気ぜわしさの方が際立ってしまう。
そんな様々な不満を解消してくれるのが、こちらの店である。
主人はそれぞれの名店での修業経験が有る方で、両者の高いレベルでの並立がコンセプト。
言わば‘一軒で二度楽しめる店’である。
コース仕立てが主体で、「天ぷら」のコースを楽しんだ後にゆっくりと蕎麦で〆る、という流れが定着しているところが好ましい。
土曜日などは、予約が取れないこともあると聞くので、平日の昼時に訪れた。
一応、確認の電話を入れた上で、「成城学園」からバスに乗り、さらに10分ほど歩いて到着。
昼のコースから3,000円の「特別ランチ」を選ぶ。
最初に「揚げ蕎麦を散らした和風サラダ」とたっぷりの「大根おろし」の小鉢、さらに「そばつゆ」の徳利や猪口、薬味が運ばれてくる。
天ぷらの修業先は「銀座天一」。数々の評判店を輩出してきた名門であり、数寄屋橋の「いわ井」の主人とも時期が重なっていたと伺う。
サラダをつまみながら、ビールで喉をうるおして「天ぷら」の出を待つ。
まず太めの「グリーンアスパラ」、次にほど良い大きさの「穴子」1尾、さらに「しめじ」がころ合い良く目の前に並べられる。
「レモン」に「パウダーソルト」と、おろしたっぷりの「天つゆ」で交互に食す。何れも精妙な仕事で実に美味く、「宇奈根」という銘柄の冷酒を追加。
少し間が空いて、結構な大きさの「芝海老のかき揚げ」と半割の「さつま芋」が揚がってくる。
蕎麦屋で‘厚みのあるかき揚げ’と言えば江戸前の老舗系に多いが、火の通し具合や油切れなどで、満足のいくものにはなかなか巡り会えない。
こちらの「かき揚げ」は火通りが丁度良く、素材の旨味が十分に楽しめる見事な出来栄えである。
全般に敷紙の油染みが少ないことが、腕の良い証拠と言える。
‘蕎麦はお声を掛けてください’ということで、酒が切れた頃に注文。
2種類の蕎麦が、やや小さめの笊で時間差をおいて出される。
「もり」は細めだが適度なコシで、喉越しの良いもの。「粗挽き」は中太で星も見えるが武骨さは無く、歯当たりが心地よい。
「つゆ」は中庸な濃さで、深みのある味わい。
「蕎麦湯」もナチュラルであるため、後味が良い。
何れも蕎麦の修業先の「本陣房」に倣った仕事。
最後に「蕎麦豆腐」にあっさりとした黒蜜がかけられたデザートが供され、暫し満足感に浸る。
内容からして、PCは極めて高い。
主人がほぼ一人で賄っているが、オープンキッチンにして客のペースに目を配りながら、段取り良く仕事をこなしていく様子は見事である。
カウンター越しに気さくに客とも言葉を交わし、「本陣房」では銀座の「國定」や麻布の「たじま」の主人と一緒だったことなどで、話に花が咲いた。
店の在処は確かに辺鄙な所だが、それでも客に足を運ばせるだけの自信が窺える。
ほとんどが予約客であり、雰囲気にも仕事にもゆとりがあるため、かえって好立地とも言える。
車でやってくる人が多いが、ここで酒を楽しまないのはもったいない。
陽気の良い時に、散策がてらに訪れることをお勧めする。
2015/11/03 更新
定期的に訪れたいと思いつつ、出掛けるとなるとほとんど一日仕事になる場所柄と、それに伴いなるべく陽気の良い時期を選ぼうとすると、なかなかタイミングが合わなかった。
さらに今年に入ってからのコロナ禍も重なり、何と前回から5年も経ってしまった。
秋が深まり寒さもつのる前にと、好天が見込まれる日を選び昼間の予定を全てクリアした上で足を運ぶ。
人気店でありこのご時世で席数を減らしている可能性もあるため、念のため予約を入れておいた。
いつも往路は成城学園からバスを利用し、停留所から分かり難い道を7.8分歩いて向かうのが常だったが、今回初めて狛江の駅から向かう。
本数が少ないバスが南口から出ており、小型バスしか通れない「水道道路」という細い一本道を進むが、これだと停留所からほとんど歩かずに済む。
11時半の開店より10分近く前に到着すると、ママ友グループを含めた数名がすでに待っている状況で、予約を入れない方も含まれているようだ。
定刻通りに暖簾が掛かり、女将さんに導かれて入店。私にはカウンターの一番奥の席が用意されていた。
予約なしの客もこの時点で何とか席を確保できたが、その直後に訪れたフリの方は断られており、つくづく予約を入れておいて良かったと思う。
