食事のお供に最適なシンプルにしてディープな味わい : ハナカゴ

以前から一度訪れてみたいと思っていたパン屋さんながらも日曜定休なのでなかなか行けませんでしたがようやく初来店です。

各地のレストランにパンを提供してるほど信用あるパン屋さんと聞いていたのでかなり大きく煌びやかなお店なんだろうなと想像してましたが全くの逆でした。そのあまりもの地味な店構えは注意しておかないと見過ごしてしまいそうな程。しかも店内もかなり狭く陳列スペースも「え？これだけ？」と思ってしまいます。

しかし並んでるパンの数々はどれも力強い説得力を持っています。基本は菓子パンとハード系が主体で見た感じでは惣菜パンは少なく感じましたがこれは時間帯で違うのだろうと憶測。品数は限定的ですが一品一品が丁寧な仕上がりなのでむしろ迷う必要がないのはありがたいと言えるのかも（全部買ってまえ精神）


【バゲットクラシック】（280円）
国産小麦を使って焼き上げたバゲットで一切奇を衒うことなくあるがままの朴訥なフランスパン。見た目はパッとしませんがリベイクしたバゲットはパリパリのクラストを持ち、目が詰まり気味のクラムはもっちり感強め。カナッペ、タルティーヌ、ブルスケッタと何でもこなせる懐の広さはまさにハナカゴさんの象徴と言えるでしょう。

【クロワッサン】（180円）
【パンオショコラ】（200円）
見た目はそれほど折り込みの美しさを強調したフォルムではありませんがパリサクの表層、潤いあるしっとりとした内層と非常に高いポテンシャルを秘めたクロワッサンです。食べた瞬間はそれほどバター感はないのですが数噛みするだけで溢れて来るディレイ感、そして食べ進めるに従い累積的に高まるバターの風味、これはかなりのクオリティです。もうこれだけで花かごさんの実力が垣間見えます。

ただバター感が強いだけに全体的にオイリーさもあり、この辺はeightさんのクロワッサンに性格がよく似てます。

【クリームぱん】（220円）
やや硬質感のあるブリオッシュ生地にオレンジのエッセンスを練り込み、内部にはバニラビーンズを使った自家製クリームをたっぷり充填。ぼってり感は弱くてジューシー、甘さもしっかり確保しているので満足感は十分。ちょっとお値段が一回り高いかなって感じ。

【赤ワインのパン】（352円）
水を使わず赤ワインだけで捏ね上げたパンでほのかなワインの香りとずっしりとした重さを持ち、目の詰まった生地はモチッとして食べ応えがあり更に生地に練りこまれたレーズン、いちじく、クルミがリッチな気分にさせてくれます。少し割高に感じてしまいそうですが薄切りにしてチビチビ食べるタイプなので値段相応のボリュームはあります。

【オリーブとサラミのパン】（200円）
もっちりしたフランスパンにオリーブとサラミの角切りを練り込んだハード系のパンで、小豆のように見えますがオリーブです。そしてオリーブとサラミの組み合わせで分かるように全体的に塩気の強いパンでワインなどの飲み物と一緒に食べたいパンです。

【ブルーチーズとハチミツのパン】（170円）
小ぶりのパンにブルーチーズとハチミツ、そしてクルミを練り込んで焼き上げておりブルーチーズの独特の風味が全体を支配しがちながらハチミツの控え目な甘さとクルミの脂肪分がブルーチーズをうまくコントロールしてる感。

【フリュイ】（170円）
数多くのドライフルーツを詰め込んだフリュイセックで、混ざり過ぎてフォーカスがボヤけ気味なこのジャンルにあって1個1個のフルーツの存在感はかなり際立っていて鮮明。ただドライフルーツはギッシリと言うほどの密度ではないのでフリュイセック特有のドライフルーツの洪水を楽しみたい人には不向き。手頃な値段とのトレードオフですね。

【グルノーブル】（259円）
グルノーブル産のくるみをたっぷり使ったくるみパンで、全粒粉で仕上げられた生地は非常にリーンな風味を放ちながらもくるみの香ばしさと脂肪分がこっそりアシスト。もっちりしたクラムとくるみの優しい味わいに時間はゆっくり進みます。

【キャトルフロマージュ】（230円）
もっちりしたハード系の生地にカマンベール、ブルーチーズ、クリームチーズ、ペコリーノの4種類のチーズを使い、内部に果肉が入ったリンゴジャムを詰め込んで焼き上げたフロマージュでブルーチーズの香りがやや強め。

ダイスカットのチーズだけに留まらず表面や生地の中に練り込んで焼いているのでチーズ単体の主張ではなく一体となった味わいはまさにキャトルフロマージュ（所謂クワトロフォルマッジ）。チーズの塩気とコクが全体を支配するこのパンにリンゴジャムの甘酸っぱさが新鮮な風をもたらす。


総評です。その勇名に反してこじんまりとした店構えながら扱うパンはなかなかに本格的。されども見た目がピカピカ！フィリングがドーン！可愛い可愛いこれ可愛い！と言うような派手な主張はなくおとなしめ。どのようなシチュエーションで食べても無難にソツなくこなせる、そんな生地の美味しさが光るパンです。そういう意味ではレストランなどで支持されるのも頷ける程の性格を持った「本格的でありながらクセのない品質本位のパン」と言えるでしょう。ごちそうさまでした。