奢ってもらいメシ : 海鮮蔵 魚魚魚 須坂店

「オレは何事も貸し借りを作らない」
と豪語するものがいる。仕事においても交友関係においても、貸し借りを作らずに正々堂々、常に真ん中の道を渡っていくのだ。そのようなじつに格好のよいことを話す者と出会ったこともある。素晴らしい。これは本物だと心から思う次第だが、あまりスクウェアに構えるのもどうかとも思う。
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下請業者から
現金を受け取ったりすれば犯罪だが、年に一度か二度食事に行ったり宴席を共にするくらい、接待の範囲であれば問題はない。そもそも私は公務員ではないのだ。それに友人にカネを貸す時は返済されなくともよい範囲で行う。貸すカネもないのが実情だが。そんなわけで奢っていただける場合、いただいても問題のない関係性であれば喜んで頂く。ただし私の場合は容赦なくいくことも方針としている。
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居酒屋では
まずはメニューの上段を全部。その次は下段を全部。私の場合、飲むよりも食べる方が圧倒的に多いから楽しくて仕方がない。
「メニューのここからここまでね」
と指差すのは快感だが、払う方はたまったものではないだろう。
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ああそういえば
20代のあるとき、友人4〜5人と飲んでいた時にたまたまその中のひとりのお父さんがいて、
「お前ら好きなだけ飲んでいいぞ」
とありがたいお言葉をいただいた。さんざん飲んで食べて後日送られてきた請求書は20万円を超えていたそうだ。いくらバブルとはいえ、安い居酒屋であれば3000円もあれば腹一杯呑み食い出来た時代。そして駅前のスナック程度の店の出来事だからよほどの勢いであったろう。本当に本当にありがとうございました。
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そして本日
知人が昼食を奢って下さるのだという。ありがとうございます。本当に本当にありがとうございます。では容赦なくこちらに参りましょう。
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「海鮮蔵 魚魚魚 須坂店」
あいも変わらず人気店。もう昼は過ぎているというのに15分も待たされてしまったがまあよいではないか。奢っていただけるのだから。
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「穴子一本天麩羅」385円
まずはこちらから。サクサク衣の下はふわふわのふわ。これは美味いよお。もう少しデカいと一層の満足感が得られるのだが。
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「海鮮海盛り丼」1485円、「鰤あら塩ちゃんこ汁」165円
いつもなら絶対に注文しない類のメニュー。ああ本当にありがとうございます。マグロ、ネギトロ、はまち、サーモン、こはだ、かつを、ほたて、甘エビ、カニの爪、厚焼き玉子などが豪華に華やかにてんこ盛り。オレはこれを食べたかったのだ。ご飯は酢飯にしておけばよかったが、これはこれで美味し。
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ご馳走さまでした
え？一人前2000円こえた？ああ道理で美味しかったかと。うむ、またお願いします。次回はホテル国際21の鉄板焼き屋でね。

先だって東京に行った時、荒川は菜の花が満開で河川敷は黄色のカーペットが敷き詰められているようだった。梅はバッチリ咲き誇り、桜の蕾は紅くなり気の早いのがひとつふたつ先行して開花してしまった、そんな状態であった。帰宅して週が明けたらすぐに桜が満開となった。やはり東京の春は早い。長野よりもずっと深い、市街地の緑化がなんとなく羨ましかったり。

長野といえば、3月も後半に入ってようやく梅が咲き始めてきたところ。満開もなくはないが、場所によってという感じであろうか。もう少し、あと10日もすれば花がばーっと開き始める。いくら温暖化が進行しようと、寒いものは寒いのだ。春が来て嬉しくないものはあまりいないだろう。身も心もほんのりぽかぽか、なんとなくあちらへこちらへと動き回りたくなってくる。

植物が「花」を持つようになったのは、相対する生物に色や形で感心を持たせ、接触させ受粉を促すため、という学説があるようだ。人間に限らず、どの生物も春となり、暖かくなれば活動が活発になるのは同じなのだろう。ぼくらはみんな生きている、みんなみんな生きているんだ友だちなんだ。

というわけで春にはほんの少し早いようだ。せめて色とりどりのものをいただいて、春気分を先行させたいと思いお邪魔したのがこちらだ。


「海鮮蔵 魚魚魚 須坂店」
須坂インター前のショッピングスポット、あそこはなんという名がついているのであろうか。ここにある飲食店は、ターバンカレーにはしょっちゅうお邪魔するのだが、魚魚魚にはなかなか来られない。いつも混雑しているし。今回はたまたま昼少し前に到達出来た。…それでも5分くらいは待たされたか。さすが繁盛店は違う。


「漁師飯 ぶりアラ塩ちゃんこ汁セット」990円
漁師飯とは、漁師さんが船上で獲れた様々な魚をその場でズバズバと捌き、ご飯にのせて食べたとされるメニュー。マグロやブリ、鯛やサーモンといった魚種の刺身がご飯に乗せられている。赤や白、ピンク、三つ葉のグリーン、白ゴマといったカラーが美しい。

