誠実さが滲みでる新銀座通りの老舗中華料理店 : 雅鳳

蕎麦屋で盛りを軽く手繰っただけでは、いくら少食のわたしでも満足はできません。
帰り道にふと思い出した様に目の前に現れた中華屋さん、そうだよ雅鳳があるじゃないか！

で、今後ろからバイクで八新鮨（新店舗の方）の角から出てきて追い抜いていった人、雅鳳のご主人だよねぇ？
出前に行っていたんでしょう、よく見かける出前のバネ付きの緑の運搬具（正式名称：マルシン出前機）ではなく、寿司屋のような大きな手提げの桶ですから間違いないです。

入ってみたいと思いつつも入れないまま苦節10年ですよ、ようやくそのチャンスが来ました。（感涙）
昨日自宅で麻婆豆腐丼を食べたことはもうどうでもよろしい。（笑）
相変わらず見た目は寂れていますけど、お店は外観で判断してはいけないという典型的なお店ですよ。（そうなの？）
外から見られるメニューにはスヌーピーが書かれていますけど、著作権料を支払っているとは思えず…って言うより誰が作ったんだろこのメニュー。（誰でもええやん）
まだ帰ってきたばかりなので店の引き戸が施錠されていて、覗き込みながらガチャガチャやったら中で気付いたご主人が開けてくれました。（ふう）

『ちょっと遠くまで出前に行ってたものだからね』
近くですぐに戻る時は引き戸は施錠しないのでしょうね…当然先客はいません。
でももしお客さんがいても、そのまま出前には出ちゃうから凄いですよ～。（ホントだよ）
一応メニューを確認してからやっぱり定番の中華丼にして、今日は特別に餃子もお願いします。（えっ？）
ここの店はこざっぱりとしていると言えばいいでしょうか、店は新しくはありませんが安っぽい中華料理屋特有のギトギトとした汚れを感じることもなく、ご主人ひとりで調理から配膳・接客・出前までもこなすというのに店内はとても清潔で、5S活動が完璧に出来ていますね。（爆）

包丁の音が聞こえた後、冷蔵庫から餃子を出したようですね…看板メニューがわからないので好きな物を頼んだのですが、ブログお友達のN氏はダルメンが殊の外お気に入りのご様子ですが、わたしは麺よりもご飯が食べたいので、どうしても中華丼がまず最初に思い浮かんでしまいます。
注文した後ご主人と話をさせてもらいながら、待つこと約8分で中華丼が出来ました。

醤油の色が勝った濃い目の味付けに見えますが、ところが意外にも少し甘目と思える味付けで、餡は緩くて野菜たっぷりの中華丼。
具材は白菜に人参、豚肉や海老だけでなく飾り切りされたイカもあって、栄養のバランスもいいですよ。
時間はそれほどかかっていないけど白菜も柔らかくて、ボリュームも満足できると思います。

ただ、個人的には塩味で餡かけが強めの白っぽい仕上がりの中華丼が好きなわたしとしては、もうひとつ好みの味付けではなかったことと、スープが付いてこないことが不満かな。
これで麺類を一緒に頼んでいたらスープは不要だけど、相手が餃子だからスープは欲しかったな。（ですね）
忘れたとは思えないのでもともと付いていないのでしょう。

その後すぐに餃子も焼き上がりました。
かなりひとつが大きくて、皿に8個並んでいますがはみ出しそうです。
ひとくち餃子と比べたら3つ分くらいありますし、家庭で包むものとの比較でも1・5倍はあるかな。
（御徒町の昇竜まではいかないけどかなり大き目）
中華丼と同時に出てきた餃子のタレは、豆板醤系の辛さがする酢醤油でしたよ。

このテーブルには調味料が一切なくて、カウンター席にあるものは老眼で見えなかったのですが、できれば自分で作ってもっとお酢を使いたかったかな。（そうなの？）
餃子は焼き目が美しいのに全体的にはかなり柔らかく、水餃子の表面だけを焼いたような感じです。
味は好みとは違うものの具がたっぷりで、美味しいとは思いましたが500円はちょっと高いかな。

ここのご近所に住むわたしの知り合いが出前を取っている話をしたら興味を示してくれたらしく、わたしが石垣から来ていると言ったら、
『そう、さっきは石垣まで出前に行っていたんだよ！』とのこと。
そんな話をしている途中で出前の電話が入ってきたようだったので、先にお会計をしておきましょうとカウンターに1150円を乗せに行きました。
「俺ならきっと食い逃げしちゃうから先に払っておきますね」
『いえいえ、いいですよ』

店主的には慣れたものだろうけれど、こちらとしたら出前に出て行ってしまったら帰るまでいなければお金の支払ができないし、置いて出れば後で足りないと言われても嫌だしと思った次第。
話を聞けば荘園までも出前で行くことがあり、交番勤務の人が異動で移っても電話してくるので困るそうだ。（お気の毒…）

『どこから聞きつけたのか知らないけど、亀川のK病院から副院長が電話してきてね…まあそれなりにまとめて取ってくれるから行くけど、正直遠いから困るのよ、勘弁して下さいって思うわぁ』
「そうなんですか、でもいいじゃないですかそれだけ頼りにしているんですよ。北浜のホテル街では雅鳳が無くなったら困るって話ですからね。遠くてもまとまればいいけれど、晴れて暖かい日ばかりじゃないですからね」
『そんなことはないけどね…でも晴れた日ばっかりじゃないからね、そうなのよ』
『もう40年以上やっているけど自分で宣伝はしたことがなくて、たま～に取材させてくれってことはあっても自分からは言わないのよ。最近は福岡の人なんかがコンピューターでうちのこと載っけてくれたりするみたいで、あっちの方からも来てくれるのよ』

あーそうですか、それって多分ブログのことですかね、それとも食べログのことかな？なんてことは言えませんとも、はい。（汗だく）
外に出たら雨が降り出してきていたので、「雨降ってきてますよ」とご主人に教えて店を後にします。

出前の電話でも『はい！が ほ う です。…ありがとうございました』と店名をきちんとしっかりと告げて出るし、ありがとうございますと丁寧な応対はおごりを感じず好感が持てます。
街のラーメン屋なんて、言っちゃぁなんだけど何言ってるかわからないような電話の出方しない？
店の名前も聞き取れないような、オマエ魚屋が市場で競りやってるんじゃねぇぞっ！ってな話し方するじゃないのさ。
ありがとうございましたと本人は言っているつもりでも、聞いている方としたらどう聞いても『ありやとやした』としか聞こえねぇっうの。

そんな律儀で丁寧な電話の受け応えもこの店の人気につながっているんだと思ったよね。
まだまだ見習わなきゃいけないことがこの歳でも多いって気付かされたわ。