品格備えた繊細と豪快を行き来する緻密な料理 : 飯田

烏丸御池近くにある日本料理店。
丁度行く直前にミシュランで三ツ星を取り、本サイトでも非常に評価が高い。
それだけに超予約困難店なのですが、いつもお世話になっている超食通の方が予約を取ってくれ、食べ友さん達と訪問。
いつも感謝。

お店は町家の一軒家。
すごく素晴らしい造り。
他の方のレビューを見ると、あの中村外二工務店が施工してるようですね。
数寄屋造り建築で世界的に有名です。
カウンターと個室があるようですが、今回は個室に通して頂けました。
これまた風格ある室礼。
花入れなど、すごい値打ちものかと。
なおこちらは、写真は禁止です。

コースは1本で、季節ごとに変わるようです。
この日は26000円（税・サ10％別）。
当日の内容は、以下になります。

＊柚子湯
＊先付　雲子羽二重蒸し　蕪みぞれ餡　
＊お椀　蟹真丈　松葉柚子　ほうれん草
＊造り　ふぐの身生揚げ　みかわ　とうとおみ　ポン酢
＊凌ぎ　雲丹の柚香寿司
＊強肴　こっぺ蟹（香箱蟹）　リンゴと土佐酢のジュレ
＊焼物　ふぐのつけ焼き
＊追肴　海老芋のおかき揚げ　柚子味噌　生子とこのこ・たたき長芋の酢の物
＊炊合せ　大根　自家製厚揚げ　京菊菜
＊食事　　白飯　赤出汁　香の物　ふぐのしぐれ煮？
＊水菓子　洋梨のコンポート　洋梨の焦がした皮のソース　洋梨のキャラメルアイス
＊菓子　　酒饅頭
＊お薄

緩急、あるいは繊細と豪快を織り交ぜた、緻密に構成された料理。
さすがの三ツ星です。
最初は繊細で味もそれ程強くない料理が出て、途中でぐっと攻めてくるような料理、しかも豪快さも兼ね備えた料理が出る。
その緩急がとても楽しい。
また器が素晴らしいです。
写真をアップできないのが残念なくらいの眼福

品の良い女将さんのサービスも素敵。

風格ある室礼と料理には、感服しました。
また立派な中庭には猫がいて、それも可愛い。

こういう貴重な席を予約してくれたことに感謝。
ご馳走様でしたー。

以下、料理の感想を少し詳説します。

まず、最初の雲子羽二重蒸しから唸る。
雲子をすり流して、上から銀餡ベースのみぞれ餡。
旨みが素晴らしいです。蕪のみぞれ餡は、その旨みに品と奥行きを与える。
蕪の甘みは雲子の旨みと親和性。餡と雲子のバランスも見事。
悶絶しながら食べてました（食べ友さんから、悶絶し過ぎでうるさいと言われた・・）。

また、お椀も白眉。
初めに吸い地だけを頂いた時は昆布が強いかな？と思ったのですが、蟹の旨みたっぷりな蟹の真丈と合わせると、見事にバランスが取れてる。
この計算にも唸りました。

造りにも感動。
ふぐの身生揚げというのが、素晴らしい。身をさっと軽く油通しした感じ。
その表面の香ばしさと油通しの脱水作業で、ふぐの旨みがギュっと濃縮。
上には白子の餡を掛けてさらに深みを。
’とうとうみ’や’みかわ’といった、皮の部分はそれに落ち着きを与える。
これにも悶絶。

雲丹の柚香寿司は、柚子の香りが雲丹の甘さを引き出す。
個人的には、柚子がある分酢飯じゃなくても良いような気もしましたが（組み合わせ的に少し強くなり雲丹の甘みを削ぐ感じ）、これは好みですね。
美味しいことは美味しいです。

こっぺ蟹は、土佐酢のジュレにリンゴを擦ったものを混ぜてます。
鉄板の美味しさだし、リンゴの甘みが蟹の甘みとグラデーションを与えて、軽い酸が旨みを引き出す。
美味しいな。

ふぐのつけ焼きは豪快かつシンプル。
カマの部分を含めて、醤油タレで焼いてる。
付け合わせ等は一切なしで、見た目は居酒屋さんのブリカマ焼きのような料理。
がっ、これが美味しい。
骨ぎしの部分の旨みがとても良い。
こういう部分を頂くのって、なかなか無いですから。
淡白なふぐですから、脂の甘みでぐっと迫ってくるような分かりやすさはないですが、とにかく滋味深い。
唸りました。

追肴は、一口サイズが2種。
一つはコロンと団子状にした一口サイズの海老芋に米粉をまぶして揚げたもの。
アツアツ。海老芋の甘さがとても良い。
生子は、そのぷるんぷるんの食感と長芋のシャキシャキの食感が良い対比。コノコの旨みがそれに複雑さを。美味しい。

炊合わせの出汁は、意外にしっかり。
もう少し薄味でも良いのでしょうが、これはこれでアリかな。

食事は、潔く白飯。
京都らしく？少し柔らかめの炊き具合。
米自体がかなり美味しい。
こういうシンプルな食事も大好きです。
付け合わせのふぐ？のしぐれ煮？は、旨みが奥からじんわり出る感じ。
良いご飯のお供でした。

洋梨を色々な形で用いた水菓子は、手堅く美味しい。
甘味の饅頭も良かった。
お薄も、かなり美味しい。

そんなこんなで、とても満足。
実に緻密で計算された料理に唸る。
食べてる途中も悶絶やら感心やらしましたが、振り返ってそのすごさがまた改めて分かる料理です。
感服。

以上です。