桜宿膳料理を堪能。 : 錦

嵐山の中ノ島公園内にある割烹料理のお店で、今回法事で利用させていただきました。
華美にならない純日本風の料理屋さんで、和装の女将さんや仲居さんがその風情を演出されています。
いただいたのはこちらのお店の名物でもある「桜宿膳料理」の「野々宮」というコース4,800円。
本来はもっと上位コースでなければ個室は利用できないところですが、
お店のご配慮で、一番奥の「菊の間」という立派なお部屋を利用させていただきました。
保津川の支流と青々とした紅葉を眺めながら食事を楽しめるとてもいいお部屋です。
テーブルには予め季節ごとに趣向を凝らしておられる料理の献立表が置いてありました。
そのコースの全容をアップした写真とともに、以下の通りコメントを残しておきます。

一、先付
　　揚げからし豆腐、糸鰹針海苔、土佐醤油

揚げだし豆腐の中に洋辛子が鋳込まれており、豆腐を割ってそれを取り出してお出汁に和えます。
ほどよい辛さがお出汁に変化をつける面白さがありますが、
なんといってもカリッとした揚げだし豆腐の揚げ具合がとても美味しく感じました。
もちろん揚げたてです。


ニ、お造り
　　鯛のへぎ造り、遠山長芋、大文字人参、岩茸、もろみにんにく、青み、山葵

お造りの鯛は身の引き締まったもので、コリコリといただけます。量は少なめ。
この料理は京都の８月の風物詩を演出されている趣向が印象的です。
長芋は東山連邦を模しておられるようで、人参を大文字に型抜きされて添えられています。
京都を感じる心尽くしですね。
ただ、せっかく嵐山でいただいているのですから、
人参は「大文字」ではなく「鳥居」の型抜きにされてもよかったのではと思わなくもありませんでした。


三、冷し物
　　冷し氷見麺、うなぎ蒲焼き、錦糸玉子、いそのり、笹葱、わさび、麺つゆ

これも趣向を凝らした容器に、コシの強い細うどんがよく冷えて出てきました。
孟夏にいただく料理としては最適で、汗がスーッと引いていくような気分になります。
うなぎの蒲焼きも二切れだけですが、ちゃんと存在感を感じられるのは、
料理の盛り付け方やうどん等との合わせ方の妙なのでしょうか。
麺つゆはかなり薄味でしたが、これも京都らしくて好感が持てます。

四、桜宿膳　上段
　　朝顔棚（いくら醤油漬、貝柱酢漬け、うろし鞍馬煮）、おくら辛子味、
　　朝顔葉写し（牛肉牛蒡巻、甘露栗）、釣瓶写し（満願寺黄身酢和え）

こちらのお店の看板料理、桜宿膳の登場です。
重箱のような二段構えの容器ですが、下段が引き出しのようになっています。
上段は、八月をイメージして朝顔が垣根に咲いているような情景を描いて盛り付けられています。
ひとつひとつの味がどうこう言うよりも、これは目で楽しむものでしょうね。
俄然、会話も弾みます。
料理としては貝柱の酢漬け、うろり（ヨシノボリの稚魚、ハゼ科）の鞍馬煮が好きでした。


五、桜宿膳　下段
　　炊合わせ（冬瓜含ませ煮、海老旨煮、青味、ちらし柚子）

下段の冬瓜がお出汁をたっぷり吸い込んで、ひんやりと仕上がっておりとても美味しかったです。
少量だからこそ、その美味さが染み入るのかもしれません。
小振りながらも海老の重厚感と青味のスナックエンドウもサクッとした食感が冬瓜といい対比になっていました。


六、中皿
　　加茂茄子冷やししぎ焼、そぼろみそ、しょうが

このコースの中で一番好きだったのが、この加茂茄子でした。
ふっくらとお出汁を含んだ加茂茄子はお箸でもスッと切れて、肉厚な食感は食べ応えがあります。
この加茂茄子の断面にそぼろみそがたっぷり塗られているのですが、
これはもう白ご飯が欲しくなりますね。
食べ終えた感覚としては、肉料理をいただいたような満たされ様でした。


七、ご飯
　　梅雑炊、青み（わさび）、香の物、錦のなめ茸

ご飯もひとひねり加わっていて、ほんのり梅を溶かし込んだ雑炊でした。
食欲が減退しがちな夏にはとてもいい組み立てだと思います。
小さな器ではありましたが、たっぷり入っていて十分お腹いっぱいになりますが、
これはおかわりができて、仲居さんがすすめてくださいます。


八、水物
　　白桃のゼリー

白桃の果肉は瑞々しく、自家製ならではの味わいですね。
ゼリー自体の甘さも控えめで、食べ終えたあともすっきりとした感覚です。


以上の献立でしたが、もっともコンパクトなコースながら結構な満腹感です。
私は車の運転をしなければならないので控えましたが、
こちらのお店オリジナルの純米吟醸の冷酒「嵐山錦」は口当たりがよく、とても美味しいと評判でした。
周山にある造り酒屋で55％まで米を磨いて造ったもののようで、これも夏の楽しみでしょうね。
他では手に入らないものですが、1,400円で小売もされていました。

そんなわけで、いいお部屋で料理の趣向を楽しみながら、ゆっくりと会話を楽しむことができました。
このお値段でこれだけ季節を感じながら美味しい食事を楽しめるのなら、かなりオススメです。

お店を出ると日はとっぷりと暮れています。
夜の中ノ島公園から渡月橋を眺めながら食後の散歩をして帰る道すがら、
なんとなくかけがえのない時間を過ごせたような気持ちになれたことをしみじみとかみ締めていました。

ごちそうさまでした。