日本が誇る懐石料理です : 飯田

1年ぶりの訪問となりました。

何度いただいても、流石の一言。

そして、女将の気さくでいて、品のあるホスピタリティ。

絶えず、客を楽しませることだけを考えている、

ということが伝わります。

そして、この日は、とてもいいエピソードを

大将から聞きました。

まだ、大将が修行時代。

婚約指輪を買うために貯金をしていましたが、

骨董屋で、どうしても欲しい器に出会ってしまったそう。

その場で女将（当時は婚約者）に電話し、ことの次第を話すと、

即、その器を買うことを了承したそう。

私　「女将あっての・・」

大将　「飯田、です」

一同、大笑い。

それでは、この日の内容です。

春満喫、です。


１、あられ湯

２、みる貝
　　水管だけを炙り、浜防風のお浸しと、
　　生姜の煮凝り

　　器は、大正時代の永楽了全で、
　　貝の形。　なんと、足まで貝の形なのです。

＊ここで、盃に、桃色濁りの酒を。

３、お椀
　　蛤の葛たたき
　　胡麻豆腐
　　うるい

４、お造り
　　・明石の鯛
　　・山口の赤貝

５、赤貝の紐とわけぎの鉄砲和え

６、筍と桜鱒の挟み揚げ

７、手打ちそば
　　花山葵の山葵漬け
　　雲丹
　
　　「蕎麦の実　よしむら」さんのそばです。

８、蛍烏賊
　　アツアツに熱した石が登場。
　　その上で、活きのいい蛍烏賊を自分で
　　焼きます。
　　蛍烏賊は鰹の酒盗に浸してあり、
　　石の上で、少し焦げ目をつけると
　　香ばしい。

９、琵琶湖のもろこの炭火焼
　　木の芽酢

10、明石の飯蛸
　　柔らかく炊いて、一寸豆の蜜煮と。

11、宍道湖の白魚
　　ホワイトアスパラガス　　
　　なまこがけ

12、鮑の柔らか煮
　　白芋茎
　　葛煮で。

13、雛寿司
　　昔の京都の雛寿司は、錦糸玉子ではなく、
　　錦糸湯葉だったそうで、
　　この日もそちらが。
　　ちりめんじゃこ、胡麻、高野豆腐、椎茸、
　　つくしの頭を揚げたもの
　　花びら生姜

