大間名人戦 : 寿し おおはた

公式

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2024年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2024 Bronze 受賞店

寿司WEST百名店2022選出店

食べログ 寿司 WEST 百名店 2022 選出店

この口コミは、マシュランさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

5.0

1人
  • 料理・味5.0
  • サービス4.3
  • 雰囲気4.7
  • CP4.0
  • 酒・ドリンク4.4
2018/11訪問4回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス4.3
  • 雰囲気4.7
  • CP4.0
  • 酒・ドリンク4.4

大間名人戦

おおはた。

熟成のちょうど良い頃合に至った大間がある。
そう親方から連絡をもらって、行かぬ理由が見当たらない。

突き出しは、津居山ズワイガニの蒸し寿司。

蟹身や味噌も無論美味いが、やはり真骨頂というべきは、
台の酢飯が美味いからで、全体バランスで絶品になる。

私は握りオンリーの特殊客のうちの1人であるが、
それでもあと1品はツマミが出る。

が、この日はいつもより握りが多めなので、もう握りに入る。

1カン目は平目。

力強い旨味に加え、寒平目に相応しき脂も蓄えており、
「白」酢飯と絶妙に絡み合い、ほどけていく。

後味も実に美味い。

鯖は脂乗りが強烈という方向性ではなく、
繊維一本一本に脂が絡みついている印象。

そこへビシッと塩酢が効きつつも、どこか優しい、
丸みの感じられる独特の締め方を施す。

美味い。

鰹。

脂の乗った鰹は、よく「トロ鰹」とメニューアップされているが、
この鰹はちょっと次元が違う。

マグロ大トロと見紛うほどの霜降りが入った身は、
まさに口に入れた途端に脂がとろけ、幻想の世界に誘う。

半秒ほどマグロと錯覚し、舌が味を、鼻が香りを認識し直したところで、
ああ鰹だったと気づく。

魔性の鰹だ。

スミイカ。

サクサクッとした歯切れが心地よい。
握りに最も合うイカは、スミイカ(ハリイカ)だと再確認。

さて、まずは赤身の食べ比べから。
ともに大間で、右が6日目、左が16日目。

これまでの食べ比べでは、片側がボストンだったり、塩竈だったり、
主役に対して「やはり役者が違う」という賛辞を贈り、
明らかに違う美味さを楽しんできた。

今回、6日目の大間のポテンシャルが非常に高く、
無論16日目が深さで勝っているけれども、明々白々な、
私の馬鹿舌でも瞬時に分かるような分かりやすい差異がある訳ではない。

