"海の幸"と食後の愉しみが盛り沢山です … 『藤本』。 : 京料理 藤本

京都ジモティの方々に熱烈な支持を受けている"藤本"さん、なかなか予約が取れぬ人気店です。

店は喧騒な祇園を離れ室町通と新町通の間、三条衣棚を下がった閑静な路地の奥、築百年超の
町家を改築し使われているという風情溢れる店で店へと続く情緒豊かな石畳のアプローチは京都
らしさが感じられるものであり、その先にかかる暖簾の"京料理 藤本"の文字が気分をわくわく
とさせてくれます。

當店へは過去に二度、予約の電話を入れるも希望日の予約が取れず正に今回三度目の正直で
席をゲット、二月の と或る日の夜にやっと念願が叶い初めて訪問させて戴きました。

暖簾をくぐり玄関先で靴を脱ぎ一階の席へ…、Ｌ字型のカウンター席は全八席であり當日も盛況。
二階にも個室があるようですが、そちらり席も今宵は予約で埋まっているとのことでした。

世の中は広いようで狭いということを感じたこの日、何と隣の席の三人さまは顔見知りのジモティ
の方々で互いに顔を見合わせて驚きの声が…、初訪の店ではありましたが、そんなこともあって
スタートからリラックスモードとなり和気藹々、ビールをさしつ、さされつでまったりとした開宴です。

夜の料理は五千円、七千円、壱萬円の三つのコースが用意されており今回戴いた料理は壱萬円
の"おまかせコース"ですが料理画像が、ちょいとした不可抗力にて2～3枚消失しております(笑)

料理は"飯蛸、ウルイ、スナップえんどうの黄身酢掛け"と"鮑、白魚、舞茸の木の芽霙おろし掛け"
の"先付"二品からはじまりましたが"鮑"は値の張る"黒鮑"が使われおり上々の幕開け。

三品めに"津居山の蟹"と"一寸豆"に"からすみ"が盛られた皿が供されたのですが画像消失(笑)

"椀物"は高級食材の"ふかひれ"と"ぐじ(甘鯛)"と胡麻豆腐という面白い組合せの椀種で、
見た目にも具沢山な椀で吸い地は出汁がしっかりと効かされている割りに塩分はかなり抑え目に
感じましたが"ふかひれ"や"ぐじ"などの椀種を口にした味の最終形を考えて計算されたもの。
"くじ(甘鯛)"は店主の拘りのひとつで"日本一の甘鯛"とも称される長崎産の"紅王"というブランド
ものを使っておられるそうです。

"造り"は鮪、鮃、車海老湯霜、剣先いか、海胆、鰆焼霜、たいら貝が、まな板程の大きさの板皿
に盛込まれ供されました。車海老は淡路、剣先いかは長崎、海胆は北海道の根室というように産地
を含めた説明が加えられ供されました。個人的には鮪が無い方が良かったようにも思いましたが、
それ以外のものは平均以上の質のものであり納得です。

"蒸物"は"かぶら蒸し"、"揚物"は"くもこ(鱈の白子)の天ぷら"、油ものの後には香川
の"ホワイトアスパラ"と脂のり最高な"のどぐろ焼"のサラダ仕立、止肴は"桜鱒西京焼"に"河豚の
唐揚"、海老芋田楽に青菜に胡麻だれを掛けたものが供され"食事"は"焼き貝柱と根菜の炊き込
みごはん"と香の物とほうじ茶で戴いて料理は、ひととおりとなりました。

噂には訊いておりましたが確かに料理は魚、魚、魚と次から次ぎと魚貝類でグイグイ圧される感じ
ではありましたが色々な魚貝類を少しづつ味わうことが出来ること自体は魚好きには嬉しいことで
あると思いますし自分自身は"黒鮑"に津居山の"蟹"、"ふかひれ"に"ぐじ(甘鯛)"、"のどぐろ"に
"河豚の唐揚"と好きな食材をたて続けに味わえたことで価格以上に気持ちは満たされました。

そして當店のもうひとつの人気の秘密は口直しの"水菓子"の豊富さにあるのだと思われます。
水菓子は全六種類用意されており一種類だけ味わうも良し全六種類すべて味わうのも良しという
超太っ腹なサービスが甘味好きに熱い支持を受けているようです。

大抵の方は三種類味わって帰られるそうで自分も友人と別のものを各三種類づつ選び、ひと通り
味わってみましたが、ミルフィーユとラムレーズンの最中が個人的には気に入りました。

店主の"藤本貴士"氏は高台寺の"修伯"さんで修行を積まれた方であり未だ三十一歳という若さ。
"御値打ちな店だったと満足して帰って戴きたい"をモットーにされているそうですが確かに色々
味わったなぁ～という満足感を得ることができました。

店主の明るい性格は、はじめて店を訪れる客の心をもきっと和ませてくれることでしょう～。

そういう意味で京都を訪れ、いきなり祇園の高級割烹で緊張して食事をするよりも若い方であれば
當店の和気藹々の雰囲気の中、食事をされた方が精神衛生上も良いのではないかと思います(笑)

居酒屋以上であり高級割烹未満料理店的趣の當店、用途によっては便利な一軒となることでしょう