珈琲の品格・誰にも教えず誰とも行かず : 珈琲館モカ

公式

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5.0

¥1,000~¥1,9991人
  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気4.0
  • CP4.5
  • 酒・ドリンク-
2012/04訪問1回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気4.0
  • CP4.5
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

珈琲の品格・誰にも教えず誰とも行かず

石橋さんは今年で70歳。
この店を始めて40年になる。

嘗て、東京に三人の珈琲名人と呼ばれる人たちがいた。
三人に共通するのはみずから豆を吟味して仕入れて寝かせ、丁寧に自家焙煎し、ネルドリップで淹れると云うことだった。
自家焙煎を標榜する店は今でも多いが、本当のホンモノは極めて稀である。
一人は銀座「カフェ・ド・ランブル」の関口一郎氏。
もう一人は南千住(日本堤)「カフェ・バッハ」の田口護氏。
そして、今は亡き吉祥寺「珈琲もか」の標交紀氏。
関口さんは1914年5月生まれの御歳97歳で、今でもバリバリの現役。
田口さんは1938年生まれで、今年74歳になる。
標交紀(しめぎゆきとし)さんは、2007年7月に67歳で亡くなられた。肺炎だった。

ボクが珈琲を覚えたのは17歳の春で、高校2年生の分際で吉祥寺の「もか」に通い詰めた。
井之頭公園まで歩いてゆく途中で発見した「もか」に、ボクは一目惚れしてしまったようだった。
当時の標さんは30歳になったかならないかの新進気鋭で、若いお弟子さんを何人も使っていた。
毎年夏時分に「蚤の市」なるイベントを開き、海外で蒐集した絵画や珈琲器具を原価で売ってくれたりもした。
その中の1枚の銅版画にボクは魅せられた。当時のお金で1万円はしただろうか。
とても高校生の小遣いで買えるものではなかったが、ボクは標さんに頼み込んだ。
他の人に売らないでくれと無理を言った。親に頼んで小遣いを前借りするからとも云った。
標さんはワイシャツに黒ズボン姿のボクに微笑んで、心配するなと言ってくれた。
「但し、そんな恰好でタバコを吸うなよ。みっともない」
タバコを吸うのは構わないが、サマになるように吸えと叱られた。
男のダンディズムを理解しなければ、タバコなど咥えるなと諭された。
品性下劣な奴には珈琲を味わう資格がないと断言された。
やがて、分けて貰った銅版画はボクの宝物になり、毎日その絵を飽きずに眺めていた。
親の目を盗んで吸っていたタバコは、ハイライトから缶ピースに変わった。
以来、標さんはボクの憧れの人になり、「もか」の珈琲はボクの青春を決定づける位置を占めた。

もし、石橋さんが実家の長野に戻らずにいたら、果たして東京の珈琲界はどうなっていたかと思う。
彼は若い頃、焙煎を勉強するためにドイツに渡り、イタリアで研鑽を積み、東京の珈琲専門学校の講師を務めた。
当時は珈琲専門店ブームで、大都市の街角に新参の珈琲店が雨後の筍の如く現れた。
しかるに、多くの店は卸業者から薦められる豆を唯唯諾諾として受け入れ、見よう見まねで珈琲を淹れた。
石橋さんはヨーロッパ仕込みの焙煎法と抽出法を生徒たちに教え、珈琲に厳格で高潔な品性を与えた。

ひと言で表せば、「ランブル」の関口さんは豪放磊落にして粋な江戸っ子である。
「バッハ」の田口さんは几帳面で真面目な職人気質。
「もか」の標さんは完璧主義の哲学者で、何よりも珈琲の「品格」を大事にされた。
そして、石橋さんは遠く信州で三人の活躍を見守りながら、珈琲と静かに向き合い語り合ってきた。