名人戦とでも言えようか。
細かな所作ひとつひとつに、流石と言えるエッセンスがチラリと光る。
こういう食べ比べも楽しいものだ。

中トロになってくると、差が徐々に顕わになってくる。

なるほど熟れた、練れた味わいの真骨頂は脂、
いや、むしろ脂の向こう側にあるのかもしれない。

平目のエンガワ。
素晴らしい筋肉繊維に、上品な脂が絡みつく。

まだ子供の頃、バブル期のかすかな記憶を蘇らせてみると、
平目の身を喰わず、エンガワだけを食べて通を気取る輩が散見されたような気がする。

それはトロばかりを食べ、赤身を無視するのと同様の愚かさだと思うが、
その愚行すら多少理解できるかなと思えるぐらい、久々の美味いエンガワ。

霜降りの大トロ。

口中に放り込み、「赤」の酢飯がパラリとほどけ、
トロと絡み合い、喉を通っていく。

鉄、酸、血。
そういった上質の生鮮本マグロの風味と、
脂の甘みを堪能した後の余韻。

この余韻に浸っている時に、16日目に限ってはそこに留まらず、
一瞬、もう一段熟れた味と香りを戻してくる。

蛇腹の大トロ。

余韻時の深み、蛇腹で極まれりか。

釣った当日などはともかく、大間マグロは数日の熟成でも十分に美味い。
それなのに、店にすぐ出さず、スペースを占拠してしっかりと寝かせる。

この一見、非合理に思える仕事の意味が完璧に理解でき、
反論どころか、屁理屈の口答え一つ許さない説得力を備える美味さ。

念のため付記しておくが、寝かせるは「ただ置いておく」ことではない。
白身でもそうだが、熟成にはたしかな技術が必要。

世は熟成ブームで、猫も杓子も熟成しておけば事足りるというような風潮だが、
熟成とは魚屋で買って取りあえず冷蔵庫にしまって置けばよいということではない。

適当な仕事の熟成魚なら拒否して、その日入れた魚を握ってもらった方がまだ美味い。

逆に熟成マニアと堕してしまい、熟れた・練れたを通り越し、
味も香りもひねてしまい、燻製のようになってしまった魚も不味い。

いささか話が逸れた。
単線での通過待ち停車時間が妙に長い特急列車のようになってしまった。

コハダである。
肉厚で脂が乗り、そこに絶妙の塩梅の締め仕事。

余韻の強烈なマグロの後だから、緩いコハダでは余韻を断ち切れない。
かといって、塩梅がビシバシと強すぎると、単体の握りとして美味くない。

ちょうど良い。

ノドグロの炙り。
きんきと同じく、分かりやすく、誰が喰っても美味い魚。

ただ、この炙り加減が絶妙、素晴らしい。
ここで握りか、半焼け焼き魚オン・ザ・酢飯かの差が出る。

サヨリ。

ブリ。

サクッと歯切れの良さを心地よく思った瞬間に甘い脂。
美味いが、このブリすら霞んでしまうほど、先ほどの鰹が凄かった。

鰆も少し寝かせてある。

鰆は淡白な味わいの中に、意外に力強い脂があり美味い魚だが、
熟成によって少々柔らかすぎる身に締りが生まれ、旨味に妖艶さが備わる。

美味い。

紅葉鯛。

美味い鯛だが、平目が勝るか。
寒くなると、白身王すら圧倒されがちになる。

ボタン海老。

赤貝。

大分の赤貝は素晴らしい香り。
味ももちろん良いが、何しろ香りが素晴らしい。

赤貝のヒモも無論美味い。

上質赤貝の優劣は香りで決まるのかもしれないなあ。

一定レベル以上の赤貝なら、歯触り、味とも皆まあ良い。
が、鼻腔をビューッと突き抜ける磯の香りの強さと品、ここに差がある。

車海老は再び海老詰めも塗る仕事に。

海老詰めによってもたらされるのは、旨味の濃さもだが、
何より香ばしさ。

何とも芳しい海老握り。

蛤は「(秘技ありの)漬け込まない」仕事。

おお、これも美味い。

牡蠣。

違法建築の海胆w

対馬の穴子。
とろけるような口どけ。

それでいてただ柔らかいだけでなく、最適の歯応えを残し、
そして香りが素晴らしい。

鮨の締めはもちろん、大間マグロのトロ鉄火。

もう言い尽くした。
何も言うことはない。

ただただ美味い。

クリーミーな玉子で締め。

大畑劇場、堪能いたしました。

【訪問時期:2018年11月後半】

ブログはこちら
http://machelin.blog133.fc2.com/blog-entry-2570.html

  • 寿し おおはた -
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2018/10訪問3回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス4.0
  • 雰囲気4.7
  • CP4.0
  • 酒・ドリンク4.2

