カレーはアートだ？：原点にして伝説のスパイスカレー⑦ : カシミール

⑦カシミール 　10月24日（水）昼の訪問

天下の台所、大阪は、お好み焼き・たこ焼きやうどんなどのコナモノの他にカレー王国でもあります。伝統的なところだと『自由軒』さんのライスカレーだったり、チェーン店だと甘くて辛いがクセになる『インデアンカレー』さんや『上等カレー』さん、惜しまれつつ閉店した『辛い料理ハチ』さんのカレーには中毒性があって、未だに食べたくなります。。。

今週は東京と大阪に出張する機会があったので、東西の人気カレーを食べつつ、改めて大阪のスパイスカレーの実力を再認識しました。今回訪問したのは、
④（荻窪）トマト
⑤（大久保）SPICY　CURRY魯珈
⑥（中津）SOMA
⑦（北浜）カシミール
の４軒です。

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『SOMA』さんを訪問した後、意を決して北浜の『カシミール』に向かいました。12時開店とのことですが、口コミの投稿を読む限り12時にオープンしているという情報はなかったし、早くて13時、遅かったら14時くらいに開店するんだろうと思ったのですが、12時45分頃に店頭に到着すると、入口には13時30分開店の貼り紙があって、先客は4人。一巡目の8人に間に合いました。そのまま待っていると13時15分頃に後藤さんがお店を開けてくれて、３個ずつカレーが作られるので２ターン目の調理で13時30分くらいに配膳されました。1日がかりを覚悟する必要があるという情報がありましたが、ラーメン屋さんの行列で免疫ができているせいか、それほど待ち時間は気になりませんでした。

有名なお店ですが改めて、、、
『カシミール』は１９９２年に開店した大阪スパイスカレーの源流と言われているお店です。店主の後藤明人さんはEGO-WRAPPIN'の初期メンバー（ベーシスト）で、２０１８年９月の『dancyu』ではEGO-WRAPPIN'のボーカル中納良恵さん、ギター森雅樹さんが『カシミール』で久々にカレーを食べる様子が特集されています。カシミールカレーというと上野『デリー』さんの黒くてサラサラの辛口カレーを連想する方もいるかもしれませんが、こちらの『カシミール』という店名はLED ZEPPELINの６枚目のアルバム『フィジカル・グラフィティ』の収録されている曲名に由来しています。この投稿を書きながら改めてLED ZEPPELINのKashmirを聴いていますが、初期の疾走するようなナンバーと比較すると重厚でゆったりと盛り上がっていくイメージの曲です。

カウンターに座って、EGO-WRAPPIN'の中納さんのお気に入り、『ほうれん草チーズ』を玄米、ミックスA（具沢山）で辛さ５倍（通常は３倍）にしてもらいました。カウンター越しに後藤さんがカレーを作る後ろ姿をぼんやりと眺めます。コンロに置かれた３つのフライパンに対峙して、８種類のルーと各種スパイスをキャンバスに絵画を描くようにレードルを動かしながら、注文された一つ一つのカレーが仕上げられていきます。その様子は映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でケビン・コスナーが狼とダンスをするようでもあって、後藤さんのアーティスティックな感性が後ろ姿にも感じられます。しばらく待って、僕の『ほうれん草チーズ』が配膳されました。

カウンターに置かれたカレーは彦摩呂さんっだら
『カレーの芸術作品やぁ˚✧₊⁎❝᷀ົཽ≀ˍ̮ ❝᷀ົཽ⁎⁺˳✧༚』
と表現しそうな、ジョアン・ミロの抽象絵画を連想する見た目です。
具材は茄子・大根・じゃが芋・さつまいも・ほうれん草・トマト・豆腐・水菜などで、ルーは細かくカットされたほうれん草で緑色に染まっていて、とけたチーズも具材の一つとして認識できる存在感があります。先ずは一口、ルーだけを食べてみます。。。

うーーーん。美味しい(๑･̑◡･̑๑)
サラッとしたルーはチリペッパーの辛さより香り系のスパイスが強調されていて、重層的なスパイスの刺激が混沌と広がっていきます。様々な野菜たちの中で印象的だったのはフレッシュ・トマトで、ダンスするスパイスの余韻の中でトマトの酸味や甘みが引き立ちます。辛さ５倍はCoCo壱番屋さんで言うと５辛〜６辛くらいのイメージですが、唐辛子の辛さと言うよりスパイスの香りの強さなので、ヒリヒリしたりする感覚よりも陶酔する感覚の方が近いかもしれません。後藤さんはパキスタン人から教わったカレー作りの基礎にフレンチからインスパイアされたスープを組み合わせて、一皿のカレーを作られているそうです。ただスパイシーなだけでなくて、ルーにはしっかりとした旨味も感じられて、明日もまた食べたいと思うような中毒性を感じます。

このカレーを曲に例えると、、、LED ZEPPELIN の『カシミール』と言うより、EGO-WRAPPIN'の『GO ACTION』かな。。。重厚なスパイスの連なりは『カシミール』のイメージだけど、このカレーには大阪で結成されたEGO-WRAPPIN'の想いが詰まっていて、関係のない僕にもそれは何となく感じられる気がするから。やがて東京進出して成功したEGO-WRAPPIN'も大阪で伝説になった『カシミール』もミックスチャー文化の混沌の中で輝いていて、次回は辛さ10倍にチャレンジしようとかEGO-WRAPPIN'を聴きながら、この投稿を書いています。。。

追記）
ワンオペのお店なので、いくつかルールがあります。
⑴入り口付近の廊下で待って、店内には後藤さんに呼ばれてから入店する。
⑵１回の調理は３皿ずつ。注文は後藤さんに聞かれた時にする。（前金制）
※ただし店内のメニュー表は色あせていてよく見えないので、事前に決めておいた方が無難
⑶ルーがこぼれそうなので、カレーは後藤さんに置いてもらう。