三昧そばにおろし汁の醍醐三昧 : せきざわ

中野市にバラを見に行った帰り、どこかでランチをいただこうと車を走らせていたら、ちょうどこのお店の前を通り過ぎました。

お店に入るのを待っている人や車の姿が見えなかったような気がしたので、Uターンしてお店に戻ってみると駐車スペースが３台分空いています。

休日の１時過ぎにもかかわらず、こんなこともあるのかとお店の中に入ると、待っている方もいらっしゃらず、お店の方が奥のテーブルに案内してくださいました。

お客様は３組９名。
お店の中は静かです。
メニューを持って来てくださり、お勧めを紹介していただきました。
店内が撮影禁止になったのと、冷たい蕎麦と温かい蕎麦の組み合わせがあるのが、前回と変わったところでしょうか。
最後が鴨南蛮蕎麦の茜三昧もおいしそうなのですが、暑い日ですしキリリとした味わいを求めおろし汁の蕎麦が入る醍醐三昧と、蕎麦粉100％の生粉打ち、変わり、粗挽きの三昧そばをお願いしました。

本日の蕎麦は栄村産との表示もある店内を眺めながら待っていると、まず三昧蕎麦の生粉打ちだけを持って来てくださいました。
こののち、変わり、粗挽きは２人分を同時に持って来てくれるそうで、２人で生粉打ちを食べてみました。

以前いただいたときは、薫りがそれほどではなかったのですが、今回はすがすがしい薫りがします。
つゆに少し入れ啜ってみると、細い蕎麦で腰がほどよく、つるっとのどを通ります。
つゆが控えめですっきりとしていて、のど越しの良さを引き立てます。
薬味は、細切りのネギとテーブルに備えられた一味。

終わりそうなタイミングをみて、変わりが２人分届けられました。
食べてみると、生粉打ちよりも腰があって蕎麦の１本１本を感じます。
更科蕎麦に今回はショウガが入っているようで、暑い日によいすがすがしさがあります。
少し噛むと、蕎麦の甘さとショウガでジンジャーエールのような味わいも感じます。

最後はおろし汁の蕎麦。
最近、蕎麦をいただくときの薬味に気に入っているのが大根おろし。
この蕎麦は、その大根がたっぷりとつゆの中に入っていて、食べてみると辛味がしっかり効いておいしいです。
もう少し大根が多めか、逆につゆが少なくてもよかったと思います。
最後にキリリとした蕎麦をいただき、蕎麦湯を飲んで完食です。
そういえば、蕎麦湯の器が以前と変わっていましたね。

２回目ということもありますし、ほかのお店でアッと驚く蕎麦をいただいたりしたこともあって、前回のような感動はなかったのですが、やはりおいしい蕎麦でした。

数年前の夏、ラストオーダーに近い時刻におじゃましました。
人気のお店らしく、お客様が列を作ることが多いと聞いていましたが、ほとんどいらっしゃらず、きっと昼間は戦場のようであったであろう雰囲気とは打って変わっての静けさです。

初めて訪れたお店の中は、すべてに渡りウッディーな世界でした。
夏としては少々暑苦しさも感じますが、一つひとつの椅子もどうやら同じものがないようで、高度で緻密な製品を作り出す現代にあって、時には自然に帰ろうよ、素の人間に戻ろうよ、というようなメッセージを感じました。
そんな空間を、数人の客だけで占領し、静かな店内で貴重な時間を持つことができました。

メニューリストを拝見すると、三昧をうたったものが多く紹介されています。
蕎麦粉100％、季節のものを打ち込んだそば、粗挽きの３種をいただけるもので、冷温、とろろ、納豆、おろしといった薬味などが違うメニューが並びます。
どれもおいしそうで悩みましたが、初めてですからやはり基本となる三昧そばいただくことにしました。

最初は、生粉打ちで蕎麦粉10割の蕎麦です。
思ったほど蕎麦の薫りがするわけではありませんが、緑がかり細くバラツキのない美しい蕎麦です。
食べてみると切口の角を感じる舌触りで、腰もほどほど、のど越しもさわやかです。
10割の蕎麦でこの細切りはおいしいですね。
小麦粉を使わない10割蕎麦の場合、太く腰が強いものをいただくことがありますが、噛まなくてはいけないので、のど越しが悪くなってしまい好みではないのですが、同じ10割でもこの蕎麦ですとのど越しがよく、とてもおいしいです。

次は、変わり蕎麦。
このように透き通った蕎麦は初めてで、驚きです。どのような味がするのでしょう。
どうやら、更科蕎麦に柚子を打ち込んだもののようです。
食べてみると、柚子がすっきりとした味わいを作り出し、舌触りもなめらかで、夏にもってこいの蕎麦です。
蕎麦の薫りよりも柚子の薫りの中で、更科らしい甘味のある蕎麦をおいしくいただきました。

最後は、粗挽き蕎麦。
ザラっとしたところが残り、最初の蕎麦と食感が異なります。

３つの蕎麦を振り返ると、つゆは蕎麦を引き立てるおだやかさがありました。
また、３つのそばをタイミングくいただき、違いを楽しみながら食べ終えることができました。

最後に蕎麦湯をいただきながら、もう一度お客様がいらっしゃらないお店の中を眺め、この設えの中で過ごした贅沢な時間を振り返り、お店をあとにしました。