秀才の塩竈、天才の大間

どうも、プーブリウス・オウィディウス・ナーソーです。
邪悪なる善は甘い蜜に潜む。

親方に良いマグロが入ったら知らせて欲しいと頼んでおいた。

自分が鮨を喰いたくなったから行くのではなく、
今回はマグロ様のご都合を最優先しての訪問だ。

突き出しの鱈白子の蒸し寿司を食べて、
晩秋に近づきつつあることを実感する。

弾けんばかりのプロモーションの白子はキレイな旨味に満ちているが、
この一皿が真に美味いのは台の酢飯の美味さがあってこそ。

そこいらの鮨屋が真似ても台が及ばない。

渡り蟹をサッと平らげ、握りへと移る。

塩竈の良い味のマグロが入ったという連絡を親方からもらい、
ざっと2週間、熟成のピークを見計らった。

どんなマグロに出会えるか、楽しみだ。

この日は、大畑流・瞬間昆布締めの平目から握った。

まだ走りの淡路産だが、程よく脂が乗り、
何よりも素晴らしい旨味で、ピークかと思わせるほど。

浅めに締めた鯖。
産地を聞けば、鮨ダネに向く鯖を揚げている印象に乏しい淡路とのこと。

これが絶品で驚いた。

きめ細やかな身質、優しくもあるが芯の強さを感じる旨味。
拙い表現力しか持たないのが悔しいが、「緻密」とでも言うべき脂。

単純に脂をたっぷり蓄えている鯖、ということではないのだ。
繊維一本一本が最適量の脂を持つとでも言おうか。
一瞬、サラリと、あっさりと感じるが、実に深い魅力を持つ脂の質なのだ。

スミイカ。

こちらも淡路の鰆で、寝かせて5日。

何とも例えようがない、鰆独特の品ある脂の甘みに魅了され、
少し練れて強さを増した旨味に翻弄される。

ああ、まさに絶頂期の鰆。

さて、マグロだ。

左が待ちに待った12日熟成の塩竈。

本マグロ特有の芳しい血の香りに、心地よい酸味。
しっかりとしたコク味も感じられ、さすがの1カン。

そう思いつつ、熟成がまだ5日と浅い右の大間を口に入れる。

驚いた、ただただ驚いた。

数秒前に食べた塩竈の魅力をすべて備えつつ、
大間特有のきめ細かい身質、それに赤身といえども備える脂の甘み、
そして香りの強さ。

今日の主役であるはずの塩竈を、あっさりと凌駕してしまう。

塩竈の中トロも素晴らしいのだが、大間は役者が違う。

いつ頃からか、関西でも猫も杓子も大間。
大間というブランドを闇雲に信仰する趣味は持ち合わせていないが、
近海生鮮本マグロの中でも大間と他産地はカテゴリが違う、と感じさせられる。

漁場への近さ、漁法、手当てといった漁師・流通の努力、
そして親方の保存・熟成といった仕事、それに酢飯、本山葵、煮切り。
これらが一体になって、上質の塩竈さえ圧倒する美味さが産まれるのだろう。

塩竈の蛇腹の大トロは、素晴らしすぎる脂の質。
甘美な脂をたっぷりと堪能しつつ、それがサラリと切れていく快感。

しかし、だ。

大間は脂の乗りこそ塩竈にわずか劣るものの、香り、旨味・コク味の深さ、
といった点でやはり上回ってくる。

塩竈に合わせて訪問したが、後から入った大間の凄さ。
これがさらに熟成を重ねるとどうなるか、訪問が1週間早かったかw

姫川亜弓を目当てに観劇に出かけたが、北島マヤという天賦の才に出会ってしまった。
そんな感覚だろうかw

マグロの脂は、ガリを齧り、ビシッと締まったコハダを食べると流れていく。
が、美味さの真の余韻というべき、強烈な記憶は消えない。

北海道のブリは、正真正銘「ブリトロ」の名に相応しい脂。

素晴らしいブリトロであるからこそ、本マグロというものの素晴らしさに改めて気づく。

ブリトロも噛むごとに、繊維から溢れ出るように甘い脂を堪能できる。
が、敢えて極端に言ってしまえば、ブリトロはそこまで、でしかない。

本マグロのトロは、分かりやすい脂の甘みを皮切りに、
血、鉄、酸等によって構成される、奥深い旨味とコク味、香りの世界に誘引していく。

マグロが鮨屋の看板であるとは、良く言ったもの。

紅葉鯛の瞬間昆布締め。

美味いのだが、旨味の緻密さで1カン目の平目に敵わない。
白身主役の座はもう平目に奪われたか。

壱岐の戻り鰹も素晴らしい脂の質。
加えて、キレイな赤身の美味さもしっかりとしている。

鰹というと、関西では和歌山・周参見のケンケン鰹がやたら重宝される。

たまたまの不運かもしれないが、ケンケンの美味いのに当たった記憶がない。
この壱岐にせよ、また気仙沼だって美味いし、周参見近隣の三重の鰹の美味さの記憶もある。
だけど、ケンケンの美味い記憶だけがない。

