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モーイ豆腐
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もずく酢
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魚の南蛮漬けと長命草
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ガーラ、オーマチ、島タコ、鰹
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冬瓜の煮物
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オジサンのマース煮
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オジサンのオジサン
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島タコと玉ねぎの炒めもの
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あきののげし 胡麻酢和え
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汁そうめん
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自家製パパイヤ
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泡波
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いい雰囲気
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西表島にある、夜だけ営業の郷土料理店。
移転前の店から10年以上、途切れ途切れながらも通い続けている。沖縄で一番好きな飲食店、もしくは日本で1番好きな沖縄料理店と言ってもいい。
これまでレビューを書かなかったのは、かなり予約が困難で、これ以上人気が出ると自分の首を絞めることになりそうだったので。
以前は、店主の吉本ナナ子さんが、ひとりで島野菜を栽培して、海で魚やタコを獲って、さらに料理までしていた。だから1日に最大でも2組くらいしか予約を取らなかったし、食材調達の関係で店を閉めることもあった。
何年か前、予約の電話をしたら「その日は満月なので」と言って断られたことがあった。満月、つまり大潮の日は磯のタコやら海老やらを獲るのに良い日だから。ということらしい。ガッカリしたと同時に、これだけ島に根差した営業をしているレストランはそうそうないだろうな、と感動した覚えがある。
ナナ子さんは波照間島のご出身で、以前は那覇でお店を開いていたが、西表島の自然が気に入って店を移したと聞いた。
数年前に休業した時は、年齢的にもう引退なのかな…と残念に思っていたので、ご子息が後を継いで移転再開したとの知らせを聞いたときは、本当に嬉しかった。
今回は移転再開後初の訪問。仲間港からすぐの古民家に手を入れて、移転前と同様、落ち着いた内装となっている。
カウンターとテーブルで20名ほどは入れるだろうか。平日だったが予約で満席だった。服装と日焼け具合からして、島に住んでいると思われるお客さんが多い。
厨房にはご子息の信介さんとお母さんのナナ子さん、客席には女性二人とスタッフが増えて、大人数でもこなせるようになったのだろう。ナナ子さんは「食材調達」に専念して、料理は手伝い程度、ということになったらしい。
コースは3800円と5500円。今回は3800円のコースを予約した。コース予約の客はいちどに同じペースで提供するようで、19時から、と時間を指定された。
酒はもちろん波照間島の「泡波」。入手困難な泡盛として有名だが、独自の入手ルートがあるらしく、ここでは必ず置いている。
その時期にとれる魚や野菜によってメニューは変わるけれど、定番で楽しみにしている料理は「モーイ豆腐」と「島ダコの炒め物」
「モーイ豆腐」は、モーイ(イバラノリ)という海藻で、寒天寄せのようにカマボコや野菜をかためたもの。ハーブのソースがかかっている。他の何に似ているとも喩えにくいんだけれど、敢えて言うなら魚介のテリーヌか。これがとにかく美味しい。
昔からある料理法らしいが、他の島で食べたモーイ豆腐は生臭くて美味しいものではなかった。作り方の丁寧さが違うのだろう。
「島ダコの炒め物」、ムンチャーとか島ダコとか言われる、岩場でとれる小型のタコなんだけれども、甘味があって風味が濃い。これを、ニラとタマネギと共に炒める。どうってことない組み合わせなのに、噛みしめながら「あー、うまいナア」とため息が出てしまう。
素材がいいのか、調理がいいのか、調味料に秘伝があるのか、雰囲気にやられてるのか。たぶん全部。
この日の魚料理はオジサンのマース煮。鯰のようなヒゲが生えているからオジサン。水っぽくて臭みが出やすい魚だけれど、鮮度が良いためか塩味だけで美味しく食べられた。添えられた島豆腐に魚の出汁が染み込んで、これがまたタマランのよ。
島野菜やハーブの使い方も上手。「長命草」「あきののげし」といった野草はごく細く切って、南蛮漬けや胡麻酢和えにして食べさせる。油やなまり節など、苦味を抑える食品と合わせることで、野草の苦味やクセが旨みに変わっている。
時期によっては、天然の小エビをハーブの衣のフリットで出してくることがある。これも凄まじく美味いので、食べられたら本当にラッキー。
伝統野菜や昔ながらの調理法に則っていながら、伝統料理にありがちな単調さ・濃厚さがなく洗練されている。
シブイ(冬瓜)の煮付けにしても、〆の汁素麺にしても、淡い出汁の上品な薄味。満腹になるまで食べても胃の重苦しさがない。
場所は南と北で正反対だけれど、せっちゃんのエクスペリヤンスの家に通じるセンスの良さを感じる。
正直言うと、代替わりしたことで味が落ちるかな? と心配していたんだけれど、美味しさは全く変わっていなかった。
厨房を眺めていたら、信介さんがものすごく楽しそうな顔をして料理をしていたので、調理技術以外の色んなことも受け継がれているんだろうナ、と安心した。
沖縄料理をある程度食べなれた人、山菜や魚の食事を好むひとには、地味ながらも驚きと感動が得られると思う。
何より、「ここでしか食べられない」「ここで食べるから美味しい」料理を出してくれるのがいい。時間と手間をかけて訪れる理由がある。
今回レビューの「封印」を解いた理由は、スタッフと客席数が増えて予約がとりやすくなったから。
仲間港(大原港)周辺には素泊まりできる旅館・ペンションがいくつかあるので、まずは「はてるま」の予約をとってから、周辺の宿をとると良いと思う。
以前のようにナナ子さんとお喋りしながら飲み食いする楽しみは薄れたものの、このために西表島を訪れても損はない、と断言できるお店。
ああ、教えたくない。でも伝えたい。