そのまま食べても、海鮮丼のようにわさび醤油を用いても美味いが、添えられている出汁醤油に卵黄を落としたものをよく撹拌し、全体にかけ回すのが好きだ。茶漬けのようにサラサラかき込むのがよい。

通常であれば味噌汁がついてくるのだが、仕入の都合で特別メニューとして登場する時がある。この日はブリのアラを用いたちゃんこ鍋風の吸い物があった。これは注文するしかなかろう。にんじん、大根といった根菜類がどっさり、ブリのアラはもっとどっさりと投入されているが、あっさり塩味なので、とても品よく仕立てられている。


あと少し
春はもうすぐそこに来ている。毎年恒例、いつもの事ではないか。と思わなくもないが、やはり暖かいのは気分が上がるというものだ。

われながら、多重人格だと思っている。
多羅尾伴内ではないが、ある時は普通の家庭人、またある時は建築屋、またある時は大喰らい、またある時は怠けものの中年太り、またある時はド変態ヲタクそしてその実態は。…なんて何もありはしないが。
そもそも人間は社会性の極めて強い生物だから、道を歩くだけで様々な出会いがあり、いろいろな人物とつきあって行かざるを得ない。当然ながら家庭であっても、職場であっても、友人・知人・仲間たちとの前であってもそれぞれフェイズが違うわけだから、それぞれがそれぞれ顔を違えて行かざるを得ない。

そういうベースがあるところに持ってきて、私のような典型的B型気まぐれ人間は、しょっちゅう気がコロコロと変わるものだから、よそ様からしてみれば、多重人格にしか見えないだろう。物事を1、2、3、4、5なんて整然と進められるわけもなく、1、5、 0、7、9、5.81と気ままに始めてしまうから、何事もうまくいったためしがない。それに笑ったかと思えばすぐ怒るし、すく悲観するし。やはり多重人格だよなぁおれ。と、自覚していることではあるが。


「海鮮蔵 魚魚魚 須坂店」
須坂インター前の商業施設に併設された海鮮レストラン。その鮮度、価格、ボリュームからなかなかの人気店で、ランチタイムなど常に行列している。夜なら大丈夫だろうと久しぶりに来たが、読み通りガラガラだ。これはしめたと入ったら、すでにラストオーダー、あと30分しかないがそれでよいか、と言われたのだが、今から他を探すのも業腹である。よし、30分で食べてやろうではないか。

「天ばら膳」1045円
平たくいえば木桶に盛られた、かき揚げ天丼だ。直径にして25㎝はあろうかという、かなりの大サイズだ。店員の設定だと
・1杯目はそのまま
・2杯目は温玉をのせて
・3杯目は出汁をかけてお茶漬け状にして
というようにして食べろとの事だ。ひとつで、いくつも変転した料理を楽しめる、じつにお得な一品だ。
玉ねぎ、春菊などの野菜類もサイマキエビがゴロゴロと入ったかき揚げは、甘いタレがまといこんでいる。そのままかき揚げ天丼としてだと、少し油っぽく感じるが、温玉を乗せると玉子が油を中和させてくれるようで、じつによい。ねぎやごま、そしてワサビを加えた上に出汁をかける。これがなかなかよい。もっともさっぱりといただけるのではないか。
もう少し時間があれば、もっと様々なバリエーションが楽しめたであろうが、それは仕方がない。また行こう。


わがまま気ままな多重人格はもう治らないであろう。今さら治す気もないし。今後とも、皆さまになるべくご迷惑をおかけしないようにしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

職場の皆との会食であった。
たまたま天皇陛下のご退位に伴って、元号が改正される。平成になった時は、その音からずいぶんと気の抜けたものに聞こえたが、今回はどんなものであろうか。2度も改元に立ち会うとは、なかなか感慨深いものがある。そんな話題で盛り上がりながらワンセグ画面を見つめていると、ほどなくして官房長官による発表があり、「令和」とされた。
正直なところ、元号は混乱するだけであまり使いたくはないのだが、商売柄、行政と接触することが多いので否が応にもつきあわざるを得ない。であれば響きのよいものを、と思っていたのでとても良かった。
それにしても、30年前はなにをしていたか？そんな話題で盛り上がりながらいただいたのがこちらである。

「ランチ天丼 エビ天追加」972円
そもそもこちらの料理は、素材の鮮度もよい、ボリュームがすごいと評判で、いつも混雑している。これでオペレーションがよければ最高なのだが文句はこの程度にしておく。
ナス、ピーマン、かぼちゃ、キス、海苔、エノキダケ、一本穴子というラインナップがデフォルトで、そこにプラス150円でエビ天を追加すると、一層華やかな丼となる。揚げたてさくさくの天ぷらどもがとにかく美味い。それぞれの旨味が際立つ。一本穴子が豪快でよい。

豪勢な天丼を食べながら様々な会話が飛び交う。前回の改元のときは何をしていたか？30年たってようや平成に慣れてきたのに。そんな話しをつらつらしていると、唯一平成生まれの女性職員が
「みなさん、昭和から三代も経験してるんですか？そんなに古い人たちなんですね」
とひと言。あゝそういうことになるのか。もうわれわれの時代ではない。