サーロイン、リブロース、フィレの三姉妹を食べ比べたのだ、の巻 : 和田金

土曜日の夜です。

今夜は松阪牛の総本山、松阪で松阪牛まみれ。
しかも和田金さん。

昔々、敬愛する開高健氏のエッセイでその存在を知ったラッコ。家内が帰天した年の年末に一人寂しくお伺いしたものの、個室のすき焼きは二人前からとの御託宣。

やむなくステーキでお茶を濁したものの、今回は食べ友様とご一緒なので、念願の個室すき焼きやねん、アハッ（＾◇＾）

予約は六時。
お昼ご飯は少なめに済ませたので、デヘッ、あれもこれも食べちゃお。

事前に食べ友が予約してくれたのは、すき焼きコースの『松』と『梅』

その狙いは食べ比べ。
5,300円の価格差という事は、二枚で130gコースなので一枚で2,650円の差。100g換算すると約4,000円の差やないかい。

この違いが分かるか？

さてさて円卓の真ん中に設えた五徳に炭を並べ、厳かに置かれるピカピカの鉄鍋。熱の入る頃合いを見計らい、牛脂を鍋肌に沿って溶かします。

最初はお値段の低い『梅』からスタート。
ルビー色の断面がエロく煌めくサーロイン嬢の顔見せです。

程よい厚みなので、シットリマッタリ、ゆるやかに横臥した艶姿に、還暦おじさんの荒ぶる鼻息はレッドゾーンに突入。

鍋に二枚ほど敷き詰め、上白糖を結構たっぷり目に振りかけます。関東では割り下ですが、こちらはたまり醤油。

ガスとは異なり炭なので、砂糖の甘味とたまりのコクがゆっくりとサーロイン嬢の柔肌に染み込みます。

『このくらいで宜しいですかね』と中居さんがお箸で溶き卵の小鉢に盛り付け。

撮影するのももどかしく、慌ててアンムッ！
続けてアムアムッ、アンムッチョ！

鼻腔を突き刺す処女牛の香りに、還暦爺さんの脈はバックンバックン！
ヤバイ、心臓がヒクヒクしてきた、アハッ。

間に野菜や豆腐で昂る興奮を抑え込み、そして『松』のリブロース嬢の登場。

ラッコの数少ない経験では、サーロインの方が高価な気がするんやけど、これは等級違いなんかな？

でも実はラッコはサーロインよりリブロースが好き。
真ん中のリブアイも良いけど、周囲を包み込む毛細血管のような脂が入り組んだリブマキが大好物なんだな。だって食感と舌触りが全然ちゃうモン。

Are you ready?

とでも言いたげな中居さんの瞳に頷き、リブロース嬢が鍋肌に投入。

ジュ、ジュジュジュ。
アアッ、アウッ、アウッ、まるで隠れキリシタンの拷問みたいやねん。

神よ許したまえ、迷える子羊たちのこの所業。
心より深く感謝していただくので、お許しくださいませ。

そして実食。

フムゥ、フムフムフム。
サーロインもリブロースもどっちもウンマイ。でも違いは、よぉ〜分からん。

お連れ女子は『絶対違う。こちらが明らかに柔らかい』なんて、いつものクールさが消え、若干、興奮気味かも。

これで130gですもんね。
いくら野菜をいただいたとはいえ、明らかに少ない、少な過ぎる。

そこで掟破りの『網焼き』を所望。シャトブリは売り切れなので、フィレを所望。こちらも一切れ65gほどとのこと。

ところでこの網焼きですが、五徳に網を乗せ、秘伝のタレに潜らせたフィレ嬢の塊をそのまま炙ります。

クンクンクン。
アイヤァ、屋台のイカ焼きの香りや、アハッ。

ミディアムレアに焼き上げていただき、ハムハムハムッ。ラッコは齧り付きましたが、フィレなのでお箸で裂ける。

いやぁ、グッフゥ、ウンマイ、ウンマ過ぎる。

サーロイン嬢、リブロース嬢、フィレ嬢の三姉妹をいただき、大満足のラッコ。

長生きしてればもっと良いことが有るかも、アハッ。

さてさてそれではコース内容は以下の通り。
ひとつひとつのコメントは写真欄に記載しておりますので、画像と一緒にお楽しみいただければ幸いです。

そしてご馳走さまでした。


＜コース内容＞
●牛肉の炙り焼き：冷製、赤ワインジュレ
●牛肉すまし：出汁割り
●三点盛り：
　・新玉ねぎお肉ムース
　・道明寺お肉ゼリー寄せ
　・牛肉時雨煮
●すき焼き：
　・リブロース
　・サーロイン
二人で肉の部位の異なるコースを頼み、一枚ずついただきました。
●野菜類：
　・糸ミツバ、ドンコ大分、豆腐、お麩、青ネギ
　・舞茸、玉葱
●ご飯：山形つや姫
●香の物：長芋、ゴボウ他
●お餅：餡子
●デザート：メロン、静岡クラウン
----- 追加 -----
●網焼き：
　・フィレ：65g

＜お酒＞
・白州：ハイボール
・三美酒セット
　・黒龍：大吟醸、福井
　・朴：純米無濾過生原酒、大阪
　・鉾杉：大吟醸、伊勢

2014年の暮れ、実家の広島に帰省する途上、一人で和田金の門をたたきます。

同じ年の八月に愛妻を癌で亡くし、ようやく心の整理がついてきた頃でした。

高校生の頃、開高健の著作を読み、必ずお伺いする、と心に決めて三十数余年、ようやく願いが叶いますが、目的のすき焼きは二人からということで、ステーキで我慢します。

といっても松阪牛のサーロインですからね、大満足でした。

そしてご馳走様でした。