ボタン海老の昆布締め。

蛤も、漬け込みにまた改良が加わっている。

つゆの味の染み込み加減が秀逸。
絶妙の塩梅だ。

甲殻類の旨味濃厚な赤出汁で小休止。

車海老、味噌が実に鮮やかな美味さ。

穴子は、塩と煮詰めで1カンずつ。
親方がこだわる対馬であることに変わりはないが、今回は特級品。

冗談ではなく、本当に舌に乗せた瞬間に溶けていく。

それだけだと、脂たっぷりの穴子をとにかく柔らかく煮上げた、
ということで片付けてしまいそうになるが、魅力はそこで留まらない。

溶けていく際の濃厚な旨味に、何よりも香りの素晴らしさ。
いやはや、参った。

サヨリ昆布締め。

珍しく手巻きを。
このマグロは、ボストンの大トロ。

海胆とイクラの通風丼。

手巻きも食べたし、やめておこうよと天使が囁く。
されど「食べないと後悔しますぜ、旦那」という悪魔の耳打ちを採用する。

塩竈の砂ずり鉄火巻。
美味くないわけがない。

海苔巻との相性の良さもマグロの魅力の1つであって、
どんなに上質のブリや鰹を巻いても、ここまで美味くならないもんなあ。

しっとりと、クリーミーで甘い玉子で締め。

とにもかくにも、北島マヤの天賦の才に圧倒された夜。

【訪問時期:2018年10月後半】

ブログはこちら
http://machelin.blog133.fc2.com/blog-entry-2567.html

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2018/04訪問2回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス4.3
  • 雰囲気4.8
  • CP4.0
  • 酒・ドリンク4.4

驚きの鮮度を保つ

突き出しは、ホタルイカの漬け込み。

巷間よくあるツマミと少々侮ったら、一口食べて驚いた。

ムッチリ太った身は、ふくよかさと張りが些かも損なわれず、
身の甘みやワタのコク味を十二分に堪能しつつ、旨味が深まっている。

試行錯誤が趣味なのかと思える親方だ。
突出しひとつとっても、訪問の度に驚きの鮮度を保っている。

私や解答ルパン先生など何人かの鮨喰いは、ツマミをほぼとらず、
いきなり握ってもらうお任せが定番化した。

なので、普通にお店に行けば、この後も美味いツマミが数品続く。
鮨に特化したい面々の、特殊例だと改めて言っておく。

さて、握りは真鯛からである。

明石の鯛をワインセラーで1日寝かして握る。
一段深まった旨味に、香り芳しく、歯応えも損なわれていない。

素晴らしい鯛の握りだ。

江戸前の昆布締め技法は、白身魚の旨味増幅に大変有効な技法であるが、
いささか昆布の主張が五月蠅くなりがちで、質・鮮度とも極上の関西白身、
その代表格たる明石や淡路の真鯛には、風味添加がいささか強すぎる。

かつて大畑親方は昆布を当てて数分だけ押す、瞬間昆布締めを編み出し、
ちょうど良い分量だけ昆布の恩恵を受けつつ、真鯛本来の味わいを些かも喪失させず、
また活かった身の歯応えも完全に維持する、という離れ業をやってのけた。

