あおによし 奈良の都のイタリアン : リストランテ・イ・ルンガ

今日は平城宮跡めぐり、平城京歴史館が6月いっぱいで閉館されるので慌てて行ってきました。
平城遷都1300年祭に開館したのでまた新しいですが平城京歴史ゾーンの大掛かりな整備のためいったん閉館、今後は解体かリニューアルかはわからないそうです。

午前中は大極殿～遺構エリア～資料館、昼食をはさんで歴史館というコースを予定していましたが久ぶりの平城京に興奮して遺構エリア中途で午前の部を断念、午後は閉館される歴史館を優先しました。


さてイ・ルンガです。
東大寺前の大通りに面してひっそりと構えた入口はともすれば見過ごしてしまいそう、中にこんな素敵なイタリアンがあるとは思えません。
店内は古い日本家屋をリニューアルし元は座敷であったろう床は板張り、靴のまま上がります。
にこやかなお出迎えを受けて着席、メニューの紹介を受けました。
ランチのコースは『ハレの日』一択です。
予め苦手な食材を訊いてくれるので予約の段階で伝えておきました。

【アミューズ】
＊岩塩を使った庄内牛のロースト、イタリア産そら豆を添えて
くせがなくさっぱりした赤身です。
そら豆は大好物ですがイタリア産と意識して食べたのは初めてです。


【アンティパスト】
＊天然鮮魚のカルパッチョと大和丸ナス
まず驚いたのは平皿ではなく深いお皿にソースがスープのようにして盛られていること、卓にはスプーンが用意されていたのでメニューにはないけど次はスープかなと思っていました。
鮮魚は3種類、時鮭、真鯛、ヌマガレイ、下には丸ナスが敷かれカラスミや桜えびが添えられディルとラディッシュをトッピング、グリーンのソースはセリの風味です。
お魚はどれも新しくそれぞれが良い食感です。
間違いなく美味しい一品です。

＊大和肉鶏とぺぺロターナ
大和鶏のカリッと焼かれたモモ肉と柔らかく蒸されたムネ肉の取り合せにペぺロターナ。
ペペロターナ、これまで知りませんでしたがパプリカとトマトをソテーしたもの、かなり甘いでした。
まったく無粋な例えですが細かい野菜のラタトゥユの甘口版みたいな・・・。
大和鶏にバジルソースを付けたらすごく美味しかったです。


【パン】
フォカッチャ、黒胡麻、ハッタイ粉の3種
昔懐かしのハッタイ粉にはクルミも入っていました。


【プリモピアット】
デフォはアンチョビとキャベツのパスタとクレソンのリゾットから選びますが、追加でイ・ルンガのスペシャリテのラビオリーニも用意されています。
せっかくなのでこちらもお願いしました。

＊手打ちパスタ“タヤリン”　アンチョビとキャベツ　ピエモンテ風
タヤリンとは大雑把に言えばピエモンテ地方でのタリオリーニのこと、違いは卵黄だけで打つそうで、その分コシが出ます。
惜しげもなくトリュフが掛けられています。

＊クレソンのリゾット　ホタテとマテ貝ラグー
これすごく美味しいです。
ホタテとマテ貝ラグーは味・食感共に美味しいですがリゾット自体はものすごく美味しい‼
クレソンのほのかな苦みが食べ進むうちにとても爽やかに感じられ、食べ終わった後も芳醇な苦み、消したくない苦みが残ります。
心もち塩気が強く感じられました。

＊(追加パスタ)　スペシャリテ　　アニョロッティ　ダル　ブリン
難しい名前は理解できないのですが簡単に言えばラビオリです。
中身は牛・豚・うさぎ、ソースはバター。
最初「うさぎ」って聞いたとき内心「苦手だ、外したか」と思ったのですが杞憂でした。
確かに牛や豚だけではない野性っぽい風味はしますがきつくはなく、むしろ野趣あふれる良い風味に感じました。
バターソースが優しく包んでくれるのも一助になっていたと思います。
とにかくうさぎを美味しく頂けたことに感激しました。


【セコンドピアット】
＊大和ポークの低温ローストソテー、いんげんのラルド巻き、白いんげんを添えて
お肉はじっくり調理されてほろほろ、結構濃い味でご飯と食べたらより一層美味しいだろうな。
ラルドとは豚の脂身のことだそうでスライスしたラルドでインゲンが巻いてあり、普通の肉部分で巻くより濃厚です。

＊メゴチのフリットゥーラ　アンティチョークを添えて
ずいぶん大きな一切れでボリューム満点。
脇には可愛い椎茸とスカンピをいれたじゃが芋マッシュが盛られそこのソースはアメリケーヌです。


【お口直】
＊ライムのグラニテ
ソースはライム、氷自体にもライムが入って爽やかです。
この写真在りません。撮り忘れ、やっちまいました。
とても細長シンプルなグラスが使われていました。


【ドルチェ】
＊パンナコッタ
ゼラチンを使わず卵白で固めてあるのでよりまったりとしてコクも深いです。
それぞれ違うお皿で出して下さるところが粋ですね。


【小菓子】
＊レモンピールのクッキー
＊チョコブラウニー
＊アーモンドのビスコッティ

【飲み物】
＊エスプレッソ
かなり濃く本場っぽいものでした。

＊レモンバーべナティ
初めていただきましたがさっぱりしていて今の季節にぴったりでした。


最後のお茶の時に堀江シェフがご挨拶に来られました。
HPで拝見する風貌は厳しいお顔ですしミシュランシェフですから緊張しましたが案に相違してとてもにこやかで柔らかい物腰の方です。
ちょっとした質問にも優しく対応いただきました。

客席での雰囲気こそ柔和ですが厨房では鋭い眼差しで料理に取り組んでおられるのでしょう。
堀江シェフならではのこだわりがたくさんありそれを広範囲の客の嗜好とどう折り合いをつけていくか、堀江氏に限らず多くのシェフが日夜悩みながら考え抜いておられることだと思います。
今回、コースの最後にお口直しのグラニテ、ドルチェ、小菓子と甘いものが3点続きました。
グラニテはよく魚料理と肉料理の間に出されることが多いので最初はあれっ？と思いましたが、このコースは肉・魚は選択制だしアミューズからセコンドまで流れるように進みお口直しの必要を感じない、むしろその流れが終わってドルチェやお茶の世界への切り替え、すなわちお口直しとして出される方が効果的だと気付きました。
さすがミシュランシェフ、何事も計算されています。

こちらは名店の名に恥じぬ丁寧な接客でスタッフも皆さんお若い美男美女です。
ただサーブの時のお料理の説明が声が小さかったり早口だったりで聞き取りにくかったのが気になりました。
場の静寂を守るための小声でも相手に聞こえないのでは意味がありません。
また早口なのもそもそも説明不要のお客様にはいいかもしれません。
でも私のように尋ね返している客とお料理をもう十分熟知で聞く必要のない客を判断して対応するのも大切なおもてなしではないでしょうか。
これだけ名を馳せたお店、再訪必至のお店だからこそ書かせていただきました、普通のお店なら書きません。
逆に言えばそれ以外の問題点はなかったということです。

余談ですがこれだけのお料理なので周りの卓は皆さんアルコールを楽しんでいらっしゃいます。
車なので我慢の私達はウーロン茶とガス入りのミネラルウォーター、寂しくもありつまらなくもあり、でした。