「素材」を生かした創作イタリア料理 : cenci

平安神宮の近くにあるイタリア料理店です。
イルギオットーネで料理長を務めた坂本氏が独立して開いた店。
店名は「ぼろ布、素朴な」という気取りのない意味のイタリア語。
2014年12月開店。
素材を生かした創作イタリア料理を提供しています。
料理はランチ5,000円と10,000円、ディナーは10,000円（税抜き、サービス料別）のお任せのみ。

夜訪問。
最寄り駅は神宮丸太町。
場所は丸太町通りから平安神宮と隣り合う横道へ入ったところ。
夜は暗いですが、昼は平安神宮からの散策コースによい立地です。
東山駅からも15分ほどかかりますが歩けます。

店は町家をリノベーションしたもの。
ドアを開けると「ねじりまんぽ」（明治時代の隧道）を模したレンガのアーチがお出迎え。
ここがウエイティングルームで、その先がダイニング。

ダイニングは木や煉瓦で構成された素朴で温かみのある内装。
茶と黄土色の空間はまるでイタリアにいるように素敵な雰囲気です。
満席でしたが、イタリアと違うのは静かなこと。
1階はカウンター席とテーブル席、半地下階にテーブル席。
フロア全体を見渡せる位置にオープンキッチンを配置。
奥の窓際には奥にある石造りの坪庭。

半地下のテーブル席に案内されました。
接客は丁寧で感じが良いです。
テーブルに置かれたメニューに書かれていたのは「素材」のみ。
何が出てくるか楽しみです。

飲み物はワイン、お茶、ソフトドリンク。
ワインはペアリングの他、お茶のコースもあり。
グラスワイン（白）を注文。
シチリアのコクのある辛口でした。

出て来た料理は以下の通り。
構成は前菜5種とメイン、パスタ又はリゾット、デザート3種、食後の飲み物。
●自家製グリッシーニ
細くて長くて、カリカリ。

◇パン◇
2種類。
オリーブオイル添え。
なくなると、追加してくれます。
料理が出るタイミングが遅めだったので、パンはつなぎとなりました。

●フォカッチャ
ふかふか。
●田舎パン
丸型に大きく焼いたパンを切ったもの。
クラストがぱりっとして、芳ばしい。

◇前菜◇
●ペルシュウ
岐阜ボン・ダボン製の生ハム、銀杏のミニパンケーキ、絞りたてモッツァレラチーズ。
生ハムの脂肪は口の中でとろける感覚、モッツァレラチーズはまだ温かく弾力がありました。

●赤玉葱、オクラ、トマト、パブリカ、鮪、松の実
鮪とトマトの角切りを赤玉葱・オクラ・松の実・オリーブオイルで和えたもの。
ソースはピリ辛なパプリカソースとトンノ（鮪）ソースの2種類。
お刺身とイタリアンな素材の組み合わせ。

●枝豆、新蓮根、剣先いか、穂紫蘇
こんがり焼いた蓮根餅の上にイカ細切りと酢蓮をのせ、2種類のソースでいただくもの。
トッピングにイカスミソース、添えてあるのは枝豆のソース。
蓮根餅はかりっと焼いてあり、 もっちりした食感。
イカはゲソと頭はソテーし、胴体は生という細やかさ。
様々な食感とソースの組み合わせが楽しめます。
それぞれの素材はおいしいです。
でも組み合わせの "妙" はよくわからず。

●茄子、落花生、甘鯛
甘鯛の鱗焼、茄子と茹で落花生のソース。
ソースは刻んだ茄子と茹で落花生を鶏スープ・ピーナツオイル・胡椒で味を整えたシンプルな味。
皿に保護色状に添えたカルダモンがアクセント。

●蕎麦、菊菜、渡り蟹、青柚子
米状のパスタ・粒状にした蕎麦・菊菜・渡り蟹をヴィネガーで合えたもの。
青柚子のトッピング。
蕎麦が香る和風の味わい。

◇メイン◇
●じゃがいも、黒いちじく、ルッコラ、キントア豚
黒豚のキントア豚の蒸し焼き。
揚げじゃがいも、黒いちじく、ルッコラに薄く削ったリコッタチーズのトッピング。
ソースは2種類。
豚にかけた黄色の粒マスタードソースと野菜の横にいちじくのピリ辛ソース。
黒いちじくの甘味と豚が合うのです。
豚は脂肪に旨みがあり、普段豚肉は選ばない私もおいしくいただきました。

肉用のナイフは、福井県越前市の「龍泉刃物」製。
美しい龍泉輪模様が美しいです。

◇パスタ又はリゾット◇
3種よりそれぞれ1種を選択。
もう一つの選択肢は栗とアルバ産白トリュフのリゾット（+3,500円）でした。

パスタは断面が丸く、もちっとした太麺。
ソースとの絡みはよいです。
●芹とトマトと牡蠣のスパゲティ
ぷりっとした牡蠣はこれからの季節を感じさせるもの。
芹のほろ苦さとトマトの酸味が爽やか。
これは当たり！でした。

●ポルチーニと酢橘のスパゲティ
こりっとした食感のポルチーニの旨み。
酢橘が爽やかさを出していましたが、印象に残らず。
パスタへの期待は大きいので、やや残念。

◇デザート◇
●カンノーリ
おなじみシチリアの郷土菓子。
エスプレッソ入り生地を筒状に成形して揚げたものにマスカルポーネチーズとラムレーズンを詰め、両側にアーモンドまぶしたもの。
片手でつまめる大きさ。
カンノーリと聞いてボリュームが心配になりましたが、これであれば大丈夫。
おいしいです。

●ネピテッラ、葡萄、フロマージュブラン
ネピレッラ（ハーブ）のグラニテにマスカット、フロマージュブラン、メレンゲを添えたもの。
冷たくて口の中が爽やか。

●梨、ライム、米
シナモン風味のクランブルの上に梨のムース、甘酒のアイスクリーム。
甘酒と梨の角切りのソースがけ。
ライムの香り。
梨のムースは梨をそのままいただいているように香りがよいです。

◇食後の飲み物◇
メインの後に食後の飲み物のメニューと茶葉のサンプルが出されました。
香りを試してから、注文。

●紅茶
スリランカ産キャンディを選択。
店名と同じフィレンツェの揚げ菓子チェンチが添えてありました。

それぞれの料理は美しく、野菜を中心に数種の素材が使われ、素材の味を感じながら味の組み合わせを楽しむもの。
イタリアンらしさに和の要素も入れ、手間をかけた繊細な工夫がされていました。
皿数は多くても一皿は少なめ・油は控えめだったので、量的には適量。
おいしかったです。

食事の前半は「料理（前菜）が出る間隔が長かった」ので次の料理が待ち遠しく、オープンキッチンを眺めていました。
働くシェフ達の姿が格好良く、記憶に残りました。