テレビで鮨喰いとして高名な早川光氏に絶賛された技法であったが、
もうこの技法には別れを告げている。

研ぎ澄ませた出刃でサク取りした真鯛はワインセラーで寝かすが昆布は当てない。
白酢を使う酢飯の調整時に、昆布出汁の風味を少し忍ばせておく。

これにより、昆布締めのネガティブ部分にまったく影響されることなく、
昆布風味をチラリと添加することで、真鯛握りを一段美味くする。

2カン目は、春らしくサクラマス。

サッパリとした旨味に、口どけが良い脂はサラリと軽く、
おろし生姜の香りと辛みが全体に上手く馴染み、美味い。

昨年早春から「おおはた」は3種の酢飯を使い分ける。

白酢と昆布出汁で調整する「白」。
赤酢と白酢で調整し、「白」の誕生により白身のフォローを外した「ロゼ」。
赤酢と塩だけで調整し、砂糖を一切配した「赤」。

「赤」の方向性も昨今の関西鮨屋では雨後の筍のように増殖しているが、
「赤酢こそ江戸前、赤酢でなければ江戸前じゃない」といった愚かな信仰に陥っている、
筍たちとは考え方が根本的に異なる。

「新ばし しみづ」など江戸前名店の赤酢酢飯に感銘を受けつつも、
白身やイカといった淡白なタネにはどうしても酢飯の風味が強すぎる。

白身を重視しない関東と違い、関西で白身を重視しないわけにはいかない。

親方は関西の至宝である白身との相性を徹底的に探究した。
白身をフォローした「旧ロゼ」も完成度は高かったが、そこに満足せず、
ついに「白」を完成させ、現在の布陣を整えた。

「赤」もタネ質との相性を念頭に、いささかまろやかさ、しなかやさを持たせており、
赤酢をツンツン香らせるのを最上と盲信する筍たちとは一線を画す。

だからこそ「赤」も、「しみづ」などに比べれば塩梅は少々大人しい。
それこそが、関西の鮨屋たる立ち位置を忘れず、誇りを持ち続けている証とも言えよう。
闇雲に塩梅を江戸に合わせれば良い、という訳ではないはずだ。

今回は、いつも以上に饒舌のようだw

さて、鰯である。
「鮨 太一」の鰯に私が感銘を受けたのを覚えていて、それを再現したという。

おお、素晴らしい締め仕事。

明石のアマテガレイ(マコガレイ)。

ここしばらくは常磐のマコが安定して良かったので使い続けていたらしいが、
明石の魚屋が本気になったのか、俄然素晴らしいのが届くようになったという。

たしかに、弾力のしっかりした身を噛みしめると、
サッパリとしながらも力強いカレイらしい旨味がじんじんと染み出てくる。

ここからはお楽しみの本マグロ食べ比べ。

まずは5日熟成の銚子産。

フレッシュな酸味と血の香り。
春マグロらしくサッパリと美味い中トロ。

続いては、鹿児島マグロを限界の15日間寝かせ。

円熟の芸域と言いたくなってしまう美味さだ。

錬れて妖艶さを纏った旨味・コク味。
艶めかしい鉄の香りと言おうか、深い香りが芳しい。

ここでサヨリを握る。

中に挟んだ、色鮮やかな車海老のオボロがまた美味い。

銚子の大トロ。

鹿児島の大トロ。

銚子のトロも美味いのだが、深みという点で鹿児島に圧倒的軍配。

筋の部分が舌先に当たっても、熟成で十分柔らかくなっており、
サッと溶けていく。

この際に舌鼻を刺激する脂の甘み、深い旨味、妖艶を極めた香りがたまらない。

齢九十を超えた大名人・小野二郎が著書で「握りの横綱」と評したコハダ。
マグロが「鮨の王様、鮨屋の看板」との対比で、実に上手いことを言う。

生のままでは出せず、煮ても焼いても美味くないコハダ。
鮮やかに捌いて、塩をして、酢で締めると江戸前の顔たる鮨ダネになる。

江戸前の象徴だからこそ「関西で美味いコハダを出す」ことに親方は熱意を注いできた。

脂乗りの良さを物語る身の厚みに、身の密度も濃いというか詰まっている感覚がある。
素晴らしいタチのコハダだ。

コハダは締めが緩いと生臭くて食べられたものではない仕上がりになるし、
締めが強すぎると塩または酢の尖りで、マグロ脂のリセット役以上のポジションには立てない。

鮮明な塩梅でしっかりと締められているが、最後にまろやかさを感じさせる仕事。
美味い。

酢飯もそうだが、おおはたは江戸流の強めの塩梅を基本にしつつも、
糖で微かに甘みを加えたり、出汁の旨味で「まろやかさ」を持たせる。
関西が土台だからこそ、このポイントを決して疎かにしない。