吉祥寺の「もか」が消えてしまってから、ボクはその面影をこの店に求めた。
標さんが求めた珈琲の品格を、この店で享受しようとした。
いつ行っても他に客はいなかった。
ボクはいつもカウンターの隅に座り、ぼんやりと店内を見渡して安堵した。
そこに石橋さんがいるだけで幸せな気分に浸れた。
珈琲を待つ時の流れが心地好く、石橋さんと話をするのが何より愉しかった。
いつものことだが、一杯の珈琲で一時間が過ぎ、二杯目を飲み終えると二時間になった。
石橋さんはカウンターの向こう側で、ずっと立ったまま相手をしてくれた。

そして、それは今もまったく変わっていなかった。

  • 珈琲館モカ - 久しぶりに伺うと

    久しぶりに伺うと

  • 珈琲館モカ - 営業してらっしゃいました(笑)

    営業してらっしゃいました(笑)

  • 珈琲館モカ - 窓に映る怪しい人影

    窓に映る怪しい人影

  • 珈琲館モカ - 奥のボックス席からカウンター方向

    奥のボックス席からカウンター方向

  • 珈琲館モカ - 昼なお暗き・・

    昼なお暗き・・

  • 珈琲館モカ - 蒐集品の数々

    蒐集品の数々

  • 珈琲館モカ - 珈琲の歴史

    珈琲の歴史

  • 珈琲館モカ - アイリッシュ・・好きです

    アイリッシュ・・好きです

  • 珈琲館モカ - 必要十分条件

    必要十分条件

  • 珈琲館モカ - ダッチコーヒーメーカー

    ダッチコーヒーメーカー

  • 珈琲館モカ - 手挽きミル・その1

    手挽きミル・その1

  • 珈琲館モカ - 手動焙煎機

    手動焙煎機

  • 珈琲館モカ - 手挽きミル・その2

    手挽きミル・その2

  • 珈琲館モカ - アイリッシュ用・ウヰスキーウォーマー

    アイリッシュ用・ウヰスキーウォーマー

  • 珈琲館モカ - 天秤型計量機

    天秤型計量機

  • 珈琲館モカ - 4kg用焙煎機

    4kg用焙煎機

  • 珈琲館モカ - カウンター席からボックス席方向

    カウンター席からボックス席方向

  • 珈琲館モカ - ブレンド・ストロング(25g)

    ブレンド・ストロング(25g)

  • 珈琲館モカ - バックカウンター

    バックカウンター

  • 珈琲館モカ - マンデリン

    マンデリン

  • 珈琲館モカ - 石橋さん・御歳70歳

    石橋さん・御歳70歳

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店舗情報(詳細)

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店舗基本情報

店名
珈琲館モカ
ジャンル 喫茶店
予約・
お問い合わせ

不明の為情報お待ちしております

予約可否

予約可

住所

長野県長野市南千歳2-13-2

交通手段

長野電鉄「市役所前」駅から徒歩5分ほど。
長野大通り「南千歳北」交差点の「東京法令出版」脇を東へ。
右側、斜め前にあります。

市役所前駅から96m

営業時間
  • 月・火・水・木・金・土

    • 10:00 - 22:00
    • 10:00 - 16:00
  • 祝日

    • 定休日
  • ■ 定休日
    祝日 都合により臨時休業となります。
予算

~¥999

予算(口コミ集計)
~¥999 ~¥999

利用金額分布を見る

支払い方法

カード不可

電子マネー不可

QRコード決済可

(PayPay、d払い、au PAY)

席・設備

席数

20席

(カウンター8席・テーブル12席)

個室

貸切

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

空間・設備

落ち着いた空間、カウンター席あり、車椅子で入店可

メニュー

ドリンク

カクテルあり

特徴・関連情報

利用シーン

家族・子供と 一人で入りやすい

こんな時によく使われます。

ロケーション

隠れ家レストラン

お子様連れ

子供可(乳児可)、ベビーカー入店可

公式アカウント
オープン日

2016年3月18日

初投稿者

ka10ka10(180)

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