【1349】地物と火入れにこだわる桑名の老舗 : 平和寿司

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東京から三重県に旅行で来ております。

2019年（来年）で創業100年を迎える桑名の老舗鮨店です。
現在の大将は津市にあった三重県で一番大きかったという鮨店（既に閉店）で修業経験。
近海の地物を中心に仕入れ、鮨店とは思えないほど火入れにもこだわっています。

今回は10,000円のおまかせをお願いしたのですが、都内であれば15,000円、
銀座であれば20,000円ぐらい取られそうな内容でコストパフォーマンス高いです。
桑名の煮蛤、鳥羽のアカウニなど、ここでしか食べられないであろうタネは東京でも味わえない魅力。
お酒の値段が高いのは玉に瑕ですが、三重県の名店と呼んで差し支えない実力店ではないでしょうか。

店内はツケ場前の直線カウンターに6席。
テーブル席もあって2階では宴会も可能とのこと。
大将、奥さま、大女将といらっしゃって基本的には家族経営なのでしょう。

飲み物は颯（はやて）、作（ざく）、而今（じこん）と三重県の地酒を注文。
おまかせ（10,000円）の内容は以下の通り。
酒肴8品、握り13貫、味噌汁、玉、デザートという構成でした。

01.愛知のれそれ イクラ乗せ
02.桑名ハマグリ蒸し
03.関サバ塩炙り
04.コノワタとフカヒレの茶碗蒸し
05.山口赤貝
06.北海道あん肝ポン酢
07.愛知真蛸
08.淡路島伝助穴子 白焼き
～ここから握り～
09.三河真鯛昆布〆
10.千葉金目鯛
11.北海道ボタン海老
12.三河鳥貝
13.三河星鰈
14.三河ノドグロ
15.三河サヨリ
16.和歌山本鮪90kgカマシタ（砂ずり）中トロ
17.桑名煮蛤
18.鳥羽アカウニ
19.同上本鮪 大トロ
20.佐賀コハダ
21.ボタン海老の味噌汁
22.同上本鮪 赤身ヅケ
23.玉子焼き
24.愛知加藤農園フルーツトマト「きわめ」

まずは地物のノレソレ（穴子の稚魚）にイクラを乗せて、秀逸な珍味をアテに日本酒が進みます。
地元桑名の名産ハマグリの蒸しものは火入れ絶妙。
地物ではなく関サバですが皮目を炙って塩で味わうサバもレアーで絶妙な火入れ。
100年続く老舗ということで保守的な火入れを予想しましたが何とも挑戦的。

更に挑戦的なのは茶碗蒸しにコノワタとフカヒレを入れた創作的料理。
黒胡椒の強さが行き過ぎにも思いましたが、コノワタの旨味とフカヒレのトロトロ食感が堪りません。
山口の赤貝は最高級ブランド閖上に比べると負けますが、北海道のアンキモは最高級ブランドの貫禄。
地物の愛知の真蛸は、国内最高と謳われる明石や佐島に勝るとも劣らないレベルの高さで驚き。

酒肴の最後に出てきた伝助穴子の火入れもフレンチでいえば「ミキュイ」のような絶妙さ。
三ツ星フレンチのカンテサンスで食べた魚料理を思い出します。
握り前の酒肴から地物へのこだわり、火入れのこだわりを感じられて、同店の非凡さがよく分かります。

握りは（桑名から近いので地物と言えそうな）三河のタネを多用。
和歌山も桑名から近いので地物と言えるでしょうか、本鮪は和歌山の90kgもの。
その和歌山90kg本鮪のカマシタ（砂ずりとも呼ばれる最高級部位）を柵で仕入れ。

握りの技術は都内で食べログ4.50を超えるような鮨店に比べると見劣りするように思ったのですが、
10,000円～15,000円クラスの都内の鮨店と比べれば同店の技術は決して負けていません。
握りの中の山葵が多めな点は少し気になりました（使っているワサビはおろし立ての本山葵です）。

またガリが特徴的でアタリ（塩）がかなり強いです。
塩水にでも漬けているのかと思ったぐらい塩が強くて、一方でジューシー感も凄いです。
大将によれば砂糖控えめに作っているそうです。

マグロに強いこだわりがあるようで、都内の10,000円クラスの鮨店では敵わないクオリティの高さ。
しかし20,000円クラス以上の鮨店と比べてしまうと流石に東京の資本力には負けるでしょうか。
個人的に同店の握りで凄味を感じたのは本鮪よりむしろ桑名の煮蛤や鳥羽のアカウニ。

江戸前の煮蛤とは異なり、煮るというより軽く火を入れてヅケにしたという「煮蛤」。
レアーな火入れなのでハマグリが硬くなっておらず官能的食感。
甘いツメで食べるクラシカルな煮蛤とは次元の違う美味しさとなっていました。

そして獲れる数が少ないので築地には出荷できないという鳥羽（地物）のアカウニ。
アカウニといえば九州産と思っていましたが、三重県の鳥羽でも獲れるとは新たな発見。
走りなのでまだ小振りとのことでしたが軍艦巻きではなく握りでの提供。

このアカウニが東京の20,000円クラスの鮨店でも出会えないレベルの高さで驚愕。
すきやばし次郎で扱うような最高級のウニにも匹敵するのではないでしょうか。
東京ではまず味わえないであろう地物のアカウニの濃厚かつ鮮烈な旨味に圧倒されておりました。

築地では最高級の白身魚として恐ろしい高値となる星鰈（エンガワ乗せで）も三河の地物。
北陸のイメージが強いノドグロも三河産。
鳥貝など貝類は都内でも愛知産が最高級ブランドとなっていますが、
真鯛や細魚も三河産なのは地物へのこだわりでしょうか。

味噌汁には握りに使ったのであろうボタン海老の頭を入れています。
モツラーな筆者はこういう食材を無駄にしない姿勢に好感を抱きました。
玉子焼きは出汁巻き系のジューシーなタイプ。
最後のデザートに果物ではなく地物のフルーツトマトを出してくるのも心憎い演出。

都内で同じレベルの内容を求めるとおまかせ15,000円～20,000円は必至。
アカウニなどの地物は都内で求めてもまず手に入らない、現地ならではの格別な食体験。
地の利を活かして東京には無い魅力で感動を与えてくれる桑名の名店でした。