ノドグロ。

誰もが好きになる美味い脂。

カスゴは皮目が柔らかく、スルリと入ってくる。

淡白な旨味に、丁度良い塩梅の締め。
オボロの優しい甘さが加わり、春らしい美味さ。

鰹は千葉だったか。

キスの昆布締め。

この店では珍しく、赤イカ。

細かい包丁目で柔らかくなり、舌触りも滑らか。
上質の甘みを持っており、美味い。

スミイカは歯切れの良さ、軽い甘み。
パリパリ感がありつつ、柔軟さを併せ持ち、酢飯に寄り添う。

赤イカも美味いが、イカ握りはスミイカがやはり良い。

ほっき貝。

大ぶりの鳥貝は愛知産。

ツルンとセクシーな舌触りに、上品な磯の香りと、
強い甘み。

春の大好物。

赤貝は、山口産。

立派なサイズで厚みも十分。

サクサクと噛みしめるごとに、潮風が吹き抜けるような磯の香りの心地よさ、
赤貝らしい旨味もたっぷり備えており美味い。

ヒモも立派なサイズ。
より強い歯ごたえと、磯の風味を愛でる。

ブランド産地だった名取市閖上は不漁続きのようだが、
西日本の貝がなかなか素晴らしく、まったく困らないのは嬉しい。

鶴八流の違法建築海胆w

強い酢飯と合せるには、これが実に理に適っている。

車海老。

むっちりとした対馬の穴子。

溶けるような柔らかさに煮上がっているが、
一方でこのムチムチボディもしっかり堪能できる。

脂の甘みもさることながら、旨味が実に濃く、香りも良い。
旨味と香りの余韻が長い穴子だ。

ルパン先生流の「表面積問題をクリアしたトロ鉄火」。

円熟の鹿児島マグロのトロがたっぷり。
酢飯よりもトロが多い贅沢な細巻だ。

敢えてすり身を用いない、クリーミーな玉子焼とリンゴで締め。

何度通っても、驚きがある。
完成形を見たかと思っても、試行錯誤は続けられ、また上回ってくる。

飽きさせず、驚きの鮮度を保つ。
楽しいね。

【訪問時期:2018年4月前半】

ブログはこちら
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2017/07訪問1回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス4.2
  • 雰囲気4.7
  • CP4.0
  • 酒・ドリンク4.0