席に着くなりご主人から挨拶されたが、5年も経ているのに私の顔を思えていてくれたことに感激。
注文は'昼のおしながき'から「昼の特別ランチ」(3,500円)を選択。
合わせてビール(クラシックラガー中瓶)を注文。
最初にサラダが出されたが、ちぎったリーフレタスに揚げ蕎麦を散らしそばつゆベースのドレッシングが掛かった変わらぬスタイルだが、今回は少しオイリーに感じた。
これを摘まみにビールのグラスを傾けながら、ご主人の手際の良い作業を眺めるのもこちらの楽しみの一つである。
私がゆっくり呑んでいるので'お蕎麦は少し後でお出ししましょうね'と言ってくれる。
それほど時間が掛からず、まず「野菜3品(ヤングコーン・茄子・蓮根)」が供された。
しっかり目の揚げ切りだが、それぞれの持ち味と食感が好ましい。
次いでほど良いサイズの「穴子」が登場。
2つにカットされて揚げられており、半分は塩で残りは大根おろしたっぷりの天つゆで味わうが、濃密の旨味が楽しめた。
次にこちらの名物の一つの「丸十」の揚げ立てが、半分に切られて出された。
外はカリカリ中はホクホクの食感で、レモンを絞ると甘みが立って実に美味しい。
天ぷらは単品での追加も可能。
その中の「松茸」の文字が目に入り、ご主人にお願いしてコースの中に挟んでもらった。
一本分が半割にされており、酢橘と塩を振って口に運び香りと歯触りを楽しむ。
熱々を急いで頬張ったよりも、少し間をおいた方が香りは強く感じられた。
最後がスペシャリテの「かきあげ」で、高さのある円盤状に綺麗に纏められている。
割ってみると今回は少し火通りがきつめかなと思うが、小海老の旨味は生きておりレベルの高い仕事であることに変わりはない。
酒は「天青 にごり酒特別本醸造」を一合。
すっきりとした口当たりと奥行きのある味わいが好ましい。
次いで「五凛 純米」をハーフサイズで頼むが、こちらは女将さんがグラスに一升瓶から注いでくれる。
満席状態で雰囲気は多少落ち着かないが、気分は上々で寛いだ時間が流れる。
急ぎませんからと告げて、蕎麦をお願いしておく。
忙しい中でもご主人は要領よく作業をこなしており、それほど待つことなく一枚目の「せいろ」が出された。
江戸前の伝統に則った'二八'で、香りも食感も良好。
徳利で出されるバランスの取れたつゆの出来も相変わらずで、これで蕎麦を啜ることで爽快な喉越しが楽しめる。
もちろんわざわざ残しておいた「かきあげ」入りの天つゆに絡めても美味い。
少し間を置いて出された「粗挽き」は、以前に比べて明らかに太打ちになっており、修業先の「本陣房」の「田舎そば」を彷彿させる。
時々で打ち方を変えているのかも知れないが、啜ると言うより噛みしめて食べるスタイルも、食感に抑揚が出来て面白かった。
蕎麦湯は目の前の茹で釜から汲み上げられる自然体。
粘度が無くすっきりと伸びるため徳利のそばつゆを割って飲み干すとともに、天つゆの小鉢にも注いで全てを平らげる。
食後の甘味はいつものように「そばがきの黒蜜かけ」。
ほのぼのとした味わいが好ましく、蕎麦茶をすすりながら充実のコースの余韻に浸る。
期待通りの密度の高い時間を堪能。
勘定は松茸を欲張ったおかげで8,000円ちょっととなったが、満足度に照らせばむしろ安く感じる。
久々にご主人の仕事ぶりを目の当たりにしたが、天ぷらと蕎麦という何れにも秒単位の精度を要求される作業を、一人でこなしていることに改めて感心。
特に素材により時間差を置いたり、かき揚げを手際よく纏めたり、じっくりと揚げなければならない丸十への気配りなど、天ぷら鍋への技と神経の使い方はまさに名人芸である。
天ぷらと蕎麦が高いレベルで並立する蕎麦屋は、最近は都心でも何軒か見られるようになったが、こちらはその草分け的存在。
しかも内容に照らせば自己店舗であることを差し引いてもCPはかなり高く、しかも5年前と変わらぬ値段(税金分だけが値上がり)で提供されているのは立派である。
帰りは穏やかな陽気に誘われて、いつものように多摩川の土手沿いを30分ほどかけて二子玉川まで散策したが、実に気持ちの良い午後となった。
道すがら近所の農家が設置したと思われる「野菜の無人販売ボックス」を発見するなど、今さらながら世田谷区内とは思えぬ光景に心和む。
便は悪いが、重ねて足を運ぶ価値のある店。
こちらも私にとっては大事な一軒である。