大けやき（樹齢1000年）に見守られ悠々自適のパン作り : 薪パン日々

一度は来たいと思ってたシリーズ

平野のフュウさんでダルバートを食べる前にガッツリお腹を空かしておこうじゃないかと気分が高揚した所でせっかく川西市まで来たのだから少し足を運んで未踏の地・豊能郡能勢町に行ってみようと一念発起。そこには以前から行ってみたかったパン屋・薪ぱん日々さんがあります。

山に囲まれた非常にアクセスの厳しい場所にあり、妙見口から徒歩で山道を1時間ほどとナビで出たのでそれくらいなら余裕だろうとタカを食ってましたがひたすら坂道を歩き続けて気付けば2時間。周囲を見渡せば山と川と道路しかありません。コンビニどころか休憩所もないので「俺、ここで腹が痛くなったらどうしたらええん？」という恐怖と戦いながらようやく辿り着きました。

観光の名所「野間の大けやき」から50mほど歩いた場所に看板もなくプレハブ小屋のような建物、そこが薪パン日々さんです。店内は狭く陳列スペースも小さい事から時間を区切って出すパンを変えていくタイプのようです。開店直後はハード系メイン、遅くなると菓子パンなどが並ぶようで一般的なパン屋とは逆っぽいタイムスケジュール。

開店と同時に入りましたが既に数人待ち。購入方法は対面形式なので回転は悪く、私が買い終える頃には後ろに10人ほど並んでました。地元の人とケヤキ観光の人で次から次へと押し掛けるお店のようです。


（税込み表記です）
【天然酵母のバゲット】（248円）
やや短めで一本クープ、何ともパッとしない見た目ですがリベイクして食べてみると粉の風味がボヤけた風景から少しずつ浮かび上がる感覚があり、しかも噛めば噛むほど酸味が累積されつつその瞬間からスッと抜けていき必要以上に酸味を溜めないしたたかさ。酵母の香りもそれほどキツくなく思った以上に食えるバゲットでした。これはクセになりそうです。

【無花果と胡桃のカンパーニュ】（486円）
パリッとしたクラストにもっちりしたクラムとカンパーニュらしさを如何なく発揮しつつ、ねっとり甘い無花果とそれに対照的な胡桃の歯応えと脂肪がアクセントを加える。無花果も胡桃も割と大振りなので意外なほどにボリューミー。

【チェリーとカシューナッツのカンパーニュ】（302円）
このタイプのカンパーニュでも割と珍しくチェリーを使用したフリュイで強めの酸味が食欲を増進、一枚食べたらまた次の一枚とえびせん状態が続きます。ナッツのうっすらとした脂肪分もチェリーとうまく噛み合う。

【ガーリックフランス】（237円）
最初から切れ目を入れてある珍しいタイプのガーリックフランス。表面と切れ目にはガーリックがしっかり塗り込まれて焼かれておりガーリックの香りがハンパない。勿論食べてる最中も次々とガーリックが口内を暴れ回る。テイクアウト時も、食べてる最中も、そして食べ終えた後でさえガーリックの主張が止まらない爆弾です。無論、美味しいのは言うまでもない。

【杏とクランベリーのクリームチーズフランス】（216円）
クリームチーズを詰め込んだポットタイプのハード系と言えばよくある形状ですが、このパンは杏が練り込まれた珍しいタイプです。口当たりはよくあるイチジクのような感じですが酸味があるのが新鮮。甘さはクランベリーに任せて柑橘系の爽やかさを担当する杏の仕事は適材適所。

【能勢のじゃがいもとグリュイエルチーズのフランスパン】（172円）
地産地消な一品。フランスパンに能勢のじゃが芋とグリュイエルチーズを練り込んだだけの素朴さの残るハード系。塩気あるチーズがいい存在感を示す一方でじゃがいもの存在感は希薄。生地が美味しいのでそれだけでも十分頂けるがちょっと物足りなさも。

【天然酵母のベーコンエピ】（248円）
むっちりしたベーコンエピです。外から見ると小さなベーコンの細切れが乗ってるだけなので失望感が大きいですが、実は中には厚切りのベーコンが仕込まれており噛めば噛むほど脂がじゅわっと生地を潤してくれます。


総評です。民家が50m置きにポツポツあるくらいでコンビニもなく、ただただ静かな風景が広がる場所にあるまさに僻地のパン屋さん。ランドマークと化した大樹に見守られるように大自然の中で小麦の焼ける匂いを漂わせるそのお店のパンはハード系中心でどれを食べても生地の美味しさが伝わる。

一方で一度に並ぶ商品自体は少なく、開店直後からお客さんが次から次へと押し掛け売り切れ続出。ある程度の計画性を持って訪問しないと徒労に終わる可能性も。

余談ですが私は遠征の身だったので食パンは控えましたがここの食パンは非常に美味しそうな焼きをした色艶でした。お客さんも食パン目当ての人が多く、すぐに食べるのであれば食パンもオススメです。ごちそうさまでした。