『速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造― ①画風の変化 御舟vs其一』コロコロさんの日記

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山種美術館で速水御舟展が行われていますが、
今年のはじめ、山種美術館に行くまでは、
速水御舟なる画家の名前も読み方も絵も知りませんでした。


■代表作への期待の高まり
何度か山種美術館を訪れるうちに、代表作《炎舞》《名樹散椿》を知ることとなりました。

《炎舞》の炎の妖艶さ・・・ 
その周りを飛ぶ蛾の向きがすべて同じ方向だという驚き
御舟自身が、炎の周りの黒は、二度と描けないと言っているという
トリビアなどを知るにつけ、本物を見たらさぞや・・・・と期待が
どんどん膨らんでいきました。

そして重要文化財でもある《名樹散椿》
この作品は、山種美術館のHPのトップ掲げられている代表作。
山種美術館情報を入手する際に、毎回、目にしていました。
そのたびに、これが重要文化財に指定されるほどの
傑作という意味が全くわかりませんでした。

しかし日本画を何度となく見るようになり、
「屏風は平面で見るのと実物は違う」ということを理解し始め、
ある時、この絵が屏風になったら・・・・と、想像したときに、
この屏風のすごさが分かった気がしました。
ミュージアムショップにあったお土産の屏風を見て、想像どおり。
ぜひ、実物を見てみたい・・・・

そして、先日「鈴木其一展」の内覧会トークで、
《芒野図屏風》の裏には白椿が描かれていて、今は分割され
フリーア美術館に《白椿・薄野図屏風》として所蔵されていると
見せてただいた屏風が  ⇒こちら

これを見た瞬間、山種美術館の《名樹散椿》と瓜二つ
と思ったのでした。

(その時には、そのように感じていました。)


そして、御舟の《炎舞》で、蛾を正面で描いている
と初めて聞いた時は驚きました。
ところが、其一展を見た時、其一もあえて正面から描いていると解説がありました。
御舟と同じ! と思ったのですが、其一の方が古いのです。
知識というのは、先に知った方が、先駆者と思ってしまうところがあります。
御舟は其一の描き方を踏襲していたのでしょうか?
それとも、自分でこの描き方を見つけたのか・・・・
そのあたりの、アーティストのオリジナリティーについては、
常々、興味があるテーマでした。


企画を見る前から、御舟と其一の共通性のようなものを感じていて、
それは単に、モチーフ、テーマの重なりにすぎないのか。
あるいは、御舟は、其一の椿や蛾など、参考にしていたのか・・・
御舟自身が、自分で見出したのか、そんなことも確認しつつ、
実物のすごさを実感たいと思っていました。


まだ見ぬ君との出会い・・・・・というわけで、
今回の「速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造―」
首を長くして待っていました。
また、山崎館長の大学院時代の研究論文は、速水御舟についてだと伺っていました。
単に学生が研究するのとは全く違います。
一味も二味も違う内容のはず。
そんな館長直々のトークを聞けるブロガー内覧会は見逃せません。
とても楽しみにしてました。

ところが、残念なことに予定が入ってしまい、参加することができませんでした。
内覧会の解説を少しでも補うためにギャラリートークの日に合わせて来館しました。



■ギャラリートーク前の鑑賞
ギャラリートークは前回と時間も受付形式も変わったようです。(たぶん)
9:50から整理券が配られます。
5分ほど遅れてしまいましたが、確保することができました。
10:30からのギャラリートークまで、自由鑑賞ができます。

ギャラリートークを聞く前の30分というのは貴重です。
その時間をうまく使って、企画の全体像をざっと把握し、作品を見ておく。
トークを聞く前の、第一印象を自分の中にストックしておくことはポイントです。
解説を聞いたあとの比較もできます。

いきなりギャラリートークを聞いてしまうと、
人は解説のとおりにしか見えなくなってしまうものです。
思いもかけない自分の見方や発見があるのにそれを逃してしまうことがあります。

そして、この30分の使い方にはちょっとしたコツがあるのですが、
それは自分の内緒のノウハウということで・・・・・(笑)
ヒントは人の行動と逆を考えるといいです。



■予習
ブロガー内覧会が行われたあとだったので、簡単な予習もできました。
特に時間をとらなくても、電車の移動中に、レポートを眺めて開催の概要や
裏話など事前に把握することができます。

興味のある《炎舞》については、
「蛾の半数の種類が判別できている」
「創作の画と柄を反転したものがある」
「蛾は輪郭をぼかして描いているから動いて見える」
など、新たな情報もゲットしました。



■画業の変遷
そして、HPにも紹介されていますが、
最大の見どころは、画風の変化。その変遷だそうです。
一人の画家が描く画風、テーマ、描きかた、構図、ジャンルなど、
同じ画家とは思えないというほどのバリエーションがあり、
他館から借りて、それをあますところなく見せていいるというのが、
今回の特徴だそうです。