14、白ご飯

15、明石の新海苔を炊いたもの

16、グレープフルーツのプリン
　　コアントローに漬けたグレープフルーツ
　　ひのしずく（苺）

17、草餅

18、お薄

お供は、梅酒のソーダ割


大将は、ダイエットをしたとのことで、

かなりスリムになっていらっしゃいました。

「からだが軽くて、身のこなしもしなやかに

なりました。　痩せないのはこいつだけ」と、

弟子の太郎さんを指さし、

また一同大笑い。


和気あいあいの中、

春の味覚を満喫させていただきました。

真冬の「飯田」さんです。

相変わらず、仲の良い大将と女将。

お料理については、もうなにもいうことはありません。

実にシンプルそのものなんですが、

なにがこんなに違うのか、と思うほど、

別格に違います。

大将は、ひと手間ふた手間を惜しまず、

料理に向き合っている、とのこと。

以前は、他店を訪問すると、帰宅して、

その料理を思い起こしながら、絵を描いたそう。

そうやって、反芻しながら勉強したんですね。

今回も、唸る料理、唸る器、そして、女将の

明るい江戸っ子のような接客、大将と女将の

爆笑トーク。

すべてが素晴らしいです。

それでは、内容です。

１、甘酒
　　生姜汁を少しいれて。
　　からだが温まります

２、はたけ菜の辛子漬けと鰯
　　土佐酢で
　　初午の伝統とのこと。
　　浦霞を一献

３、お椀
　　伏見の初午ということで、
　　稲荷寿司に見立てて、河豚の白子を葛豆腐にして
　　揚げで包み、
　　蕪のすり流しに浮かべ、
　　焼き蕗の薹を。

　　今回も、このお椀が素晴らしかったです。
　　黒の朱塗りに、金で小梅と鶯が、一面に。
　　その鶯はアイシャドーまであり、
　　淵まできっちり模様が。

４、お造り
　　明石の平目
　　炙った縁側

　　鷹峯の辛味大根とあさつきで。

５、金目鯛
　　皮目を炭火焼きし、
　　からすみをふって。
　　皮目がサクサクで、中はかなりレア。

６、巻物
　　穴子、出汁巻き卵、車海老、三つ葉

７、まなかつおの味噌幽庵焼き

８、新潟の真鴨
　　白魚のおかき衣揚げ
　　伊勢海老の生揚げ
　　芹の胡麻和え
　　（この胡麻は、村田さんのもので、極上）

９、すっぽんの丸鍋
　　すっぽんを細かくしてワンタン包みに
　　たっぷりの九条ネギと

10、炊き込みご飯
　　福豆（丹波の鉄砲豆）、ひじき、京人参

　　釜は、中川一辺陶さんの弟さん作

　　香の物　　すぐき、白菜
　　赤だし

11、せとかゼリーと苺

12、雪餅
　　中は小豆ではなく、チョコレート

13、お薄
　　　茶碗は、大将のご自慢で、
　　　魯山人。
　　　本当に見惚れる作品で、
　　　手にしっくりと収まります。

お供は、梅酒のソーダ割。


器は、毎日終わってから、大将と女将だけで

すべて手で洗うそう。

お弟子さんが手を滑らせても、すみません、では

すまないものばかりなので、とのこと。

わかります。

毎月、月末に、すべての器を入れ替えるのですが、

倉庫からお店までの入れ替えを女将一人で

やっているとのこと。　

料理、器、そしてホスピタリティ、どれをとっても、

裏の努力が、これだけのクオリティを作っている

のですね。

ただ、感動です。

次回がますます楽しみです。

約１年ぶりの訪問となりました。

初回のレビュータイトルに「京都の次世代を担う店か」と

書きましたが、その後、ミシュラン３つ星を獲得し、

名実ともにそうなってきました。

私の持論ですが、本当に美味と思った店の２回目というのは、

自分の中で、ハードルがかなり上がっているので、

がっかりする結果になるところが多いです。

しかし、こちらは、さすが。

２回目ジンクスなどなんのその。　あっさりとクリア

、いやそれどころか、期待をはるかに上回ってくれました。

前回、裏庭にいた地域ネコちゃんも、しっかり、飯田家の

一員になったとのこと。　さぞや、毎日美味しいものを食べて

いるのでしょう。　笑


前回も見事な伝統の技を披露していただきましたが、

今回のお目当ては、八幡巻。　大将の得意料理とか。

相変わらず、フレンドリーな女将の接客で、

居心地もいいです。

それでは、今回の内容です。　（３万円）

１、香煎茶

２、先付

　　うすい豆の葛豆腐
　　黒鮑
　　うすい豆の鞘を焼いてとった
　　出汁の煮凝り

　　うすい豆の滋味が沁み渡ります。

＊ここで、杯に、菖蒲酒が。
　菖蒲の根の赤い部分を浸した酒です。

３、椀

　　骨きりをして揚げた鯉
　　蓬餡
　　新生姜、芽葱

　　ふんわりとした鯉の身が
　　贅沢です。

４、造り

　　明石のあぶらめの焼き霜
　　クレソンのお浸し

　　この焼き霜の仕事が見事。
　　あぶらめの脂ののりと
　　焼き霜の香ばしさが素晴らしい。

５、造り

　　和歌山　けんけん鰹
　　引き縄釣り漁で１本づつ釣る漁法。
　　活け〆で、日帰りし、その日の内に市場へ。

　　これを京番茶で燻製し、
　　茗荷、青芽紫蘇、ポン酢と葛で。

　　もちもちした極上の鰹です。
　　京番茶は前に出すぎず、ほんのり。

６、ちまき

　　見事な美しいちまきの技です。
　　しばし、見とれます。
　　中には、鯛の寿司と、蕗を炊いたもの。
　　一寸豆のみつ煮と。

７、稚鮎
　　
　　琵琶湖産。
　　目の前で、大将が汗だくになりながら、
　　丁寧に炭火焼きします。
　　木の芽酢の酢加減と木の芽の芳香が
　　麗しい限り。

８、八幡巻

　　これがスペシャリテです。
　　これだけ、美しい八幡巻は見たことが
　　ありません。
　　しかも、鰻と牛蒡の食感を同じにするという
　　離れ業。　新牛蒡の時期しかできないそうです。

