何したって旨いんだから、この店は旨い店なんですよ。 : いんなーと みやびの

平成28年2月再訪

家族四人で初めての訪問。

もりそばとおろしそばを注文。

玄挽きのそばはしっかりと切りそろえられ、
しゃっきり冷水で洗い〆られている。

おろし立てで、空気中の酸素に触れ、辛味成分が最高潮のわさび。
これをちょんと乗せて、極めて旨口の出汁をつける。

「これは、とんでもないほど旨いじゃないか！」。

そのまま何も付けずに喰べる。
つゆだけで喰べる。
薬味ネギで喰べる。
わさびだけで喰べる。

何したって旨いんだから、この店は旨い店なんですよ。

辛味大根を入れた日には、
これは全くもって比類ないぐらい旨い。

福井・丸岡産のそばを用いている。
「福井産まれなことが誇らしくなる」。

さて、いつもこの店でばったり出くわす職場同僚の洒落者氏は
今日は訪れていない。
「けれど、俺は、忘れていないぜ」。

洒落者氏ご推薦の「そば茶プリン」をいただく。
そば茶の風味がほんのりと香り、舌の上でやさしくほどける。

黒蜜をかけた日には、
これは全くもって和菓子かってぐらい旨い。

「洒落者氏ご推薦の乙な味よ」。

「ん？」

「しゃ、洒落乙…」。

では。

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2015年10月再訪

「一年ぶりの新蕎麦よ。お前はこうも旨かったのか！」

息子が誕生した最初の週末。

実家から来阪した母を連れて。

店内に入る。
「な、なんと！」。

またしても職場の同僚の洒落者氏よ！
奥様とお母さまをお連れしている。

すっきり秋晴れの秋祭りの日。
「考えることはおんなじだなぁ」。

蕎麦っ喰いにはうってつけの日。
新蕎麦を食す。

もり蕎麦とおろし蕎麦を注文。
山葵をちょんとのせて啜る。

「このお店だな。蕎麦を喰うなら、このお店だ」。

大事な大事な決定を下してしまう。
それほど旨い蕎麦ですよ。

さて、後日。
洒落者氏より耳寄りな情報を得る。
「そばプリンもおいしいんですよ」。

「な、なんと！」。
日本酒で卒論を書いた氏は、
左党のみならず、甘党でもあったとはっ！

「そばプリン情報、しかと受け取ったっ！」

新蕎麦の季節はつづく。

では。

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2015年9月再訪

新蕎麦の季節。
再訪。

「北海道の新ソバ」とのこと。

ふと、呼びかけられる声。
一見、カジュアルコーデの若者。
その実、職場の同僚でした。
職場では実直で真面目、私服では垢抜けた洒落者。
この時期に新蕎麦を求めるところが彼らしい。

おつゆが出される。
待ちきれず、ひと啜り。
再度ながら、実に風味の効いた、深い味わいよ。

おろしを加えて、ピンとハリのある新蕎麦を潜らせる。
一口に啜る。
「な、なんと！」。

「一年ぶりの新蕎麦よ。お前はこうも旨かったのか！」。

深みのある出汁に、おろしの鮮烈さが加わり、奥深さが増す。
そこに冷たく、コシのつよい蕎麦の歯ごたえが加わり、
絶妙の口福をもたらす。

新蕎麦の風味ももちろん、喉越したあとに、口内に拡がる。
僅かにぬめる、新蕎麦の感触。
「たまらない」。

隣の席では、蕎麦っ喰いらしい雰囲気の粋なおじ様がおろしと
蕎麦を追加で注文している。
最初から二枚ではなく、こうやって追加するところが格好良いな。

本日のお蕎麦。
「うなるほど旨いな」。

さて、職場の同僚の洒落者氏は、
私の勧めを悉く聞き入れ、近くは京都の鰻屋から、
遠くは東京の鰻屋、信州の蕎麦屋まで訪問する素直な青年だ。

その青年と、地元の旨い蕎麦屋の味を共有できることが実に嬉しい。

では。

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2015年4月「蕎麦を喰い、汁を啜り、鴨を齧り、ネギを食む。」

堺市 津久野

大きな病院が出来る様子。
だいぶ様変わりしてきましたね。

駅前の大通りから一本入った路地に「いんなーと みやびの」さん。

花壇や鉢植えの植物が色とりどりに綺麗です。
白い壁と無垢材の色に、外光が柔らかに注がれる店内。
蕎麦せんべいをポリポリ齧り、蕎麦茶で流す。

「鴨汁そば」を注文しました。

綺麗に切りそろえられたお蕎麦。冷水でしゃっきり〆る。
そのままいただくと、甘みの強い風味あるお蕎麦です。

熱々の鴨汁をくぐらせていただく。
より甘みが際立って、コクを増して喉越す。

鴨はカタクリを纏ってもっちりとした食感が楽しい。
鴨の持つ甘みが流れず、噛むことで口の中に風味が溶け出す。

そして、焼いたネギが旨い。

蕎麦を喰い、汁を啜り、鴨を齧り、ネギを食む。
鴨がネギと蕎麦を背負ってきましたね。

嫁さんのもりそばの出汁を分けてもらい。
蕎麦をつけて食べて見る。
かなり強めの出汁に、味の濃い醤油が合わさった味わい出汁。
これが宗田鰹の酸味なのかな。
癖になる味です。

開店から入店しましたが、お客さんが寄せて来る。
実力のあるお蕎麦やさんなのですね。
寡黙で、隙がなく、さらりとした感のお客が多い。
蕎麦っ喰いの風情が漂っている。

お酒が飲みたい。
こんな綺麗で強いお蕎麦には、「霙もよう」が良く合うだろう。

昼から良からぬ幻想をいだいてしまった。

では。