3種の酢飯で織りなす美味鮨

※店も改装し、酢飯も塩梅の加減から、
白・ロゼ・赤と3種を使い分けるよう大きく変化している。
久しぶりに、直近の訪問を食べログにアップしてみたくなった。

【2017年7月末のおおはた】
突き出しは、もずくから。

冷たく、さっぱり。
暑い日には、嬉しいスタート。

明石の真蛸と、千葉の鮑。

前回も驚いたが、鮑の火入れが素晴らしい。

もっちりした食感に、引き出された芳醇な香り。
豊かな旨味に、それを引き立てる煮詰めの美味さも素晴らしい。

加えて、レアな火通しの肝も絶品。

煮鰻。

江戸風に蒸して柔らかくし、軽く焼いて表面をパリッと。
タレが濃いと野暮ったくなるし、白焼きにしても鮨屋のツマミっぽくはない。

サッパリしたタレで軽く味を付け、ふんわりと山椒を香らせる。
ほうほう、粋なツマミの顔に変わった。

美味いなあ。

真鯛。

かなり脂を蓄えている。
脂の乗った鯛も美味いが、それが強いと旨味が押され気味になり、
何より香りの点で物足りない。

だが、この親方の独特の昆布締め仕事にかかると、
脂の強すぎる鯛であっても、程よい昆布風味の添加によって、
崩れかかるバランスが見事に調整される。

美味い、美味い。

高知のアオダイ。

柔らかい身質、その繊維に甘みが程よく絡まる。
なるほど、刺身で喰うより、酢飯にあわせる方が美味いだろう魚だ。

赤身ヅケ。

近海生鮮本マグロの最も厳しい時期。
この日のマグロは、大西洋ボストン産。

中トロ。

ボストンマグロだが、脂が強すぎず、香りも上々。

キス昆布締め。

トロ。

中トロから一旦キスを挟んでトロ。
この構成、いいな。

コハダ。

締め方を少しオーソドックスに戻したそうだ。
うん、これも美味い。

シンコ。

この時期ならではの、この儚さを愛でる。

「あえて」のノドグロ。

何だかんだ、美味い。
強い酢飯に合わせると、脂が野放図に主張せず、
収まりが良く、握りとしても美味くなるもんだ。

淡路の鯵。

シロイカだったかな。
ということは、剣先イカか。

コイカ。
シンコと並ぶこの時期ならではのタネ。

スミイカ(ハリイカ)の子供は、表面がツルンと滑らかで柔らかく、
サッパリとした甘み。

ああ、いいなあ。

ボタン海老昆布締め。

イシカゲガイ(イシガキガイ)。
イシカゲ、イシガキは市場でも混同され、どっちなんだとややこしい。

ああ、生鳥貝の趣き。
美味いなあ、これも。

白海胆。
クリーミーで濃厚。

赤海胆。
甘さと香りの強さ。

どちらも美味い。

コイカのゲソ。

ゲソにイメージしがちな固さや強すぎる香りがまったくない。
柔らかく、儚く、甘い。

コイカの真骨頂は、ゲソかもしれないなあ。
そういえば、ゲソを使わない二郎さんも、コイカのゲソだけは握っている。

車海老。

対馬の穴子。

トロ鉄火。

玉子焼。

シンコも良かったが、コイカの美味さに改めて感動した。

季節ならではの美味。
これも鮨屋に通う醍醐味というもの。

  • 寿し おおはた -
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マシュラン

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店舗情報(詳細)

店舗基本情報

店名
寿し おおはた
受賞・選出歴
2024年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2024 Bronze 受賞店

2023年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2023 Bronze 受賞店

2022年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2022 Bronze 受賞店

2021年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2021 Bronze 受賞店

2020年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2020 Bronze 受賞店

2019年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2019 Bronze 受賞店

2018年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2018 Bronze 受賞店

2017年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2017 Bronze 受賞店

寿司 百名店 2022 選出店

食べログ 寿司 WEST 百名店 2022 選出店

寿司 百名店 2021 選出店

食べログ 寿司 WEST 百名店 2021 選出店

ジャンル 寿司
予約・
お問い合わせ

070-3842-4261

予約可否

完全予約制

住所

大阪府大阪市北区堂島1-4-8 廣ビル 2F

このお店は「大阪市北区堂島1-3-29」から移転しています。
※移転前の情報は最新のものとは異なります。

移転前の店舗情報を見る

交通手段

JR東西線北新地駅 徒歩5分
地下鉄四つ橋線西梅田駅 徒歩5分

大江橋駅から275m

営業時間
  • ■ 営業時間
    夜のみの営業です。
    【夜】月・火・金・土・日
    18:00〜、20:30〜のみ



    ■ 定休日
    水曜・木曜(祝日により変更あり)
予算

¥15,000~¥19,999

予算(口コミ集計)
¥20,000~¥29,999 ¥20,000~¥29,999

利用金額分布を見る

支払い方法

カード不可

電子マネー不可

席・設備

席数

7席

(カウンター7席)

個室

貸切

不可

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

近隣にコインパーキングあり

空間・設備

落ち着いた空間、カウンター席あり

メニュー

ドリンク

日本酒あり、焼酎あり、ワインあり

料理

魚料理にこだわる

特徴・関連情報

利用シーン

一人で入りやすい 知人・友人と

こんな時によく使われます。

オープン日

2011年4月

備考

おまかせコースのみ。

初投稿者

すくわかすくわか(89)

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