『「納札亭六輔」の思い出』蓼喰人さんの日記

蓼喰人の「蕎麦屋酒」ガイド

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 「池の端藪」の他の方の書き込みを眺めているうちに、あそこの「つゆ」を「たれ」と呼んでいる記述が目についた。
 「たれ」とは辞書にも載っているように、‘焼き鳥、鰻、焼肉などに使用する、粘度を持った主に醤油ベースの調味料’である。
 確かに「藪三家」や「布恒」あたりの「つゆ」を、「たれ」と表現をされても仕方ないような気もするが、やはり蕎麦屋で「たれ」というのは、耳触りの良いものではない。

 これに関連して、思い出されることが有る。
 今から25年ほど前のバブル景気真っ只中の頃、現在の「東神田」の交差点近くに「納札亭六輔」という蕎麦屋が在った。
 こだわりの権化のような仕事ぶりと値段の高さ、更に客を客とも思わぬような不遜な態度が有名で、確かに蕎麦は美味かったが、私にとっても決して良い印象の店ではなかった。

 そこの主人が発した数々の小生意気な言動の中で、特に記憶に残っているものの一つに、こんなことが有る。
 主人は蕎麦を出す前に‘これ、ちょっと飲んでみて’と、自らの「つゆ」を差し出した。
 ‘どう?、飲めるでしょ、飲めるのが「つゆ」、飲めないのは「たれ」と言うんだよ’と言い放った。
 私もその時はなるほどと思ったが、後から考えると、これは暗に「藪」系の蕎麦屋への批判であったと考える。

 その店は程なく姿を消したが、今となってみると、もう少し突っ込んだ屁理屈を聞いておくべきだったと思う。
 尤も今でもあの店が、あのままの営業スタイルで存続するならば、「食べログ」は元よりグルメ投稿サイトでは賛否の議論が白熱化し、大混乱に陥ることは必至と思う。
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