焔蔵 : 焔蔵

板そば　　９５０円

仙台市内は未だに引越し難民で溢れ帰っておりまして、実を言うと僕もその一人です。先の震災で家を失った被災者の方々の住宅を確保すべく、県だか市だか忘れましたが賃貸住宅の借り上げ制度をやってまして、被災者の為に建設された仮設住宅の他にも、一般的なアパート・マンションの家賃も期間限定で行政が払ってくれるってシステムですね。震災以前は仙台市内の賃貸住宅はどこも空室だらけで、大家さんは大変でしたでしょうが、借りる側にとっては選び放題な状況だったわけです。でもそれが今では大逆転。単身向けはともかく、ファミリー向けは空室自体がほとんどないような売り手市場に一変したわけです。そういったわけで震災以降に結婚したり、仙台市内に転居して来たような人はなかなかどうして希望するような物件には住めなくて困ってるわけですね。まあもちろん被災者の方々が悪いわけでもないし、住宅を失った人達が優先的に住処を確保されるべきである事に異論はないのですが、こともあろうに行政は借り上げ制度を１年延長したではありませんか。さすがに昨年の夏頃から引っ越し先を探してる僕にももうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃないかと、ちょっと感じたりする事もあるわけですよ。まあ期間を決めずに妥協もしないでダラダラ探してる僕にも大いに問題があるのはわかってはいるんですが。

今現在はどうやら震災の影響で引っ越す人自体の動きは一段落したらしいのですが、引っ越せないでいて空きを待っていた人達が今になって動き出しているとの事で、依然としてファミリー向け物件は全然ないらしいです。そしてすっかり売り手市場の状況に慢心した大家さん達が、賃料値上げに踏み切っていたり、一件の空室に対して多数の申し込みがあるのを良いことに、入居者を選り好みした上で申し込み受け入れというような事を平気で行なっているという有様です。この手の申し込みは普通は先着順が暗黙の了解みたいなもんなんですけどね。ローン抱えて賃貸住宅建てて、残債もまだまだあるような大家さんの立場を考えたら気持ちもわからないでもないですが、入居者の選り好みをやり過ぎてしまうと、結局低所得層の人達なんかは部屋を借りれないというような問題にもなりかねないし、正直如何なものかと思いますけどね。

いやぁしかし引っ越したい。実に引っ越したい。新築、あるいは築浅、駅から徒歩３分、３LDKでオール電化、家賃７〜８万円ぐらいの奇跡の物件がなんとか見つからないかと日々熱望しています。事故物件は嫌だけれども、最悪霊がばんばん出るようでもOKです。毎夜部屋で妖怪大戦争が巻き起ころうが、家の前を百鬼夜行が通ろうが構いませんよ。僕そういうのは一切信じないタチなんで問題ないです。子供の頃からクラスに一人はいるような“自称霊感ある女子”を馬鹿にして泣かせてきた実績は伊達じゃありません。日本の妖怪研究の権威、荒俣先生、京極先生も「妖怪や霊は感じるものであって、実際見えるという人は頭がおかしい」的な事を何かで言っておられました。実際いろいろ見えてるのは水木先生ぐらいのもんです。水木先生自体は人間の枠をはみ出してるみたいなもんなのでそれはそれで問題ないのです。しかし僕は八咫烏が出ようが牛鬼が出ようが酒呑童子が出ようが白面の者が封じられてる部屋だろうが、さして気になりません。だから誰か良物件を紹介してください。酒の一杯でも奢りますから。

さて引越しといったら蕎麦ですよ。いまどき引っ越す際に蕎麦を配る人なんて聞いた事がないですが、引っ越したいという願望を込めて蕎麦を食べてきました。仙台市内にも山形蕎麦のお店はここ最近随分と増えてきたような感がありますが、山形蕎麦の定義は未だによくわかってません。「なんだかよくわからないけどもとりあえず結構美味しい」そんなスタンスであちこち食べ歩いています。僕の蕎麦に対する熱意と造詣はその程度のもんですが、こちらのお店の蕎麦は素晴らしく好みでした。固めに茹でられた麺の歯ごたえと、噛んだ時に拡がる香りのインパクトが他とは一線を画するクオリティです。“蕎麦屋で飲む”というおっさんの嗜みに開眼しそうになること請け合いです。接客も実に感じが良く、席も半個室的で落ち着きます。お一人樣用にカウンター席もあるようですし、これは中年男子の挨拶代わり的な「美味い蕎麦屋知らない？」的なトークのネタとしても最適です。おっさんからおっさんへ、あるいはおっさんから若い女子へのリコメンドとしても最高のお店ではないでしょうか。いつか無事に引越しが済んで一段落したら、引越しを手伝ってくれた友達を連れて「おい、いい店連れってやるぜ」なんて知ったかぶり混じりにまた来たいですね。いやぁ、それにつけても早く引っ越したい。