呑兵衛による、呑兵衛のための料理が並びます : 旅館 すぎもと

　信州温泉旅行2日目。2泊目に選んだのは美ヶ原温泉の旅館すぎもと。雑誌などにも度々取り上げられており一度宿泊したいと思っておりました。1か月半ほど前に予約サイトから予約。部屋により料金に幅がありますが、一番リーズナブルな部屋で土曜日泊、食事は基本の「束間野会席」プランで＠15500円（税込）。

　松本からは路線バスで約30分で美ヶ原温泉へ。歩いて5分で到着。宿は木造3階建てで趣きのある佇まいで館内はもちろん、意匠を凝らした部屋も魅力的です。案内された部屋は6畳＋広縁付。幅広のダブルベッド（クイーンサイズ？）でゆったり。風呂は空いていれば自由に入れる貸切風呂が1つと男女別内湯と露天がそれぞれ1つずつ。アルカリ性単純温泉、加温循環、塩素消毒ありですが特に匂いは感じませんでした。夕方から館主による蕎麦打ちを見学。軽妙な話と共に蕎麦のいい香りを感じながら完成するまでを初めて見る事ができました。夕食は堀こたつの食事処で18時から。日本酒は「大雪渓の純米酒）1.5合と当然蕎麦も注文。蕎麦は1組1枚のみでした。当日の献立は…


●前菜（二人分）サーモン南蛮漬け　しめじセリお浸し　猪肉コンニャク煮物　厚揚げ煮物・ミニ大根信州味噌・叩き牛蒡　浅利時雨煮　蕗油揚げ煮物　　前菜から酒がすすむものが並びました。お通し6点盛という感じ。

●蕎麦の実なめこ　　これが意外に旨い。

●ナズナ味噌汁

●長芋寒天寄せ

●クロダイ、スナップエンドウぬた　　刺身ではなくぬたで食わすとは一工夫あり。

●お凌ぎ　信州サーモン握り寿司

●馬刺し（二人分）　　この宿の名物ともいうべき一品。刻みわさび、行者ニンニク、青唐辛子みそ、茗荷、青葱、生姜などお好みで巻いて食します。馬肉に香味野菜との組み合わせは新鮮。赤身と旨味と香りが交互に感じられ楽しい。ただ厳しい事を言うと、馬肉自体は昨日の宿のものの方が旨かったです。

●信州牛味噌煮（二人分）　　八丁味噌で煮た一品。こっくりした甘めの味わいで酒がすすみます。

●シラウオ、葉唐辛子甘酢（二人分）　　葉唐辛子がピリっと辛いですがさっぱり。

●天婦羅（蕗の薹、蓮根、ブロッコリー）（二人分）　　それぞれ風味が閉じ込められています。特にブロッコリーは普段天婦羅で食べないだけにそれ自体の味を濃く感じ美味。

●穴子と海老芋蒸し物

●焼き筍（二人分）　　台湾産という事ですが、今回頂いた中では一番美味しい。焼き立てなので香りも良くいい食感。ほのかなえぐみは春を感じさせます。皮ごと焼くとこんなに美味しいのですね。今春に自宅でもやってみましょう。

●きのこ吸い物　　非常にあっさりした味わいで、蕎麦を食べる前に口の中をさっぱりさせるようです。

●筍釜飯（二人分）　　夕食時には満腹で食べられず、夜食のお握りで。薄口で筍の風味を生かしており美味しい。

●蕎麦（別注）　　塩尻産の蕎麦粉の十割蕎麦。初めはそのまま。次に塩、一味、つゆの順で。十割には山葵は合わないというのが館主の考えです。まず香りが圧倒的にいい。そのままでもいいですが、塩で頂く方がより蕎麦の風味が際立ちます。つゆだとやはり半減。という事で塩で頂くのが一番美味しく感じましたが、ずっと塩だと飽きるので時々汁を挟むと一層美味しく味わえました。ただ十割だからか一、二回噛むだけでほろほろと崩れるので香りは引き立ちますが、麺としての食感は楽しめなかったです。

●りんごゼリー

　朝食は8時から昨夜と同じ席で。りんごジュース、ほうれん草お浸し、ひじき煮物、切干大根煮物、鰤照焼、蒲鉾、山葵漬け、湯豆腐（二人分）、朴葉味噌焼き（二人分）、ご飯、味噌汁、漬物。定番ものが多いですが、朴葉味噌にはクコの実や松の実、乾燥きのこなどが入りご飯がすすみました。野沢菜は普通。前日頂いたものが美味しかっただけに少し残念。

　客を選ぶ宿なんだと思います。蕎麦がだめ、お酒の飲めない、温泉目的だと（循環なので）少し評価は下がるかもしれませんが、食事に関しては工夫のあるものが多く、定番の旅館めしが飽きた方にはぴったり。私達は（リーズナブルな部屋だったので）値段以上の満足度がありました。最後に相方が厳しくもユニークな言い方で評していたのでそれを書き添えます。美味しかったという事が大前提で、「都内の居酒屋でも食べれそうなものが多かった。ただ会社の同僚に（笹屋と）どちらを勧めるかと聞かれれば、（東京からの距離やお酒が好きな方が多い事から）こちらを勧める」との事です。