おもてなしの心　地産地消と和みの宿 : 花仙庵 仙仁温泉 岩の湯

今回は20年以上前から犬が縁で友達となった医師である友人の還暦のお祝いで友人夫婦を含めて5家族でやってきました。宿の予約は還暦を迎えるその本人が1年以上も前に取ってくれたものです。元来、カラスの行水の私はあまり温泉に行くということがなく、本当に久しぶりの温泉旅行です。

平日なので東名が町田あたりで多少混んでいたものの、5家族が車3台に分乗し、圏央道、関越、上信越道と順調に進み、お昼頃には上田インターを降りて、大河で一躍有名になった上田城を見学し、菅平高原を通過してチェックインの2時に到着しました。到着時は他の車もどんどん押しかけ、さながらチェックイン渋滞のよう、でも係りの人の優しい誘導と抹茶の歓迎があり、人が多くてもせわしなさを感じることなく部屋まで案内されました。夕食は午後6時からです。それまでの間、部屋でまったりするもよし、お風呂に入るもよし思い思いで過ごすことになりました。とは言っても温泉に来て温泉に入らない手はありません。最上階の家族風呂、続けて岩風呂で有名な大浴場です。こちらの泉質はベタベタせず、サラサラして透明です。表の川が茶褐色していたので鉄分が多いのかもしれません。岩風呂は混浴なのでショーツと湯浴みを着用します。これなら安心ですね。ショーツは紙製の使い捨て。この岩風呂の温度はかなり低く、体温と同じくらい。それでも何箇所か暖かいお湯が入ってきているので冷たいということはありません。友人はここ数年続けてきているとのこと、それでも奥の院があることは知らなかったようです。この奥の院少し高台になって居るのでスチームサウナのようで中々快適です。確かにこれなら瞑想でもしながら1時間くらい入られそうです。笑

夕食は雪見障子から外の庭が見える和室でとります。和室ですがテーブル式になっているので足の悪い人でも安心です。この方式最近増えているようですね。とても良いと思います。
友人は1984年のシャトー・ラトールとニュートンのアンフィルタードのシャルドネを事前に送って澱を研いていたようです。何故、1984年なのか。それはそのうちの3家族が偶然にも1984年に結婚をしたからなのです。ですから息子たちも全員同級生なのです。

私が持参したものは1998年のシャトー・ラグランジェ。それは20年前に私がワインセラーを初めて買った時、寝かせるならこれが良いよと友人が勧めてくれたものです。そしてもう一本、これは箱を開けて気づいたのですが、いつも飲んでいるベラビスタのマグナムだと思って持ってきていたものが、実は日本に20本未満しか入荷していない、ビラベスタの中でも特別なメラビリオーゾという物だったのです。ここで飲まないと男が廃ります(笑)ボトルにはその醸造家本人のサインがしてありましたが、そんな事を言ったらみんなが気にするので適当に誤魔化し、飲んでしまいました。ソムリエが抜栓に苦労していたのはそんな理由があったからなのです。もう言っても大丈夫でしょう(笑)

そして最後の一本は今回残念ながら出席できなかったこの会のチーフから獺祭がプレゼントされました。これで飲み物はたっぷりあります。このラインナップなら持ち込み料1本、2000円は安いものです。なにぶん、1本はベラビリオーゾですから。

これでボルドーの30年もの、20年ものの飲み比べが出来ました。骨格のしっかりしたラトゥールも30年の歳月を経て、丸く穏やかになっていました。それに比べてラグランジェは花が開いた状態。今まさに飲み頃といった感です。
ベラビリオーゾ、これはもう少し寝かせておきたかった。ドンベリニョンのビンテージなど最良のシャンパンはボトルの中で更にもう一段うまさが昇華すると言いますが、まさにこのベラビリオーゾにはそれが必要かもしれません。1杯12000円が泡のように消えて無くなりました(笑)

料理の詳細は書きませんが、どれもこの地で取れた新鮮なものを、その素材を生かし料理されています。魚についても信州サーモンや大イワナ、鯉など新鮮で全く臭みもなく、最高の状態です。山に来て無理して海のものを使うより、よほど良いと思います。山菜は季節の香り、苦味、食感と私たちの五感に春を気づかせてくれます。蕗味噌も大変香り高く美味しかったです。焼き魚はヤマメでした。これは唯一、少し焼いてから時間が掛かったのか、囲炉裏端で焼きたてのものの方が美味でした。そして白眉なのがアスパラです。茹でたグリーンアスパラにソースが掛かっているだけですが、このアスパラが凄い。特別に良いものが農家から入荷したというだけはあります。私はアスパラが大好きで春になるとフランスやベルギー産のものを取り寄せて食べていますが、それにも負けていません。いやいや、今年の初取り寄せのものよりずっと美味しいです。
全てにおいて、アリスウォーターではありませんが、センスの良さと地産地消、シンプルな料理が光ります。山では山のもの、海では海のもの。それが最良だと私も思います。
サプライズのケーキもフルーツがふんだんで今回の幹事が特別に作ってもらったようです。

そして何より(ここが一番言いたいことです)全てにおいてどの従業員も全ての受け答えが前向きで、こちらの立場に立って受け答えてくれます。これが徹底されていました。。これこそ和みの宿に必要なことが実践されてる証左であります。
友人が言っていたように、名古屋のあるオーナーは新人が入るとここち連れてきて、サービスの基本を学ばせると言っていましたが、なるほど理解できます。
翌朝の朝食もお腹に優しい、かつ滋味のあるものでした。高額なオーベルジュは数え切れずあります。アワビや伊勢エビ、松坂牛など高級と言われる食材を次から次に提供して金額の高さをアピールするのですが、私はお金に睥睨されるいるようで落ち着きません。お腹も心も満足になるところは実はとても少ないのです。こちらは本当にその稀有の一つです。

友人の紹介なので点数はご容赦ください。でも最高レベルであることはお察し頂ければ幸甚です。
これもひとえに犬の縁。先先代のジーニー、セプ、さくらが私たちを取り持ってくれたお陰です。
とにかく犬の縁に感謝です。