獣(ケモノ)を喰らう : 山里

松本駅近くで、ジビエのアレンジ料理を揃えていて地酒を飲ませる店です。
「郷土料理」って、意外と土地の人は馴染んでいないんじゃないかと想像する訳ですが、この地
に観光や仕事で訪れた人は、「ものは試し」と入店するのではないでしょうか。

　～～～～～　湘南パラダイス物語　後半そのⅨ　～～～～～

松本ICに降り立った大輔とパラ子は、高速出口から国道に入り、宿舎ホテルをやり過ごして
市街地に向かいました。

まだ、日が高かったこともあり、松本城を見学に行きました。
この城は、写真で見ると地味なのですが、目の当たりにすると、静謐で端正な姿に暫し見とれて
しまいます。

　パラ子　　「美しいお城ネ。」
　大輔　　　「うん。お堀に白鳥のツガイがいるよ。」
　パラ子　　「ホントだ。ここに住んでるのかなぁ。」
　大輔　　　「どうだろ。仲良さそうじゃん。」
　パラ子　　「うん。」

何を見ても、自分たちを投影したくなる幸福感が二人にはありました。
その後、駅からほど近い裏通りに大き目の時間貸しパーキングがありましたので、そこに赤い
ジュリエッタを置いて散策します。

　大輔　　　「県庁所在地じゃないけど、松本駅の周辺は賑わっているなぁ。」
　パラ子　　「意外とお洒落なお店があるのね。」

そんな二人が、晩御飯処として選んだのが「山里」さん。
玄関からすぐの階段を２Fに昇ります。

　店は、和の民芸調、黒い塗装の木造りで入口すぐがカウンター、奥に座敷席の部屋がいくつ
かあるようです。
予約が無かったものの、快く迎え入れられ座敷席に案内されました。

　大輔　　　「おい、熊肉だって！」
　パラ子　　「え！　マジ？　どんな料理よ。」
　大輔　　　「カツらしい。それに信州手作りソーセージってあるよ。」
　パラ子　　「それも何肉だろ。」

この店の女将さんらしき人は柔和な笑顔で献立の説明をしてくださいます。

　女将さん　「熊はね、薄くスライスしてあるから案外柔らかいのよ、クセも弱いし。それと
　　　　　　　ソーセージは鹿肉のミンチを腸詰にしてあるの。」
　大輔　　　「頼むか。行ってみよう。」
　パラ子　　「怖いけど･･･。他はどうする？」

　＊別かこい　大吟醸「大信州」
　　　　　　フルーティな香りで飲みやすい！　口にスーッと入って来るが、味わうと日本酒の
　　　　　　コクもグッと来る。　　　　　　

　＊ノンアルコールビア
　　　　　　いゆものやつ。

　＊熊肉のカツレツ
　　　　　　女将さんの言った通り。クセを大蒜でカバーする下拵えがしてあるようだ。
　　　　　　想像していたより食べやすく美味しい。

　＊加茂茄子の肉味噌チーズ焼き
　　　　　　これは、いわゆるイタリアンな雰囲気のカロリー高めな味噌系の肴。
　　　　　　熱々でハフハフいいながらいただく。

　＊松本大揚げと納豆の挟み焼き
　　　　　　こちらのお揚げはでかい！　これに納豆をサンドして焼いてあるだけのシンプル
　　　　　　な一品だが、お酒には合う。

　＊信州手造りソーセージと信州野菜（ポトフ風）
　　　　　　まったく脂肪分を感じさせない、重い食感の黒っぽいソーセージがスープと共に
　　　　　　ともされる。西洋辛子やケチャップが添えられて出て来る。

　大輔　　　「どれもイケるじゃん。」
　パラ子　　「このお酒美味しい！　買って帰ろうかな。」
　大輔　　　「信州には美味しい地酒がいくつもあるんだね。」
　パラ子　　「アタシ、鹿はフレンチで食べたけど熊肉は初めて食べたわ。」
　大輔　　　「マタギみたいな人が撃つんだろうか。」
　パラ子　　「そうかも。」

二人は、松本に来て、その土地ならではの献立を肴をあてにチビチビと飲みました。
大輔は運転を命じられておりましたので、ノンアルです。

　パラ子　　「あ～、空きっ腹だったから一気に回って来た。」
　大輔　　　「目の周りが薄いピンクになってきて色っぽいよ。」
　パラ子　　「･･･えっち。うふふ。」
　大輔　　　「でも今夜のホテルは、会社でもらった旅行券だから普通のビジネスなんだ。」
　パラ子　　「いいわよ、何でも。眠れれば。」
　大輔　　　「そだね。」

二人は、ご機嫌でした。
たまたま、フラ～っと入った店が郷土料理を主体にする居酒屋＆蕎麦のお店で良かったと思い
ました。
　大輔　　　「〆に、冷たいお蕎麦ください。」
　スタッフ　「ハーフと一人前どちらに？」
　大輔　　　「ハーフってどれぐらい？」
　スタッフ　「色々召し上がった後だと、ハーフでも十分かと･･･。」
　パラ子　　「アタシはもう入らないからね。」
　大輔　　　「じゃハーフで。」
　スタッフ　「はい。追加でお蕎麦ハーフ。」

　＊蕎麦（ハーフ）
　　　　　　居酒屋の蕎麦とはいえ、しっかり手打ち風で量は都市部の蕎麦屋の一人前。
　　　　　　コシもあって美味しいが、つゆの返しの味がやけに優しい。塩分控えめなのは県民
　　　　　　こぞっての健康対策が居酒屋にも浸透した結果なのだろうか！？

かれこれ一時間半以上いたでしょうか。
二人は会計を済ませ、満腹で店を後にしました。

　パラ子　　「早くホテル行こ。もう寝ちゃいそうだよ。」
　大輔　　　「おう、ここから10分もかからないよ。」

　～～～～～　つづく　～～～～～