９、間人の雲丹
　　たたきオクラ
　　すっぽんの煮凝り

１０、牛肉、蕨、花山椒の鍋

　　　柔らかい信州牛、たっぷりの蕨と
　　　花山椒です。

１１、上の出汁を卵とじに。

　　　ご飯　（長野　佐久産９
　　　４種の香の物
　　　赤だし

１２、水物

　　　美生柑　（河内晩柑）
　　　佐藤錦
　　　和三盆とキャラメルのアイスクリーム
　　　

１３、焼き柏餅

１４、抹茶


お供は、梅酒のソーダ割りで。

　
　唸りました。

　すべてにおいて、別格です。

　一分の隙もない、見事な技。


　ちまきの美しさを女将に褒めると、

　うつむきかげんで、稚鮎を焼いていた大将の口元が

　わずかにほころびました。

　それを見て、女将が、「あ、喜んでますよ」

　と。　大笑い。

　２回目のハードルをなんなく突破してくれたことを

　女将に話すと、

　「大将は、今日より明日、と言って、いつも前向きに仕事

　　しているんです。」と。

　日々の精進が、これだけ格段の違いを創出するんですね。

　やはり、間違いなく、京都の次世代を担っています。


　（写真禁止です）

先月のこと、金沢「小松」にお邪魔したときに、たまたま大将にこのお店に行く予定、と

話したところ、「あ～～～、私も先日お邪魔しまして。　いつもよくしていただいてます。

よろしくお伝えください。」とのことでした。

この日、お邪魔するなり、その話をすると、「あ～～～、私どもも小松さんにはよくしていただき・・・」

とのこと。　なんだかほのぼのしてしまいました。

古民家を改装した感じのお店で、奥にお座敷があります。

雪見障子越しに箱庭が見えますが、なんとネコちゃんが２匹。　飼い猫ではない、とのことですが、

このお店のいい香りにひきつけられているらしいです。　

大将、飯田さんは、金沢での修業を皮切りに、「和久傳」「丸山」「桜川」に。

女将も愛想がよく、元気いっぱい、終始笑いっぱなしで、楽しい時間でした。

今回は、京都で４日間食べ歩き続きているので、食材もかぶりますが、

それだけに、各店の工夫が鮮明に見えます。　そして、こちらには珠玉の料理がありました。

さて、この日のお料理です。

まずは、桜茶で一服。

１、手取川　　　　　　　　　搾りたての生酒を一口

２、帆立の生揚げ　　　　　　蕨、タラの芽を揚げ煮に。
　　　　　　　　　　　　　　うるい、ウドを白煮。
　　　　　　　　　　　　　　花山葵、山葵漬け　　土佐酢餡で

３、お椀　　　　　　　　　　あいなめ
　　　　　　　　　　　　　　半干しくちこ
　　　　　　　　　　　　　　みょうが、木の芽

　　　　　　　　　　　　　　お出汁も秀逸ですが、このお椀の美しさにしばし見とれました。
　　　　　　　　　　　　　　外見はなんの変哲もない塗りの椀ですが、蓋を取ると、
　　　　　　　　　　　　　　美しい桜と紅葉が金で繊細に描かれています。
　　　　　　　　　　　　　　大正期あたりのものとのこと。
　　　　　　　　　　　　　　桜と紅葉は、永遠を意味し、「雲錦」と言われているそうです。
　　　　　　　　　　　　　　これ、本当に持ち帰りたいほどでした。

４、お造り　　　　　　　　　明石の鯛に、白子の裏ごし
　　　　　　　　　　　　　　菜種、山葵

　　　　　　　　　　　　　　これは、乾山の皿で。

５、烏賊、雲丹　　　　　　　間人海苔の炙り海苔　（これ、とても珍しいものです）
　　　　　　　　　　　　　　に、醤油を加えたもので。


６、一寸豆飯蒸し　　　　　　からすみと

７、筍　　　　　　　　　　　朝掘りで、一番甘い部分

８、豆腐田楽　　　　　　　　絹ごしを使用しているので、とても繊細
　　　　　　　　　　　　　　生姜味噌
　　　　　　　　　　　　　　炙った蕗の薹

９、筍の炭火焼き　　　　　　醤油漬けです。　糸かつおと木の芽で

１０、桜海老かき揚げ　　　　このかき揚げ、カリカリに揚がっていて、美味

１１、新もずく　　　　　　　線長芋と

１２、干しぜんまい湯葉巻　　これが秀逸でした。
　　　　　　　　　　　　　　「干しぜんまいって？？」という素朴な疑問に答えてくれた
　　　　　　　　　　　　　　女将の説明が驚きでした。
　　　　　　　　　　　　　　この干しぜんまいは、干すのにかなり長い時間を要し、かなりカチカチな
　　　　　　　　　　　　　　状態にするのだそうです。もちろん、専門職人がやります。
　　　　　　　　　　　　　　しかし、戻すにも時間がかかるので、使用する料理人が少なくなり、
　　　　　　　　　　　　　　したがって、作り手も激減しているとのこと。
　　　　　　　　　　　　　　ぜんまい本来の旨味がぎゅっと凝縮していて、美味。
　　　　　　　　　　　　　　職人さんが日々いなくなっている昨今、なんとか存続してほしいものです。

　　　　　　　　　　　　　　蕗、白アスパラガスと。

１３、ご飯　　　　　　　　　桜鱒、筍、実山椒　　　（この筍は、さきほど出たものの穂先を使用）

　　　　　　　　　　　　　　香の物　　　沢庵、キャベツ、梅干し、紫蘇

　　　　　　　　　　　　　　味噌汁　　　わかめ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お椀の裏蓋には、能面の塗り。　漆芸家、鈴木表朔のもの。

１４、水菓子　　　　　　　　ほうじ茶ブラマンジェ
　　　　　　　　　　　　　　熊本のいちご
　　　　　　　　　　　　　　ブラッドオレンジ

１５、桜餅　　　　　　　　　関東風クレープ生地です

１６、薄茶

お供は、黒龍　龍。

本当に頑張っています。

いや、これからが楽しみなお店ですね～～～。

大将の料理との向き合いが、真摯、正直。　

そして、元気で気さくな女将とのコンビネーションが抜群です。

これは、再訪確実。

（ちなみに、写真掲載不可だそうです）