3回
2018/08 訪問
アブラを塩で
2018/11/08 更新
2018/03 訪問
故郷のような飲み屋にて。
ある夜、妻が職場の送別会で遅くなるという。彼女は健気に簡単なメニューなら帰宅後準備するというが、勿論僕は優しさと強かさで断った。妻と一緒では行きづらいあの店で独り飲みしよう、そう定めたからだ。
久々の訪問。3月から仕入れ価格高騰によりドリンクの値段が上がったらしい。それでも諸兄姉が愛する「ボール」(焼酎ハイボール)は、コップに氷無しで並々に注がれて280円だ。私の消費バスケットは増価しても賃金は上がらない。金融緩和の行く末如何。
カウンター席で、おっちゃん、おばちゃん、おにいちゃんの手際よい仕事振りを眺めつつ、やはりボール。
摘みは、もつ納豆→かしら味噌→煮込み、とした。もつ納豆は自分で醤油と味の素で味付け。かしら味噌は香ばしくジューシーで、脂と濃い旨みが滴る。煮込みも濃いめ。
ボールが進む。引っ越し前、私が頻繁に伺っていた時は独り飲みならボール3杯と決めていたのだが、この夜は懐かしくて嬉しくて4杯。ちなみにボールは5杯で深酔い、6杯で泥酔、7杯で仏になりかかる、私の日頃の酒量ならそんな具合だ。
懐かしい母校を訪ねるに似た感傷が内から生じ、毛穴を拡げる。大松を離れた2年の間に僕はスピード離婚し、スピード再婚した。
ボールが進む。酔いが回る。
いつまでもそこにあって欲しい偉大で、ガヤガヤした落ち着かない飲み屋だ。
2018/03/13 更新
2014/08 訪問
魔都・綾瀬のオアシスでもつ焼き
銀座で北陸で九州でお寿司を食べ、京洛で懐石料理を頂き、クラシックホテルでフレンチをなどとプチグルメごっこに勤しむ私ですが、改めて考えてみると地元・綾瀬であまり飲み食いしてこなかったなと思います。実家暮らしの私は、寄り道をする場合、職場から近い都心のどこかということが多く、綾瀬まで電車で来ると、もう家へ真直ぐ帰るということが多かったのです。
さて、混沌が支配する「魔都」・綾瀬。地元民の私は親しみを込めて勝手にそう呼んでいます。綾瀬を知らない方に街の様相を端的にご説明するなら、バッドマンシリーズのゴッサムシティを連想頂ければよいかと。
大松さんにはおよそ2週間に1回のペースで訪問しています。一人での訪問が多く、カウンター席でさっと飲んで帰るという使い方になります。
酒は、御存じ「ハイボール」1杯250円。下町ハイボールというジャンルのこの酒は、焼酎ベースのもので、破格の安さです。常連さんは親しみを込めて「ボール」とオーダーします。
私の場合、毎回ボールを3杯と決めております。着席すると、まずボール。トマトやもつ納豆など早く出てくるつまみと、大松さんのスペシャリテ・かしら味噌を一緒にオーダーします。
トマトやもつ納豆で1杯目のボールを空ける頃、ジューシーで旨味タップリのかしら串4本が登場。噛みしめるほどに滋味があふれてくる一品です。大松さんの至宝のコクのある辛味噌がかしらの旨味を引き立てます。かしら味噌で2杯目のボールを完飲。
さて、最後、3杯目のボールにはこってりタイプの煮込み。大松さんの煮込みは、ややfattyで、牛蒡やニンジンといった野菜もゴロゴロ入っていて、食べごたえタップリ。〆のつもりで煮汁もすべて飲み干します。
こうしてボールを3杯空ける頃には、なかなかいい気分に出来上がっており、満ち足りた気分で帰路につくことに。
お客さんの多くは地元民で、店内は綾瀬の街の縮図のような様相です。山手の方には馴染みづらいかもしれませんが、魔都・綾瀬の雰囲気と安くておいしいモツを堪能されたい方は是非。
2014/08/14 更新
有り難いことに、この晩、妻は職場の暑気払いだという。僕は久し振りに妻が作る健康的な夕食から解放され、安酒と脂の自由を得た。
ノー残業デーの水曜日、定時で仕事を終え、真っ直ぐ衆愚の街=綾瀬に。いつも通りの繁盛振りで数人のおっさん達が外に並んでいる。とはいえ大松の回転は早い。10分ほど武田泰淳を読んでいると、お兄さんに呼ばれ、偉大なカウンターに着けた。迷うことなくボール(焼酎ハイボール)を頼む。
妻の鶏肉と野菜のメニューに飽き飽きしている僕は、初めからあのfattyな煮込みを頼み、かしら味噌の焼き上がりを待つ。
くどい味、脂がボールを進める。3杯目のボールが半分位になったとき、僕はよりfattyなもので更にボールを流し込みたくなった。
アブラ塩(串4本)。その名の通り豚の脂身とネギを焼いたものだ。トロのようなネットリ感…多分ボールで舌が馬鹿になったんだろう。だが、旨い!ボールが進む。
最終的にボール5杯になり、大分出来上がった。だが、綾瀬で一目置かれる存在になるには、コップに檸檬片を最低7つ浮かべねばならない。つまり、焼酎ハイボール7杯以上だ。
酒に弱い自分に寂しさと、喉の渇きを覚え、今晩も満足して一時間しないでサッと切り上げた。
ご馳走さまでした。