確かに内覧会のレポートで紹介されていた、
御舟の青の時代、ゴッホの青の時代を彷彿とさせます。
あの《炎舞》や《名樹散椿》からは想像できないような画風、色で、
見る前からびっくりさせられました。
御舟はこんな絵を描いていたんだ・・・・


〇其一の画風の変遷
しかし、其一だって、負けてはいません。
其一を見て一番、驚かされたのは、
描く対象や世界、モチーフがかなり多岐に渡っていたこと。
そして、その時代、時代に新たな描き方や構図などチャレンジし、
新しいものを生み出し続けていたこと。
とても、一人の人間が描いたものとは思えないような画風の幅に、
見るたびに驚嘆させられていました。

果たして御舟の画風の広さというのも、それに匹敵するほどなのか・・・・ 
あるいはそれを超える画業の広さを持っているのか
「青の時代」の驚き、その後、どう変遷していったのか、とても興味深いところです。


〇エッシャーの変遷
「エッシャー」を見た時も、初期とその後の画業の変遷にびっくりさせられました。
エッシャーは画家、アーティストというジャンルとは違うという位置づけで、
見ていたため、その驚きも手伝ってその画業と変化にびっくりしました。


〇画家は変化するものでは?
考えたら、アーティストは、同じことをしているわけではありません。
時代、時代で新たなものを発していく。それがアーティストたるもの
そのふり幅の大きさや、これまでにないものを作り出す。
「作風の変化」はどんな画家でもあります。
「変化の幅が広い」という特徴を、
業績と位置付けるためには、どれだけの幅が必要なのか。

其一もそうですが、若冲、北斎にしても、
過去には作風の幅の広い絵師が、何人も存在しているのを見ています。

〇御舟の変遷はいかに
御舟ほど作風が変わった画家はいないとのこと。
一人の画家とは思えないような多様な作品群
常に変革を求め、破壊と創造を繰り返していた・・・

全く同じことは、他の有名絵師でもよく感じさせられてきたことです。
展示の主力テーマに掲げ、他館から借りてさらに充実させたということは、
其一やこれまで驚かされた絵師以上の、作風の変化を見せてくれるということなのか・・・
大きな期待となっていました。

(が、若冲、北斎には及ぶはずもない・・・比べることがナンセンスなのか。
 そこまでの画業であるとは当然思えない。 
 展覧会の売り、キャッチとしての「画業の広さ」ということなのだろう
 と思っていたことも事実。

 では、「画風が広い」ということを売りにするためには、どんだけ~?
 と思っていました。)



■御舟美術館
山種美術館は、御舟美術館とも言われていると聞きます。
それは旧安宅(あたか)産業(総合商社)が石油ショックによる破たんで、
御舟作品を手放すという話がありました。
購入しないかと持ちかけられた山種美術館
これまでにも所有していた作品に、約105点が加わり、120点の御舟を
所有することになりました。

この英断によって、御舟作品は、点在することなく
一括して山種美術館に所蔵され、御舟美術館とも呼ばれているようです。
初代館長は御舟を気に入って集めていたそうですが、
御舟と対面することはかなわなったようです。
しかし、次の代で、その作品の大半を所蔵することになったのでした。


〇御舟作品の購入価格は?
ところで、この時、いくらぐらいで購入したのでしょう。
しかし、そういうことを口にするのは、お下品・・・・というブレーキがかかります。

気にはなりますが、どれくらいの金額か想像もつきません。
そんなことも忘れてギャラリートーク後、見学をして、お昼にカフェで食事をしていました。
そこに御舟に関する古い資料がありました。
それをペラペラめくっていたら、その時のいきさつが詳細に書かれていました。
そして、その金額もわかったのです!

  (1+4+5+8-5+2-5+3+4)億円  だそうです。

 
■ざっと見て思ったこと
一連の御舟展を見ていて、デジャブ感がいっぱいでした。
つい先日まで、何度となく見ていた「其一」がそこかしこで思い浮かぶのです。

単に題材、テーマ、モチーフが似てるということだけなのかもしれないのですが、
「向日葵」「木蓮」「桜」「夜明け」「夜」・・・・・
すでに其一の絵がどんなだったかは、明確には思い浮かばないのですが、
なんとなく似ている気がするのです。(向日葵は全く違いましたが・・・)


しかし、其一展を見ていて、思ったことでもあるのですが、
いろいろな画家の画業というのは、取り上げるテーマが次第に似てくる・・・・
たまたま其一と御舟も共通したテーマが多かっただけなのか・・・・


そして《名樹散椿》はやはり《白椿・薄野図屏風》が元になっていると思いました。 
金地に緑の屏風は琳派っぽい・・・・
と思っていたら、琳派の影響を受けているとのこと


其一と御舟・・・ どうも重なる部分が多いと感じてしまったのでした。


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【関連】■速水御舟:山種美術観
速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造― ④《炎舞》(2016/11/04)
速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造― ③《名樹散椿》「撒きつぶし」と其一 (2016/11/03)
速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造― ②《翠苔緑芝》…ひび割れの謎 (2016/11/03)
速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造― ①画風の変化 御舟vs其一(2016/11/03) ←ここ
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